前回こちらのブログ→(生まれ出ずる悩み・新型ゴールドウィング・ネーミング問題)でようやく愛称が決まったSC79ゴールドウィングですが、今回からいよいよ、きんつば嬢のインプレを開始したいと思います。購入してからはや2ヶ月。なんでこんなに引っ張ってきたのかというと、まだ自分の中で「新型の正体がハッキリと見えてないから」なんです。「遅いよ!感性鈍いよ!!」というご批判は甘んじて受けます。ごめんなさい。でも、やっぱりまだ確信がないんですよ。いろんなことに。

新型ゴールドウィングの試乗インプレッションは私が過去に書いたものもあるんですが、少し反省してます。だって短期試乗でこのバイクを理解するのはやっぱり難しいと改めて感じたから・・。距離乗ってるとその良さが体に染みてくるバイクなんですが、わかりにくいんですよね。私自身3000㎞越えてるのに、インプレ書くには「もっともっと走っときたいなぁ」と思ってる。

ゴールドウィングのエンジンやミッションって、他のバイクに比べておろしたてのフィールが固くって、新車からかなりの間エンジンが全然本領を発揮しないんです。前のF6Bも中古を購入したんですが、その時の走行距離800㎞じゃ慣らしにもなってなくて、走れば走るほど、エンジンもミッションもどんどん軽くなっていった記憶がある。

マニュアルには「500㎞までは急発進急加速を避けて控えめに」なんて書いてありますが、500㎞くらいじゃ全っ然本調子になりませんから。新型も2000㎞までは、どうにも自分の感覚に合いませんでした。排気音もキンキンしてるし、開けても閉じても、今ひとつしっくりこない。しっくりこないとネガティブなところばかり見える。ゴールドウィングって、細かすぎて伝わらないような繊細なフィールがもの凄く重要なバイクなんですが、私が気持ちいいと感じるところに最初は入ってこなかった。

しばらくは「これ追い金200万も払ってF6Bの方が良かったんじゃないか?」って思えて「おぃぃいい!マジかよ!ヤベぇよ」って状態が続いてました。

しかし、2000㎞越えたあたりから、エンジンが凄く自然になってきて、ミッションフィールも俄然良くなり、ゴールドウィングらしい繊細な味が出てきたんです。その時の嬉しさといったらなかったですよ。「おお!これじゃあ!!これなんだよ!求めていたのはこの感触だよ!!」ってようやく納得のガッツポーズが出たのがここ最近のことなんです。それ以降、乗る度にどんどん良くなるような気がして、寒い中、きんつば嬢にばかりに乗るようになっちゃった。こうなると長距離を走るツアラーだけに距離はどんどん伸びてくる。

バイクが生き生きとしてきてようやく、新型の目指したものや、旧型に対するプラス面がハッキリわかるようになったんで、最近はそれを一つ一つ確認している日々なんです。現在3200㎞ですが、エンジンもミッションもまだまだ良くなりそうで、現時点でインプレをはじめて良いものかどうか、まだちょっと悩んでるんですよね。

現状そんな状態ですが、あんまりインプレを引っ張っていくわけにもいかないんで、今回はまずエンジンについて、技術的なことをツラツラと書いていこうと思います。新型の水平対向6気筒エンジンのフィーリングや実際走らせて見たときの特徴は後日別のブログを立てたいと考えてます。出し惜しみしているようで申し訳ありませんが、正しい評価を固めるまで、もう少し乗らせて下さい。

さて、ここまでが前置き、ここからが今回の本編です。前置き長すぎますね。

DSC_0695(いつもの道の駅に向かう直線道。ご覧下さい。このクソ寒そうなシュチュエーション。外気温5度。さすがにバイクはほとんどいない。しかし、この環境でもお構いなしに走れるところがゴールドウィングの真骨頂なんです。)

実は私、3年前に新型ゴールドウィングが発表されたとき、「このバイク、いつか必ず買わなければならんな」と感じたんですよ。過去のブログにも書いたとおり、その時点ではいろいろと首をかしげたくなるところもあったし、F6Bも絶好調だったので、すぐに買おうってことじゃなくて、F6Bがやれてきた頃、中古あたりを買えればいいなって漠然と思ってたんです。

そう思ったのはなぜかというと、新型が「新開発の水平対向6気筒エンジンを積んできた」からです。水平対向6気筒は完全バランスの最高のツアラー用エンジンですが、私は新型が6気筒を積んでくるとは正直思っていなかったんですよ。「積んできてくれたらいいなぁ」と願ってはいましたが、多分ないだろうなと。なぜなら時代の流れを考えると、「6気筒は選択肢としてあまりにも困難である」と思えたからです。6気筒エンジンは製造コストがかかり、量産ラインも特別で、搭載できる車体もゴールドウィングと派生モデルだけに限られ、重く、大きく、燃費も悪く、排ガス規制に対応させるのも一苦労。車の世界ですら消えつつある古き良き時代の恐竜でした。

このエンジンをユーロ5、ユーロ6に適合させて存続させるには、新設計のエンジンをしつらえなくてはならない。環境対応が厳しくなりダウンサイジングが叫ばれてる時代に「既存エンジンを延命させるのならともかく、大排気量6気筒エンジンの新規開発なんて、そんなのナイナイ。」と私は半ば諦めていたんです。

前期型のSC68のベースとなったSC47が発売された2001年は「まだクラウンが直6積んでたおおらかな時代」です。それから長い年月が過ぎ、その間に車の6気筒エンジンはその多くが消えました。ベンツが一昨年久しぶりに新規開発の直6を出すという英断をしましたが、あれも超高級車用のV8エンジンを止めるにあたってのダウンサイジングエンジンなんですよね。昔は当たり前だった多気筒エンジンですが、今は存在自体が否定されつつある。

だから、新型のゴールドウイングは時代背景に乗って4気筒の低圧ターボあたりを採用し、スーパートルク型のエンジンにするんじゃないかな~?なんて考えていたんです。私の頭の中では6気筒の存続はなく、その代替えにどんなエンジン積んでくるのかが興味の中心だったといってもいいでしょう。

でもホンダは水平対向6気筒を新開発するっていう予想外の選択をしてきました。私の予想が完全に外れて「ぎゃふん」となったわけですが、正直嬉しかった。笑いながら「こんのドアホがぁぁああ!!」と叫びたかった。「なんでまた、このご時世に6気筒を採用してきたんじゃ」って考えたとき、ふと浮かんだのがカワサキの存在です。今、カワサキとホンダは大型市場でバチバチの戦いを繰り広げてます。ホント、ホンダにとってカワサキは目の上のタンコブですよ。

ゴールドウィングって2013年くらいから開発がはじまってたようなんですが、開発がはじまった年のモーターショーって次期カワサキのフラッグシップエンジンとして4気筒ターボが発表された年なんですよ。「ライバルメーカーの二番煎じをホンダがやれるか!!」ってことで、水平対向6気筒でいくことが決まったのだとしたら、私はカワサキに感謝しなくてはならないのかもしれない。

しかも、この新開発された水平対向6気筒エンジンの中身がまた衝撃。ユーロ5対策にユニカム入れて4バルブ化してるし、ピストンスカートにモリブデンコーティングまでして、フリクションにパワー食われる6気筒エンジンの弱点を対策してる。ボアとストロークをスクエアにして、エンジンをコンパクト化したり、軽量化のためにクランクシャフトを値の張る高強度材質に変えて肉薄化したりと全方位で手が入ってます。でもそれ以上に私にはISG(インテグレーティッド・スターター・ジェネレーター)をぶち込んできたのが衝撃でした。ISGっていうのは、いわゆる「モーター付発電機」。スターターとオルタネーターを統合したもので、車の世界では近年それなりに採用されてます。それにしても、これバイクに突っ込んじゃったの?ゴールドウィングのためだけに?技術者のコメント見てもコレ組み込むのスゲぇ苦労したって書いてあるけど、一体どんだけやるんだよと。

いまのところ「軽量化のためですぅ」ってことになってるようですが、これ組み込んだってことは、将来的にハイブリッドやるでしょ、絶対。

ISGのモーターは出力軸と直結してるんで、始動だけじゃなくて、発進時とか加速の時に電圧かければモーターによる駆動アシストができるんです。デカいバッテリー積めば、減速時に発電し、加速時にアシストする簡易型ハイブリッドが可能。この場合はDCTを使ってクラッチ制御と統合しなきゃいけないでしょうから、ゴールドウィングは当然DCTがマストになる。今回必死に軽量化してますけど、将来ハイブリッド用のバッテリー積む予定なら、必然的に積載予定のバッテリー分を軽くしとかなきゃなんないわけですよ。

そう考えると、今回のモデルチェンジの全てが噛み合ってくる気がしませんか?ホンダがユーロ5だけでなく、ユーロ6になってもなお水平対向6気筒を環境適合させようと考えたなら、将来的に変速機を統合した緻密なエンジン制御とハイブリッド化は必須で、今回のモデルチェンジに、その仕込みをビシビシ感じちゃう気がするのは私だけ?いずれにしても、腰が引けるくらいやり過ぎなんですよ

確かに商品力だけでいえば、どんなエンジン採用するより、水平対向6気筒の方が圧倒的に上ですよ。車ですら味わえなくなった贅沢をバイクで堪能できるって凄いことです。まさにオンリーワンですよ。でもなんでオンリーワンになってるかっていうと、他のメーカーがアホらしくてやらないからですよ。

数が売れないし高コストで肝心の利益が出ない。利益至上主義で考えるなら、ホンダの水平対向6気筒なんて一番選択しちゃいけないルートです。それでもホンダは来たるべき排ガス規制を前にして、ゴールドウィングのためだけに水平対向6気筒エンジンを新規開発で用意した。しかも、将来に向けて生き残らせる気満々ですよ。バカですね~ホント。こんなの支持しなきゃどうしようもないでしょ。

イラスト・sc79-2
(このゴールドウィングを技術的側面で見るなら、スゲえよって感じですが、ツアラーやクルーザーとして見た場合は、突っ込みたくなるところは多々あります。技術先行型のプロダクトって、実用が置いてけぼりになりがち。ユーザーの求めるものと技術の折衷を考えないとね。)

新型はゴールドウィングを可能な限り軽く、コンパクトにしようと徹底的にやってます。でもこれ6気筒やめれば凄く簡単に実現できたことなんですよ。4気筒なら軽くコンパクトなクルーザーが労せずしてできたことでしょう。それを6気筒でやるもんだから、ある意味矛盾だらけなんです。これだけ徹底してコンパクト化と軽量化やるんだったら、ハナから6気筒積まなきゃいいじゃない。デカくてゴージャスな6気筒積んどいて車体はコンパクトでっておかしくない?って意見が出るのは当然ですよ。私だって内心そう思ってるもの。

でもね。いいんですよ。許しますよ。このご時世に完全新設計の6気筒積んできただけで、このバイクが存在意義と存在価値は約束されたも同然ですよ。

「いやいや、まだBMWのK1600の6気筒が残ってるじゃん」というご意見もあるでしょう。でもね。予言しておきますが、2021年でK1600の直6はディスコンですよ。間違いなく。昨年BMWがR18ってクルーザー出した時、「これでK1600の6気筒はディスコン決定」って確信しましたもの。

だってBMWのメーカー規模でツアラーやクルーザー用のエンジン何種類もいらないですよ。これまでフラットツインと直列6気筒は排気量に400ccほどの差があって、エンジンの地力が違うし、最大排気量と多気筒の高級感で6気筒の立つ瀬がありましたが、このタイミングで1800ccのフラットツインを出されちゃうと、1600ccの6気筒が商材として生き残る空間がない。企業として「K1600はディスコンじゃあ」っていってるようなもんですよ。

既存の6気筒エンジンをユーロ5の排ガス規制に対応させるのはかなりのコストがかかります。まぁぶっちゃけBMWとしては今の直6エンジンにシフトカム組み込む選択肢しかないはずなんですが、商売上手のBMWが苦労の割に手間がかかって利益が出ない直列6気筒でそこまでやるとは私は考えてない。

そこで主力の水冷フラットツインの性能を底上げし、コスト高の6気筒は諦め、コストバリューの高い大排気量空冷フラットツインをアメリカ市場のクルーザー用に新規開発して、ハーレーの市場に対応させてきたんだと思うんです。アメリカ用のフルカバードツアラーもこのR18のエンジンで作るでしょう。BMWは車でも同じような合理的な選択してますから、バイクでもそこはブレることはないと思う。

だから「俺はBMWの直列6気筒買いたい!」って人は早めにK1600の予約入れた方が良いと思う。あれも良いバイクです。でも再来年から売れなくなるから、来年度モデルは在庫残さないよう、余分には作らないでしょう。

今後ユーロ5に対応するバイク用6気筒はゴールドウィングだけになるってのが、私の予想。まぁ外れないと思う。だからこそ、「6気筒エンジンをこれからも残していく」という非合理な選択をしてくれたホンダの根性を全面的に支持したい。

きんつば嬢のバイクとしてのインプレはユーザー目線で厳しく、妥協なくおこなっていきますが、土台のところで
「現代の技術で作られた最新の6気筒がまだこれからも楽しめる」という事実に正直驚きを感じてます。まともならBMWの選択の方が絶対に理にかなってますよ。

ゴールドウィングって最先端のバイクだっていわれてますけど、土台にあるのは合理性じゃなくて古くさい技術屋のプライドなんです。「引かぬ、媚びぬ、顧みぬ!」っていう世紀末覇者みたいな考え方ですよ。この企画書が通っちゃうんだから、ホンダのバイク部門は大したもんですよ。他メーカーから見たら、道楽のカタマリにしか見えないんじゃないでしょうか?正直オーナーの私ですら、ちょっと呆れてますからね・・。

いきなり最初のインプレで呆れてて、これから先どうなるんだ?って感じですが、今後も新型のインプレはボチボチと上げていきます。


なお、この水平対向6気筒に関する2年前の関連ブログはこちらです。→(新型ゴールドウィングインプレッション その2 水平対向6気筒エンジンについて