インプレッションその2はシャーシ編です。今回も私の私見に満ちたインプレです。

「ごーるどういんぐはとってもおもくって、そくどをあげていくと、あぶないので、ゆっくりはしりましょう。まる。」

まぁ端的にいうとこういうことなんです。さようなら。

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しかし、これで車体編を終わってしまっては処されてしまいそうなので、もう少し詳しく書きます。なんで「ゆっくりはしりましょう」なんて書いたかというと、「速く走れちゃう」から。普通これだけの車重になると、必然的に「ゆっくりとしか走れない」から「ゆっくり走りましょう」なんていう台詞がそもそもでてこない。

ゴールドウィングは基本に忠実に操りますとフツーのバイクのように曲がる。400㎏にならんとする巨体なのにフツーに曲がる。あまりに素直に曲がっちゃうため、一部のライダーの中にこのバイクで鬼神のように峠を走ったり、凄腕さんが雑誌のインプレで「スーパースポーツ的な走りがががが・・」などと書いたりする。それを真に受けていらん「スポ根魂」を発揮し「勝負じゃぁああ!!」などと峠で変なテンションになってしまうと、私レベルの腕前ですと、スーパースポーツが「ふふふふーーーーん」と鼻歌で抜けていくコーナーで「はいぃぃいいっぃぃいいい!!」と絶叫しながらコースアウト。正面から樹木などに刺さってクワガタになる可能性がある。これからインプレをだらだら書きますが、最初にこれだけはいっておきたい。「車重には勝てん。」と。

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(文章ばかりでは華がないので、いつか撮影したツーリング写真を掲載します。福井県のとある地方道。抜けるような最高の青空です。)

考えてもみましょう。ヘビー級のジャンボ鶴田がジュニアの佐山タイガーと同じ動きができるはずがありません。(ネタが昭和なのは勘弁して下さい。)バク転からのエルボーや、フライングクスチョップで華麗に一回転するジャンボ鶴田なんて正直気持ち悪いわけです。

私自身、若い頃は2ストのNSR(乾燥重量130㎏くらい)が愛車でしたが、そっから4気筒マルチのCBR400RRやNC30(乾燥重量160㎏くらい)などに乗り換えると、その30キロ程度の差に「やっぱ4スト400重いわ~」と思ったものです。その程度でも体感で「重い」と思うのに、F6BなんてNSR+250㎏ですよ。NSRの上にCB1300SFが二ケツしてるわけですよ。

しかもこのクラスのサスは乗り心地重視でフカフカ設定。下りコーナーでブレーキ掛ければもの凄いノーズダイブに見舞われ、曲がり始めたら曲がり始めたでアンダーステアと大格闘。まぁークソ重いグランドツアラーなんだから「峠はゆっくり走ればそれでいいよね」というのが普通の感覚でしょう。これまで乗ってきたどんなバイクも車重が増せば「その車重なりの走り」になっていたわけです。

しかし、ホンダは、あろうことかこのバイクを特段の違和感なくミドルツアラー程度には走れるようにしてしまった。ノーズダイブは前後連動のコンバインドブレーキとアンチノーズダイブ機構で押さえ込み、アンダーはただでさえ低重心の水平対向6気筒を地面スレスレにつり下げることによって最小限に。ガチガチにサスを固めて乗り心地を犠牲にするってんならまだわかりますが、GLは極楽浄土な乗り心地を維持したまま、地面に張り付くように減速し、コーナーではハーレーのスポーツモデルのダイナが「スイマセン!」と土下座するほど気持ちよく旋回していく。その様はまさに華麗に舞うジャイアント馬場。「えええぇえええええええぇええ、どうなってんのー!?」「車重を偽るのはヤメロ!!」と叫びたくなるような「ミラクル感」でいっぱいです。(でも無理するとワンミスで凄いアンダーが一気に出て、立て直しが相当難しいので攻めすぎないように注意しなくてはなりません。)

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(青空の下、畑で働く人達。心が洗われます。)

せっかくですから車体の乗り味についても書きますと、フレームはアルミのツインチューブフレームですが、ガッチガチというわけではなく速度リミッター付近の高速コーナーで路面のギャップを拾うといささかヨレがでます。「なんだぁ、ホンダのフラッグシップ。たいしたことねぇなぁ」と思った人も当然おられると思います。そう、たいしたことない。その速度域では。でもその速度域でヨレるフレームが日常生活域では大きなメリットに変わる。

フレームだってエンジンと同じ。時速10㎞から300㎞まで最高の乗り味のフレームなどこの世のどこにもない。バイクは何かを得れば何かを必ず失う。フレームやサスの剛性が高いと限界域でもキレのある正確な走りが可能となり、超高速域を許容し、路面のインフォーメーションもダイレクトに伝わりますが、フレームのしなりがなくなるので街乗りなどのシュチュエーションでは非常にタフでソリッドな乗り味になってしまう。また、シャーシに余裕がありすぎて速度感が全くない。

これに対しフレームが生物の背骨のように適度にしなるバイクは外部入力をフレームで分散するため、挙動変化にも過敏さがなく、穏やかで優しくおおらかな人間味のある乗り味になってまいります。私はこれを「愛らしい乗り味」と表現したい。速度感もあるので公道レベルのスピードでも楽しめるというメリットも大きい。そう、ここまででわかったかもしれませんが、中年になった私はいつしか高剛性のアルミツインスパーフレームより、ダブルクレードルなどの「しなるフレーム」を好むようになりました。若い頃は「高剛性フレーム以外はフレームではない」などと思っていたのですが、ララァの「人は変わってゆくわ・・」という名台詞を噛みしめる今日この頃です。

F6Bのエンジンは高回転を6000で切り飛ばしてますから、フレームもそれにあわせて低速から時速170㎞程度まででの優しさ、扱いやすさ、懐の深さを重視して調教されていると思われます。それがまたF6Bが機械離れした「巨大生物的感触」を醸し出す一因となってます。

ゴールドウィングというバイクはエンジンもシャーシも独特の世界観を演出する要素として見事に設計・調教されているため、独立して評価するより、もう一体で評価した方がいいでしょう。細かいメカニズムより乗り味全体から醸し出される世界観を語りたくなること自体がもう特異なバイクなのかもしれない。その点ホント、ハーレーと似てる。(アッチは全部が全部ヘロヘロですが・・)ありとあらゆるものが溶け合ってなんか超自然で、すっごく気持ちいい。距離乗ってお互いわかりあえてくると、それがどんどん染みてくる。

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(信州ツーリングにて撮影。確か霧ヶ峰の道の駅。)

「さあ行くぜ!俺のマシン。」というよりも、「おーっいー天気っすね。今日も一緒に走ってくれる~?」的な、バイクも乗り手もお互いに過度な要求をせず、押しつけあわない清らかなおつきあい。休日に景色見ながらとんでもない長距離をバイク任せに「ほげーっ」と走るのが最高。もう、どこまでもノンストレスで連れて行ってくれる。やっぱ「何でも言うこと聞いてくれる巨大生物の背中に乗ってる。」という感想が一番しっくり来るバイク。

長いことバイクに乗ってきて、下手なりに一応どんなバイクでもコカさない自信はあるけど、歳だし無理できないし「もう枯れちゃったからねぇ・・自然体でねぇ・・」などと諦めの境地を演出してるにもかかわらず、「少しくらい目立ちたい」というスケベ心も捨てきれない、そんなフクザツな人にお勧めです。

・・・ってそれ私そのものですね・・。