最近、何かいろいろとありまして、CB1300SFについて、まとまった距離を乗る機会があったんですよ。そこで、あらためて気づいたり、思うこともありましたので、今回はCB1300SFのインプレをメインに据えて、「VSゴールドウィング無印MT」というツアラー対決ネタにしてみました。

20250519_150301062(こちらCB1300ファイナルのノーマルでぇす。この黒・・イイ・・黒好きにはたまんねぇ・・・)

リッターバイクって、どんなに慣れても、どこかに猛獣感があって、扱いを間違えれば、「ガブリと噛まれるモンスター」ってイメージがあるじゃないですか。CB1300SFも車重266㎏の113馬力で、割と腰高、「ここらへんに乗りたいなぁ」ってところにポジション取って足出すと片足つま先しかつかない。「コカしちゃダメ!絶対!」だから、それなりの覚悟を持って乗ったんですよ。そしたらもう、最初の数百メートルで、

「はれぇ?」

ってなっちゃった。まず乗ってしばらくしてもう「あ、こいつは絶対に噛んでこないな」ってのはわかりました。

乗ったのはファイナルエディションのノーマルで、ロクに慣らししてないのにエンジンに重ったるい感触ほとんどなくて、メチャクチャ優しくて乗りやすく、100kmくらいのつもりで走りに出たのに、降りるのがイヤで300㎞超走って帰ってくるっていうトンデモないことになっちゃった。

CB1300って昔から「BIG-1」のキャッチフレーズ使ってるから、多くの人の中でイメージが

「焼酎のビックマン」

みたいになってないですか?実際、排気量もでかいし、車体もデカイし、車重もズッシリ。ケツも掘ってくれといわんばかりにハネ上がっている。こりゃもう外見とネーミングだけなら

「マッチョのむさ苦しいオヤジがバーベル上げて帰ってきて、一杯飲むかぁ!って冷蔵庫開けるとドカーンと中央に入ってる」

ってイメージですよ。

ビックマン5
(こちらが漢のチカラ水、その名も「ビックマン」。力士だって満足させるその容量は5L!価格は3300円!)

丸山さんが、レースの思い出語ったり、「峠でケツおとしてSSをブチ抜くのがね、このバイクの醍醐味なんですよ~」なんて動画で煽るもんだから、やたらステゴロなイメージがありますよね。でも、そんなビックマン的イメージを抱えて乗ると、あまりにも優しくて、マジビビります。

CB1300は、4気筒としてはハヤブサと並ぶ現行型では最大排気量の4発、しかもDOHCです。メカだけ見ると「どんだけ速いのよ?」ってドキドキするじゃないですか?

でもね。これは私がこれまで乗ってきた中で最も優しい水冷四発です。そりゃ速いことは速いけど、リッタークラスに乗り慣れている人ならスポーツモード入れたって「ギャァァアアアア!!」ってなるようなドッカン加速をするわけではありません。モリモリ下からトルクわくし、4000回転から上の切れ上がりは公道走行には十二分ですが、動きの初期アタリが常に穏やかで、過激さがないんですよね。エンジンの実力の割には、味付けがお優しく、安定感に満ちている。その点では※のじゃ子(HAWK11)の方がガツンとくるし、ヴィーセ本口嬢(モトグッチV7)の方がコーナーで車体を安定させるのに乗り手が積極的に関与しなくちゃならないから、「体感的に速い」です。

とにかくCB1300は「欠点のない安心感」が持ち味。こっちが腹を下させてやろうと、意地悪しつつ座薬を持って周りをうろついているのに「それをツッコむ穴がどこにもない」んです。特にシャーシとエンジンのコンビネーションが素晴らしい。乗って数百メートルで抜群の直進安定性とステアリングの据わりの良さ、重量感を生かした乗り心地に感動し「ふわーっ」てなり、いきなり「真っ直ぐヨシ!」ってことになる。

それではと、ワインディングに持ち込んでも、自然にリーンして、奇麗に舵が入るし、過度にクイックになったり、あやふやになったり、扱いにくくなったりすることもなく、接地感ビタビタで崩れる気配がどこにもないので、「曲がりもヨシ!」ってことになるんですよ。「オィィイイ!完璧じゃねーか!なんて腹が立つバイクなんだ!」って穴だらけ人格の私なんかは思うわけです。

このバイク、アクセルの開け閉めでバイク操ったときの動きの過度特性が、実になめらか、丁寧で気持ちいい。そこにフラッグシップCBとしての上質感と安心感がある。排気量の刺激より安心感が上回っちゃってるから、1300ccがしっかりと手の内に入るんですよね。

この世のほとんどのバイクには得意領域というものがあるわけですけど、普通はそのレンジってある程度決められてたり、あえて楽しませるためにトルクの谷とかクセを入れたり、設計の穴で意図せずクセになってたりで、それがバイクの乗り味の個性として伝わってくるものじゃないですか。でも、CB1300って何の引っかかりもなく、しれっとナチュラルにいろんなことができてしまう。

乗り手がリーンしようとする意志と車体の動きに一切のズレがないから、車体がアクセルに連動してメチャクチャ軽く動くように感じる。結果、走っている間は車体の存在が消えちゃって、エンジンの精緻な回転フィールと前方からくる風と景色だけが印象に残るんですよ。私は大型クラスのバイクに乗るときは、そのバイクの個性を最大限尊重し、動きを極力邪魔しないように乗ることを心がけているのですけど、私がCB1300SFの邪魔をしないように走ると、バイクも私の邪魔をしないように動いてくるから、もうどっちがどっちにあわせているのかが、途中からわけわかんなくなってきちゃう。

それは、ある意味で「無個性」と評価されるものかもしれない。でも、私的にいえば無個性にまで昇華された違和感のなさなんですよ。しかもそれを、「266㎏の車重で、113馬力のエンジンを抱えながらながらやってるっておかしくないか?」ってことなんです。重くてパワーのあるものほど慣性コントロールが大変になる道理ですから。

「完璧なバイクってこの世のどこにもない」というのが私の持論なんですけど、「乗り手に不快感やストレスを与えることなく徹底的に寄り添う」という面では、CB1300は、ほぼ完璧に近いところにいるバイクだと思う。

乗ってて感じた唯一の欠点は、アクセル操作に対するトルクのツキがちょっと軽薄でデジタルライクに感じられたことと、気温35度のときに車の後ろについて走っていたら、アクセルパーシャルでの燃料のオンオフが定まらなくてギクシャクするような症状が出たこと。これは乗り手側ではどうにもならない。ダイナもノーマルの時は低回転域で同じような症状が出てたんで、おそらく燃調が薄いのでしょう。ただ、ホンダのレギュラー指定の大型モデルでスロットルマナーに違和感を覚えたら「とりあえずハイオク入れてみる」ってのが私の対処法のお約束になってます。

本来想定されているあるべき姿から「何かがズレてる・・」と感じたとき、グローバルモデルにおいては、それはやっぱガソリンのオクタン価じゃないかと思うんです。この症状に苦しんでる人はとりあえずハイオクを入れて試してみるのもアリじゃないかと。まぁそれで改善しないかもしれないけど、自分で考え、いろいろやってみることに意義がありますからね。あとはフロントに対して、リアサスが少しフワつく感じがしたので、リアの伸び減衰を2ノッチくらい締めました。それ以外は、ポジションを含めて、公道走るのには何の不満もなかったですねぇ。

いずれにせよ、このバイクは機械的熟成度と操安調整度が極限まで高まりきった結果、どんな人が乗っても乗りやすく、扱い易いバイクになっております。「これでコケたらどのバイク乗ってもコケる」レベルの乗りやすさがあるから、初心者にもお勧めだし、ベテランになるほど油と欲が抜け、このバイクの基礎レベルの高さと、調整の奥の深さに感動できるようになると思うので、上がりバイクとしても大いにプッシュできます。もうね。時間をかけて煮込み、灰汁取りをひたすら続けた結果、限りなく透明な世界に行っちまってますね。

チョイ乗りでは、薄味でもの足りなく感じられるかもしれないけど、毎日乗ってると染みてきて、5年ほどたつと、もう完全に古女房化して離れられなくなるやつ。そう、CB1300は、ツールとしてとてつもなく良くできているバイクの典型なんですね。

仕事でも趣味でも何でもそうですけど、プロユースのツールで求められるのは、

「どんな使い方や環境でも破綻することなく、高性能とハイアベレージを長きにわたって安定して叩き出し続けること」

です。そこに派手さや尖りはいらない。毎日気持ちよく使え、同じような結果を出す。それが大事。私が愛用してるLet's noteも価格がクソ高い割には、スペック凡庸で派手なところまったくない地味系ノートパソコンですけど、安定性やキーボードの操作感、堅牢性が突出してるから使えば使うほど離れられなくなる。企業での採用例も多く、シン・ゴジラでは対策チームのパソコン全てがLet's noteという状況。ホンダやBMWの中には、そういう方向性で作られたバイクが一定数ありますが、CB1300はその親玉みたいなバイクだと思いますね~。

20250519_162819607(道の駅荒島。休日はバイク乗りでごった返しますが、平日に仕事サボって走りに出たので、バイク乗りは誰もいない)

ということで、CB1300のインプレはここまでにして、なぜ今回、特別出演したこのバイクを、きんつば嬢と比較することにしたかというと、乗り手に優しく、操作の邪魔を一切しないバイクって全然疲れないからです。結果ツアラー適性がメチャクチャ高くなる。カウル付きのスーパーボルドールにパニアつけると「日本ではゴールドウィングの地位を完全に脅かすじゃん」って正直思ったんですよね。

CB1300って重い重いって言われてますけど、クソデブのゴールドウィングに比べれば、100㎏も軽いわけで、「1人乗りのツーリングならゴールドウィングのバガーよりそっちの方がいいんじゃね?」って、乗ってる間は真剣に考えたりしたんです。つまりこれは、ホンダ内での多気筒エンジン・ツアラー対決というわけです。

ああ、ここにおいて、下剋上を突きつけられたきんつば嬢は大ピンチ。岬に追い詰められた殺人犯のように、後は崖下に身を投げるだけなのか?ってドキドキしながら、きんつば嬢に乗ってみた。

で結論から申しますと、

「・・ゴールドウィングって凄いバイクだったのね・・」

って今更ながらに思いましたねぇ・・。

普段乗りしているとゴールドウイングの乗り味が自分にとっての当たり前になってくるし、最近はマイナートラブルやリコールでホンダドリーム往復してて、すっかりポンコツイメージがありましたけど、同じ多気筒でツアラー味を感じるCB1300と比較対照することによって、差があらためて明確になりました。

どちらもツアラーとして極めて優れた素質はありますが、両者には4気筒と水平対向6気筒、鉄製ダブルクレードルとアルミダイキャストフレーム、テレスコとダブルウィッシュボーンという構造によって生じる明確な乗り味の差があって、ゴールドウイングは特殊エンジンと特殊サスを搭載しているだけあって、普通のバイクの常識とは根本的に違う世界を構築しています。

最近は多くのバイクが電サスや電子制御を付加することで差別化する傾向にあります。排気量を増やしたり、高級な仕立てと豪華な盛り付けをしたり、トッピングを変えたりして乗り味に高級感や付加価値を作り込む。それで味やテイストに差が生まれるってのは良くわかるんですけど、それでは「本質的な個性の違いは出ないな~」と思うんです。

私には空冷と水冷、直列とV型、エンジン縦置きと横置き、気筒数など、根本的な機構の違いから絶対的、必然的に生まれる本質的な乗り味の個性を楽しみたいって願望があるんですよ。その方がコントラストがより高まって、バイク同士のキャラクターの違いが鮮明に引き立つと思うんですよね。それを1人で「デュフフフ♡」と悦に入って楽しもうという選択の結果が今現在。

そういう機構の違いって、シンプルな味付けの方がピュアに楽しめるから、マシマシどころか電制も何にもついてないアナロググレードばかりを選んじゃう。これが「地味モデルとか、不人気モデルとか、枯れ木モデルばっかりを選択する」私の嗜好になっています。マシマシ系の1台を好む人も、シンプル多数台持ちを好む人もどちらも強欲であることは変わりないんですけど、その強欲の質が違うってことなんですね。まぁオタクでいう「解釈違い」みたいなもんです。

で、CB1300とゴールドウィングですが、どちらも人を遠くに運ぶツアラーとしての適性は高いですが、そこには明確な違いがある。細かいことを言い出すとキリがないんで、単純化すると、それは普通と特別の差であり、具体的には物理的な骨太感と密度感からくる上質さの差です。

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(ゴールドウイング無印。購入してからあっという間に5年が経とうとしています。)

CB1300も素晴らしい乗り味をもつバイクですが、それはあくまで「バイクという既存の常識の範疇」です。これに対し、ゴールドウイングの感触はこれまでのバイクの常識では計れない。

操作したときの手応えの骨太感が既存のバイクと大きく異なり、動きに凝縮された締まりとしっとり感がある。重量はゴールドウイングが100㎏重いですが、操舵と衝撃吸収とタイヤ支持を切り離したダブルウィッシュボーンを擁する極太足回りが365㎏という重量からくるネガを完全にキャンセルしてます。

通常の重量級バイクで問題になるノーズダイブやフロントサスの微妙なヨレ、ねじれをダブルウィッシュボーンサスの特性で徹底的に排除し、CB1300を上回る安心感と上質な乗り心地を実現しているんですね。

心臓である水平対向6気筒も繊細かつ緻密で、4気筒とはトルクの質が全然違う。CB1300の4気筒も精密感に満ちた回り方を致しますし、トルクマナーも素晴らしいですが、トルクの目の詰まり方や湧き上がる底力は明らかにゴールドウイングの方が上。同じように走っても、感覚に訴えてくる密度感、上質感が高いんです。

つまり既存の機構をベースに「安心感」「密度感」「上質感」を作り込み、高めていったのがCB1300だとすれば、これらの要素を基本設計の部分から逆算し、既存の枠にとらわれずに設計しているのがゴールドウイングというわけです。私は乗り味に感極まると、バイクにガバッと抱きつきたくなりますが、そういう感覚になったのは今のところ、きんつば嬢が最多回数だと思う。このバイクの乗り味の個性は、どのバイクにも替えがなく、馴染むほどに離れがたい。

その一方でテレスコ、4気筒のスポーツツアラーとしてCB1300のバランスも極まってるように感じる。乗ると設計の古さとか関係なく、「公道を走る4気筒でこれ以上のものいらんでしょ?」って思っちゃう。CBが良くできすぎているがために、ゴールドウイングには、既存の手法で設計する選択肢はなかったようにも思うんですよね。

ちなみにCB1300とゴールドウイングの疲れなさは、質が違っていて、CBの場合、「バイクが乗り手に寄り添い、違和感を与えることなく、意図したとおりに動く」ことにより、乗り手のストレスを溜めないという間接的な方法でライディングから疲労を取り除いていますし、ゴールドウイングは「圧倒的安定感と骨太さからくる頼もしさと最高の乗り心地、高い防風能力」という物理的な直接手法で疲労を削ってきています。

ゴールドウイングは疲れない理由が実にわかりやすいですが、CB1300は乗り終わると「疲れてないな~、なんでだろ?」って煙に巻かれているような、ちょっと不思議な感覚がある。しかも、私の使用環境の90パーセントを占める下道の疲れなさだけでいうと、実に良い勝負なのが面白い。高速をロングで走れば差はもっと出ると思いますけど・・。

とりあえず、今回のツアラー対決は機構的な特別感でゴールドウイングに軍配を上げましょう。これできんつば嬢のメンツはなんとか保たれた。でもこれバイクの価格差考えれば当たり前ですからね。逆だったらエラいことになりますから。

しかも、CB1300については「なんでもござれの万能型バイクからツアラー適性だけを切り取って勝負している」ことを忘れてはいけません。白バイの安全運転競技大会のアホみたいな機動性を見て頂ければわかりますが、それ以外の部分でCB1300がゴールドウイングに勝るところは多々あるわけで、それがCB1300系の恐ろしいところなんです。

結局乗り物において

「基礎を極めることによって生まれた扱いやすさは全てに通じる」

ってところを改めて再認識させてくれるのがCB1300の素晴らしいところなんですね。

それにしても、このような職人道を極めたバイクが本年6月末をもって、ディスコンになってしまったのは実に残念。ファイナルはなんだかんだと200万円ラインのモデルになってしまったけど、時間をかけて積み上げ続けた完成度や作り込みって、プライスで計れないところがあるし、扱いやすさってのは常に王道であり、その価値は永遠なんですよ。

CB1300は歴代のCB達の中でも、その王道を最も長く歩み、それを内面に染みこませ続けたモデルであることは間違いないと思う。6月末をもって受注終了になっちゃいましたけど、ディーラーの見込み発注分があるでしょうから、新車が欲しい方は早めにアプローチするとまだ残ってる可能性はある。派手ではないけど、バイクのあるべき姿の一面を真摯に追い求め続けたモデルですので、買って決して後悔はないと思いますね(笑)



(オマケ漫画「醜悪なる龍虎戦」)
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(特別出演CB1300SF。今回はホンダ、フラッグシップ同士の見るに堪えないレスバトルをお楽しみ下さい。)