私のグダグダなストリートトリプルRSのインプレションももう7回目。今回はザラブ嬢のライディングモードについてのお話です。

ストリートトリプルRSの愛称の「ザラブ嬢」って、車体カラーのシルバー×レッドが、ニセウルトラマンに化けたザラブ星人を彷彿とさせることからついた名前なんですが、同じウルトラ怪獣で私が大好きなのがウルトラマン第28話「人間標本5.6」に出てきた「三面怪人ダダ君」です。この人、ノーマル顔オカマ顔出歯亀顔に顔をチェンジするんですよね。


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(とにかくキモカワ。しかも激弱。ムラマツキャップにすらボコられるという、あまりに愛らしい存在。)

ザラブ嬢もこのダダ271号が乗り移ったがごとく、RAINLOADSPORTSTRACKRIDERの5つのライディングモードを備えておられます。

このうちRIDER「乗り手が好みで設定してね♡」ってモードですし、TRACKSPORTSはエンジンのマッピングが基本同じで、トラコンとABSの介入タイミングの違いだけ。ちょっと前まではSPORTSTRACKで出力制御が別れてたみたいなんですが、2019年のモデルチェンジで統合されたようなんですね。

つまり、2019年からのストリートトリプルRSにはエンジンの出力特性としてRAINLOADSPORTSの3モード、ABS制御LOADTRACKの2モード、トラコンに関してはRAINLOADSPORTSTRACKの4つのモードがあり、その組み合わせになってることになります。

ちなみにTRACKRIDERはサーキット専用モードのようで、走行中にLOADSPORTSRAINの各モードからTRACKRIDERに変更することはできませんし、逆もしかり。停止してニュートラルに入れれば切り替え可能なんですが、仕様としては完全に分けられているんですよね。

今回はこのうち一般公道での主要モードであるLOADSPORTSRAINの各乗り味をインプレしたいと思います。

①LOADモード

これがザラブ嬢で一番スタンダードなモードなんですが、私は最近はこのモードを多用しています。出力全解放のSPORTSモードと比べ、アクセルの開け始めが過敏ではなく、パワーも十分出てくるし、エンジンの燃焼感もクリーンに燃えてる感じがして気持ちいい。排気音も「クィーーーンン」と割と控えめで、仕事が終わってから夜走りすることの多い私は重宝してるモードです。

何が一番良いかって言うとSPORTSに比べて乗ってて楽なこと。SPORTSって下は良いんですけど、私の夜走りコースは道幅狭いんで、6000回転以上だと狂乱度が高まりすぎて「ヒョェェェェェエーーー」ってなりますから正直危ない。

もっと広々したコースなら「アチョーーーォオオオオオオ」って笑顔で回せるんでしょうけど、狭い二車線の公道で使おうとするとせいぜい中回転域まで。上までもう少し回したいよねって思うと「やっぱ、LOADで楽しむか・・」ってなりますね。LOADもガバッと開ければマジ速いんですけどブッ飛ばない程度にパワーを間引きしてあるんで上の方まで割と使いやすいんですよ。

SPORTSだと峠のコーナー出口で普通にアクセル開けても、ツキが良くって軽い車体がズバッと起きすぎちゃうことがある。LOADだとパワーを少し抑えてあるんで、車体制御がやりやすい。初めはSPORTSが楽しかったけど、SPORTSで走り込むほどに、パワーの出方がしなやかで、アクセル開けられて、かついろんな局面に対応できるLOADの使い勝手の良さがわかってくる感じです。

このLOADで気になるのは4000回転の中程にトルクの谷があることですね。SPORTSだとその谷を感じないんで、「燃料をある程度絞ってるからなのかなぁ??」と思うんですけど、パーシャルから開けたときに、そこだけ息継ぎする感じになります。まぁその回転域を避ければ良いだけなんですが、全体的にフラットトルクでよく調整されてるんでちょっとばかし気になるんですよね。いずれにせよ、トータル的には汎用性が高く、使いやすいベースモードだと思います。

ちなみにブレーキのABSは、安全マージンを相当とってるようで、結構早めに介入してきます。

握りゴケ経験だけは豊富な私の感覚では「スパコル様はこの程度じゃまだロックしねーだろ?」ってところから、既にグニグニと来る感じ(ABSはリアはトトトトトって効きますが、フロントはグニグニグニって効きます。)。

トラコンの介入については実は良くわかんない。たまにランプがピピピと光って「お知らせお知らせ~」なんていってきますが、違和感全然ないですから。自然すぎて介入してるかしてないかわかんないんですけど、先日ハーフウェット走ったらリアがズルズル滑りまくって、トラコン仕事しまくったんでちゃんと作動してるようですね。

②SPORTSモード

このモードは完全なパワータイプ。私は浪費モードって呼んでる。このモードに入れた瞬間、20年ほどタイムスリップしてキャブ車になる感じです。

バイクのSPORTSモードって電制スロットルでアクセル開度を開き気味に調整することによってパワー感を演出してるんだと思ってたんですが、ザラブ嬢のSPORTSモードは、アクセル開度がハイスロ気味になるっていうよりも、燃料メチャ吹いてる感凄い。3気筒って真ん中のシリンダーの冷却がどう考えてもしんどいんで、ハイパワーモードでは冷却のためにもガスを多めに吹いてるのかもしれない。

爆発の元をたっぷりぶち込んでるだけあって、低回転から高回転まで爆発力はキッチリ上乗せ。LOADモードの4000回転半ばにあったトルクの谷も消え、レスポンスもピックアップも力強い。排気音も滾ってきて、「ガォーーォオオオオオン!!オーーン!オーーーン!!」ってオオカミのように元気に吠えだしちゃう。

端的に言えば脳筋です。ややこしい思考は停止して、とりあえず空気の量だけガソリン入れちゃおうっていう開き直りがある。「あーーっ!もーーっ!!やってられませんよ!とりあえずビールですっ!」的な脳天気さなんですね。

「燃費とかー、環境配慮とかー、とにかくめんどくさいんで、とりあえず殴りまーす!暴力は全てを解決するんでーす!!」っていうゴリラ理論に染まった感じ。

ストリートトリプルRSに乗ってて思うんですが、イギリス人って割とわかりやすく突き抜けてるのかも。極限まで悪ノリするっていうか、案外頭が悪い純粋オバカ系路線が大好きで、小細工できない民族なのかもしれません。

イギリスの生んだ世界的ヒーロー、ジェームズ・ボンドも冷静に考えるとトンデモない奴ですから。体のところどころに小型武器を隠し、死地に赴く前に美女と寝まくって繁殖し、街中でトムとジェリーみたいな大立ち回り。凄まじいカーチェイスと大破壊の末に悪人を成敗して、「殺しのライセンス持ってるから無罪だよーん!イエェェエェエエエエイ!!」っていうですね。何やらかしても基本無罪だからマスクで顔隠してコソコソする必要もない。やりたい放題です。これで一応職業は国家公務員なんだからとんでもないですよ。

浮気バレたら愛人撃ち殺して証拠隠滅しても無罪、「いや、この女某国のスパイだったんで~♡」って言っちゃえばいいんです。名探偵エルキュール・ポアロが出てきて謎解きしたって、「はいこれっ」って殺人許可証出されたらどうにもならない。ポアロの灰色の脳細胞が本当に灰になりますよ。ホント映画以外の日常ではハメチャメチャやってる姿しか想像できないんですよね。

えーっと、話が随分それましたが、何の話でしたっけ?ああ、SPORTSモードですね。

私的にはこのモードは、悪くはないんだけど、普段使いにははばかられる。だってこれ、パワーモリモリでヒジョーに熱いんだけど、燃費悪すぎなんですもん。

調子こいてアクセル開けてると下手するとリッター14㎞くらいになる。ウソでしょ?バカなの?ナナハン3気筒でリッター14って(笑)。排気量が2.5倍で6気筒あるF6Bですらレギュラーでリッター17㎞走るんだが?1600ccのハーレーもハイオクですけどリッター20㎞近く走りますけど?ザラブちゃんナナハンなのにリッター14なの??あなたウワバミなの?ダメでしょハイオクなんてお高いドリンクそんなに飲んじゃ・・・。私の財布の中で「英世と諭吉の神隠し」が行われてる状態になっちゃうでしょ?


がぶ飲み

(小さな体でハイオクをビールのようにラッパ飲み。ランニングコスパ最悪のこの脳筋バイクには「キラー=ハイオク」の二つ名を与えたい。)


まぁそんな冗談みたいなSPORTSモードですが、ほとんどの方がこれに入れて走ってるんでしょうね。なんせ今ハイオク安いですからね~。このモードで走るなら今しかない。とにかくバイクが生き生きしてますし、マフラーから発せられる咆哮が快音で素晴らしいんで、勇者王になりたければ、SPORTSモード。金はかかるけど、男のロマンにバイク乗りは勝てないですよ。


③RAINモード

実はストリートトリプルRSでは、このモードが一番過激かもしれません。何が過激かって、パワーの間引き加減がとっても過激。慣らしが終わってちょっとロングツーリングに出かけた帰りに試してみたんですよ。

直線は特段違和感なかったんです。むしろ印象は良かったですよ。パワーは400ccレベルになるんだけど、全然加速しないわけでもないし、とてもエンジンがまろやかになって、トルクの角もとれて「はわぁ・・なんて優しいの♡・・まるで絹のような肌触りじゃん。ねぇねぇ、これとってもよくなぁい?」なんて初めは思いましたよ。

で、「これは案外使えるのかも~」って、ルンルンしながら、そのまま急なコーナーに入り、道なりにグイーーってバンクさせて、「さぁこっからアクセルあててバイク起こそうかにゃー♪」ってアクセルを開けにかかったんです。

「さぁ立ち上がれ!ザラブ嬢よ!!」(アクセルをグイッとひねる)

「あれ???」

「あれれ??」

「はれぇぇーーー!全然バイクが起き上がらないんですけどぉぉーーー!」


「オイィイイイイイイ!出力絞りすぎだろーーー!!」

深めのバンクからのここ一番の立ち上がりでガス欠になったみたいにパワー全然出てこないんですよ!!失速こそしないんだけど、アクセルでバイク起こそうとしても全然ムリなんですよ!どうなってんの??ウェット路面じゃなくてカラカラのドライ路面で、完全にタイヤはグリップしてるのになんでパワー絞っちゃうの?!!

つまりですねぇ。このモードは滑ったときに作動するトラコンの介入を早めにしてるってより、滑る前からエンジン出力を思いっきり抑えちゃってるんですよ。ドライだろうがウェットだろうが関係ない。とにかくあらゆるシュチュエーションで安全マージンをバベルの塔ように積み上げた絶対安心院さんモードなんです。

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(私のブログにごくタマに出てくる安心院さん。懐かしの「めだかボックス」における私の推しキャラです。シニカルで心に刺さる名言が多かったんですよ。)


「このモードを選択してボクを呼び出した以上、どんなドヘタでもコケることは絶対に許さないぜ!!」とばかり、ライダーのイケない心を素早く察知し、出力制御という弛緩剤をブスブスと注射してくるわけですよ。「滑ってからの介入などは生ぬるい。滑る前に無力化する」というコンセプトですね。「滑るだけで怖くってパニクる」って人もいると思いますから、そもそも滑らせない!ってことになると、こういう制御になるんでしょう。

このモードに入れた瞬間、ザラブ嬢は「狼の皮を被った羊」に大変身する。いつもの元気良さはどこへやら、アクセル開けてもメェーーーーって草食うだけ(笑)。

このモード、ハッキリ言ってライダーをまったく信頼してないです「君のような不穏分子からは自由を奪うのが一番さ・・ふふ・・それがこの社会の絶対安全なんだぜ?」と安心院さんに真理を説かれてしまう造詣の深いモードだといえるでしょう。

このモードはトラコンやABSの動作を語るまでもない。とにかく、今回のライディングモードでその容赦なさに一番衝撃を受けた凄いモードでありました。




・・ということで、今回はストリートトリプルRSのライディングモードのインプレッションをお送りいたしました。いつも長くてすいません。最後は残念編を残すのみ。原稿はできてるので、また、折を見てあげていきます。