最近はめっきり涼しくなりってまいりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。ここ数年夏の暑さが特に厳しいので、30度を切って20度の半ばになると、真夏日なんだけど、「ああもう秋だなぁ」って感じがします。

うだるような暑さが和らぎ、刺すような日差しも秋特有の優しいものになってきて、風も爽やか。バイク乗っててもどんどん快適になっていくのがありがたい。

猛暑で空気が薄くなり、ヘロヘロにパワーダウンしていたハーレーの空冷エンジンも、気温が下がり、空気が濃くなると、手のひらを返したように腰が入ったトルクと爆発力を出してくる。

我々にとっては食欲の秋ですが、バイクにとっても「旨い空気の秋」なんですよね。夏場は首に濡らしたタオル巻いて、ハーレーばっかり乗ってた私ですが、「今日は気持ちいいなぁ・・最高の天気だねぇ・・」なんて思う日も、やっぱハーレーを選んじゃいますよね。晴れやかで楽しい気分に似合うのは、余計なことを考えてなくてすむ底抜けのお気楽バイクなんです。

私はダイナ購入後数年してF6Bを追加購入し、今年の6月にストリートトリプルも購入してます。でも、11年付き合ってるダイナは未だに私のメインバイクの地位を譲り渡しておりません。「ええっ??新しいバイクの方がいいんじゃないの?」って不思議に感じる方もいらっしゃると思うんですが、確かに性能的には圧倒されてんですよね。でも、これは性能より大事なバイクの用途性の問題なんです。

わかりやすく言うと、うちのバイク達の関係性は、「ゲッターロボ」に近い。

バランス良く使えて汎用性が高いダイナ

軽い車体と切れ上がりのいいエンジンでワインディングでの機動性に優れるザラブ嬢

巨大カウルと無振動エンジンで冬場の過酷な環境と長距離移動が大得意なF6B

つまりこれはゲッタードラゴンゲッターライガーゲッターポセイドンの関係といえるわけですよ。


(OVA真ゲッターロボのオープニング。アニメ界屈指の名曲を聞きながら、永井豪ワールドでゲッター線を存分に浴びて下さい。)

この手のロボットものって昔から3体構成が多いですよね。ゲッターロボもそうだし、ガンダムだってガンダム、ガンキャノン、ガンタンクの3体構成です。そうなってるのは、やっぱ基本型をベースとして、カバーしきれない部分を用途特化型で補っていくってのが一番効率がいいからだと思うんです。

一年戦争でジオン軍が負けた理由は、「効率が悪く、コスト高」だったからです。ザクとかドムとかゲルググとか、「高コストなモビルスーツのバリエーションを沢山作って戦線を維持しよう」としてたし、技術屋のメンツに凝り固まったビグザムやジオングみたいな超高性能路線を突き進んでました。確かにカッコいいですよ。でもこんなのメチャ金かかって国庫はあっという間に空になるんで、そりゃ負けるに決まってます。

金なくて足が作れないのに「足など飾りです!」って全身絵が描けないイラスト描きみたいなことを言ってちゃダメ。

三位一体
(手前からザラブ、ダイナ、F6B。3台揃ってどこぞのアイドル的な決めポーズ。バストショットって楽なんですよね~。「下半身など飾りです!!」って私も叫びたいっす。)

資源がない側は一騎当千を目指しがちなんですが、それは余計に金かかってドツボにはまる負けパターン。ドイツ陸軍や日本海軍も同じ轍を踏んでますよね。

一方の連邦軍の基本的な構成は、

「体なんて飾りです!状態の低コスト移動砲台のボール」

「ガンダムから主人公要素をゴッソリ削った超モブ機体のジム」

「視聴者の誰も興味がない遠距離支援のサラミス巡洋戦艦」

この3つの役割分担の線引きが明確だった。視聴者人気は皆無ですが、戦果は一年戦争の結果を見れば明らか。名を捨て実をとったことが連邦の勝利のカギだったんです。

私も当初はジオン軍技術陣のように、最高のバイクを作るべく一台に金ぶっ込んでいったんですが、バイクってのはあちらを立てればこちらが立たず、伝説巨人イデオンみたいな無敵のバイクってのはできないんですよ。それ突き詰めてくと、最後はケツの毛までなくなってイデオン発動編のラストみたいに笑いながら裸で走り回ることになります。

大メーカーが膨大な開発費を投入しても万能バイクなんて作れてないのに、我々が個人でコストつっこんだって、そんな夢みたいなバイクを作れるわけがありません。乗り手側にできるのは、バイクを自分の体型や嗜好に合うように微調整することであって、選んだバイクの本質を変えることなんてどだい無理な話なんです。

だからバイク選びはまず「本質的な用途として何を求めるの?」ってところがとっても大事になってくる。

三位一体2
(ペン入れ完了。こういう揃い踏みのやつ一辺描いてみたかったんですよね。

バイクはある一定方向を突き詰めれば、必ず別のナニカが犠牲になる。巡行時の「のどかな気持ちよさ」を求めてる人が、バイクの速さやパワーを比べる必要はそもそもない。馬力出して速くしようとすると足回りも固めなきゃいけないし、エンジンもスロットルレスポンスも尖らせていくから、巡行には向かなくなっていく。

流す分にはエンジンレスポンスもサスもシャーシもダルい方が楽で気持ちいいんで、サーキット性能最低のハーレーが巡航最高ってことになる。パワーも公道じゃ50馬力くらいしか使わないんだから、余裕みて80馬力もあれば十分すぎるし、絶対馬力より、エンジンフィールやトルクデリバリーの感性領域をチューニングする方が難しい。バイクも料理も栄養価のような数値性能より捉えどころのない味とか旨みの方が大変だと感じる今日この頃です。

だから、バイクを購入するときは、バイクの装備やインプレ見たりする前に、「自分が何を求めてるのか?」ってのを明確にしなきゃならないんです。なぜならその部分は、後で変えようがないですからね。

私がダイナに10年以上乗ってるのは、ダイナの汎用性が自分のやりたいことのかなり広い部分をカバーしてるからに他ならない。いやその点は凄いバイクですよ。

バイク買い替えるときって、「自分のバイクじゃこういうことができないし、これも足りないなぁ。」なんていうフラストレーションや、今までと別方向へのモチベーションが原因になったりするんですが、ハーレーのスポスタ系やダイナ系って用途が非常に広い。

乗り手がカスタムしたりアタッチメントを取り付けることで、いろんなシュチュエーションにソコソコ対応するようにできてるんですね。

現状はダイナで用途の6割くらいをカバーしてくれてるんで、不満を消すには残りの4割を補えば良いってことになります。でも、この4割を1台で無理やりにカバーしようとすると、カスタムの過程で元の6割部分がおかしくなってくる。
 
これまでダイナをいろいろといじくってきましたが、得るものより失うものの方が多かった感じで、いろいろお高いパーツが入ってるにもかかわらず、「味付けは北米ノーマルのライトカスタム」というよくわかんないことになっちゃってる。

ハーレーに性能求めないんなら、ノーマルの得体のしれない闇鍋のようなダメ味はなかなかに味わい深いんですよね。

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(中秋の名月をハーレーで。ここ数年で最高の月。こういうシュチュエーションではやっぱりダイナで乗り出したくなる。日本の原風景を感じさせる光景には原始的なバイクがよく似合うんです。)

素の状態で楽しんでるハーレー乗りの方々がフツーに理解してるような結論が出るまでに、スゲぇ時間と金をぶっ込んじゃってる。その金で、さっさとスーパースポーツでも買っときゃ話は早かったわけですが、「人は長い旅をしてからでないと、庭先にいる幸せの青い鳥に気づけない」

結局、11年の刻を経て、F6BとストリートトリプルRSを購入しての役割分担ってことに落ち着いてます。一見高額な選択に見えますけど、CVOのウルトラ1台につぎ込む金で、この構成が組めちゃうし、私がバイクに乗るときのシュチュエーションのほとんどをカバーできちゃうから、不満もほぼない。金ツッコむっていっても5~6年毎に1台ずつ増やしている感じですから、多くのバイク乗りと購入ペースもそんな変わりません。

大事なのは何事においても、妥協点のラインをどこにどのように引くか?ってことじゃないでしょうか?。この世に完璧と永遠がない以上、一定の満足を得るには線引きの判断はとても重要になると思うんですよ。(私はバイクの改造には一線を引けてるわけですが、自分の欲望については、防衛ライン総崩れなんで「お前が言うな!」って感じですけど・・。)

私が常々感じてるダイナの凄さは、

「必要なパワーは出すけど、必要以上のパワーは出さない」

「普通に曲がれる程度のバンク角は許容するけど、それ以上はバンクさせない」

「法定速度をリードするくらいのスピード出せるけど、超高速は拷問仕様」

という性能上限に対する線引きの見事さです。上限がビシッと引かれてるからその下の領域をガッツリ作り込めるし、汎用性も盛り込める。

国産メーカーだと各排気量でラインナップがあるから、どうしても一定のヒエラルキーができちゃう。250より400の方が、400より600が、600より1000が・・ってパワーを盛り付けていかざるを得なくなる。じゃないと商品価値と価格設定の整合性がとれなくなるからです。このため、国産大型バイクは排気量が上がるほど、パワー過剰気味になる。で、このパワーに対応するためにシャーシの方向性がある程度制限されちゃうわけです。

ハーレーは長年ビックツインと、スポスタ系エンジンの2種類しかなく、ハーレーブランドが強力でそれだけで売れたから「バカみたいに排気量があっても馬力はそこそこ」っていう、「馬力をとりまく大人の事情に無縁なエンジン」を搭載することができてます。

ミルウォーキーになって販売面の要請から露骨にパワーヒエラルキー作ってるけど、一番遅くて無理してないエンジンが一番ハーレーらしいと私は思う。まぁイジればパワーはいくらでも出せるわけですが、基本的には排気量は中低回転でのトルクに全振りし、巡航時の快適性を高めてくってのがハーレーの本来の在り方でしょう。

気持ちよい秋風に吹かれながら、古くさいフィールの空冷Vツインを堪能してると、「この気持ちいい巡航能力こそ、ハーレーのアイデンティティであり、死守すべきものなんだろうな・・」としみじみ感じる。それ以外のことは他のバイクでもできるけど、この平和な気持ちよさはハーレーだけのお家芸。これを維持している限り、ハーレーはバイク業界において独自のポジションであり続けられると思うんですよね。



~ここからはブログと関係ない余談です~

先日大型免許取って「大型バイク何にしようか悩んでるんで、ハーレー乗ってみたい!」って昔の仕事仲間が電話してきたんで、「え?試乗??ンフフフ、いいでしょう!さぁ我がダイナの虜になり、ひれ伏すがよい!!フッハハハハハーーーー!!」て自信満々で試乗させたら、

「これデカいだけの耕運機だな!これはダメだ!ヨシ次!!」

なんて言われて、思わず「ブブーーーーッ」って吹き出しちゃいましたよ。

ハーレーって評価が真っ二つに割れるバイクではあるんですが、あまりの容赦なさにもう笑いのツボにブッ刺さりです。

「ダイナよ。オマエ大型初心者に盛大にディスられてんぞ(笑)」

・・でもねぇ、これがハーレーの真実ですよ。

ハーレーという狭い村社会の中で、ショベルだ、エボだ、M8だって言ってますけど、興味ない人に取ってみれば、まるっとまとめて耕運機クボタとヤンマーとイセキがディスりあってるようなもんですね。この世に素敵なバイクは星の数ほどあるのに、ハーレー同士で言い争うなんて、あまりにも世界狭すぎですよ。

ダイナ涙目
(アホでガラ悪いけど、案外メンタルが弱く傷つきやすかったダイナさん。初心者のエグい評価に涙目です。)

ひとしきり腹を抱えて笑った後、目を上げて見渡すと、あたりは一面実った稲穂で黄金に色づいてた。そんな季節には耕運機で流すのがやっぱ一番似合ってる。
「デカいだけの耕運機」と揶揄された私のダイナが秋にぴったりなのは、もはや必然といえるんじゃないでしょうか(笑)。

(ちなみに試乗した友人はハーレーにあっさり見切りをつけ、アドベンチャーを買ったようです。めでたし、めでたし。)