ストリートトリプルRSを購入して、シミジミ思うことがあります。それは電子制御スロットルの功罪についてです。

私はキャブ時代から、スロットルワイヤーでスロットルバルブを開け閉めするバイクばかりに乗ってきたんで、ストリートトリプルRSがはじめて所有した電子制御スロットルのバイクだったんです。なんかこれ別名「ドライブ・バイ・ワイヤー」ともいうらしいですよね。横文字にすると格好いいですよね。でも私は「電スロ」って呼びたいと思います。だって、ワイヤーレスなのにバイ・ワイヤーなんて紛らわしいですし。

DSC_0385+1
(スロットルワイヤーがなく、とてもシンプルなアクセル周り。スロットル抵抗が少ないことも乗り味の清々しさの要因か?このストリートトリプル系は2016年モデルから電制スロットルに移行しています。)

皆さん既にご存じだと思いますが、電子制御スロットルというのはアクセル開度を電気信号に変換し、それに応じてモーターでスロットルバルブを制御しちゃうって機構です。昨今のハイパワーバイクにはほぼこの電スロが採用されてますが、電スロの何が良いかって、まずアクセルが軽いことですね。まぁ昔からバイクに乗ってる私にとって一番のメリットはこれですよ。

電スロは高倉健みたいに木訥なワイヤースロットルと比べると、多彩なモードを選択できたり、ケツが滑るとパワー抑えるトラクションコントロール制御を緻密にやれたり、随分饒舌で芸達者です。近年ではトラコンを装備するハイパワーバイクの多くが電スロに移行してる。ハイテクってのは昔から最もアピールしやすい商品力なんです。

スズキの新型カタナなんかはアクセルワイヤーつけたまま、制御用のスロットルバルブをもうひとつ設けてトラコン制御やってて、なんつーややこしいことを・・なんて思ってましたが、新型ハヤブサではあっさりアクセルワイヤー外してきましたね。まぁ複雑にすればするほど逆に緻密な調整が難しくなりますから、当然だと思いますけど。

そんなわけで昨今の電スロは大馬力バイクの必須機構になりました。そもそも200馬力のバイクなんて、キャブ時代だったら乗るのに相当な覚悟がいったわけですよ。200馬力を保険もなしに、スピード依存のライダーに預けたら、どうなるかなんて火を見るより明らか。

走り屋なんて、格好良くタバコ吹かして黄昏れてたって、一旦バイクに跨がれば「バブー」ってアクセル開けるだけのイクラちゃんなんですから、大馬力になればなるほど保険が必要なんです。アホの乗り手に制御を委ねたまま200馬力を炸裂させてたら路上に花束が増えるだけ。

近年200馬力級のバイクがドンスカ発売されてますが、それは、電子制御という物理的な保険をバイク側に仕込んであるからこそ可能になったことでもあると思う。

これまでバイクメーカーは、

「大排気量車の商品力ってやっぱ馬力じゃね?」


「でもパワー出しすぎて人が死ぬとヤバいですよ?燃費も最悪です。」


「うーん、バイク乗りって、アクセル開けたがるクソバカばかりだしなぁ・・」

っていう深いジレンマの迷路に陥っていたと思うんですよ。そこに突如電スロというテクノロジーが舞い降りた。

「バイク乗り達がおバカさん揃いなら、この際アクセルとスロットルバルブの連結を切ってしまったらどうか?」

「おお!その手がありましたか!いやそれ最高!アホはこちらでしつけるしかないですな!」

ってことですね。

電子制御技術は燃費や環境のためなんていってるけど、それだけじゃない。メーカー側の技術でライダーのアホな脳みそを都合良く補完しちゃえっていう、バイク版ライダー補完計画が統合電子制御の一面であるわけです。

そもそも、フツーに考えて200馬力を絞り出しているバイクが乗りやすいはずがない。ハーフスロットルでも100馬力ですよ?こんなもん補正なしでパワー叩きつけたらあっという間にタコ踊りですが、そうはならない。私みたいなアホな乗り手でも大馬力を公道で扱えるようにツジツマをあわせてくれてるのが、アクセルとスロットルバルブの間に挟まってる電子制御システムなんですね。

基本やってることはライダーの操作に介入してのパワーの間引きに他ならないわけですが、これ、かなり難しいことですよ。だってちょっとの違和感でライダーの興奮は引き潮のように萎えてしまいますからね。バイク乗りは外見はバリケードでも感覚は結構デリケートなんです。

デリケートって言えば、パソコンの処理がメチャメチャ遅かった黎明期に一番デリケートな問題だったのは何かわかりますか?

それはエロゲです。

テキスト打ち程度の作業に、ハイスペックなパソコンなんぞいらないんです。どうせ庶民の頭はそんなスピードで回んないんだから。そんな中でなぜ多くの庶民ユーザーがハイスペックパソコンを求めたのか?それは簡単。「エロゲに応答遅れは致命的」だからです。ちょっとの応答遅れで興奮度はダダ下がりとなり、それまでの数時間の積み上げが無駄になる。そう、エロゲは最もハイスペックが要求される繊細でヘビーなジョブなんです。

黎明期のパソコンの価値は天使達の午後の描画がどれだけ速いか?その一点だったといっても過言ではない。

「オィィィイイイ!!エロ絵の描画が遅すぎんぞ!!待ちで俺のポークビッツが萎えちまう!!これどうしてくれんの??」

という怒りと欲求不満の衝動が、パソコンの進化を強烈に促していったんです。

ことほど左様に、人を気持ちよくさせるフィーリングの作り込みっていうのは、いつの世も機械モノの一番の命題。これができてないバイクはPC9801にも劣る

お怒り2
(めっちゃお怒りのザラブ嬢。エロゲネタがダメとは、ブラジャー型ヘッドライトを装着している割には純情だった。なお、なにげに巨根好みのご様子。)

私は最新技術を拒絶するタイプじゃ無いんで、電スロをワイヤースロットルのフィールにしろと言ってるわけではないんですよ。アクセルまわりに大きなパラダイムシフトがあったんだから、電スロは電スロにしかできないフィールを目指せば良いと思うんです。

しかし、アクセルを操作する人間側にも脳のニューロンっていう電気回路があるわけだから、その電気回路とのマッチングが良くなくちゃ話にならない。人が操る機械である以上、そこは曲げられないし、その馴染みは絶対にいるわけですね。

なんで今こんな話をしてるのかというと、私が新型ゴールドウィングのSPORTSモードに対してどうにも折り合いをつけられないからなんです。後日、きんつば嬢のインプレでも細かいことは書きますが、もうSPORTSモードに入れる度に萎えちゃうんで、このモード私の中では「なかったこと」になってます。まぁ簡単にいうとレスポンス過剰なんです。著しく興を削ぐほどに。そこでわかったことは、電制スロットルはセッティングいかんで、「天使にも悪魔にもなる」ってこと。

新型ゴールドウィングのSPORTSモードは機械側の正義に染まってる。開けると「はいパワードーン」これだけ。今の時代は一つのバイクにライディングモードも3つ4つ入れられちゃうワケなんで、そのうちの一つを機械側にあわせた投げっぱなしのセッティングにすることも可能なわけですよ。

それに対して、ストリートトリプルRS搭載のモードはいずれも機械の都合より人の感覚とのすりあわせを優先してると感じる。さて、一体どちらが良いのか?人によって答えは違うと思います。単に速さを求めるのであれば機械の正義に人が合わせた方がいいのかもしれない。

でも現時点の私の好みは後者です。バイクで興奮し、気持ちよくなるのはライダーであるべきで、「バイクがライダーを振り回すのは違うんじゃないか?」と思ってます。ある時期から自分を基準としてバイクはどうあるべきか?が評価の軸になってる。20年前の「スピードこそ絶対正義」「自分は最強バイクを操作する機能肉」って考えだったら、振り回されるほどの大パワーに単純に大喜びして、結論は真逆だったかもしれませんが、私も、もう50歳ですからねぇ・・。

ストリートトリプルは、NORMALモードもSPORTSモードも人の感覚を超えていかないところを私は評価してるんです。そういう意味ではこのバイクは大人。アクセル開け始めのトルクのツキも車体とのマッチングが考えられてるし、モードにかかわらずアクセルを閉じたときの回転オチと開けたときのレスポンスのバランスをちゃんと取ってある。私は最初の電スロバイクがストリートトリプルだったんで、「電スロって割といいもんだなぁ。・・」と思ってたんですが、だんだんとそんな簡単なもんじゃないってのがわかってきた。

よくバイクで「ドンツキが凄くて乗りにくい」って表現がありますが、自分の感覚以上に前に出ちゃうバイクってたまにあります。要は現代の進化したエンジンでパワー優先の電スロ設定をしちゃうとレスポンスしすぎてしまうんですね。完璧な動作は逆に人の感性に合わない。多少緩みやダルなところがあった方が良いんです。

確かにスポーツエンジンの価値はパワーとレスポンスですが、乗ってる人間の特性を無視して
「見て見て~♡これが、このバイクの真の性能なのよ~!」って素のまま提供すれば、そりゃアクセル開けた瞬間ドンと出て行くドンツキになりますよ。技術者は「うふふ。技術の粋を尽くした鬼レスポンスのエンジンを召し上がれ♡」と鼻高々かもしれませんが、それは乗り手にとって逆にリスクとなりかねないんです。

「乗り手の感覚より速い」ってライダーにとっては一番危険なエンジン特性だと思うんです。88のNSRって歴代で一番「人を殺したバイク」なんですが、88をパワーバンドに入れたときに、二次曲線的に炸裂する高回転の吹け上がりは、明らかに乗り手の感覚より速かった。パワーバンドに入ったときの突き抜け感と興奮はまるで麻薬のようでした。それは2ストエンジンの力の正義そのもので、それを乗り手に強いていった結果、多くの事故を誘発したんです。

その後、NSRは人の感覚を上回りすぎる高回転部分のアタマを切って台形パワーカーブに移行します。このセッティング変更により暴力的な吹け上がりは失われたものの、公道での使い易さと操縦安定性は88を明らかに上まわり、トータルでは速く扱いやすくなったわけです。これも、機械の正義を人の感覚を超えないように調整していった一例なんじゃないかと思いますが、「俺はやっぱり88よ!」って人も今だに根強いし、純粋なファイターにそういうものを求める気持ちもわからんではない。

よく雑誌でトライアンフのストリートトリプルが乗りやすいってインプレされてますが、パワー絞り出しつつ、アナログライクな人間の感性に合うようにそれを調整するって、最適なものをポンと提供するより難しい。見識のあるテストライダーと技術者との丁寧なやりとりに加え、実走の末の試行錯誤が必要だと思うんですよ。いくらパワーがあったってその出方が人の感覚とズレてるバイクはやっぱり乗ってて爽快じゃない。実際「エロ漫画をスマホで自動ページ送りするときのスピード調整」ってメチャ難しいですよね。機械の都合じゃなく、人間の感性にあわせてページ送っていただかないと本来の用途が果たせないんですが、それやろうとすると非常に緻密な制御が必要です。電スロ調整もそれと似たような難しさがある。

今年ハヤブサがフルモデルチェンジしてパワーを落としてきましたが、私は新型は絶対に良くなってると思う。だって、パワー落として気持ちよくなってなかったら袋叩きですよ。スズキがパワーを盛らなかったことに「ある種の覚悟と煮詰めを感じる」が故に、新型の良さに一定の確信が持てるわけです。今の時代はパワーを出すよりパワーを緻密にコーディネートすることが問われてる。

ストリートトリプルは開けると
「うひゃー」って言うくらいには速いですが、乗り手の感覚に対して極めて従順に反応する。昔と違ってフル加速でフロントが浮いて接地感ゼロとか、リアを滑らせタコ踊り・・なんてことはない。そういう点で、「やっぱりストリートファイターのスタンダードを目指してるんだろうなぁ・・」と思う。

スタンダードって誰が乗っても「これは安心だよね」って評価されなきゃならない存在ですから、突飛なことはできないんですよ。多くの支持と期待を裏切らないよう、表向きのスペックより、中身がしっかり作り込まれることが大事なんです。ただ、そういう飛び道具に頼らない下味の作り込みは、バイクの評価が確立しないとなかなかできないんですね。支持があるからこそ、それに答えるべく、スタンダードへの歩みが始まる。商品ってそんなもんなんです。

トラのトリプル系は歴史あるモデルらしく、基本的なところをしっかりと押さえたスタンダードな作り込み(公道バイクとして、リアの動きが固いことを除けばですが・・。)がされてますが、いきなりこんなバイクは作れない。ストリートトリプルは排気量を増していくスピードトリプルから派生したミドルクラスの3気筒ですが、初期のスピードトリプルが搭載していた3気筒は855ccで98馬力、ほぼミドルクラスでした。今のストリートトリプルは1994年から連綿と続く、トラのトリプル系の旅路の現在点でしょう。そういった意味ではストリートトリプルってやっぱりこのカテゴリーのスタンダードといえるんだろうなと思うんですよ。

少なくとも私は今後電動スロットルのバイクに乗るときは、うちのザラブ嬢と比較すると思う。今のところコイツが自分の中での気持ちいい電スロの基準なんです。ゴールドウィングの電スロもエコノやツアーはいい感じですが、スポーツ走行でシゴいていったときのトラの電スロのフィーリングはうなるものがある。ザラブ嬢の電スロはガシガシ攻め込めるし、キレがあるのにズレもないって感じでもうホント素敵だと思う。

このバイク、ヘッドライトのデザインはブラジャー型でぶっ飛んでるんですけど、その中身は全然ぶっ飛んでないんです。シャーシとエンジン特性、スロットル特性などの味付けの方向性がズレなくピッタリ一致して、同じ所に収束してるんですね。イタリア車のようなラテン系のいい加減さやユルさがなく、日本車のような真面目さすら感じる。そういう意味でトライアンフは割と日本人の気質にあうのかもしれません。

これから多くのバイクがストリートトリプルを煽るようなスペックをひっさげて参入してくると思うけど、バイクを煮詰めてきた時間とそれによって培われたバランスと見識は、なかなかひっくり返せないと思うんですよ。

まぁ、絶対性能より体感性能を高く評価するようになったっていうのは、私がそれだけ枯れたジジイになったってことなんでしょうねぇ・・。