かなり前に、私がダイナやF6Bという重量級バイクに乗ってるのは、「スピードを捨てて、もうこの世界には戻るまいと誓ったからなの!」なんて偉そうに書きましたが、その私が、またストリートトリプルRSで峠攻めの世界に戻ってきてるってのは矛盾じゃねーのか?と、感じている方も多いと思います。

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でも、昔の私と今の私は全然違ってます。今は「ニューへっちまん」という、どっかのソープランドにありそうなネーミングの生物に進化してる。スピードで煮詰まってクルーザーカテゴリーに浮気していた10年間で、私の考えは随分変わりました。格闘技で例えると、昔はガチのバリートゥード、でも、今はプロレスです。違いがよくわからんとおっしゃる方もいるかもしれませんが、要は「限界を超えて怪我をするような戦いはやらない」ってことです。

バイクって乗り手のレベルに応じて一定の支配領域があって、それ超えると凄く危なくなる乗り物だと思うんですよ。

例えばあるコーナーを70km/hで曲がるのが私のアベレージの上限だったとしますよね。そのコーナーを60km/hで曲がってる分には、バイクって凄く安全なんですよ。70km/hでもまだ安全。なぜなら、その速度域までは自分の支配領域に入ってるからです。

でも、70km/hまでが支配領域のコーナーを75km/hで曲がろうとすると、危険度は一気に2倍3倍に跳ね上がるんです。これ、数多くの事故で身に染みてるんですけど、私は自分の展開できる限界領域を超えた瞬間に「ド素人になる」んです。少しだけ能力が落ちるんじゃなくって、一気にダメダメになる。すべてについてとっちらかって、もうバッタバタの南無三状態になるんですよ。

公道では、この領域問題はライディングスキルだけではなく、ありとあらゆるものが複合し影響し合って極めて複雑。バイクによっても展開できる領域の限界は変わるし、コースの状況や交通事情によっても展開領域の限界値は決まってくるんです。

サーキットでは無敵の走りをしてる人でも、公道事故であっさり亡くなったりしますよね。それは、公道とサーキットで領域の性質が全く違うのにサーキットと同じ領域設定をしちゃったからだと思うんです。どんなにサーキットが速くても公道走行で領域超えれば「素人さん」なんですよ。ウサイン・ボルトの足が速いからって借り物競争に出して勝てるかって言うとそんなことない。だから、サーキットやジムカーナで速いっていうのと、公道で長年生き残っていくってのは、まったく別の領域スキルがいる。

昔、スピードを求めてやまなかった頃の私は、自分の領域限界を広げようとやっきになってたわけです。自分の限界領域を積極的にはみ出そうとしてたわけだから、走りに大きなリスクをかかえるのは当然だった。

でも、そういう修行走行はまだマシです。一番危ないのは他人と競ってるときですね。一人で走ってるときは、少しずつ領域を広げようとトレーニングしてるわけですけど、ソコに走り屋さんが来て、お互いバチッと目が合いますよね。で、両者エリマキトカゲみたいに威嚇状態になって、バチバチのバトルが始まってしまうと、そこはもはや呪術廻戦の世界になる。

領域展開
(呪術廻戦の領域展開の一例です。領域展開は高次元の呪術スキル。領域の中では術者は圧倒的な存在として君臨できる。漫画読んだとき、これバイクとなんか似てるなぁと感じたのが、このブログのモトになってます。)

お互いが領域展開して、その強さ勝負になるんですよ。相手の領域のレベルがこっちより高いと、それについて行くにはこっちは領域外にでなくちゃならないから、いきなりとっちらかってぶっこけるワケなんです。

私も人について行こうとしてコケたことあるし、私についてこようとして後ろでコケた人もいたわけだけど、それは展開できる領域のレベル比べで一方が敗れたってことなんですね。これもう完全に呪術廻戦でしょ?

でも、今の私は自分の領域を広げようとはしていない。「50にもなってこれ以上トガってどうするのか?」って思いもある。一人で走るときも、自分の領域の範囲内でしか走ってないし、他流試合仕掛けられても自分のペースで走るだけ。そりゃ遅いバイクがいれば抜きますよ。お礼を言ってね。当然逆もある。そんなわけで、現状ではそれなりのアベレージが出ていたとしても、領域の外に出てないから、過去の自分とはメチャクチャ大きな差があるんですよ。端から見ると違いはわからないかもしれないけど、昔に比べて走りが全然安定しているはずなんです。

事故りまくってた頃の私は領域展開ができてなかった。領域自体が見えてなかったか、おぼろげに見えてはいたけれども、その狭さを受け入れていなかったんですね。「もっと速く走れるはずだ、もっと速く走りたい。もっと限界まで」って思っていて、そういう考え方そのものが事故誘発の原因だったわけです。

今は昔痛い思いをして広げた領域をはみ出ることなく、その範囲内で楽しめばいいって割り切ってるから凄く楽になった。サスセッティングもギリギリまで追い込むんじゃなく、車体のキレを少しばかり落として、8割くらいでキャッキャウフフできるように設定してる。

そんな感じで肩の力抜いちゃってるんで、速くないかもしれないけど猛烈に楽しいんですよ。ヒリヒリするところまで攻め込まないから、とってもお気楽に乗れてる。限界を追い込めば、達成感や満足感は確かにありますが、楽しさはなくなり、スリルや刺激の方に振れていきます。でも、今は楽しさと、満足感が一番高いところでバランスするように走ってるんですよね。

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(こちらザラブ嬢の激オタな領域展開。脳が腐ってますね。ベテランになってからの領域展開は戦闘系スキルではなくお楽しみ系スキルとしてにこやかに使っていくのがいいと思います。ちなみにこの漢字の読みは「マシンヴァナディーズ キャバルリィ ワールドブレイク」わけわからん。最近のアニメタイトルの当て字は難解すぎて全く解読不能です。)

で、ココまでを前提としつつ、今回のお題「ストリートトリプルRSは上級者向けかそうじゃないか?」って話になるんですが、これは明らかに上級者向けバイクですね。凄く乗りやすいし、エンジンも車体もキレ味凄くて、誰もが熱い走りができるんですが、それは悪徳宇宙人の甘い罠です。スピードが出まくるからこそ「まだ自分の領域展開ができない人」には、全然お勧めできません。

公道で「乗りこなす」という領域まで、このバイクで踏み込むと、もうとんでもないスピードになる。そのアベレージは「ほとんどの人のライディングスキルの限界を軽く超えてる」はずです。もうね。ブッ飛ぶかブッ飛ばないかは運次第になりますから、このバイクはダイナと違って、「公道でバイクの限界まで使っちゃダメな子」なんです。バイクの上限を探るんじゃなく、自分の展開できる領域の上限までで走りを抑えていかなくちゃならない。その限界線がわかってる人でないと、事故の確率がメチャクチャ高くなってしまうバイクだと感じる。

私は、乗り手のライディングの危険度って、この領域理論に左右されると思ってるから、「これ初級者向けですか?上級者向けですか?」って聞かれたときは、一般的な乗り手の上限領域をバイクの性能がどれだけ超えてるか?で判断するべきだと考えてます。ちょっとシゴいただけで、乗り手の許容限度を超えるコーナリングスピードが出ちゃうバイクが初級者向けの訳がない。

私はバイク乗りとしては随分古参になってしまったんですが、過去出会ったバイク乗りたちを分類していくと、公道で事故らないライダーって「必ずしもライディングスキルが高い人じゃない」と思うんですよ。公道でのしぶとく生き延びるのは、自分の領域を自分の感覚でしっかり把握できてる人じゃないかと。で、その領域内で思いっきり楽しめるように工夫する人なんです。

実際ライディングスキルはクッソ高いのに、自分が展開できる領域が全然見えてない人、意識してない人は結構多いんじゃないでしょうか?

与えられたバイクのパワーや道路環境、自分のスキルに応じて、自分の走りをちゃんと線引きできる能力がなきゃ、どんなに技術あったって公道じゃあっさり事故ります。その証拠に私より速かった人はもうほとんどバイク乗りとして残ってない。ライディングスキルはあるはずなのに皆バイク降りちゃってるんですよ。なんで降りたか?事情はいろいろあるとは思うんですが、「どこかでバイクが怖くなったから」ってところが一因としてあると思うんです。私も昔はそれでバイク降りようかと思ってましたから。

私がこの年になってまだバイクに乗れてるのは、飛ばさないからじゃありません。自分がなぜコケるかが明確にわかってるからバイクが怖くないんです。ヒリつくような怖い走りをしなくても楽しめるようになったから、気持ちよく乗れてるんですよね。

この領域理論って、自分の仕事とかいろんなことに応用できるんです。だから、バイクでコケなくなると不思議と仕事もコケなくなってくるんですよ。常に限界ラインに気を配ってるから「この案件は自分の限界超えてる地雷だな・・」ってのが感覚でわかるようになるんです。で、張り合わずにそこでスルリと撤退する。格好なんて気にしない。リスクに直面することがなく安全圏だけで商いしてるから、売り上げは爆上がりするわけじゃないけど、緩やかな上昇線で安定してるんですよね。「これが円熟味って奴なのかしら??」なんて思ったりしますが、こういう自画自賛するとロクなことがない。

経営でも、消費でも、ビジネスでも、模型製作でも、イラストでも、訳のわからん夢とかプライドとか、カッコつけたいとかのスケベ心で、自分の領域を超えたことをやればロクな結果にならないのは、何ら変わることがないんですね。

このテキスト叩きながら、私がこうやって気ままにブログ書けてるのも、「ひょっとしたらバイクでの経験したことのおかげかもしれないなぁ・・」などと思ったりしますが、過去の苦労を考えると、「いやいや、散々痛い目に遭ってきたんだから、それくらいの恩恵がないとやってられないだろ?」と遠い目にもなります。まぁ世の中マイナスがあればプラスもあるってことですよね。

やっぱね、マイナスを食らったらそこから何かを学んでプラスにしなきゃならないですよ。商売人は勘定あわせをきっちりやるのが大事で、世の中ってのはそれがやれるようになってると思う。プラスとマイナスは意識さえすれば必ず拮抗する。でも、その領域を見極めて、マイナスとプラスをコントロールしようという意識がなければ、プラスになるはずのものを取り逃がしちゃうんじゃないかと思うんです。

領域っていうのはプラスとマイナスが反転する限界線を意識して、素肌感覚で理解していくってことです。そうすればマイナスになる一歩手前で止まれるわけです。バイクのライディングだけじゃなく、この世の全ての事象には、この反転領域が必ずある。製造コスト、販売コストなどのビジネスにおける収益分岐点や株式投資なども同じこと。ここがドンブリになるから真っ赤っかになるんですよ。私はこの領域理論が、バイクに限らずリスクコントロールの極意だと思ってるんですよね。完全な手前味噌理論ですけれども。

ドツボにはまりたくなければ、領域が見えてない分野には出て行っちゃいけないんです。企業が新しいことに手を出して、大赤字出すのは、領域を超えたところでは所詮素人さんだからです。逆に言うとその分野の領域を理解すれば、安全に、楽しく,効率的に世渡りできる。でも、それが見えるようになるには、仕事でもバイクでも、やっぱそれなりの経験と、それを見ようとする意識が必要なんで、地道な下積みをすっ飛ばしちゃいけないと思うんですよね。