私がガレージキット製作の際に気をつけていることはとにかく

「キットを台無しにしないこと」です。

 市販の模型と異なり、ガレージキットは少数生産であり、一期一会です。造型の優れたキットは当然皆欲しいわけで、失敗したからといってもう一つ手に入れられるという簡単なものではありません。

 わたしはガレージキットの接着には塗装を冒さないタミヤの2液混合接着剤を使用していますが、これがなかなか強力で、一旦組んでしまうとキットを壊さずに再度解体していくというのは困難を極めます。(場所によってはクレオスのMr.SSPを接着剤代わりに使用することもあります。)ですから、組み上げ後でリカバリー(失敗したらシンナーの海にドボンしもう一度やり直すこと。)のできないような塗装はなるべく避けたいわけです。

 塗装したものを組み上げていくのは何ら問題ないのですが、「既に塗装してあるフィギュアの上に服を着せ、その服のパーティングラインを消してから服を塗装する。」というような工程は正直イヤです。服の塗装に失敗したり、内部の肌の上に服の塗料がはみ出したりした場合、頭を抱えて転げ回ることになります。

 本来であれば一度解体してやり直せばいいのですが、強力接着剤で接着済で、パーティングラインまで消してありますので、元には戻せず、下手すると修正の方法がないまま「キットが残念すぎる仕上がりになってしまう。」という大きなリスクをはらんでいます。ですから、こういうときは無理にパーティングラインを消さないようにしています。

 自分に似合わないような高度な技法を追求して失敗した時のダメージも計り知れず、気晴らしのはずの模型が、さらに自分を追い込んでしまうようなことにもなりかねません。私はマスキングも剥がす時も下地の塗装をもっていかれないかハラハラしながら剥がすような小心者なのです。剥がれたら再塗装すれば良いではないか?とおっしゃる方もいらっしゃいますが、そんなの2回も3回もやってたら厭になります。
 
 そういうことをしっかりやるのが上級モデラーの方々ですが、私はプロモデラーではなく、仕事の合間のわずかな時間で趣味でやってるわけですから、楽しくないことはやりません。ある時期細部にこだわって求道者めいたことをしていた時期もあったのですが、辛いだけで自分にはそういうのは向いていなかった。

 気楽に製作し、自分に枷をはめないで自由に作っていきたい。求道を放棄した私の姿勢はいつまでたっても素人なのです。私が目指すのはリスクを取らざるを得ないような細部の仕上がりを避けつつ、自分が満足できる仕上がりとのバランス点です。

「こんなものタダでも買わんわ。」といわれても私が満足できれば十分。一番大事なのは模型やガレージキットに向き合いながら楽しい時間を過ごすこと。多少のことは鈍感力で気にしない。それをモットーにしています。

イメージ 1

 上の写真は肌を塗装してから服を組立て、パーティングラインを消して塗装する代表例。vispoさんの名作「アスカR」です。肌と顔を塗装してから、胸の開きの部分の内側を塗装して接着し、目立ちすぎる合わせ目を消し、その後スーツを塗装する。本当はやりたくないのですが、合わせ目が非常に目立つことと、明らかに不自然な位置にスーツの合わせ目が来てしまうので、塗装済の本体にスーツを接着した後、パーティングライン消しをやらざるを得ないのです。その際に塗装済の顔や肌部分に塗装が漏れたら、もう後戻りはできないという、とにかく心労が多いモデルでした。

イメージ 2

なんとか完成しましたが、高額なレアキットをドキドキしながら作るのはホント心臓に悪いです。(製作記は後日またご紹介いたします。)