皆様、新年明けましておめでとうございます。今年もくだらないブログをコツコツ綴って参りたいと思っておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

さて、このブログ「新春企画!」などとたいそうなことを書いてありますが、新春に上げてるからこんなお題がついてるだけで、中身はいたって普通のブログ。最後にお年玉抽選番号があるとか、読むと一年幸せがあるとか、福袋が贈られてくるとか、そんなことはまったくありません。「じゃあなんで新春なんだよ!」と言われましても、こうでもしないと初春の感じが出ないじゃないですかぁ・・。

挿絵に正月らしく牛装束のダイナ嬢描いてみたんですが、アイコンの帽子をとっちゃうとダイナ嬢に全然見えなくて、俺って相変わらず描き分けできねぇなぁ・・って新春から落ち込んでますとも。

しかも、いきなり読経のような長いブログで「なにコレ感」が凄いですが、正直コロナ新年で暇なんで、下らないものでも暇つぶしになればとアップさせて頂きました。それでは、いささか長いですが、最後までお楽しみ下さい。
ダイナ嬢ご挨拶・下絵
(年賀イラスト下描き。干支が牛、ブログのお題もハーレーということで、ホルスタイン級のバストを持つお色気枠のダイナ嬢で描いていきます。)

長年ハーレーはアメリカン・クルーザー市場の覇権メーカーとして君臨してきたことは誰しもが認める事実です。今はちょっと勢いがなくなってきてますが、一時は国内の大型バイク市場の売上げの半分をかっさらっていたんですから、もうコロニー落とし並の破壊力があったといえましょう。

でもなぜハーレーがここまで人気が出て支持されたのか?他メーカーがこの分野でなぜハーレーに勝てないのか?を真面目に分析した考察ってあまりないような気もしますので、今回はそこの所を私なりに掘り下げてみたいと思います。

これまで私はハーレーブランド論や、マーケティング論を語って参りましたが、これは顧客を囲い込み、商品をハイプライスで売り、あるいは買い換えを促すための付加価値的な仕掛けであって、そもそものバイクの良さとは基本的に関係ない。多くの人から価値を認められ、それが確立しているものについて、さらに高い価値を上乗せし、ブーストをかけるための要素にすぎません。

じゃあ、なんでクルーザーの世界でハーレーが支持されているかというと、「ことクルーザーの用途に限定すれば、最も正しく、最も良くできている」からだと思うんですよ。他メーカーがハーレーに勝てない理由は、単にクルーザー作りの「本質的な部分でハーレーに及んでないから」以外のなにものでもないと考えてます。

なぜそう言い切れるのか?っていうと、私はバイク乗りという人達の「本物を見る目を信じているから」です。バイク乗りはバイクと「命をかけたおつきあい」をしてますから、いい加減なものが支持されることは絶対にないと確信してる。

ハーレーはよくSS乗りから「リタイヤしたオッサンが乗る盆栽バイク」などと揶揄されていますよね。では、そのオッサン達が「バイクを見る目がないのか?」というとそれはオッサンをナメすぎ。散々馬鹿にされてるオジサン達の中にも、年代的には昔の走り屋時代を生き抜き、今なおバイクに取り憑かれてる古参兵達もいるわけです。

私はショップのツーリングに年1回くらいの頻度で参加するんですが、ウルトラを駆ってるリーダー、メチャメチャ運転が上手いですよ。運転に揺るぎない自信を持ってるのが後ろ姿からわかります。超重量のウルトラをまるで原付みたいに扱って、コケる感じはマッタクしない。ド安定なんですよね。お話を聞くと、昔ジムカーナの選手やられてたみたいで、車体取り回しの技術は素晴らしいものがあります。

それくらい乗れてる人が、ハーレーを選択してるっていうのは、やっぱりハーレーに特別な良さがあるからだと思うんですよね。私も「今の3台を、どれか1台にしろ!」って妻に言われたら、悩みに悩んだあげく、ダイナを残すと思う。「もう8年も乗ってるオンボロを残して最新バイクを売るのかよ!」って思われるかもしれませんが、多分そういう選択になる。それくらいダイナに対する信頼は厚い。ハーレーって駄目なところが多いけど、ダメだからこそ、ここ大事だから!ってなところは絶対に譲らなくって、そこに一切ブレがない。ダイナは時代によって変わらないような強い芯を持っている。普遍性があるんですよね。

その芯は何かっていうと、ズバリ「ローレブ域、ロースピード域の楽しさ」です。これはツアラーやクルーザーにとってメチャクチャ重要な性能だと思うんですが、数値には反映されないから、カタログスペック上は金にならない部分です。

しかし、ハーレーは世間からドン亀とか盆栽バイクと呼ばれることを飲み込んででも、この部分に特化することを選択してきました。カタログスペックを捨て、公道で活用する低速度域での体感性能を長年、真剣に作り込んできたわけです。

逆にいうとハーレー以外のメーカーが、クルーザーカテゴリーでゆっくり走ることを重視し、そこにコストかけてやってきたかというと、ハーレーを模倣するだけで、ハーレーほど真剣にクルーザーはどうあるべきか?を考えてこなかったんじゃないかと思う。

ハーレーの空冷Vツインは、クルーザー専用エンジンとして、ひたすら歴史を重ねてきた生え抜きのユニットです。普通のメーカーは、ネイキッドやスーパースポーツなど、別カテゴリーに搭載するエンジンを流用して、味付けを変えてクルーザーを仕立てることが多いわけですが、私はこれはハーレーのVツインに対抗する姿勢としては、いささか安易に過ぎたのではないか?と考えています。

確かに性能的には、高回転型のエンジンでもトルクゾーンを思いっきり低速に寄せれば、低速域が充実したものにはなる。しかし、それはあくまで「低速寄りのエンジン特性をもつ高回転型エンジン」というだけで、低速性能に特化して作られた専用エンジンではないわけです。高性能エンジンの基準って単純にいうと「パワー」「レスポンス」だと考えてますが、それを意識して作られたエンジンに、「パワーとレスポンスを穏やかにして、低速域でのキャラの強さや気持ちよさを出していけ!」って要求してもちょっと無理があると思うんですよ。

綺麗に回るエンジンってバランスとれてて雑味がないから、低回転でバタバタ、ガチャガチャしないし、すぐ低回転を通り越して得意な領域に入ろうとしちゃう。これを無理に低回転に縛り付けようとしてもキャラが不自然になるだけで、ハナから低回転域での芸風に特化したハーレーのようにはなりません。そもそもハーレーの空冷Vツインはありとあらゆる策を弄して2000~3000回転に徹底的にステイさせる作りになってるんです。

同じ話芸で食ってても、NHKで叩き上げられた高学歴のアナウンサーと吉本興業の芸人では金を稼ぐフィールドが違う。良い大学出て純粋培養された秀才だとしても、こと人を楽しませる能力に関しては、中卒で泥をすすって生きぬいてきた吉本芸人に歯が立ちません。

なぜ歯が立たないのか?理由は簡単。流麗で美しくよどみない日本語を操り、正確な情報伝達と情報量による話芸を駆使する正統派アナウンサーに対して、ボケ、間、ツッコミの技術で話芸を構成する芸人は「同じようでまったくの別世界に生きている」からです。
ペン入れ
(ペン入れしました。今風の絵からすると、私の描く線って割と太いんですが、これはスクリーントーンなしでも成立するようにこうなってるんです。スクリーントーンは昔は高かったですから、私みたいな貧乏絵描きは白黒絵で画面をどうやって保たせるかに御執心だったんですね。)

一定規模以上のバイクメーカーの中で、この違いを理解し、大真面目にやったのはおそらくハーレーとドカティだけだと思うんですよ。ドカティが高速度領域の芸道を極めたメーカーだとすれば、ハーレーは低速度領域の芸道を極めたメーカーだと思う。

スピード重視の世界では性能を冷徹に判断するところがあるから、ドカティはちょっと分が悪い。ドカって凄く楽しくて、金ちゃん走りで100メートル10秒フラットを出すようなバイクなんですが、正しいフォームで9秒台の方がガチの世界では支持される。だってその世界では個性の強さなんて二の次で、安定した高性能と耐久性、扱いやすさが支持されるケースの方が圧倒的に多いからです。

まぁ昔のドカはホント女優みたいなバイクで、ちゃんとしたステージ立たせるとシャッキリするけど、それ以外の日常ではてんでダメなんです。
スポットライトの下に立たせたときの魅力はむしゃぶりつきたくなるほどなんですが、家に帰ってメイク落としてずんだれると、途端にだらしないダメ嫁になる。

これがMVアグスタになると浪費癖とSM気質、ムラッ気までついてきます。マゾヒスティックに襲い来るムチのシバキに快感を覚える人じゃないとオーナーにはなれない。

一方、ノンビリ走るクルーザーカテゴリーは対ドカティのように国産バイクが得意な性能勝負に持ち込むことができない。速いも遅いもひっくるめて徹頭徹尾フィーリング勝負。この土俵だとハーレーはクッソ強いんですよ。元から性能より芸道に特化してたわけですから、こと芸の勝負になるとダントツに強い。真面目にバイクを作り込む国産バイクは常に何らかの目標を立ててバイクを評価するんで、採点基準の混沌とした芸の世界では強みが出てこないんです。

そのような状況の中、免許制度の変更で大型が教習所で取得できるようになると、性能より芸風に秀で、乗り手を楽しませることに長けたハーレーが国産バイクを撫で切りにし始めた。そりゃもうしょうがないですよ。国産メーカーにローレブ領域でハーレーの芸に対抗できる手駒がないんだから。これがハーレーが国内クルーザー市場で覇権をとれた理由だと私は分析してます。

ハーレーの空冷Vツインは機械的整合性や効率を重視する技術者にとっては、得体が知れない「妖怪ぬえ」のようなものかもしれないけど、そういう理論的整合性はうっちゃって、より感性的な要素に全振りしたからこそ、乗り手にとって凄く楽しく気持ちのいいエンジンになってる。車体だってそう。エンジンがそんなだから、フルバンクやサーキットタイムなんて切り捨てちゃって、偏差値低いところでいかに楽しませて、充実感を与えるかに特化してます。

ハーレーの空冷エンジンはパワーを出そうとすれば、いろんな問題が出てくるけど、ことローレブ、低速度域に限っていえば、純粋培養の最強古参ファイターなんです。このエンジンを古くさいだとか、ドン亀エンジンだとかいうのは自由だし、それも間違いなく事実ですが、その圧倒的なキャラの濃さと、「公道使用ではこれで十分こと足りる」という厳然たる事実を認めないと「絶対にハーレーの牙城は崩すことはできない」と私は思う。このエンジンの機械的な雑さや性能面の欠点だけ見て、その奧にある真実を軽視したり「あのエンジンは特別だから」などと芸風の重要性を理解する努力を怠っているうちは、他メーカーはハーレーにまず勝てないんです。

多くのメーカーは高回転高出力方面には、真面目に進化させたエンジンを投入するのに、ローレブ、低速用には、そこに真剣に特化した専用エンジンを作ってこなかった。また専用エンジンを作っても、性能に出てこない芸風が大事だってことを真に理解できていなかったんです。

これは短期の試乗で、刹那的な体感性能や高性能パーツばかりをインプレするメディアインプレッションの弊害でもある。この評価基準じゃ、クルーザーカテゴリーを評価することはできないと私は思う。私が知ってる中で「このバイクはクルーザーとしては速すぎるからダメ」と評したインプレッションは数えるほどしかありません。そういう目を持つレビュアーを私は信用してる。

多くのメーカーが数値性能や性能曲線ばかりを整え、大排気量エンジンで日常領域の快感を最大化するためにはどうすればよいのか?という極めて重要な課題を真剣に考えてこなかった結果、ハーレーの独走を許してしまった。

ダイナ嬢ご挨拶・年賀状ブログ
(新春なんで、ちょっと手間をかけて年賀状風に仕立ててみました。バイクにも適材適所があって、おめでたさが一番合うのはやっぱハーレーかなって思うんですよね。)

結局他メーカーがハーレーに一矢報いるには、既存エンジンのデチューンではなく、空冷Vツインに本気で勝負を挑めるような、低速域の芸風に特化したエンジンが必要なんじゃないか?って私は思うんですよ。ホンダは水平対向6気筒という手の込んだ専用特化型エンジンを用意して、多気筒エンジンの滑らかで分厚いトルクと洗練された風味、軽やかな運動性で、その牙城の一角に食い込むことに成功しました。一方ヤマハもアメリカ市場で、スターベンチャー用にロングストロークの空冷Vツインを新規開発してます。

最近ではBMWのR18が、気でも狂ったのか?っていうくらい、シリンダーを怒張させた空冷フラットツインをぶち込んできましたが、これもハーレー対抗のクルーザーを本気で作ろうという意気込みでしょう。いずれにせよ。多くのメーカーが、「クルーザーカテゴリーには個性の強い特化型エンジンが必要」っていう点と「クルーザーは性能より芸風が大事」という点に気づきつつあるんじゃないでしょうか?

まぁ、これからクルーザー市場がどうなるかはわかりませんが、ハーレーってそんな中でも必ず残らなきゃならないメーカーだと思ってます。なんでかって?だって、性能以外の芸道を真に理解してるメーカーがいなくなったらバイク業界はつまんなくなっちゃいますからね。