本年度8月1日をもってゴールドウィングSC79のMT車の生産受付がひっそりと終了しました。ゴールドウィングは2021年モデルからはDCTのみの販売となるようです。

先日オープンしたホンダドリーム金沢の店長さんに聞いてみたところ、現状で「箱なしMT」のゴールドウィングはほとんど存在していない伝説ポケモン状態みたい。もはやイリオモテヤマネコのような絶滅危惧種になっているとのことです。

企業だって伊達や酔狂でバイク売ってるわけじゃないんですから、全体の2%しか売れてないMTモデルに生産ラインを残すいわれもまったくないわけで、絶滅危惧種から絶滅種になったのもやむを得ないのかもしれません。

しかし、ホンダ側の都合はともかく、私にとってはこれは非常に深刻な事態なんです。

「新型の熟成をじっくり待つ俺って、実に賢い消費者じゃね?」

なんて余裕ぶっこいてましたが、

「オイィィイイイイイイ!待ってる間にマニュアル消えちまうじゃねーか!!」

って脳天唐竹割りを受けたような衝撃に震えてる。こんなの予想外。だって、昨年新型DCT試乗したときに、買いかえるなら「6MT一択だな・・」なんて思ってましたからねぇ・・ビックマイナーチェンジまで、マニュアルは残ってくれると思ってたんですけど。読みが甘かった。

いろんな雑誌やネット記事を見ていても、「新型ゴールドウィングはDCTが素晴らしい」なんていう記事が溢れてる。そりゃまぁそうでしょ。だってゴールドウィングは2名乗車用ツアラーなんだから、旅路が楽な方が良いし、2人でゆったり乗りたいですよね。

クラッチ操作から解放され、青空を眺め、気持ちよくパッセンジャーと会話しながら郊外を流す。マニュアルをガチャガチャやってちゃ風流じゃない。私も昔フュージョンという極楽マシンをサブ機にしてたりしましたから、あの安楽さとゴールドウィングのゴージャスさが合わされば、2人の旅はもう股間に金棒でありましょう。

DCTはシフトショックがないんで、どう見てもタンデム最強。「奥さん又は愛人と2人で旅に出たい」という幸せと背徳感でいっぱいのライダーが選ぶバイクですから、DCTが順当といえます。

一方の私は黄昏背景の一人旅。「タンデムしてくれる相方が見えているのは私だけ。周囲の人には決して見えることはない」という「幻想エアタンデム」です。

いいですよー、脳内二ケツは。なんせ、好きな子よりどりみどりで、一人乗りと変わらない機動性があるんです。しかも、後ろで私のライディングを常に絶賛してくれますからね。

みんな超美人なのに、とっても質素で「後部座席のゴージャス装備なんかいらないよ♡」「ランチも吉牛でいいよ♡」っていってくれるわけですよ。これもう最高じゃね?

この幻想女子を実体化させるにしても、せいぜいアニメキャラの抱き枕を買ってタンデムシートにくくりつけるくらいが関の山なんで、リアの背もたれはいらない。

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(戯れに貼ってみたアオシマ発1/24スケール、痛車用抱き枕内装セット。ブラ・パンツ丸出しのデカールとは・・この私ですら腰が引けるレベルの病気っぷり。)

ゴールドウィングを選んでいる理由も、冬の過酷なソロライドで実感する「母性本能の権化のような圧倒的防風力」「羊水の中にいるかのような水平対向6気筒エンジンの心地よいフィーリング」の2点特化です。

つまり「水子の霊が母を求めて」ってやつですよ。よく赤ちゃんがえりっていいますが、私の場合はストレスで精神が精子にまで巻き戻されちゃってるわけなんです。

ハーレーの空冷Vツインにしろ、トライアンフの3気筒にしろ、私は特殊なエンジンが好きみたいで、特にハーレーの古くさいVツインと、バイク離れしたフラット6は現行エンジンでは私の大のお気に入り。いろんなエンジンはあるけれども、「どれもこの2つのエンジンの振れ幅の中間に入ってくる」っていうイメージがあるんで、無限の物欲がかなり抑えられてるとこがあります。

そんな私が選択するのは、やっぱマニュアルミッションなんです。世間の評価がどうあろうが、乗るのは私なんで、私の好みが最優先。私は決してDCTがダメって言ってるんじゃないですよ。DCTを選ばない理由はいろいろあるけれど、最終的には個人的嗜好の問題です。

そもそも、今回のゴールドウィングはマニュアルには電動リバースギアがついて重くなってる関係で、DCTの方が車重が軽いんですよ。しかも電動リバースより、DCTをフル活用した微速前進後退機能の使い勝手が良いらしい。これで6MT売れる方がどうかしてる。

「DCTより軽いのがマニュアルの良さなのに、持ち味死んでるよね」とか、「マニュアルなんて煩わしいし、疲れるし、燃費も悪いし、取り回しでも使い勝手悪いし、いいとこゼロじゃん?」って言われちゃっても「うはーーっ、まったくそのとおりDEATH!!」って白旗上げるしかない(笑)。

でもねぇ・・私としちゃその「MTの便利じゃないところ」がいいんですよね・・・。非常に説明しづらいんですが・・。

別の趣味のことを持ち出して恐縮ですが、私の所有する腕時計って全部機械式の手巻時計なんですよ。つまり「マニュアルワインディング」です。機械式時計のスタンダードともいわれてる自動巻時計がありません。普通の人にしてみれば、「今どき時計をシコシコ手巻きしてるなんてバカジャナイの?」って感じでしょうが、私は手巻き時計じゃないと満足できない。

小さいリューズを通してチリチリと伝わってくる歯車とゼンマイの感触を一日の終わりに楽しめないと「なんのために時計してるのかわからないじゃない!」ってくらい、その感触が私にとっては大事なんです。手振ってるだけで巻き上がってく自動巻きのローターごときに楽しみを奪われてたまるか!って本気で思ってる。

でも自動巻きって技術的には腕時計の一大進化なんですよね。毎日つけてる分には腕の動きで常にゼンマイが巻き上がってるからゼンマイトルクも一定で精度も高い。だからビジネスマンが腕につける機械式時計はオメガもロレックスもセイコーもほとんどが自動巻。彼らに言わせれば手巻きなんて「旧石器時代の遺物」でしょう。

これって私が感じるMTとDCTの関係によく似てます。基準軸は「良い悪い」じゃない。趣味で大事なのは何が乗り手の嗜好や感性にあうのか?ってことなんです。そして今やバイクは「性能ではなく、嗜好で選ぶ時代」ですよ。

国産高性能バイクからダメバイクのハーレーに乗り換えてつくづく思うんですが、良い部分よりダメだったり不便な部分が楽しかったり、心が癒やされたりするんですね。

たまにやってるソロキャンプだって不便でチープさの極みです。めんどくさがりの私は拾った木で焚き火して、コンビニおにぎり食って酒飲んで寝るだけなんですけど、これがまた楽しいんですよ。便利なのがいいんだったら、ホテルに泊まりゃいいんですが、それがなんとなくつまんなくなってソロキャンしてるんで、やっぱり快適なだけじゃそこにナニカが足りないんでしょうね。

結局私にとってバイクっていうのは機械式時計やソロキャンと同じで、実用から離れた特殊な趣味なんです。整備も含めマメマメといろんなことを自分でやってるのがいい。ホンダがわざわざクラッチ自動化したDCTを搭載し、多くの識者たちが絶賛してるのに、あえてそれを完全無視して「マニュアル様万歳!!」って一人訳のわかんない旗振ってる理由は、「私が特殊嗜好のマイノリティだから」の一言で片付けられることなんです。

結局のところ個人の選択に正解なんてありません。人が行う選択には全てに理由があって、それがその人の個性なんだから。DCTもマニュアルも互いに利点と欠点があって、それのどの部分がその人に刺さるのか?っていうただそれだけのことでしょう。

で、話は戻ってゴールドウィングなんですが、最初に述べたとおり、今年の8月1日をもってマニュアルトランスミッションの生産受付を終了しちゃってます。私の予定ではF6Bの次の車検くらいで新型の中古を考えようかな・・って思ってたんですが、

「箱なしMTなんて、多分中古市場に出てきませんよ~」

とドリームの店長に指摘され、ああそりゃそうだよな・・って激しく納得してしまったんですよ。だって、6MTは全体の2%程度しか売れてなくって、箱なしも全体の約10%程度しか売れてない。つまり、2019年モデル以降の箱なしMTの割合は、全体の僅か0.2%ってことになる(笑)。この確率ですと年間目標500台のうち箱なしMTは僅か1台~2台ってことになっちまうんですよ。これじゃ中古が出てくる訳ない

現行でMT買った奴なんて私と同じ特殊性癖に決まってるし、20㎏軽くなってバックギアもついてるからF6Bみたいに筋肉ゴリラしか取り回せないっていう大きすぎるハンデもないんで、箱なしMT車なんて超希少車は、新型に限っては将来的に巡り会うことはまずないと考えられるわけです。

もうこの際、「ずっとF6B乗っていくのもいいのかな」って思ったりしたんですが、「バイクには完璧と永遠はない」っていうのが私の持論ですから、7年オチのF6Bも「そろそろいろんなものを交換だしなぁ・・これから金かかるなぁ・・」って遠い目になって考えめぐらせてるときに、トンデモない金額の下取り額を提示されて脳波が凄まじく乱れちゃった。

え?なに?凄い金額なんだけど??やだ・・下取りこんなになっちゃうの?いやもうこれコロナのご時世だからだよね?今だけ特価だよね?おい、これどうする??どうするよ。って考えているうちに意識が薄れていったんです。

で、白目になって、ふと気がついたら目の前に箱なしのMT車が1台運ばれてきていました。私はバイク買うときはよく意識が薄れるんですが、今回も購入時認知症の症状が発現してしまったようなんです。

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(漆黒の車体は我が愚妻が黒焦げに調理した焼き魚を思い起こさせる。)
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(令和時代に向かいDCTで羽ばたこうとするSC79を、昭和・平成に縛り付けるクラッチレバー。ミラーレスのレクサスに、あえていにしえのフェンダーミラーを後付けしていくかのような度し難さ。)

そして今、私のガレージに収まってるマットブラックの禍々しい個体、これこそSC79ゴールドウィング Standard Model 6MT Versionの国内最終生産品。

まさにドンケツの1台

sc79・痛車8
(想像をはるかに超えた痛いキャラ付けで降臨してきたSC79。まぁバイクがこんな痛いカラーリングじゃ、キャラ設定を中二病にされてもしょうがないところでしょう。)

これこそ「MTなくなるの!助けてカヲル君!」っていう私の叫びに応え、ホンダ技研熊本工場から舞い降りた「最後のシ車」です。

私はGoToキャンペーンには一切参加していないんで、経済貢献はバイク買うくらいしかない。オープンしたてのホンダドリーム金沢もいきなりコロナで大変でしょうし、地域のバイク経済圏を支えるためにも、今年のような非常事態の年には、大盤振る舞いも悪くないのかなとも考えたわけです。

でもなぁ・・これ嫁にバレたら惨殺確実・・どうする?どうなの?どうすりゃいい??ってことで、バイクは家から離れたガレージに隠蔽してあります。

ザラブ嬢のインプレすらまだ終了しておりませんが、焦げた焼魚のようなSC79のインプレもボチボチやっていきたいと思います。