4月上旬、私がダイナを購入したハーレー・ディーラーに「パン アメリカ」が3日間展示されるということで、実車を見に行って参りました。

前々回のハーレーのブログで、ハーレーの将来について少し書きましたが、そこで

「ハーレーがアドベンチャーで成功すれば、クルーザーメーカーとしての専門性が薄れるんじゃないかなぁ?」

「うなぎ屋がすき焼きを出すようなものじゃないの~?」

などと問題提起していましたが、実際、この「パン アメリカ」「ハーレーにとってどのような位置づけになるのか?」を確認するために、ディーラーに赴いたわけです。最初に言っておきますが、私にまともなインプレを期待してはいけませんからね

私は基本的に消費においては愉快犯。もの買うにあたってクソ真面目に考えることなどなくなってます。今持ってるバイクはロクに試乗もせずにフィーリングで買ったものばっかり。

ですから、このブログは、破滅型消費者の私の目から見て、パン アメリカがどう見えたか?ってブログになりますんで、皆さんにとって何の役にも立たないと思いますが、ネタとして、ご覧ください。

私がディーラーのドアを開けると、目の前に黒の「パン アメリカ」が静かに鎮座しておりました。それを見た私の反応は

「・・これ、なかなかステキかも・・」

なぜ以前の懐疑的な評価から現物見て180°回れ右しちゃったのか?そりゃ、ハーレーの未来なんて考える前に、目の前にあるバイクが商品として面白いかどうかですから。

帝王4+1
(なんか描いているうちにやたら気合いが入ってしまった「パン アメリカ」。ヒーローバイクの香りがしますんで、そのうちキャプテン・アメリカあたりが映画で乗るんじゃないでしょうか?)

で、パン アメリカはなかなかに面白かったんですよ。形は確かにアドベンチャーでしたが、コレね、完全に騙しですね。ディーザー映像なんて壮大な釣りですよ。ハーレーは確かにアドベンチャーとしての実績はない。だから、アドベンチャーでBMWのGSやアフリカツインに挑むのは厳しいだろうと誰もが思っていた。

その状況下で、一体ハーレーは何をしてきたのか?

ハーレーはアドベンチャーで勝負する気なんてハナからなかった。ハーレーが作ったのは
アドベンチャーの形をしたクルーザーです。もう見た瞬間、TDM850のキャッチフレーズ「ニューオンロード」が頭によぎりましたもの。

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(ほのかに匂い立つ
ヤマハのTDM850っぽい香り。私TDM850好きでしたから、パン アメリカも好きなバイクに入っちゃう。アドベンチャーというより、「ニューオンロード、再び」って感じ。)

これ、車でいうなら都市型高級SUVですね。商品コンセプト的には、
「これまでのハーレーの価値観を真逆にしてクルーザー作ったらアドベンチャーみたいになったんです♡」ってことなんだろうと思います。

では、その真逆の価値観とは何なのか?

①エンジンの価値観が根本的に違う。

エンジンは60°のVツインに可変バルタイぶち込んで、150馬力以上も出てます。もうこれ、昔のV-MAXくらいの馬力ですよね。「速すぎる」と言われてるGSのフラットツインの馬力を軽々超えてますね。

いや~それにしてもハーレーのエンジンに可変バルタイが入る日が来るとはねぇ・・遅い遅いと言われてきたハーレーついにブチ切れましたね(笑)。V-rodは速かったけど全然バンク角がなかったので直線番長でしたが、パン・アメリカはバンク角がありますから、ぶっちゃけ峠でも相当速いと思います。

私はハーレーの遅いところをこよなく愛してますが、空冷Vツインをあえてカリカリにする方もたくさんいるんだから、ブッ飛ぶハーレーいうのも需要があるんでしょう。空冷で無理くりパワー出すんなら、おとなしくこれ買ったほうがいいと思う。

当然ですがオフ走るには車重もパワーもありすぎ。GSでオフロード入る人がすでに少ないのに、150馬力でガレ場入る人なんてほぼいないと思いますよ。

②乗り手が見る風景が違う。

今までハーレーは座面の低さで足つきを確保してきましたが、今回は座面を容赦なく上げてきてます。そう徹底的に。身長168㎝の私でもう足ツンツンですよ。両足がヤジロベェ状態。片足なら、指の付け根くらいまでかろうじてつくかなって感じ。フツー車高の高いアドベンチャーってフワフワに沈むんですけど、このバイクはノーマル状態だと私の体重程度じゃあんまり沈まない。

ハーレーの平均想定身長は168㎝らしいんですが、このバイク、ノーマルだと168㎝の人間はかなり厳しい。でもご安心を。パン アメリカは裾野を無理矢理広げるために、高額モデルでは「停止時に車高が5センチも下がる」という電子制御アクティブサス入れてるんです。高いモデルだけですよ?これ、足つきを人質に高額モデルを売るってことですよね。ハーレーさん、とんでもなくえげつないですね。

そこまでして走行中の車高を維持しようとしてる理由は何なのか?オフロード走るから?違うでしょ?

パン アメリカが車高にこだわった理由はズバリ「天下人は高いところが好き」だからですよ。パーフェクトバカの私と天下人の数少ない共通点は「高いところが好き」ってところです。これでハーレーのマスツーに参加したところ考えてみてくださいよ。すべてのハーレーを見下ろす感じになりますよ。気分はまさに「聖帝サウザー」です。いやもうバイクの車高が10㎝上がると見える風景は全然変わりますからね。多分ハーレーは今までと違う景色をユーザーに見せたかったんじゃないでしょうか?

③スタイリングが違う。

ハーレーって今までクルーザーで飛び道具出す度に批判されてきたんですよ。「こんなのハーレーじゃない!!」って。ハーレーは今回「じゃあハナからハーレーじゃないモノ出してやれ!」って完全に開き直った感じがする。既存ユーザーの批判はこれで封殺。ガチの空冷ユーザーは全く興味ないでしょうから。でもですよ、これだけスタイリング違うとですねぇ、、ディーラーに並んだ時に異形感があって、スッゴク面白そうに見えるんですよね。

モビルスーツの中にモビルアーマーがいる感じですよ。敬遠する人はいるかもしれないけど、「他のハーレー乗りと違うものが欲しい」という人には刺さると思うし、機能性が高いですからねぇ・・どっちが強いとかどっちが偉いとかの議論にも巻き込まれないんで、乗ってても楽でしょう。

ことほど左様に、このモデルはこれまでのハーレーとはまったく価値観が違いますが、しかしその一方で、ハーレーらしいところも多々もあるんです。

①エンジンがメチャクチャ主張してる。

そう、このバイクはエンジンの主張が強い。昔のV-rodもエンジンでかくて、フレームがエンジンを避けてて、かなり主張がありました。実は私V-rod大好きだったんですが、このエンジンはそれ以上。写真じゃ質量感や質感はなかなか伝わらないかもしれませんが、見た目質感も相当に高く、みっしり感がすさまじい。ディーラーの店内の照明でしか見てないので割り引く必要がありますが、凄く良いもの感があるんですよね。機械モノが好きな人には、この質感と量感は、かなりクルものがあると思います。

このエンジン右側からばっかり撮影されてるんですが、左側のメカメカしいごちゃごちゃ感も凄まじくそそる。私はエンジン見て「ふぁぁああああぁぁあ」ってなりましたから。これ、今まで見てきた水冷エンジンの中で造形が好きなエンジンのトップクラスに入るかもしれない。

DSC_0922(ガレ場で左に立ちゴケした瞬間、破滅の刃なこの眺め。舗装道路ですら200㎏半ばが重いと嫌がられるこの時代に、これでオフロード走ろうって奴は真の勇者です。)

で、車体も質感が凄く高いんですよ。コレでホントにオフ行くの?ってくらい傷やヨゴレが似合わない。「アドベンチャーなのに、そんなわけあるか、そんなわけあるか、大事なことなので二回言いました!」ってどっかの中二病のセリフが漏れちゃいそうですが、実際そうなの。

そもそもマジでオフ走るバイクなら、外装なんて安っぽくていいんですよ。昔のレーサーレプリカなんて「どうせコケてガビガビになるんだから、色プラにシールで良いじゃん」って感じでしたし、多くのアドベンチャーも外装には特段高級な素材を採用してない。でも、このパン・アメリカの外装質感は「はわわわ・・これコケられない・・・」って気がしますよ。これまでのハーレーと同じ基準で外装が作られてるんで、立ちゴケ怖い人は、あらゆるガードつけまくるしかない。ここでもオプション価格は跳ね上がりますねぇ。

でも、これ買う側の心理からすると結構いいところついてきてるんですよ。アドベンチャーのツライところは価格が高いのに、それに伴う質感がないところでした。「だからこそ道なき道に入っていけるんだろ!」って突っ込まれれば、そりゃそうなんですが、ホンダのディーラーでアフリカツインとCBR1000RR-Rが並んでるとやっぱり外装質感が全然違うんですよね。ホンダはフラッグシップですら色プラ使うくらい色プラ大好きメーカーで、高額バイクでもお構いなしなんですが、これが国産がハーレーに負けてきた理由でもあるんです。

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(塗装質感や、パーツ質感はかなり高い。ナゼかタンクにアニメ絵をデカデカと描いて、痛車にしてやりたいという強い欲求にかられる。)

今回ディーラーに展示されてた黒のパン アメリカにはオプションでサイドケース・トップケースがついていたんですが、箱の質感が完全にバイクに負けてるんですよね。これってコレまでのアドベンチャーにはない感覚ですよ。広報動画では「アドベンチャーなんですぅ!!」って力説してるのに、メチャメチャ化粧盛ってる。

お前それでヨゴレやるのか??て感じです。「もうスーツで田んぼ入っちゃうの?やめて!」って叫びたくなりますよ。「そのカッコで、お前どの作業やるんだよ?」って心の中で地獄突きですよ。

またがって起こした感じ、重心も特段低くない。いや~攻めてますね~。私みたいな「重いバイクが男の甲斐性、だから巨体が大大大好き」っていうバカにはマジ萌えるバイクです。しかも、これ足つきは最悪中の最悪だから、道の駅での取り回しは降りてやるしかない。素で車重は258㎏。ガードとかパニアとか立ちゴケ対策諸々つけて荷物積むと300㎏くらいにはなるでしょう。もうね。タッパがクソあるか、エンジン止めた状態で、重量級バイクを自由自在に取り回す技術がないと乗れないですよ。

先日私の昔の仕事仲間がタイガー納車されたんですが、やっぱり取り回しでコカしちゃうんですよね。重心高くて車高もあるアドベンチャーは取り回しでフラフラしますんで、おっかなびっくりで取り回すと重いだけ。

なぜ、ハーレーがこんなモノを出したのか?これ、アドベンチャーだと思ってみるとナニコレ珍百景なんですが、アドベンチャーの格好をしたクルーザーだとすると、なかなかに辻褄が合うんです。「どーせオフは走んないけど、乗り心地が良くて、パワーあって、荷物詰めて、見晴らし最高なバイクが欲しいなぁ・・」ってアドベンいく人多いと思うんですよ。クルーザー的にアドベンチャー使ってる層は確実にいるんです。

そういう人が、タイガー見て、ムルティストラーダ見て、GS見て、一応ハーレー見ておくか・・ってハーレーディーラー入ると、「ナニコレ!もの凄く良いもの感あるぅう~!」ってなると思うんですよ。私が思うにハーレーはアドベンチャー専業メーカーの弱点を巧妙に突いてきたと思う。

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(写真じゃよくわからないかもしれないけど、ものすごい質量のスイングアーム。最新鋭の電子制御サスを奢り、フロントは倒立フォーク。ブレーキは前後ブレンボ装着。で、エンジンは150馬力。これのどこがオフロードなんだい(笑)??マジで峠攻めてくださいって言ってますよね。)

アドベンチャーで実績のあるメーカーほどオフロード性能との両立を重視せざるを得ないから、公道よりにできないんですよね。それを逆手にとって、アドベンチャーでスポーツバイクをやって好評を博してるのがムルティストラーダです。パン アメリカはそれのクルーザー版をやってきたんですね。

多くのガチのアドベンチャーはオフロードを出自にしてるから、外装質感上げることができない。ホントにオフロード走るんなら外装の質感なんて修理の際のリスクでしかないんです。でもハーレーはアドベンチャーになっても外装質感妥協しないし、帝王であることも止めなかった。ガチのアドベンチャーの逆を張ったんですね。

でも、それって案外と的を射てるんじゃないかと思うんですよ。だって、ほとんどのアドベンチャーってオンロードしか走らない。で、オンロードメインのアドベンチャーって、見方変えれば縦方向に伸びたクルーザーなんですよ。

前回のブログで「うなぎ屋がすき焼き作ってもどうしようもねぇなぁ・・」なんてのたまってたんですが、すき焼き鍋の蓋開けたら肉がなかった。そこには、しらたきと豆腐と、春菊と「うなぎ」が入ってたんですよ。これは笑う。

このパン アメリカという変形クルーザーがこれから市場でどう評価されるのかホント楽しみ。私はノンポリなので、これ結構好きかもしれない。でも、ガチのハーレー乗りやアドベン乗りからは異端視されるんだろうなぁ・・。

ということで、今回は「パン アメリカを見ただけで語る」という無謀なインプレをお送りいたしました。レボリューションMAX、はたしてどんなエンジンなのか・・いつか乗って見たいですね~。

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(今回はお絵かきソフトの機能をフル動員して仕上げてみました。パン アメリカって結構絵になるんですよね。)