新型ゴールドウィングが発売されて巷に試乗記が溢れてきましたね。

私は「バイク選びに関しては人の評価は気にしない」というスタンスですから、別に試乗記を読んでどうのこうのということはないのですが、やっぱ自分でもインプレを書いてきた以上、人のも読むんですよね。参考に。

で、これまで出てきた試乗記の感想ですがまぁ絶賛記事の雨あられです。旧型もインプレはほぼそんなものでしたが、それを割り引いても自分的にはイマイチ参考になってない気がする。広告目当ての提灯記事なんておおかたそんなモノだといわれればその通りですし、限られたページ数で全てを語ることはできないのでしょうが、大事なこととそうでもないことが整理されずごちゃごちゃに提示されているような気がするのです。

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(新型ゴールドウィングツアー。スポーティ感やまとまり感は増しているし、バランスのいいデザインだと思いますが、それゆえ押し出しはそうでもなくウルトラやスターベンチャーとは別路線をとりました。ホンダはスマートな機能性で勝負!というところでしょうが、日本じゃミニバンはオラオラ路線しか売れていないところに、一抹の不安もある。なお、写真はホンダのホームページから)

例えばインプレ記事のうち、新型に搭載された「ウォーキングモードによる前進後退機能」などは正直どうでもいいものだと思ってます。こんなもんは自転車でいうと補助輪であります。新型は先代から40㎏近く軽くなっているとはいえ「とんでもねぇ車重」であることは変わりないので、ウォーキングモードは乗り手の大きな安心に繋がることは十分にわかります。でも最初に「補助機能が気になっちゃう人」には、この手のバイクの維持は難しいと思います。こういう機能は所詮「異常な車重という致命的な欠点のネガ潰し」にすぎません。

「ネガ潰しがあるから買おうかな・・」という消極的なものではなく、「これが欲しい!!」という積極的で強い気持ちがないと、機能に引きずられてなんとなく購入するという不幸が生じてしまう。結果、大枚はたいて、あんまり乗ることなく2000キロ未満の極上中古車の供給源になるという悲しいことになる。

軽いバイクならそもそも必要が無かったような機能に意味を見いだすのは不毛です。ダブルウィッシュボーンサスだって、一見凄そうですが、テレスコ以上に機能して初めて意味が出る。ですから、読み手に最初に提示しなくてはならないのは「300㎏後半の車重と巨体は常軌を逸しているが、それを許容してまで選ぶべき魅力がこのバイクにはある」というところなのです。

ゴールドウィングの最大の魅力は他のバイクが望んでも搭載できない「この世から消えつつある大排気量水平対向6気筒エンジン」です。このエンジンを無理矢理乗せてる魅力が理解できなければ買っても多分後悔するでしょう。続いて重量感から来るどっしりとした乗り心地や運動性能。新型になって集約されたスイッチ類の機能と使いやすさ。収納スペースの広さ、防風機能のチェック、オーディオ音質などのインプレが続くべきなのではないかな?と思います。

私としては新型は旧型より「高額バイクとしての本質的部分がどれほど良くなったか?」のインプレが欲しい。デジタルではなくアナログ的な質感向上が一番コストとノウハウがかかるはずで、運動性能や取り回し性能を上げたって、これまでのGLの良かった点が失われてればオーナー達の新型への評価は上がらない。単に運動性能重視ならCB1300SBにバニアつけた方が安いし使い勝手もいいまである。新型が目指した「軽量化と運動性の向上」はバイクとしての一つの正義ですが、重要点はそれとのバーターで「従来モデルで熟成の域に達していた質感や美点がなくなってないか?」というところなのです。

バイクは常にバランスなので、今ある機能を同レベルで維持したまま、性能を上げていくのは困難を極める。特に軽快感を上げれば質感は失われる傾向にあり、これまでの良さを減じることなく、軽量化と高機動性を実現したんであればモデルチェンジ大成功ですが、世の中はそんなにうまくはいかないはずなので、そこがどうなってるのかが非常に気になるところ。

要は旧型より「乗ってどんだけ良くなってるのよってことが知りたい。新型は旧F6Bから乗り換えるにしても追い金を200万円くらいは払わなくてはならない。インプレ見て乗り手が「これ最高じゃね。高いけど乗り換えるしかなくね?」と思わないとそんな金は到底出てこない。

大事なのはホンダが「ゴールドウィングの目指すべき価値観の本質を正しく定義し、それを突き詰めているか?」ってことであり、我々ユーザー側に必要なのは「ホンダの設定した方向性が自分の好みと一致していたか?」という検証なのです。

しかし、多くの紙面での試乗記は搭載された便利機構や、操作ギミックのインプレに時間を割いているため、読んでてもなかなかその点の感触がつかめない。最後は試乗するしかないのはよくわかってるんですが、「旧型より若々しくなった」というようなインプレを読むと「自分にゃ合わないんじゃないか?」という不安が頭をよぎる。正直「旧型より圧倒的に良くなっててサイコー!」というインプレはあまり見なかったような気がする。

誌面で新型ゴールドウィングのてんこ盛りギミックを逐一説明してくれるのはいいんですけど、付加機能ばかりを説明されても値上げの言い訳をされているような気になる。素のゴールドウィングは従来の対応モデルのF6Bと比較するとバイク1台分くらい値上げされてるので、本質部分がもう別物ってくらい良くなってないといけない理屈なんですが、そこがわからない。

現状私がF6Bに乗っている理由は「とにかく好きな曲をかけてホゲーっと走っているだけで最高」だから。そこにコーナーを切り取るとかワインディングで頑張るとか、能動的な行為は特段必要ない。私にとってはこの「ホゲー感」新型にもあるかどうかが非常に重要です。

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(メイドF6Bを題材にした相変わらずのくだらない漫画。ちなみに私の絵の練習もかねて毎回髪型が変わってます。ガレキフィギュアの顔描きの訓練にもなる。F6Bは6月車検なんですが、正直考えたくない。)

ゆったりとしてかつ、車重詐欺のような機動性を持つ車体と、黒執事のようにインテリジェンスが高く、優雅で従順で、ここ一番ではジェット機のような加速をする超有能エンジン。走行風をすべてそよ風に還元する巨大カウル。重量級のバイクだけが持つどっしりゆったりとした乗り心。ヘルメットをかぶっていても「これどうなってんの?」って思うくらい明瞭に聞こえる音楽。

以上が一つのバイクに高レベルでまるっと詰め込まれたことによって、「学歴優秀、なにやらしてもほぼ完璧、でも雇用主としての気苦労と雇用コストが非常に高い」超有能メイドを雇った御主人様の気分が味わえるのです。全てを超有能メイドに任せて、こっちは安楽椅子で殿様状態。こんな気分を得られるバイクは希少です。

まぁこれまでいろいろと書いてきましたが、この手の超重量級バイクを購入するときに大事なことは、テンコ盛りの機能に目がくらむのではなく、多くの困難も込みでそのバイクを購入するのだ!という強い気持ち。特にゴールドウィングのような高額なバイクは所有欲もふくめ「絶対にこのバイクじゃ無きゃダメ!欲しすぎる!!」という強烈な欲求と「取り回しに関する一定の自信」が必要。とにかく1回でもコカすとモチベーションが一気に下がりますからね。

私もウルトラからトライクになっちゃった人を沢山知ってますが、やっぱ不安定なモノが重いというのはあらゆる面で負担なのです。補助機能があったって車重が消えてなくなるわけじゃない。ゴールドウィングやウルトラは「Uターンにイマイチ自信なくて倒れちゃうかも・・」程度の技量の人にはどうにも荷が重いバイク。見栄だけで買うのは正直お勧めできない。やりたいことがCB1300SBでもできるのなら、より軽いCB1300SBを購入し、差額でGSX-R750でも買って2台持ちという選択も十分ありだし、その方が幸せになれるかも。

私の新型に対する期待値はかなり大きい。でもこれまでのいろんな試乗記を見る限り、機能はいいけどウィスキーでいうと「まだ味が若いのかな?」という気がしてます。なんでそう思うかは、試乗記の分析の結果なのですが、長くなるので次のブログで書きたいと思います。