10月11日 、1ヶ月ほど前ですが、F6Bとの別れがやって参りました。新型のSC79の下取りです。へっちまんの素人模型&モーターサイクルのブログ開設当初から、私の冬のメインバイクとして活躍してくれたF6Bとは、ここでお別れということになりました。

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(ディーラーで新車の群れに紛れても違和感のないくらいピカピカにしてあるF6B。自分で言うのも何ですが、とてもとても大事に乗ってました。フルオプション状態ですが、次は誰がオーナーになってくれるのだろうか?)


私のブログでもF6Bを主題として書くのはこれが最後になると思うんで、ここで、これまでを振り返ってF6Bの評価の総まとめをしておきたいと思います。

最初に結論を申し上げますと、F6Bは私がこのバイクに求めていたものを完璧に満たしてる「非の打ち所のないバイクだった」ってことです。

購入から売却まで、「良くできてるな~」と思うことはあれど、不満はほぼなかったといっていい。唯一不満だったのはアクセルの重さ。

後付けの純正グリップヒーターの配線が抵抗になってるのも理由の一つだ思うんですけど、重いんですよね。何十年もバイク乗ってるんで、握力と手首と首の筋肉はそれなりにあると思うんですが、それでも一日乗ってると夕方には右手がしんどくなってくる。

その他、防風効果高すぎて夏超暑いとか、ラジオの受信感度が悪すぎるとか、サイドパニアが途中で開かなくなったとか、アラ探しすれば細かなことはいろいろあるけど、全体的には「さすがホンダのフラッグシップだにゃ~」と所有期間通じて感じてましたね。

多くの方はこのバイクの重さとバックギアが搭載されていないことを問題にされたりするんだと思いますが、これは選択にあたって当初からわかりきってたことですんで、私にとっては特段マイナスにならなかった。「こんな重いバイクがこんな乗りやすいのかよ!」って驚きつつも、重量感からくる高級感やどっしりした手応えを十分に堪能することができました。

もうね、ヘビー級チャンプのオカダカズチカを用心棒にして走ってるみたいな無敵感があるんですよ。小さいバイクが峠で空中殺法してても、「おおジュニアが頑張ってるな。あいつらは素早い技が身上だからな~。うふふっ」って感じで余裕のまなざしを向けながら優しい目で見てられる。「こっちはヘビー級だから関係ないもんね」的な余裕があります。

じゃあヘビー級だから鈍重なのか?っていうと、ビックリするほど走りますから。コイツはヘビーでも華麗な技を繰り出す内藤哲也並みの運動能力がある。しかも、その動きはあくまで洗練されていて華麗。挙動も穏やかで、バガースタイルでヒールになろうとしてみたけど、性格の良さが滲み出ちゃってる感じですね。

ブチ切れれば相当に速いですし、巨体でぬりかべのように一車線完全に塞いじゃうんで、峠で抜かれることなんてまずありません(笑)。6気筒から怒濤のように湧き上がる芳醇なトルクの美しさと巨体を感じさせない優雅かつ自然な車体制御で、乗り手をうっとりさせながら、くるりくるりとワインディングをいなしていくのが真骨頂。

バイク界唯一の水平対向6気筒の素性も素晴らしく、寝かし込みが大得意。キレはないけど非常に軽快で、385㎏ってのが信じられないくらいペタペタ寝てくれます。とはいえ、軽いバイクと違って力だけじゃ曲がりませんから、駆動力を使ってバイクを曲げるってのが乗ってりゃ自然に身につくというオマケつき。コツはとにかくビビらないこと。自信を持って乗れば全然難しいバイクじゃないですし、F6Bを自由自在に操れるようになる頃には、大型バイクの基本が身について、運転メチャクチャ上手くなってると思うんですよ。

ことほど左様に、このバイクのトータルバランスは素晴らしい。白バイに採用されてもおかしくないほど。エンジンのトルクデリバリーもシャーシの挙動も全てがナチュラルだし、シャフトドライブでメンテフリーだけど、ホッピングしちゃうとかのクセもない。まぁとにかくいろんな所に気を配っててトゲがないよう優しく調教されてるという、完熟果実の旨みに満ちてますね。

設計は20年前ですから、乗り味やデザイン、インパネ類は正直古いです。でも昨今の新型バイクでこの完成度に達してるバイクってどれだけあんのかと。この車重をこれだけ違和感なく走らせるってのは、もはや芸の域に達してると思う。

その証拠に私はF6Bを購入してから、売却するまで走行中の転倒はおろか、立ちゴケすら一度たりともなかったんです。F6Bってバックギアがないから、道の駅や車庫入れはバイクを降りて押さなきゃなんない。にもかかわらず倒してないんですよ。

それはすなわち385㎏というトンデモ車重を人間一人で十分に取り回せるバランスがこのバイクには備わってたってことです。そのバランスの理由は徹底した低重心設計。ハーレーなんてちょっと傾くともう一気にこっちに寄りかかってきて、「大魔神怒る」みたいな表情になって耐えなくてはなりませんが、F6Bはちょっとくらい傾いても、こっちにいきなり寄りかかってくることはないですからね。ふらりときたときに一気に来るか、ゆっくり来るかは、取り回しの緊張感に大きく影響するし、街乗りの安心感にもかなりの影響を及ぼすと思うんですよ。

F6B別れ

「いや、そうはいっても新型のSC79の方が軽いじゃん!」っていってSC68をダメ認定する人もいるけど、「それは違うんじゃないの?」って感じてます。私に言わせりゃ新型の体感軽量化ぶりが異常なだけですよ。特殊なバイク持ち出して、重いバイクが「軽く感じないからダメ」って文句言うのは単なるワガママ。バイクの重量受け入れられないんだったら、このクラスのバイクを選択するべきじゃないんです。

重さなんてバイクの諸元表見たら書いてあるんで、知らなかったってのは通らない。乗ってみて思ったよりも軽く感じるっていうのは、車体設計の巧みさからくるボーナスみたいなもんで車重自体が減ってるわけじゃないですから。機械って物理だから無理難題を押しつけたってしょうがない。多くの人はバイクに夢を見るけど、夢とは最も遠い論理の世界に存在してるのが機械なんです。

新型が目指したものは「ギリギリの引き算を積み上げて実現した軽量化と、よりバイクらしいディメンションへの進化」であり、それを貫いた結果ああなってるんだと思うんです。

逆に言うと積載、防風といろんなモノを徹底して足し算した旧型が新型より軽いワケがない物理の神様とバーターするのがバイクってもんですから。

結局メカモノっていうのは、切った盛ったであって、盛って盛ってなんてのはムリなんです。そんなことやってると大戦末期のケーニヒスティーガーみたいにあっという間に70tになっちゃって、「凄い攻撃力と重装甲だけど、重くて燃料食うんで動かせませんな~。もうこの際トーチカにしちゃいましょ。キャタピラなんて飾りです!!」っていうアホなことになる。

基本設計が20年前のF6Bは開発時点でゴールドウィングというバイクに求められていたものを可能な限り盛り付けて、ゴージャスさと大量積載と操縦安定性の両立を目指して生まれたバイクってことなんだと思います。乗ってみても、その方向でやりきったって感がある。SC79がフロントダブルウィッシュボーンに移行したのも、この車重のバイクではテレスコでやれることはやり尽くしたってことでしょう。

それにしてもですよ。これほど贅沢な設計で、ゴールドウィングのみの特殊専用エンジン積んでですね。車重と巨体を意識させず、乗り手の操作を裏切ることなく、優雅に優しく、安全かつ忠実に走るバイクってちょっとないですよ。

もし新型のMTが今年で生産終了になってなかったら、次の車検までは確実にF6B乗ってましたよ。今でも乗り換える必要なかったんじゃない?っていわれれば、たしかに乗り換えなくてもよかったかなぁ?とも思える。それくらい不満のないバイクだっだんです。

オヤジ臭くて嫌いだっていう人はいると思いますけど、元中古バイク店買い取り担当としてハッキリ言います。工業製品としてこんなお買い得なバイクはない

公道を走るバイクとしての商品力と質感、信頼性、その他諸々で語るんなら、このバイクを上回るバイクってそうそうないですよ。耐久性も高いから中古になってもピンシャンしてるし。

マイナス点は巨大な車体が車庫を占領することと、それなりに高額になる維持費だけ。でも超有能メイドに休日ご奉仕してもらおうと考えるんなら安い出費じゃないかなぁ?

中古価格もこなれてきてるし、ほとんどの個体が車庫保管で大事に乗られてきてるものばかりだと思うんですよね。エンジン車体とも30万㎞走れるようにできてるんで、27000㎞走った私のF6Bですらまだまだナラシ程度ですよ。

もう「わけのわからん旧車を高値づかみして泣くくらいなら黙ってこのバイク買っとけ」って感じ。ちまたにはいろんなエンジンあるけど、専用設計の世界で唯一のバイク用フラットシックスなんてどー考えても贅沢すぎる。

化石になって部品もロクにないZ1300やCBX1000の6気筒に250万円とか払って乗るんなら、絶対こっち。エンジンにかかってるコストだけでもお買い得だし、耐久性と完成度は比類ないわけですから、プッシュしない方がどうかしてます。

このようにSC68は買って損のないバイクですが、取り回しや腰に自信のない方はバックギア付きを買って下さいね。なんせ、止まっちゃうと押し引きは相当重いんで(笑)。

今回、諸般の事情で手放すことになりましたが、振り返ってみても「ほんと良いバイクだった」って思いしかない。もう手放してるんだから、依怙贔屓なんてする必要ないですから。ハーレーみたいにダメだけど良いってんじゃないんで、重さにさえ気後れしなければ、絶対お勧めできるバイクです。

ということで、私のSC68の総まとめを終わります。サヨナラの代わりに、これまで共に過ごした全ての時間に心からの感謝を・・・。

解放
(F6Bとの別れにしんみりとしたものは似合わない。だって、一度もコカさずに別れを迎えたんです。昔は廃車別れを繰り返してましたが、私も成長したものです。)