先頃ひととおりザラブ嬢(ストリートトリプルRS)のインプレを終了いたしました。私の所有するバイクの中ではインプレが非常に長く、残念編を含めてその8までいきましたね。

我ながら「よくあれだけ書くことがあったな・・」と思いますが、あのインプレってかなり以前から書きためてたものを順次アップしてたところがあったんで、自分の中ではもう結構古い印象なんです。

ちなみに現在のザラブ嬢の走行距離は4000㎞。ナラシでは一気に距離伸ばしましたが、その後は意外に伸びてませんね。

「ちゃんと乗ってるのに距離のびないって、一体どこ走ってんの?」ってことになるんですが、基本近場の湖畔道路と峠走ってます。だってワインディングならポジションのキツさが気にならないですから。ストリートファイターの前傾ポジションって、バイクの上で体が動いてると楽なんですが、ずーっとあの状態で固まってると、腰と首が痛くなってオジサン耐えられない。ほんと50過ぎでSSメインで乗ってる人は尊敬しますよ。

もうバイクが特別でも何でもなくなって、「いろんなものに耐えようってガッツがない」んですよね。ばくおんで「バイ苦」って言葉がありましたが、ここから苦を取り去って楽しいことだけしとこうよ、ってコンセプトになってる。ザラブ嬢に私が気持ちよく跨がってられる時間ってせいぜい片道1時間くらいだから、そこで目一杯楽しもうとすると必然近場のワインディングになっちゃう。

せっかくトライアンフ買ったんだから「高速メインのロングも試してみたいなぁ・・昔みたいにビーナスラインのワインディングを颯爽と駆け抜けたりなんかしちゃって~。てへ。」な~んて淡い夢を抱き、バイク購入時にETC注文したんですが、夏を前にしてETCの在庫が全然なくって、納車時にはETCが間に合わなかったんですよね。

で、納車初日に100kmくらい走った後「すいません~ETCキャンセルで~」って速攻連絡しましたからね。なぜかって?このバイクはロング走ると「ソフト拷問器」に変わることがわかったからです。

若い頃はどんなにマゾヒスティックなポジションのバイクでも、乗ってるだけで楽しくて、「自由とスピードが得られるならどんなことでも耐えられる」と思ってました。セパハンのポジションなんかものともせずに、遠くへ遠くへと旅立ってましたが、いやーー。もう肩と腰がダメですね。ジジイの域に入ってきた私にそれを押して旅に出る熱い魂や冒険心は微塵もなかった。

年取っても気力が衰えない人もいるけど、私は完全に「リリーフランキー系」の怪しいオヤジと化してます。多分道の駅にいる私ってこの人と同系列の顔してると思いますよ。ほら。茹で上がったような顔で目が死んでるでしょ?ハーレーでグラサンして、バシッと自己主張してるオジさんと対極です。

リリーフランキー2+2
(セザンヌ風のリリー・フランキー。普通のオジサンだけど、刺激に麻痺しきって心が動かないって役をやると、右に出る人はいない。私は比較にならないくらい不細工ですが、似たような人相になってると思う。)

このバイクで遠方のワインディングに遠征しても、到着する頃には、「損耗50%!腰部バイタル悪化!もう死に体です!!」ってな感じになっちゃうのがわかりきってます。

そういう状況で無理しちゃうから高齢者が事故っちゃう。恥だと思わず自分の限界の中で楽しむって大事。今の私を山本五十六風にいうと「私にやれと言われれば、1時間や1時間半は存分に暴れてご覧にいれましょう。しかし、その先のことはまったく保証できません。」って、

「これ帝国海軍と同じじゃねーかよ!」

練度はあっても、持久力と体力が根こそぎ無いというね。

軍隊でいうと継戦能力がないわけですから、必然短期の総力戦損耗を抑えてダラダラやるなんです。遠方への侵略戦争なんかしちゃ駄目なんですよ。だから私の脳内にいる山本五十六さんは厳しい行軍が確定してる自滅作戦はハナから立案してこない。

風光明媚なとこに出張ったって、これだけ速いバイクで気持ちよく飛ばしちゃうと、結局路面しか見ない。どんなとこ行っても「アスファルト見学」になっちゃうんで、遠出する気力も湧かないんですよね。アスファルトに綺麗な模様描けばSS乗りの聖地になれると思うんだけどなぁ、誰かやってくれないかなぁ・・

結論から申しますと、私にとってザラブ嬢は旅バイクではないから距離が伸びない。理由はそれだけ。でもハッキリ言っときますが、これはストリートトリプルのせいじゃない。私がヘタレなだけ。今までグダグダ書いてることも所詮はジジイの言い訳にすぎないんです。だって20代~30代の頃はアスファルト見学だろうが、ポジション拷問だろうが、意に介さずメチャメチャ遠出してましたからね。

ただ、バイクに十分な刺激があると、ヘタレの近場乗りでも十分楽しめちゃうことも間違いない。体力ないオジサンはすぐカラータイマーがピコピコするんで、短い距離を全力疾走する方が満足度高くなる。ホームグラウンドなら路面状況やカーブの曲率も頭にたたき込まれてますし、疲れてヘロヘロになってもすぐ補給基地(ガレージ)に戻れるから、事故の確率も低い。

前傾姿勢もロングだとジワジワ腰にくるけど「攻めるバイクとしては穏やか」だから、視野も広いし、何より軽量で峠がスッゴク楽。ダイナやゴールドウィングだって峠楽しめるけど、それは重くて小回りきかないバイクを遠心力に逆らって走らせるっていう、ちょっと強引で歪んだ楽しみ方なんですよ。でも、ザラブ嬢のワインディングでの全能感はツアラーとは別次元です。

3000㎞超えたあたりから、フリクションがさらに減り、ミッションの馴染みも進み、ポジションも微調整を繰り返した結果、もうバチッと決まって「操作性のカタマリ」みたいになってんですよね。このバイクの出力特性やシャーシに慣れてきたこともあって、どんどんストレスなく、気持ち良くなってきてるんです。

東方不敗6
(流派、東方不敗は私が神と崇めるマスター・アジアの最強拳法。最終回でぶっ放され、宇宙規模の脅威となったデビルガンダムを一撃で葬った「石破ラブラブ天驚拳」【←クリックで動画に飛びます。】こそ、ロボットアニメ史上最強最高の究極必殺技です。)

このバイクは「あえて刺激を演出する」ようなことしてないんで、個性が薄く感じるかもしれませんが、それは決してマイナスではありません。

扱いやすく速いっていうのは、モデルチェンジを繰り返し、年期の入ってきたバイクの典型的なフィーリングです。「荒っぽいところが残ってた方が好み」という人もいるし、私も「にゃはは!どっかーーーん!」な加速が昔は大好きだったんですが、歳ですかねぇ・・。いつの間にかバランス型が好きになってた。CB400SFとかV-strom650のバランスなんてシビれちゃいますよ。ああいうバイクの良さが、今は昔の10倍染みてくる。でもいざ大排気量を見渡すと綺麗にバランスとれてるバイクって、ありそうでなかなかないんですよね。

そういった面では、ストリートトリプルは相当いい調整がされてる。寝かせてアクセルをパーシャルで維持してるときの感触や、コーナー出口でそこから開けたときのエンジントルクの出方に清酒みたいなスッキリした味わいがある。スピードはしっかり出るけど「ぎゃあぁあああああ!!」って出方はしないんです。攻めたスタイリングですけど、運動性は寝かせたウイスキーみたいな、キレはあるけどまろやかな超熟の味なんですよね。

この感じは「F6Bの3気筒版」っていってもいい気がする。F6Bみたいな守られ感はないし、パワーもキレ感もザラブ嬢の方が全然あるんで、フィーリングはずいぶん違うけど、バイク作りの根っこに共通するところがある。自然で裸で素なんです。変な味付けがない。別の意味でのネイキッドバイクなんですね。熟成の進んだバイクって、乗り手の操作と綺麗にシンクロして生き物に乗ってるみたいな感覚になってくるんですが、F6Bが「千と千尋のハク」だとすると、ザラブ嬢は「もののけ姫のモロの君」って感じ。機械なんだけど、乗ってると機械ってことを忘れるときがある。ちゃんと意志が通じ合った生きた手足って感じがするんですよね。

結局今の私にとって、いいバイクって何か?って問われたら、絶対速度とか、最高出力とか排気量とかじゃなくって、やっぱ人とどう馴染むか?なんです。ハーレーもガチャガチャいってるけど、人との馴染みがすごくいいから好きなんだろうなと思うわけです。

ストリートトリプルは速いけど、人との馴染みを凄く大事に作ってある。昔からバイクは商品力を上げるために「大排気量、大パワー」を目指してきたんですが、機械モノはパワーを絞り出すほど、バランスをとるのが難しくなります。エンジンパワーが大きくなれば、それを受け止めるシャーシは高剛性にしなきゃいけない。そうなると必然重くなっちゃう。公道での耐久性を維持しながら軽量化するってもの凄いノウハウと製造技術がいりますから。

でもね。どんなに最新技術で取り繕っても、全ての領域で素で速いバイクって軽いバイクなんですよ。ポルシェのカイエンがどんなに金ツッコんで頑張ったって、悪路でジムニーには絶対に勝てないんです。これは物理の法則だからもう絶対覆せない。エンジンに見合った剛性を確保すると一定以上の重量になってしまう大排気量のハイパワーバイクは、しっかりバランスとろうとすると、その負荷に耐えられるように上から下までお高いパーツになって価格がトンデモなくなる。軽量化を妥協して刺激的なスピードを目指した方が安く作れて商品力が上がるんですね。

昨今アドベンチャーが好まれてるのは、パワーを過度に絞り出す必要がなく、軽量化を追求する必要もないんで、バランスがいいところに着地できてるからだと思うんですよね。安いパーツで整合するし、地蔵乗りでも速いし、ウィンドプロテクションもあるし、ツアラーほど重くないしでいうことない。バランスのいい車体回りに、万能性を盛り込んで、商品力もあるからそりゃ売れますって。

ストリートトリプルRSは「公道で気持ちよく速い」を実現するためにはどうあるべきか?を逆算し真面目に作った生粋のストリートファイターだと思います。馬力は120馬力だけど、それを中速域に盛りつけてメチャ軽い。バイクはパワー出すより軽くする方が難しいけど、それを徹底してやってる。しかも、プラスティック感は全然ないですからねぇ・・。商品作りがうまいですよ。

この点は「このカテゴリーのパイオニア」のプライドですかね。乗る度に「ナナハンっていい排気量だなー、軽いって素敵だなー」って思うから。公道において600で足りない低速トルクを+150ccで補い、1000ccではやり過ぎなパワーを-250ccでしつける。このサジ加減が絶妙にハマってて「素のままの正しい速さ」をビシビシ感じるんです。拘束具もなければ、ドーピングもない。素の状態で公道環境上限付近にちゃんと良い感じで収まってるんですね。ガバ開けすれば速すぎて「これシゴききれないわー」と感じるんで、満腹感も十分。あーそんなこと言ってるとGSX-S750も欲しくなってくるぅ~。

というわけで、山に向かうときは必然的にこのバイク選んじゃう。峠では久しぶりに若作りな走りで頑張ってます。変なドリンク飲むよりも、よっぽど回春効果がありますよ。

こっちはもう雪が降って路面凍結の季節になってまいりましたので、ザラブ嬢も春まであんまり距離は伸びないと思いますが、コロナ禍の今年も、このバイクのおかげでそれなりに楽しいシーズンを過ごせたかなぁと感じています。