いや~12月に入りました。もう師走ですねぇ。そろそろ一年間の総括をする時期にやって参りましたね。本ブログでは今年のハーレーについて縷々書きたいと思います。そこそこ過激な言い回しや解釈がありますので、そういうのが厭な人はスルーして下さいね。

近年、いろんなネタを提供してくれているハーレーですが、今年も散々な1年でした。

販売ってイケイケのときは、打つ手が全てはまっているように見えるもの。ド派手でワクワク感はあるけど、ほぼ成り上がり一直線の異世界ラノベみたいなものです。しかし、快進撃が止まり、逆回転をはじめたとき、いよいよ中身の実態が見えてくるから興味深い。教訓は祭りの中ではなく、その後始末の中にこそあるものなんですね。

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(エンジンマウント交換で復活したダイナで日本海を見ながらぼーっと一服。ハーレーはそんな風景に一番しっくりくるバイクです。)

環境対応で売れ筋のスポスタがディスコンになりましたが、水冷モデルがその穴をイマイチ埋められず、残ったビックツインの価格も上がる一方。トラやBMW、ドカみたいに、普及価格帯で台数を稼げるモデルがないため、近年のハーレーは実に厳しい状況です。

売り物と価格を眺める限り、「ハーレー冬の時代待ったなし」ってことはハーレーファンの目から見ても明らかだったと思うんですよ。ハーレージャパンやディーラーは、巻き返しとなる商品が投入されるまで、冬の時代を乗り越えるための備蓄をしつつ、「防衛戦を展開していくんだろうな~・・」ってのが、近年のハーレーの印象でした。

そのような中、N〇DA社長は何を考えたか「前年比120%」という壮大な大規模反攻作戦を立案、実行に移しました。戦況が危うくなる中での大規模反攻作戦というのは、まるで太平洋戦争中の大日本帝国海軍を彷彿とさせる所業。これによりハーレーの2023年は「血の120周年」に変わってしまったわけです。

達成不能な目標の裏で行われていたことは、「客に売れなきゃ、ディーラーに売ればいいじゃない♡」というタコが自らの足を食べるような自滅戦略。いわゆる「バンザイ突撃」です。これはディーラーの生存権を無視した「販売上の特攻作戦」といえますが、これにより冬の時代を乗り切るどころか、ディーラーの体力はゴリゴリと削られていった。

この「ディーラーの犠牲の下で大戦果を上げる」という焦土作戦で、実に1割のディーラーが廃業に追い込まれ、その惨状は天下の公正取引委員会を動かすに至ります。調査の結果、独占禁止法に基づく排除措置命令&課徴金というお仕置き核弾頭が爆発。ハーレーの菊水作戦は日本オートバイ販売史上に燦然と輝く歴史的失敗を刻み、司令官も更迭と相成ったというわけです。

一番切ないところは、これらの作戦が緻密な市場分析のもとで行われたものではなく、「120周年記念だから120%の売上げね♡」という、オモウマイ店のワンマン経営者のような「ドンブリ勘定ドカ盛りハッピープロパガンダ」に基づいて行われたこと。そこに、ハーレーが快進撃を続けていた頃の論理的で知性的な戦略は一切感じられない。まるで山本五十六亡き後の劣化した大日本帝国海軍司令部を見てるようで切なかったですね。

そんなハーレーの2025年は前年度の敗戦処理に終始した1年だったとといえるでしょう。バックヤードに積み上がった大量の2024年モデルを売り切らなければ、2025年モデルを入れられない。しかし、公取の排除措置命令により、在庫を販売店へ押しつけ、中古市場に流すことはもうできません。そこでハーレーダビッドソン・ジャパンは禁断の「大幅値引き在庫一掃セール」を開催することになりました。これはハイブランドにとっては愚策の極みですが、歪みの是正には、それ以外に選択肢がなかった。

ここ数年の「過剰供給による中古市場暴落」も大概ですけど、中古市場で値がつかない海外ブランドは多々あるし(モトグッチとかモトグッチとかモトグッチとか)、中古は正規ディーラーにおけるサービスや購入体験が伴わないので、値を下げたとはいえ、まだ納得できるところはある。しかし、新車の大幅値引き販売は同じ店舗で同じものを安値で売るわけですから、顧客の信頼とブランド価値を大きく損なう行為です。なぜなら、「過去に同一モデルを同条件で定価で購入した顧客がいる」からですね。

新車販売の現場で大幅値引きを大々的に行うなんてのは、定価を信頼して購入した顧客への裏切り行為にほかならない。そんなことをすれば、既存顧客のプライドとハーレーブランドは大きく傷ついてしまう。しかし、あえてそれを選択せざる得ないところまで追い込まれていました。

ただ、ハーレーに関しては「これから数年にわたり、少しずつ起こることが凝縮されちゃったのかな・・」って感じるところもある。とにかくハーレーは上がり続ける価格をなんとかしないと、日本では以前のような販売台数は難しいでしょう。中型クラスに売り物を擁するBMWとトラに抜かれ、3位くらいの位置に甘んじるしかない気がする。でも、下手にあがくより「ハーレーの在り方としては、それでいいんじゃないの?」って私は思うんです。

ネットは承認欲求のるつぼですから、派手なバイクがドンスカ出てきて「スゲェバイク買いましたぁ!」って報告が多くなりますけど、販売台数というのは基本的に高くなればなるほど数が出なくなるピラミッド構造です。そんな中でハーレーで定番のビックツインは300万円付近。私は購入にあたっては200万円までを一応の上限目安に設定していますけど、今の価格はそこにカスリもしない。でも200万円の上限設定には私なりの理由があります。

ほとんどの消費材は、一定の価格までは「性能や機能が重視される」傾向にあります。バイクの世界でも一定価格までは装備や使い勝手などで熾烈な競争が展開されるので、払った金の見返りはバイクの機能や性能として確実に反映されていきます。そして、そのような点だけでバイクを判断するなら150万円もあれば十分。なぜなら、装備充実の国産リッタークラスにその価格で手が届くからです。

価格対効果での実益勝負なら、そこから先を売るのは非常に困難になるはず。しかし、消費においては、その先に「概念武装の強度勝負」という領域があるからややこしい。

消費には「物質的充足感」以外に「精神的充足感」というものがあり、形のない精神的充足感こそが、高額消費においては最も重要になるんです。だからこそ性能上限から上のものも売れるし、価値と性能が切り離されていく。そこからは、消費者の心や欲に訴える付加価値がものをいう世界に入っていくんです。海外製バイクのほとんどはそういう価格帯にいるわけで、国産メーカーに対して、「海外製品ならではの精神的充足感をどう演出するか?」ということに知恵を絞り、そのための概念武装に余念がないんですね。私はその領域に50万円の余剰を見ていますが、「いくら海外製でもそれ以上は出せんなぁ・・」ってことで200万円に一応のラインを引いているわけです。トライアンフはその価格帯に売れ筋をしっかり入れてきてるから、消費者の考えが良くわかってる価格設定にしていると思う。

200万円超えの海外製バイク達が纏う概念武装は「日本製バイクにはない機構的特徴」であったり、「海外製ならではの文化」であったり、「店舗での購入体験が乗り手に与えてくれる満足感」であったり、「ブランド価値からくる承認欲求」だったり、「購入後のイベントの提供」であったり、あるいはその複合だったりします。さらに上の価格帯になると、「最高級とか「希少性」とか「スペシャルモデルの特別感」などが付加価値としてどしどし追加され、ドカ盛り状態となっていく。

この手の概念武装はハイプライス販売ではもはや常識となっています。なぜなら商品の積極的アピールやディーラーでのおもてなしは、即購入動機につながるし、それが顧客のツボに入れば、消費体験に最も重要な「精神的充足感」を提供できる。満足度が上がればファンやリピーターも増えるから、そこに力を入れることは当然だと思う。

なお、バイクを頻繁に買い換える人は、このような精神的充足感を主体に買っていて、あまり買い換えない人は物質的充足感を主体に買っている傾向にあると分析できるのかもしれない。浪費するしないは別にして、私はどう考えても後者に属するタイプです。常々「消費に夢を持てない」って言っているのも、過去にそういう世界に金を抜かれ過ぎて、多大な傷を負ったため、精神的充足感を高めるために巧妙に作り出された舞台装置に一定以上の金額を払うことができない消費者になってしまったところがあります。

この手の形のない価値って満足度を高めるためにはとっても有益なんですけど、注意しなきゃならないところも多々ある。それは、環境や乗り手によっては、なくてもいいものであったりするし、乗った印象にまったくゴマカシがきかないバイクそのものとは異なり、一定の誇張や演出がつきものです。また、新型モデルが出る度に、常に新しい価値や地位が生み出され、古いモデルの顧客の地位は相対的に下がるため、そこに比重を置きすぎると、バイクが地位のためのツールとなり、常に上位の地位を求めて次々と買い換えることになるんですよね。

バイクの販売史上、この精神的充足感を高める手法を海外製メーカーで最初に用いたのがハーレーです。アメリカのアウトロー文化という概念武装の分厚い鎧を身に纏い、販売の場を専門店に限定することでイメージを構築し、国産車に劣る信頼性は壊れても修理できるバックアップ体制で補い、これにツーリングやブルースカイヘブンなどのイベントサービスをつけ、バイクに明確なヒエラルキーを設定して販売することによって高額輸入バイク市場で独走してみせました。

ハーレーって費用対効果や性能が重視される国産バイクとはまったく異なる「概念武装が生む世界観の強度」で勝負したメーカーです。一旦その領域内に顧客を取り込めば、まさに無敵。だから、国産メーカーとの価格勝負にはまったくならなかったし、ゆっくり走れる世界観が間口の広さにつながり、閉じた組織とハイプライスがステータスにも繋がりました。

しかし、そんな状況を指をくわえてみているほど他メーカーも甘くない。今や海外メーカーだけでなく国産メーカーすらも、高額商品を売るための方法論を意識して取り入れ、概念武装を強化し、ハイプライス販売に名乗りを上げてきています。これにより、海外メーカーと国産メーカーの境は曖昧となり、販売店へ行ってもハーレーだけが特別という感覚はもはやほとんどない。

ブルーオーシャンが何時までも青い訳はなく、一人勝ちする時代がずっと続くわけもない。それはこの世の理ともいえるものです。スポーツスターのディスコン、ビックツインの価格上昇、他メーカーの攻勢など、日本市場でハーレーが販売増を見込める要素は現状ほぼないわけですから、今のハーレーがやるべきことって、これまでファンになってくれた1人1人を大切にしながら既存モデルを丁寧に売っていくことなのでしょう。それで販売減になり、店舗数が減っていってもそれは仕方ないこと。ハーレーほどのメーカーになれば、武士は食わねど高楊枝でもいいじゃないかと私は考えていました。

でも現実で私が見せられたのは、常軌を逸した押し売りと投げ売りでしたからねぇ・・・。ハーレーにとってもここ数年は屈辱だったかもしれないけど、ユーザーとしてもここ数年のハーレーは恥ずかしい限りだった。

なお、今のハーレーの経営陣について、私がどう考えているかというと、「本国もジャパンも、真のバイク好きが経営していない時点で期待薄」ってのが偽らざる心境です。これは多くの人が同じ感想をもっているんじゃないでしょうか。バイクって凄く特殊な乗り物ですから、バイク乗りじゃない人に、我々がバイクに対して抱く気持ちなんて絶対にわかりません。そんな人達がトップで采配している時点で、ハーレー乗りが求めるものがピンポイントで出てくるとは到底思えない。だからせめて、下らない販売上のハッタリやCEOの見栄で、ハーレーの名をおとしめるのだけはカンベンして欲しいってのが正直なところです。

ぶっちゃけ言っちゃうと、どんなに酷い状況だったとしても、趣味の世界ではハーレーみたいな実績と歴史と文化があるメーカーが消滅することってまずないんです。潰れたところで、どこかが必ず救済する。背負ってきたものとネームバリューにそれだけの価値があるんですよね。この点を考慮に入れれば、アメリカのモーターサイクル文化そのものを背負ったハーレーは、バイクという乗り物が存在する限り「ほぼ不滅」といってもいいでしょう。

だからこそ、ハーレーには落日の中でも凜としていて欲しいんです。どんなときでも、慌てず騒がず、らしさとカッコ良さを見せ続ける。それが顧客に対するハーレーブランドの責任であり、価値であると私は考えているわけです。

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(どんなものでも何時までも最強ではいられない。落日は必ずやってくる。でもそんな中でも格好よく凜として存在することはできる。それがブランドの矜持というものでしょう。)

なお、今後どんな状況になったとしても、私がハーレーを見捨てることはないと思う。だってハーレーは「ウチのダイナを生み出してくれた偉大なメーカー」なんですから。




(オマケ漫画「生き地獄」)
ダイナー4
(値下げして売れるなら、まだいい。印刷しすぎたオリジナル同人誌なんてタダでもハケませんからね。予測を間違えると「不良在庫として積み上がった山を見続ける」という生き地獄が永遠に続く。これが人気の最底辺です。)