昨今のハーレー界隈の話題で一番ホットなのは、

「空冷スポーツスターが復活するらしい」

ってネタですよね~。ブログで指摘されてから、色々と記事を検索してみたのですが、マジで「来年デリバリーします」って本国発表があったらしい・・ほわぁぁあ・・。

そして発表されたシルエットを見た最初の感想は・・。


「これ、883アイアンまんまじゃねぇのかぁああ!!」

もうね。発表時に、ほとんどの人がシルエット見てツッコんだはず。

あまりにもスポ
(上が発表されたシルエット。下が883アイアンです。)

エアクリーナーカバーとか、シート、ウィンカー位置など細かなところは違えども、車体寸法やリアサス、マフラーの位置は883アイアンそのまんまで完全に一致。ハーレーは「儲からないし、古すぎる!」ってことで、空冷スポスタを2021年に「滅!」扱いにいたしましたけど、どうやら5年の歳月を経て、復活再登板させるつもりらしい。で、価格は1万ドル以下とアナウンスされている。

近年のハーレーはパンアメリカやスポスタS、ナイトスター、ローライダーST、ストリードグライド&ロードグライドなど、割とデザインコンシャスな路線を展開していたのに、手のひらを返し、「883アイアンまんま」をお出してくるとは、身も蓋もなくて笑う。環境問題対応で電スロは装備してくるでしょうし、LEDライト系やウインカーなどはナイトスターから流用してくる可能性が濃厚ですが、今のご時世に新開発の空冷モデルが1万ドル以下で作れるはずもなく、主要部分はアイアンまんまじゃないかと予想しております。

なんでこんな訳のわからないことになっちまったのか?ハーレー的にはいろんな事情があるんだと思いますが、「主観的で情緒的な消費者目線」で一方的に語ると、スポーツスターについては「進むべき選択肢を少々間違えたのではないか?」って感じてる。今回の発表はハーレーがそれを認め、この5年をリセットしたという解釈です。

ちなみに私はハーレーの水冷移行自体を誤りだとは考えていません。その方向は今でも「正しかった」と思ってます。だって水冷に移行しないとバイクメーカーとしての未来がないわけですから。ただ旧スポスタ系をいきなりディスコンにし、ナイトスターにまるっと置き換えたのは、やり過ぎだったと思うのですよ。

同じ水冷モデルでもパンアメリカやスポSは、水冷エンジンの能力を使って、既存のラインナップにはなかった新たな価値を創造したものになっています。実際、パンアメリカは無骨なデザインのアドベンチャーで、ヨーロッパやアメリカでソコソコ売れているらしいし、スポSも水冷パワーを容赦なく絞り出したアメリカンドラッガー。ポジションを含め、昔のVロッドとか、ヤマハのVmaxみたいな加速感ブチ切れバイクで、今どきこういうカテゴリーはあまりなく、ラインナップに加えても、その生態系がおかしくなることはありません。

ハーレーの水冷化における一番の判断ミスは「旧スポスタをナイトスターでまるっと置き換えが可能」と考えてしまったことだと思うのです。

旧スポスタ系が復活することになった理由は簡単で、「スポーツスター
のポジションを担うべき、ナイトスターが十分に機能しなかったから」でしょう。私はナイトスターはエントリーとして、とってもとっつきやすくて、乗りやすいバイクだと考えているけど、その反面「ハーレー独特の悪さや濃さがない」んですよね。前のブログの合同試乗会での感想も「凄く良くなったけど、メチャ優等生だなぁ・・」ってものでした。

ナイトスター下剋上カラー
(デリバリーから5年が経ち、熟成されて良くなっていることは間違いない。ただ目をつぶって乗ると、優等生すぎてハーレーって感じないかもしれない。)

私は割とメチャクチャやってる改造ダイナ乗りですから、評価が明らかにフェアじゃないところがあるんです。だから、前回の試乗会ブログではハーレーの感想は書かなかった。ナイトスターのエンジンは、その能力に文句はないんですが、ユーロ5+の影響が色濃く、ハーレーのツインとして見ると主張や表現が抑制的というか、優等生的なんですね。

これは今に始まったことじゃなく、環境規制や排ガス規制ってハーレーのらしさを削る点で、昔から常に問題になってきました。でも、空冷だと「ぶははは!環境規制という拘束具で燃調がクッソ薄いではないか!だが問題ない!!マフラー変えて、インジェクションをイジっちゃおう!それでハーレーらしさが甦るっ!」ってことになっていたのですが、これがナイトスターになりますと「空冷に対して優等生で偏差値の高いのが水冷なのに、そのエンジンにあえてバカ路線求めます?」ってことになる。


ハーレーって他のバイクメーカーと異なり、性能で語るのではなく、「アメリカという広大な大地が生み出したバイク哲学や世界観、スタイル」がとっても重要な、性能よりいわば芸道で語るバイクですから、乗りにくかろうが、遅かろうが、ローテクだろうが、まずは

「ハーレーらしくあらねばならぬ」

前田慶次かぶき旅じゃないけど、バイクも乗り手も傾いていかなくてはならんのですよ。

かぶき旅
(ハーレーの世界は日本的に表現するとコレですよ。「強さはとはトルク、道はまっすぐ、男は華」の世界観です。)

ハーレーってのは性能ではなく、乗ったときに「おおおお!これがハーレーじゃぁぁぁあ!!」って気分がアガるかアガらないかが評価基準になる奇天烈なバイクです。多くのユーザーがアメリカ本国生産にこだわるのも、アメリカ製という出自が気分をアゲる重要な要素だからだし、嫌われがちなハーレー乗りも、ハーレーらしさを思いっきり演出しようとして、いささか傾き過ぎたわけです。それほどまでに人のメンタルをアゲて強い影響を与えちゃうのがハーレーという乗り物です。

現在のハーレーの状況は、そんな芸道の世界で長年生き抜いてきた巨星モデルの価値を、経営陣が見誤ったことによって生じたものでしょう。

スポスタは「実績、歴史、文化」が完璧に揃ったモデルであり、グランド・ツーリングの概念が成立しにくい日本では、ハーレーを体感するにはうってつけの存在でした。モトグッチもエントリーに強烈なるモトグチ臭を発するV7シリーズがありますが、スポスタのディスコンは、V7を止めたみたいなもんですから、そりゃ影響は甚大です。

いや、「今時空冷なんて・・性能が・・」っていう意見もあるのはわかるけど、芸道と性能を一緒にしてはいけません。「だぁらっっしゃぁあああい!!水冷で傾けるかぁぁああ!!」ってのが現状のハーレー乗りの意見です。完全なる水冷移行は水冷で傾けるエンジン作ってからですよ。もうね。バルカン2000みたいに水冷でプッシュロッド積んでくるくらい、傾いていかないと。

バルカン2000エンジン
(こちらがバルカン2000の傾いたエンジン。水冷なのにプッシュロッドがついてます♡)

あと、スポには「多少の不満など、カスタムでいかようにでもなる」という変幻自在の価値がある。つーか、ここまでカスタム沼が深く、世界見渡しても他にカブかモンキーくらいしかありません(笑)

前回の合同試乗会に参加してシミジミ思ったのですけど、環境規制の中でノーマルエンジンがハーレーらしい味を出すのは、いろんな面で難しくなっていると思うんですよね。日本仕様のダイナも排ガス規制で糞詰まりだったけど、今のユーロ5+も大概です。だから、購入した後にマフラー交換とインジェクションチューンで自分の好きな味付けにするしかないと思うし、それがハーレーらしさに繋がるんだと思う。ハーレーディーラーがマフラー交換とインジェクションチューンをやたら勧めてくるって話もあるけど、今のハーレーなら、ある程度ノーマルで乗ったら「私も吸排気をやるんじゃないかな」って思っちゃいますね。

でもそういうスポーツスターの無形の価値は、一部の経営陣には「イマイチ理解できないものだったのでは?」って思ったりもするのですよ。アパレルの世界から来たCEOが「ハーレー乗りがハーレーに対して抱いている重くて複雑な感情」「カスタムの真の意味」を素肌感覚で理解できていたかは疑わしい。

ハーレーはこれまでライフスタイルを前面に出してきましたけど、その文法を当てはめると、スポは「既存顧客のライフスタイルを長年支えてきたモデル」ってことになる。もしそうであるなら、水冷化するにしても、スポーツスター愛好家達のライフスタイルをリスペクトし、それを承継するようなモデルを作るべきだったと思う。

その点をうまくクリアして水冷化に成功したモデルがトライアンフの「ボンネビル」です。

私はボンネビルに乗る度に、「トライアンフの中の人ってボンネビルが大好きなんだろうな・・」って思うのです。ボンネビルの水冷移行は技術が日進月歩で進化していく中で、自らのルーツであるボンネビルを「最善の形で残し続けていくにはどうすればいいか」を考えた末の結論だったのでは?と感じる。

最近の水冷エンジンは加飾のために空冷フィンをつけてくるバイクもありますが、ボンネビルの空冷フィンは「ボンネビルを愛好者に、伝統のスタイルをそのままお届けするため」のものだから、手抜きのないガチの空冷フィンになっているし、その後方にあるキャブに擬態した外観のインジェクションには、もはや執念すら感じる。それは加飾を超えた気合いと覚悟に満ちていて、「なるほど、これは見上げた傾奇者よ・・」って言いたくなるわけですよ。

ということで、

「時代を超えても変わらない完成されたスタイル」

「高級さを感じさせるジェントルな乗り味」

「ツインらしい排気音」

という顧客が求めるイメージを空冷モデルからキッチリ引き継ぎ、傾きまくった水冷ボンネビルは、空冷時代を超える売れゆきで、クラシック市場を席巻しているわけです。

他方、ハーレーは長い歴史を持つスポスタを、ナイトスターというニュースタイルにまるっと置き換えてしまいました。旧スポスタ系の築いてきたものをリセットし、新型に継承させなかったのはいいけれど

「既存ユーザーは一体どこへ行けばいいの?」

って問いにアンサーがまったく用意されてなかったんですよね。

「いやいや、アンサーあるでしょ?ビックツインにいけば良いでしょ?」

っていうのが経営陣の答えだったのかもしれないけど、そんな簡単なことならスポ乗りははじめからビックツインを選んでますよ。スポ乗りはスポが好きだから乗ってるんです。

ライフスタイルにあわせた自由なカスタムこそがハーレーの持ち味であると考えている人は数多く、旧スポスタ系はそんな傾奇者達を支える「極めて優秀な素材」でした。ライフスタイルってのは人それぞれで違うから、個々の生活や嗜好に合わせてカスタムしたバイクは、そのまま乗り手の個性の表現になる。カスタムパーツが豊富であるということは「乗り手のライフスタイルに合わせて、どこまでもバイクを作り込める」ってことで、それがハーレーというバイクが持つ本質的な華やかさであり、他のバイクにない可能性だったのです。

夕日
(私なりに傾いた結果が今のダイナ。この姿になるまでに10年くらいかかりました。)

他メーカーがどんなに素晴らしいバイクを販売したとしても、顧客が自分で手を入れて作ったバイクって特別なんです。だからこそ、ハーレーは他メーカーとの比較競合がほとんど問題にならなかった。だって顧客によって乗り味もスタイルも変化していく妖怪のようなバイクを前に、ノーマル状態での比較論など、ほぼ意味がないわけですから。

しかし、残念ながらハーレーは、旧スポスタ系をディスコンにすることで、その核心部分のアドバンテージをあっさり手放してしまった。ナイトスターは水冷化によりバイクとしての能力は飛躍的に高まりましたが、過去のカスタムパーツはほとんどが使えなくなり、歴史、文化、実績、カスタムベース最強という性能に現れない優位性を失うこととなりました。そうなると、同コンセプトの国産メーカーや他の海外メーカーとガチの性能比較、バリュー勝負に巻き込まれてしまう。それをようやく理解したのか、今年モデルのナイトスターは純粋なバリューでのガチ勝負に舵を切ってきましたよね。

結局、トライアンフとハーレーの明暗って、顧客がそのメーカーのバイクに何を望んでいるのか?という点の理解度の差だったと思うのです。トライアンフは、価格にしろモデルラインナップにしろ、顧客目線での舵取りが非常に上手いブランドで、派手さはないけど、乗ると「わかってるなぁ・・」って感心することが多い。各々のバイクの中に揺るがぬ方向性と、熱いマインドがあるんですよね。こういうメーカーは信用できるって思う。

最近のハーレーの動向を見ていると、古き良きものを愛するハーレー乗りを「やがて消えゆく顧客、と考えているところがあるのかも・・・」って感じちゃうんですよね。でもそういう考えは、あまり良くないと思うんですよ。だって、歴史って連綿と続く流れの中にあるもので、今の新規顧客もやがて歳をとっていくわけでしょう?そこで「自分達も歳をとったら、きっと大事にされないんだろうな・・」って思ったら、そのメーカーに忠誠を尽くすことなんてありませんから。バイク乗りってバカなようで、凄くウェットな存在ですからね。

私は大型バイクって「趣味の極北にあるようなイカレたアイテム」だと思うんです。他の趣味と比較しても明らかに異常。バカみたいに高価なのに、熱くて、重くて、雨に打たれまくり、モノも積めず、維持費も高い、とっても危険で安全装備もなく、性能は凄いけど公道では突き抜けすぎてて本領発揮は至難の業。つまりは妥当性がどこにもない。

あまりに理不尽で、マゾ的で、愛情が爆発しないと、どうにもならんシロモノですから、いろんな人達が足を踏み入れてくるし、ブームのときは富裕層が購買層の大半を占めるのかもしれないけど、ずーっと踏みとどまってくれるのは、基本的に愛好家か、マニアか、中毒患者だけなんです。「全てのジャンルはマニアが壊す」って言葉もあるから、その層を特別視したりしろとはいわない。しかし、ブランドの歴史や価値ってユーザーとメーカーの共同作業で生まれるものなんで、そういう文化度が高い人達を合理性だけで切り捨てると、ブランドとしての芯がなくなり、迷走がはじまってしまうのですよね。

いろいろと書いてきましたが、2027年にスポーツスターは再び我々の前にその変わらぬ姿を見せてくれることとなるようです。このご時世に「一度はディスコンになった空冷大排気量バイクがニューモデルとして再登場する」なんて、時代に逆行するにも程がありますけど、スポーツスター以上に膨大な過去資産を持ち、傾いていけるバイクを新規に作るのは非常に難しいから、その選択肢が妥当だと思う。

私的には「落ち着くところに、落ち着いたのかなぁ・・」って感じてはいますけど、大山鳴動して元に戻った感は強いし、問題は落ち着いたことではなく、「あんたら顧客の心がちゃんと読めてるのか?」ってところなので、ハーレーの問題点が消えているのかどうかは今後を見守るしかないのでしょう。

最後に一つ。旧スポを1万ドル以下で引っ張り出しちゃったら、

「ナイトスターはどうするつもりじゃろ?」

ってのが気になりますねぇ・・。

同じエントリーモデルが並んでたら、ハーレーらしい方が売れるに決まってます。水冷ナイトスターと空冷スポーツスターの「どっちがハーレーらしいの?」って聞かれたら、答えは考えるまでもない。しかも復活するスポって、ナイトスターより安いわけでしょ?そう考えると案外ナイトスターは来年以降のはやい時期にディスコンの可能性さえありえます。となると、逆に超乗りやすいハーレーとして将来人気になったりして~なんて思ってしまいますが・・まぁここらへんは想像の域を出ない憶測ですから(笑)


(オマケ漫画「確信犯なのか?ポンコツなのか?そこが問題だ。」)
883・ファイナル
(私とダイナの関係って、ほぼ腐れ縁みたいな状態です。依存はしてないし、一定の距離は常にあるけど、ないと困る。そんなバイクになってます。完全に安定期ですね。)