ヨーコさんの顔描きの続きです。完成品を最初にアップした後、徐々に未完成状態に戻っていくという変なブログです。

このフィギュアは顔→胸→腰回りまでのパーツが一体化されております。これは一番セクシーな肌露出部分に「パーティングラインを残さない」という粋な配慮と思われるのですが、無念なことに顔の後ろの髪部分、ブラ部分までもが一体化しています。

「片桐さん。髪とブラは別パーツのハメ込みじゃないんですね・・・。」とおもわず声に出し天に向かってにつぶやいてしまう。

髪とブラが「顔と一体式になってる」というのは精神的なハードル高いんです。肌塗装をした後、顔描く前に髪部分とブラ部分を塗っとかなくてはならない。顔で致命的な失敗を冒し、頭部リセットでディラックの海に沈む(=シンナーだまりに放り込む。)ことになりますと、再度顔描きに辿り着くまでにサフ吹き→肌塗装→髪塗装→ブラ塗装という過程をもう一度やり直すことになり、面倒くさいことこの上ありません。

「顔を描いてから髪、ブラ部分を塗ればいいんでないの?」と思いになるかもしれませんが、一度瞳を入れてしまうとその部分はフィギュアで一番「デリケート」かつ「最重要保護部分」になります。表情を固めた後は、顔パーツに触れるのも憚られるというのに「その部分にマスキングを施す」などという度胸は私にはありません。うまく描けた顔というのはフィギュアモデラーにとって「宝石のように大切なモノ」なのです。

マスキング過程でもし瞳部分がこすれて剥げたり、テープを剥がす時に一緒に塗膜を持って行かれる「皮剥の刑」などに処せられたり、マスキング不良で顔部分に色がはみ出したりしたら・・・私は一体どうなってしまうのか??多分ショックのあまり「鈴木みのる」のような不気味な笑いを浮かべつつ、ハンドピース洗浄用の強度シンナーをティッシュに浸し、そのまま鼻に突っ込んで「幻想郷に旅だってしまう」に違いありません。

・・そして、旅から帰還したあと「魂のルフラン」のサビをゆっくりと口ずさみながら頭部を涙ながらにディラックの海に沈めることになるのです。うぉぉぉ・・・・考えるだけでもSAN値が減って発狂しそう。

とりあえず、髪はマスキングしてのエアブラシ塗装で、ブラはマスキングが面倒なので筆塗りで塗装し、ここからいよいよ目を描いていきます。

私は上まぶた下まぶた→瞳→眉→口という順に描くのがお決まりになってます。これは私がイラストを描く時の手順と同じ。あるフィギュア製作本では「瞳から描いていく」という作例もありましたが、多分描き順に正解など無い。うまく描ける描き順がその人にとってのベター。ここはキャストの仮組時に下書きを何回も描いて自分のより良い描き方を模索しておきましょう。

上まぶたと下まぶたを入れてみました。眉と瞳がないので、「出勤前のホステスが失神している」みたいな絵ヅラです。

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まぶた描きで、注意したいことは上まぶたから瞳にかけての立体感による錯覚。「まぶたに対して瞳が奥まっている」ので、上まぶたについては当然奥行きまでの段差部分も塗装しなくてはなりません。

ところが、この部分は単なる奥行にすぎず正面から見ると上まぶたの厚みとしては全く勘定されない、にもかかわらず塗装している側は「この部分を塗っている」という意識があるため、上まぶたを「結構太めに描いたはず。」と錯覚してしまう。ここが立体であるフィギュアとイラストの大きな違いです。イラストのつもりでフィギュアを塗ると思ったより上まぶたが薄くなる。

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フィギュアを「可愛い顔」に振る際には「目を大きくクリクリに」する必要がありますが、「上まぶたを太く描く」というのは、「クリクリ系の可愛い目」を描くにおいて結構大事なファクターになってきます。この上まぶたの錯覚は顔描きの際に意識しておいた方がよいと思います。

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なお、写真では顔の両脇に髪の色がちょっとだけマスキング不良で漏れてます。幸いにも前髪をつけたら完全に隠れてしまう部分なので今回は問題ないのですが、これが顔面の中心部にはみ出したら即ディラックの海に沈むことになります。

マスキングというのは完璧にマスクしたつもりでも塗料がどこかから入ってくる。私はマスキングが大嫌い。シール剥がす時の「色漏れしてないかな?塗装剥がれないかな?」・・ペリペリ・・「ぐはぁぁああぁぁあぁあぁああ」(楳図かずおの顔で)の流れがとにかくキライ。

小スケールのフィギュアではチマチマ切り絵のようにマスキングテープを切り貼りしますので、逆にあまり漏れはないのですが、大きなスケールのフィギュアを豪快にマスキングすると、テープがわずかに浮き上がったりして、ちょっとした惨事になることがあります。まったく筆箱の中に突如入ってくるちぢれ毛並に神出鬼没。皆さんも思わぬところで、大きくSAN値を削られぬよう十分注意して下さい。

脱線して随分長くなってしまいましたので、ここから先、瞳の塗装はまた次のブログでお送りいたします。