先日BMWディーラーさんでR1250Rを試乗しました。

ネット見てたら金沢の正規ディーラーにR1250RTの試乗車があるって表示されてたんで、早速電話して聞いてみたら、「売れちゃって試乗できません~」とのご回答。

a8b88515(試乗の本命だったR1250RT。こいつだったら現行のテレレバーの乗り味もインプレできたのに・・)

しょうがないので、「同じエンジンで何か試乗車ないですか?」と聞いたところ「R1250Rがあります~」ってことだったので乗ってみることにいたしました。
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(いかにも走りそうなスタイリング。横から見るとストファイの割に結構フロントフォーク寝てますね。)

実は私25年前くらいにR1100RSに乗ったことがあるんですが、まだ自分自身が第三京浜イケイケ状態だったこともあって、「なんだこのエンジン・・下はトルクねーし、上は回んねーし・・フヌケすぎるだろ!」って感想だったんですよね。当時は高回転で胸のすくようなパワーが出てこないエンジンは自分の中でダメエンジンだったんです。

しかし、今は自分の評価軸があの頃とは全然違う。体力の衰えと共に、性能だけではなく、エンジンの味を受け入れるだけの嗜好性が自分の中でも芽生えてる。

正直今の私は過去の浪費がアダになって、「バイク買いたいけど、一体何を買ったらいいのでありましょう・・」という感じになっちゃってる。いわゆる「消費うつ」みたいな状態なんです。いろんなバイクを検討し、どれもそれなりに素晴らしそうなんだけど、いざとなると買おうっていうモチベが湧かないんです。

結局ダイナとF6Bでいいんじゃね?ってところに戻っちゃう。こんな感じでこのブログはじめてからバイク全然買ってないんです。このていたらくじゃ、これから先もバイクが買えないんじゃないか?と思わなくもない。

「BMWならきっと、そんな私の停滞を打破してくれる」と満を持して試乗したのがフラットツイン。で、乗ってみての第一声、

「・・これ、すんげぇ乗りやすくね?」

いや操作系や回転上昇、シャーシの挙動、全てが軽いんですよ。パワーは十分だし、トルクは気持ちよく出てくるし、回転上昇はトトト、トロロロローーとまろやかで伸びるし、車体はヒラヒラ寝ちゃうし、ブレンボはじんわりながらも強烈に効くし、オートシフターでクラッチ切らなくてもスコスコチェンジできるし、走るためのあらゆるおもてなしが行き届いてる。

F6Bと別の意味で非常に介護度が高いんですよ。F6Bは快適装備の介護度が高いんですが、R1250Rはシャーシ、エンジン含めてライディングの介護度が高い。排気量の余裕を生かし、パワーを出しつつも、どこまでも優しく柔らかく、肌触り良く。これはスチールトラスフレームと水平対向2気筒の味なのか・・。

いやもう400ccより乗りやすくないか?マジで。こっこれが連邦のモビルスーツの性能なのかーー?我がジオンは20年は遅れてるぅーー!!」って感じですが、まぁダイナもF6Bも初期設計が20年くらい前なんで当然ですけどね。

実はというとワタシ、現行のBMWにいいイメージなかったんですよ。だって水冷1250ccフラットツイン搭載車なんて全てのモデルがエンジンとエンジン周りのフレーム共用じゃないですか?バイク雑誌でフレーム見ると、共用であることがわからないようにネック周りとかカウルでうまく隠してるけど、見えてる部分のフレーム形状みんな同じなんだもん。

これってエンジンとシャーシを共用してセダンやスポーツモデル、SUV作り分けてる車の発想と同じですよね。外装とフロントサス(テレスコかテレレバーか?)、スイングアームやリアメンバーの構成変更で作り分けつつ「まったく別カテゴリーのバイクです!」って堂々とフルラインナップやってる訳ですよ。他のメーカーはバイクのカテゴリーが変わるとそれにあわせて排気量やフレーム変えたりしてますが、んなことぁしない。

GSなんてもてはやされてますが、下位モデルと同じエンジンとシャーシ使い回してバカ売れ。まぁフレーム共用してたって乗り味良ければ問題ないわけですが、釈然としないところはありますよね。
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(シャープなスタイリングとは裏腹に、乗り味に知的でテイスティな優しさが込められてて衝撃を受ける。)

で、いざ乗ってみると、「やっぱ、これは売れるなぁ・・」って正直に思いました。バイクに荒っぽさを求める層と対極に位置する人たちには最高に刺さるんじゃないでしょうか。「これが選ばれしライダーにふさわしい知的で高級な乗り味なのです!!ハーレーなんて頭悪いスカポンタンの乗りものですよ!!」って言われたら、「うんうん、絶対そうだね!!」と首をコクコクしながら強烈に同意してしまいそう。

ちなみに、私はアナログバイクばっかり乗り継いできたんで、電子制御スロットルやオートシフターが装着されたバイクに乗るのはこれがはじめてなんですが、電制ついたってアナログバイクと大きく変わるわけじゃありません。

でもやっぱりインテリ感と便利感は凄い。スロットルのモードをレインやLOADなど街乗り用に設定すれば、トルクの角をまろやかに取ってくれるし、これをダイナミック、ダイナミックプロとハード方向に設定すると、ちゃんとパワーとレスポンスが出てくる。

私は試乗時は常時ダイナミックに入れていましたが、このモードが刺激とゆとりとレスポンスが適度にあって試乗レベルでは、「1250ccらしくて丁度いいかな~」と感じました。

いままでのアナログスロットルは雨の日のデリケートな走りから、目を血走らせての峠攻めまで、乗り手がアクセル一本で出力制御していましたが、これはやっぱり疲れますよね。そこで、モード切替でシュチュエーションによって最も適切な出力マッピングを設定し、「乗り手の疲労を軽減しながらいろんなご希望に応えましょう」って気配りがボタンワンプッシュでできることが、電子制御スロットルの素敵なところではないでしょうか。

あと、オートシフター、なんだこれ。一定速度以上になれば、ほとんど衝撃がありませんです。クラッチ握らずペダルたたき落とすだけで、どんどんギアが落ちていく。どんなスピードでギア落としてもスリッパークラッチのおかげでリアロックなんて皆無ですよ。これはカルチャーショック、マジビックリです。「ホンダのゴールドウィングもDCTじゃなくて、この機構でいいんじゃね?」と正直感じました。

とにかくこのバイク、乗り手に余計な負担をかけさせない。余計なことはコッチでやるんでライディングを目一杯楽しんでねってバイクが主張してる。ソフトな肌触りのままスピードどんどん上がる上がる。「店員さんは足は多少固め」って言ってましたが突き上げもズドンとこないし、全然気にならない。

エンジンのパワーはしっかりあるけど、京都風。しんなりはんなりしてしなやかさと柔らかさと旨みがある。それでいてちゃんと啖呵も切れて喧嘩もできる。トルキーだけど、まろやかで、乱暴で粗雑なところがひとつもないわけですよ。

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(試乗後のR1250R、試乗前と試乗後でずいぶん印象が変わります。BMW売れてるらしいですが、それにはやっぱ理由がありますね。)

とにかく136馬力、239㎏の車体があんまりにも軽く優しく乗りやすいんで、うひゃあと衝撃を受けちゃったわけです。ポジション楽にして大型カウルつけたRTなら、どれだけスピード出しても、どんだけ距離走っても疲れないってのも良くわかる。

「いや、凄いバイクだな~。速いし楽だし。ベテランの方々が絶賛して購入するのもわかるなぁ~」

と、すっごい感動しつつもふとこうも思いました。

「凄く良いバイクだけど、オレのようなバカにはハードル高くね?・・」と・・・・。

はっきりいってR1250Rはダイナとは対極のバイクなんですよね。同じツインでもハーレー好きな人はBMWはダメなんじゃないかな・・となんとなく思うんですよ。

多分、この世の大型バイクには2つの方向性がある。

「論理的で、理知的で、理性的で、人生の酸いも甘いも理解した」品のある人が乗るバイクと、

「気持ちよければ、あとはどうでもいいじゃない!」というあっけカランとした快楽主義者が乗るバイク。

でBMWは前者の果てで、ハーレーは後者の果てなんじゃなかろうか?

ハーレーなんかは「とにかくクソ重くても、あふれそうなトルクでオラオラしとけばお前ら喜ぶんでしょ!」という典型的なハッスル思想。素材だけ提供して「後は勝手に楽しんでね」って乗り手に丸投げしちゃう系のエンタメです。


高田総統
(懐かしの丸投げ系プロレスエンタメ、ハッスルから高田総統。見よ、このお姿!最高にカッコいいっす!この御方をBMWは乗せることができんのか?絶対ムリ。おバカすぎてバイク泣いちゃう。)

インリン様
(こちらはインリン女史。元祖M字開脚、遊廓ファッションに黄金パンツ、手には鞭。バカな男の弱みはいつの世もエロとカネとムチ。それを完全に見切った上で、全て備えたこのお姿。これをBMWは二ケツできんのか?絶対ムリ。フル加速で振り落として逃げてっちゃうに決まってる。)

基本的にこういうバカ時空にはBMWは絶対に入ってこれませんよね。ブランドイメージが崩壊しちゃいますからね。バイク乗りなんて、乗り手に任せりゃどんどん馬鹿になってくんで、一定程度バイクが方向性を定めなきゃならない。一方そういう自由なバカ時空が大好きなのが私という生物ですから、そりゃ相性悪いですよ。

こんな品のないバカブログ書いてて、「それじゃあなたのバイクは何ですかな?」と問われたとき、「はぁい!BMWモトラッドR1250RTでぇぇぇっす!!」って胸を張って言えますか??「やめろぉおおおおおおおおおおおお!!頼むから死んでくれぇええええええっ!!」って全BMWオーナーが発狂しちゃう。そんな悲劇は避けなければならない。人として

勘違いして欲しくないのは、バイク自体を否定してるんじゃないってこと。個性があって良いバイクって必ず固定したイメージやフィーリングがあるんです。だからこそ、対象となる購買層が明確になる。ある人が「自分にあわない」と評価するバイクって、逆に「自分にピッタリ」と感じた人にはメッチャ刺さるんですよ。

だからR1250Rはこの乗り味、雰囲気を好きだって言う人にはメチャメチャ刺さってるはずだし、販売台数がそれを裏付けてると思うんですよね。

BMWのフラットツインはまろやかで力強く、従順で賢く、しかもトンデモなく速い、セントバーナード犬のような素晴らしいバイクです。フラットツインの特性を生かし、電子制御されたシャーシもまるで羽のよう。それはまさに手の込んだ高級ディナー。グルマンティーズの極み。

でも、私にはそんな高級料理に見合うようなマナーもなければ、味覚もない。場末の定食屋で一人でホルモン焼きつつ、泡ジュース飲んで、週刊現代の中とじヌード見て下卑た笑いを浮かべるダメ人間なんで、フラットツインは今の私には気品がありすぎちゃって、どうあつかっていいかわからない。

私はやっぱり、基本快楽バカなんだろうなーと思います。昔からなーんにも考えずに、「にゃははははーー!どっかーーーーん」って感じでアクセル開けたいんですよ。バイクにしっかりとした作り込みは求めるけれども、必要以上の知性は求めない。そんな男がBMWに乗り、知的なフリをしたって、ボロが出るに決まってる。BMWのフラットツインは私がそれにふさわしい人間になるまで、当面、お預けです。

今回はBMWというバイクに触れて、「自分のどうしようもない低偏差値を再認識してしまう」というちょっぴり切ない試乗になりました。しかし、最初から結論は見えていたのかも。だから無意識に今までBMWを避けてきたのかもしれませんね。


ホッとする

ちなみに、これ書きながらなんとなく感じてるんですが、私、BMWにふさわしい人間になる前に天に召される気がするんですよね。

人間の本性って多分変わりませんから。「馬鹿は死ななきゃ治らない」、とはよく言ったものです・・。