
私の独断と偏見に満ちたガレージキットの製作過程と失敗談、加えて私が日々使っている全くたいしたことない模型用具を紹介するその③です。今回は仮組で活躍する道具について書いていきます。
仮組みで必要なもの・その1→ボロい鍋とコンロ

(歪みまくって、水を入れないと立つことすらできない片手鍋。一線を退いた後も、キャスト煮沸用として酷使されています。)
キャストモデルはパーツの合いが悪いです。もう悪いなんてものじゃない。「何じゃあぁあ、こりゃあぁあ。」と太陽にほえてしまうほど歪んだシロモノもあります。
プラモデルのようにキットを信用していきなり塗装してしまいますと、いよいよ組み立てという際に、パーツの歪みから生じる時空のスキマから太古の邪神がコンニチワで「SAN値が垂直落下する」絶望的な事態になります。
「キャストモデルは歪む。」よって購入状態でのパーツ精度は信用に値しません。製作前に自分でパーツの「精度出し」を行わなくてはならない。塗装してしまってからでは打つ手がないので塗装前に邪神が巣くう時空のスキマを封印してしまう必要があるのです。
パーツが合わず隙間がある場合,インジェクションモデルですとまず「パテ埋め」を考えますが、キャストモデルの場合は熱湯で煮沸すると「柔らかくなる」ため、「釜ゆでしてヘロヘロになったところを無理矢理パーツをあわせて調教してしまう」という「いけない雰囲気」の技が使えます。湯で煮沸し「堕ちろ堕ちろ~」と念じながら頑ななキャストを柔らかくして「いやんいやん」とあわせていく。接合部に生じた隙間すらも「力を入れて押しつける」ことで消し去ることができます。この作業、「変態的ヨロコビ」があるかのように書いていますが、熱々の状態が冷めるまでに修正しなくてはならないため、実際には「火傷の恐れもある危険な作業」です。
もとはちゃんと合うように作られたはずなのですから、修正していけば合うはず・・・なんですが、合わないものが結構あるのはなぜ?(POLY-TOYの艦これ大和さんのスカートは前後ろで分割されているんですが、全然長さが足りなくて、エポキシパテとプラバンで結構な長さ延長してます。)
なお、キャストを煮沸する鍋は、食事用のものを使うと家族全員に「人でなし」「信じられない男」「ゴリラ脳」などと呼ばれてしまいますので、第一線を退いたものを使用することをお勧めいたします。
仮組で必要なもの・その2→ピンバイスと真鍮棒
ガレージキットの製作で大事なこと。何回も言うようですが、塗装後は無理なくサクサク組み上がるように仮組を丁寧に行っておくことだと思います。ガレキはパーツ分割がおおざっぱでパーツ数も少ないので、組立自体はテクニカルなものは何もないのですが、とにかく「パーツ重い」「噛み合わない」「くっつかない」のがキャストモデル。
組立段階で不都合が生じて、ああだこうだやって無理したり、焦って平常心を見失うと確実に不幸が訪れます。接着にまごついている過程で、手に接着剤が付着しているのに気づかずフィギュアに誤って触れたりしたら・・・そこに指紋型の「邪神の烙印」が刻まれます。多くの部品を接着して、「もうすぐ完成だよ!」という最後の最後でこの殺人技を食らってしまいますと、技術的にも精神的にもリカバリーは極めて困難。
もはや「SAN値ピンチ!」などとジョークをかましている場合ではなく、椅子からやおら起ち上がり「Woooooo!」と叫びつつ、リック・フレアーのように「効いてないアピールをしつつ、周囲を徘徊した後顔面から崩れ落ちる。」という悲しい状況になってしまいます。リカバリーができないほどヒドイ場合、「DEAD END」という文字がくるくる回りながら体に重なり、「南無~」という空耳まで聞こえるというおまけつき。
美少女フィギュアは美しい塗装面がキモですので、一旦塗装が傷つくとミリタリー模型のように「汚して誤魔化す」ということができません。ごまかせないので塗装に影響のあるような組立リスク(力を入れてはめ込むとか、接着剤を大量につけて無理くりくっつける。)は可能な限り排除しなくてはならないのです。

そこで登場するのが、真鍮棒とピンバイス。ピンバイスでパーツに穴をあけて、真鍮棒で連結してパーツをつなげます。これを「軸打ち」といいます。軸打ちをすれば「接着剤をつけなくてもパーツがある程度固定される」ので、この段階で接合面を調整します。組立接着過程では軸打棒が抜けないように周辺に接着剤をつけて軸を固定すればOK。これで組立の際の苦労、リスクが大幅に軽減されます。
最近のガレージキットはダボ穴がしっかりしたものも多いですが、ダボ穴の精度もあてになりませんので全く信用せず軸打ちをしましょう。ピンバイスは0.5㎜、1㎜、1.5㎜、2㎜くらいがあれば良いのではないでしょうか?その他の太さはお好みで。真鍮棒はピンバイスに対応する太さのものを用意。写真ではピンバイスが山ほどありますが、こんなにいりません。ドリル差し替えて使えば良いので、初めは小型のものと太いドリルが入るもの2種類あれば十分です。
通常は1㎜の真鍮棒を差し込めば十分ですが、接合強度が必要な場合(台座への固定や、パーツが重い胴体の接合部等)は、1㎜を2本差したり、1.5㎜とか2㎜の真鍮棒で軸打ちし、仮組みします。
「うわーめんどくせぇ」と感じられた方もいるでしょう。でも超面倒くさがりの私がめんどくさい仮組を推奨しているわけですから、「キャストモデルは仮組みしないとどうにもならん。」というのがご理解いただけると思います。
模型雑誌によっては「強度を増すため軸打ちを」とか説明してあるので、初めの頃は「軸打ちぃ?めんどくさいのでやりたくないなー。要はしっかり接着できればいいんでしょ??」と、高性能の強力接着剤を手に入れて面倒な軸打ち過程を省略しようと試みます。しかし問題はそこじゃないのです。組立だけを考えれば高性能な瞬間接着剤を大量に使って固定すればいい。
でも、高性能な接着剤は塗膜を豪快に剥がします。大量に付けた接着剤が流れ出したり、はみ出たりすれば、せっかくこれまで苦労して仕上げてきた塗膜が一発で破壊されてしまう。軸打ちしててもタマ~にはみ出して、カウント2.9まで追い詰められることがあるというのに、軸打ちしなければ「3カウント」「SAN値ゼロ」は目に見えてます。組立で塗装面にできるだけストレスを与えないため、組立の際の安全措置かつ接着剤を最低限にしながら強度を確保するため面倒でも軸打ちは必須な作業だと考えています。


(丁寧な仮組が後日のダメージ軽減につながります。きっちり軸打ちすれば、接着剤がなくても小さめのフィギュアならほぼ組み上がってしまいます。この時点で全体を見ながら塗装のイメージを膨らませたり、パーツの干渉がないか、どういう順番で組み上げるかを確認し、どんな表情がイイかな~?などと考えながら鉛筆で顔描いてみたりします。その後、しばらく飾ってみてホワイトボディをじっくり堪能するのもよいでしょう。)
次回は下地処理について書いていきたいと思います。
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