今回でストリートトリプルRSのインプレッションもいよいよ最後。フィナーレはザラブ嬢にまとっている残念感。邪神ニャルラトホホテップの報告になります。

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(このお方こそ本家這い寄る混沌、ニャルラトホテップ。昔は「クトルフの呼び声」っていうテーブルトークRPGにハマったものです。まさか、あの凶悪な邪神様がこんなお姿でラノベ化されるとは、この海のリハクをもってしても・・)

ストリートトリプルはトライアンフがワールドワイドで販売する世界戦略車であり、モデルチェンジ毎に熟成を重ねてきたモデルですから、致命的なとこって特段ないんですが、私が考える「もうちょっとなんとかならんのか?」ってところを今回は「クトルフ神話」風の標題をつけつつ、ご報告したいと思います。

残念部分その1 「デカールに取り憑くもの」

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これ、見えますかね。ストリートトリプルってシルバーの塗装に、ホワイトとディアブロレッドの差し色が入ってるんですよ。塗装の塗り分けはすっごくコストがかかるんで、細かい色分けについてはデカール貼った上にクリアー吹いてくってのは、どのバイクでもやってることで、ザラブ嬢もこの文法に沿ってるんですが、許せないのはこのデカールがクッソ雑なこと。これ、どう見ても「のりしろ」ありすぎでしょ?一目見て「こりゃ後から絶対シール貼り付けたよね」ってわかっちゃうんですよ。

20201023_195121(塗装面の素晴らしく美しいフレーク塗装を形無しにする、このデカールの醜き「のりしろ」が私の憎悪の対象です。)
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(こちら国産バイクのモンキー。この赤部分の浮き上がりはデカールを貼った上にクリアーを吹いてるわけですが、色の境界線の美しいこと。当然のりしろなど1ミリもありません。ここだけならモンキーの方が絶対プレミアムですよ。トライアンフさん。100万円のバイクが原付に完全に負けてますよ!)

一般のスケールモデラーがデカールの「のりしろ部分」消すためにどんだけ苦労してるのか教えてあげたいですよ。模型でのりしろ消すにはマークソフターっていうデカール軟化剤を使うんです。これ使うとデカールがビターーッと塗装面に薄く貼り付いて、のりしろがほぼ消えるんですが、デカールが脆くなるんで凄くリスキーな諸刃の剣。でも、これを丁寧にやることにより、透明なのりしろ部分がまったく目立たなくなり、まるで塗装したかのような質感が得られるのです。わかりますか?より良い仕上げを目指すには、「シール貼って手抜きしたのが丸わかり」になる「のりしろ部分」は消さなきゃならぬのですよ。

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(デカールをまるで塗装のように見せるためにモデラーは日々努力してるんで、140万円もぼったくるメーカーの手抜きに寛容になれるはずもない。)  

しかし、このバイクはどーですか?笑っちゃうくらいの「のりしろ」炸裂なんですけど?各パーツの造形はヒジョーに凝ってるのに、塗装工程のこの雑さはなんなの??せめてこれだけ高いバイクにはのりしろのないシールを使おうよ。

塗装ではどのメーカーも塗り分け工程で手抜きするんですが、その手抜きがヘタっぴなんですよ。手抜きが不器用って一番ダメなパターンですよ。ゴマカシこそ賢く器用にやらなきゃ、せっかくの美しいフレーク塗装が台無しです。

「はて?同じような感覚どっかで・・」と思い返してみると、これって海外製のプラモデル作ってるときに味わう感覚と似てる。海外製は、完成したときのたたずまいやプロポーションは凄くいいんだけど、作ってる過程で「なんでこんなことになってるのかーーー!!」って叫びたくなるような雑なとこが沢山あって、その修正に凄い手間を割くわけです。これ体験すると日本の模型に対する見方変わりますよ。ちょっとした痒いところに手が届くのは日本製品の特徴なんですが、これができてる海外製品ってとても少ないんです。

残念部分その2 「減る冷却水の怪」

これは外車らしいっていえばらしいんですが、減りますねぇ・・。海外勢の方々の感覚は「足せるものは減っても良い」んです。しかし、日本製は「減る必要のないものは減らさぬのが顧客への良心」という、思いやり騎士道精神爆発の職人気質でレベルアップしてきたんで、冷却水ですら全然減らない。それに慣れてる日本人は、減って当たり前のものが減るだけで不安になるんです。

ストリートトリプルでいえば、納車時ほぼ満タンに入っていた冷却水が納車3ヶ月、2500㎞の時点でリザーバータンクのMin表示のアンダーラインを割り込んでましたし、それに気がついてMAXまで入れたのに、現在すでにゲージ半分くらいまで減ってる

先ほど申し上げましたように、国産車の冷却水ってほとんど減らないので、(ゴールドウィングなどはカバー外さないと冷却水のリザーバータンク見えないので、日々確認することなど想定されておりません。)そもそも「冷却水の点検をする習慣がない」って人もいるかもしれませんが、この常識は海外製バイクには通用しません。国産と違って、冷却水のシーリングに気を遣ってないからかもしれませんが、時間の経過と共に、しっかり減ってくんですよね。「え?これどっか漏れてんじゃないの?」って仰る方もおられると思うんですが、確認しても漏れてない。細かいことを気にしてたら海外製には乗れないっていいますが、そんな感じ。

擁護しておくなら、冷却水が入っている限り真夏に高回転ガンガン使っても水温は安定してます。3気筒は熱的にかなり苦しいので心配してたんですが、十分冷えてるようで問題なさそう。フルカウルのレーサー仕様でさらに高回転使っても冷えるように作ってあるんだから当然なのかもしれませんが、公道バイクにはある程度の設計の余裕って絶対必要ですよね。

昔のアプリリアやドカティみたいに「レーサーをそのまま公道に持ってきちゃいましたぁ!」みたいな仕様のバイクになると、すぐエンジンチンチンになって、冷却水沸騰してリザーバータンクから豪快に噴くとか、暇さえあればホースからお漏らししてる(おそらくゴムの材質の問題なんで持病です。)とか、沸騰したあげく成分が石鹸みたいに固形化しちゃったりするんですが、ザラブ嬢はそんなことはなさそうですね。

残念部分その3 「金属縄の油地獄」

お次はチェーンメンテ。これはどんなバイクでも同じ条件ですので、ストリートトリプルの残念か?というと非常に語弊があるんですが、私の心の中での面倒くささの上位になるので、あえて書くことにしました。

ストリートトリプルRSのマニュアル見るとチェーンへの注油は「300㎞ごと」って書いてある。「はぁぁぁああ?頻度高くない??面倒くさいんだけどっ!!」って正直ぶータレてしまったんですが、300㎞って書いとけば、オマエラ最低でも500㎞走れば注油するだろ?ってことなのかもしれない。要はチェーンメンテはしっかりやれよ!ってことですよね。これはバイクにとって必須作業なんですが、最近私はサボり気味だったんですよ。だってダイナはメンテフリーのベルトドライブだし、ゴールドウィングもメンテフリーのシャフトドライブなんですもの。

小排気量のモンキーとグロムだけがチェーン。でもこいつらあまり乗らないから、そんなしょっちゅうやる感じでもなかったんですよ。でもザラブ嬢はそうはいかない。マニュアル通りのペースだと「2回給油するごとに油差す」ことになる。そりゃ常時デロデロに注油してれば安心なんでしょうが、ガレージ持っててじっくりやれる私ですら結構面倒なのに、ガレージのない駐輪場でバイク維持してる人って、チェーンメンテはかなりの負担なんじゃないでしょうか?

「チッ、、どんな安チェーン使ってんのか!クソがっ!!」って確認したら、地元石川県の誇る国際企業、大同工業(D.I.D)のチェーンではないですか!これではクソチェーンなどと口が裂けても言えぬ!!

「ああ、トライアンフ様、地元企業のチェーンを採用して頂き、ありがとうございます。また、大同工業様、日頃より地元の雇用維持に尽力して頂き、重ねてお礼申し上げます。御社らに感謝しつつ、毎週注油させて頂きますぅ!」

てなかんじで、毎週のようにシコシコとチェーン清掃してルブ(当然D.I.D製のルブですよ。)を吹いてるんですが、この作業は、丁寧にやるとそれなりに面倒。でも注油することによってチェーンのフリクションがなくなり凄~く軽快になる。逆に油差さずに1000㎞も放置するとチェーン回りがギスギスして抵抗が増してくるのがしっかりわかるんですよね。

とにかく大排気量バイクになるほど、潤滑は重要です。潤滑なしでハイパワーを受け止めろってのは、機械にとって非常に過酷な仕打ちです。チェーンが渋くなってくると、ここでかなりパワーロスしますし、油もなしに金属同士が接触すればあっという間に摩耗して、乗ってる時の質感も低下してくる。たまに「シールチェーンはメンテフリーだから油差さなくていいんですぅ。」みたいこと言いつつ、チェーンメンテサボろうとする人がいますが、ダメですから。問題となるのはチェーンの可動部分よりスプロケットとの接触面なんですよ。チェーンに油をささないとこの部分がゴリゴリ痛んじゃう。

よくエッチな拷問で、股間をチェーン(のようなもの)でゴシゴシやるってのがありますが、あれが錆びてるのか油でヌルヌルしてるのかの違いで考えてもらうとよくわかる。もう明らかに「拷問レベルと快感度が違う」でしょ?とにかく潤滑のない金属接触はバイクへの拷問レベルを高めるだけでいいことない。バイクと乗り手が気持ちよくなるためには、油はあらゆるところにキッチリ差さなきゃならないんですね。

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(海外製のバイクや車の低レベルな言い訳の代表例がこれ。あのね。まずは「申し訳ありません。うちの商品は日本の製造品質には到底かないません。ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解下さい。」という一言があるべき。なんで文化を盾にして上から目線なんだと。日本で売るんなら日本製バイクと比べられるのは当たり前でしょ?日本のユーザーにユーロ基準やアメリカ基準は全然関係ないですから。)

残念部分 その3 「消える廃屋・オブ・ザ・デッド」
                     
お次は前回のブログでも書いた燃費。お世辞にも良くないです。現在のメーター上の平均燃費は17.4㎞/L。しかもハイオク。実燃費もうちょっと悪いと思う。ザラブ嬢はメーカーの公称燃費が21㎞/Lなんで、そもそも好燃費なバイクじゃないけど、公称燃費が出ることなんて普通はないですから。

私自身、回し気味で走ってるところもあるんで、そこまで燃費にこだわってるわけじゃないんですが、田舎暮らしの夜走りで、信号停止もほぼなくて、これだけ車体が軽いわけですから、「リッター20㎞くらい走ってもいいんじゃないの?」とは思います。これだとキャブ時代の230㎏クラスの国産ナナハン4気筒車の燃費と変わんないですから。「ストリートトリプルは40年前のバイクから燃費は進化してないじゃん!!」っていわれると返す言葉がなくなっちゃう。「ストリート」トリプルと銘打つ以上、パワーと乗り味と燃費の両立をしっかりやっていくのも、今の時代の大事な技術力なんじゃないか?と思ってます。そういうところに目を配るほど、バイク作りは難しくなっていくんですが、それがメーカーのレベルを上げることになるんです。ニッチなメーカーから脱皮して胸を張って商品を売っていくには、こういうこともやっぱ大事だと思うんですよね。

残念部分 その4 「いあ、いあ、はすたぁああ」

最後の残念。それは「ザラブ嬢は公道使用にはちょっと速すぎる」ってことです。400cc並の軽い車体に123馬力。加えてレース直系のエンジンですから、そりゃ公道でロートルのおっさんが乗るには速すぎるのは当たり前でしたね。

このストリートトリプルはストリートの名はついてますが、SPORTSモードでアクセル開けて高回転域に突入すると、公道仕様の範疇を軽く超えてしまいます。エンジンパワーがどうこうより、回転の切れ上がり方がレーサーライクなんで、自制しないとあっという間に彼岸に到達して「超高齢天気の子」になっちゃいそう。

いろんな方がインプレしてるように、低中回転も十分フレキシブルなバイクですけど、「この元気いっぱいでホットなエンジンを回さないなんてことができるの?」っていうと少々難しいように思います。そして、アクセル開けたとき毎度のように実感させられることは、このバイクのフルパワーは「絶対に私には御しきれない」ってことです。

「おっさん!何言ってんだ!当たり前だろ?」と思われるかもしれませんが、昔の私はこれを認めず、とにかく挑んでいくというおバカさんだったんです。

今の私の「御しきれない」ってのは「制御できないことがわかる」っていうだけじゃなくって、それを認めた上でちゃんと諦めが入ってます。歳を食うと全てが衰えてくるんでリソースどんどん少なくなる。そんな中で何を諦めますか?ってことになると必然スピードなんですよね。

ザラブ嬢のとんでもない速さってのはとても刺激的で楽しい。でも一方で自分の衰えもはっきり自覚することになるわけです。ハーレーやF6Bだと、「こんな重さじゃこの程度の走りでもしょうがないよね~。」って言い訳ききますけど、超軽量で運動能力抜群のストリートトリプルでは、そんな言い訳はできません。そこにあるのはバイクの限界ではなく、純粋に今の私自身の限界なんですね。

私がリッターSS乗っても、高速特化ならともかく、もはやストリートトリプルより速く走ることはできないと思います。アクセル開けられない領域が増えるだけでしょう。そういう点では、この最後の残念はザラブ嬢ではなく私の残念、あるいは高齢化が進むバイク業界全体がこれから対処していかなきゃならない残念問題といえるのかもしれない。

でも、「この世には決して消せないし、消しちゃならない残念もある。」と私は考えてます。人の望むものが商品になる以上、いかに残念で矛盾していようとも、それは人間の業として受け入れるべきものじゃないかと思うわけです。

まとめ「不気味なラストシーン」

・・ということで、ここまでストリートトリプルのトホホで残念な部分を報告してきましたが、どんないい商品にだってトホホは必ずあるんです。完成度の高い商品ほど小さなトホホが目立ったりして、このトホホ菌を撲滅することはなかなかできない。

ただトホホがあんまり沢山重なると、商品の全体的な印象そのものを左右する事態になったりするから始末が悪い。特にこのトホホは日常的なメンテナンスやトラブル発生のときにたくさん出てくる傾向にあって、それが酷くなると整備してる側には印象最悪なんです。

「なんでこの部品がこんな所についてるの?」

「調整ネジついてるけど、このネジどうやって回すのかしら?」

「定期交換部品とりかえるのにどんだけパーツ外させるんですかっ!」

「対策部品入れても直んないんだけどこれはどういうこと??」

「エンジンのオーバーホール2万㎞ごとってお財布死んじゃうぅぅうう!!」

と、整備の度に笑えない不満が積み上がっていくんですよ。だから自分で整備する人と整備しない人でバイクの印象は180度変わったりする

「カッコはいいんだけどね・・」とか、「性能は良いし、乗ると気持ちいいんだけどさぁ・・・」とか、「カワサキか・・・」とかの「・・・・」部分がそれなんですよ。

人にはあえて言わないけど、その行間には「這い寄る残念感・ニャルラトホホテップ」が潜み、このバイク業界で影ながら名状しがたき悪印象を振りまき続けているわけなのです。