モトグッチV7が今年マイナーチェンジしましたね。2025年モデルは操作系に電子制御スロットルを採用し、クルコンやライディングモードも装備と大きくグレードアップしておるようです。それではモトグッチのアナウンスを見てみましょう。

「新しくなったV7シリーズは、縦置き空冷VツインエンジンをEURO 5+規制に対応させ、新たに採用したライド・バイ・ワイヤシステムにより、ライディングモード、クルーズ コントロール、ABS、トラクション コントロールを含む電子制御パッケージを充実させたほか、V7 SPORTにはダブルディスクブレーキや倒立フォーク、そして6軸慣性プラットフォーム(IMU)の採用やライディングモード“SPORT”の追加など、V7 SPORT専用装備がそのキャラクターを強調します。」

V7Sport
(こちらニューモデルのV7スポルト。倒立フォークにダブルディスクと、フロント回りをしっかりと固めてきてます。)

うほぉぉおおお・・これはかなり頑張ってきましたよぉ~。スポルトに6軸IMUとスポーツモード追加ですかぁ?電制だけならウチのバイク全ての上をいってるじゃぁぁぁあないか!ウチのバイクに6軸IMU入ってるバイクなんてねぇよ(笑)まぁもとよりフロントサスの踏ん張りとストッピングパワーに難のあったV7ですから、スポーツモードと6軸IMU+倒立フォーク+ダブルディスクのスポルトは、人気グレードになるでしょう。フレームのネック部分の剛性がいささか心配になるけど、多少ヨレてもグッチスタなら「V7だしな・・」で終わりそう。

ちなみに私のV7もトラクションコントロールとかABSはついてて、一応の近代化はなされてますけど、動作感は正直言って「二世代くらい前のもの」でした。どっちかというとスベりゴケ、握りゴケ回避の安全弁的なもので、

「ついてはいるけど、作動させてはならぬ(笑)」

って程度のシロモノだったわけですね。しかし、今回電スロを採用することで、制御系を進化させ、商品力を他メーカーと同等レベルまで一気に引っ張り上げました。67馬力にどれほどの安全制御が必要なのか疑問の余地もありますが、クルコンついて従来モデルからたいして値上げしてないから、実質値下げでしょう。クルーズランも大得意なV7に、クルコン装備は嬉しい装備。モトグッチは昨今ラインナップを大幅に整理していますけど、V7は昔からの看板商品。虎屋の羊羹みたいなもんですから、「徹底的にテコ入れしていきます!!」と、気合いの入り方もハンパない。

V7は登場以来、根本的な部分を変えることなく、ユーロの環境規制に対応するため、つぎあて進化をしてきた結果、「次々と増改築していく違法建物的な面白さ」がでてきている気がする。今回の電子制御搭載で、そのリフォーム根性は究極のところに達したように思います。今回はその点について私の思いを少しばかり語りたい。

現在のV7の状況をわかりやすくガンダムベースのコントにしてみましたので、まずはこちらをどうぞ。

短編創作コント「サイバネティック・ザクⅠ」

(ア・バオア・クーの中で、シャアとジオン軍整備兵がドッグを見つめている。)

コント3

ジオン整備兵 「少佐ご覧下さい!連邦との最終決戦に向け、ザクⅠ(旧ザク)を大幅にグレードアップさせました!」

シャア 「最終決戦は足のない青くてデカイ奴に乗るんじゃないのか?」

ザク1


整備兵 「ふん!最近のジオンの設計者は顔だけの奴(ザクレロ)とか、足と胴体だけの奴(ビグザム)とか、足がない奴(ジオング)とか節操がありませんからな。連中をアテにするのはやめました。しかも少佐が乗るのに青なんて、あれじゃ少佐も気分がアガらんでしょう。」

シャア 「まぁ、言わんとしていることはわかる。」

シャア 「それにしても赤のザクⅠか・・オリジンで一瞬だけ登場したマイナー機体に手を入れてくるとは・・君もなかなかにマニアックだな。」

整備兵 「最近のアニメは初期機体が最後に活躍するパターンが多いですし、極論すればザクⅠこそジオンの象徴ですからな」

シャア「なるほど、その考えもアリか・・」(アゴに手をあてる)

整備兵「早速ですが、こちらをご覧下さい。」(コックピットハッチを開ける)

シャア(コックピットを覗き込んで)「ほう、これは・・」

整備兵 「少佐のニュータイプ能力を存分に発揮していただくために、最新鋭の電子デバイスを満載したコックピットに改修しています。モニターも360°で、ライド・バイ・ワイヤ。アナログ操作の旧ザクとは操作の軽さとレスポンスが雲泥の差です。」

シャア 「ふむ。なるほど。操作系からアナログな香りがすっかりなくなったな。そうなると骨格や心臓もそれに合わせて最新のものに変更し、サイコミュも搭載か?・・ふふ・・外観はオールド、中身は最新。これがネオ・クラシックというものか・・なかなかニクいことを考える・・」

整備兵 「いや、これ中身、旧ザクそのまんまです。」

シャア 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私の聞き間違いか?もう一度頼む」

整備兵 「中身は旧ザク」

シャア 「バカな・・これだけの電子デバイス搭載しておいて、機体は旧ザクのまま・・だ・・と?」

整備兵 「そうですが、何か?」

シャア 「なんだそれは!!漏らしそうになってスタバのトイレに駆け込んだら、和式だったくらいの衝撃だ!」

整備兵 「例えがよくわかりませんが、ショックの大きさは伝わりますな。」

シャア 「そもそもコックピットの改修にこれだけのコストをかけるんなら、本体もそれにあわせてグレードアップしなくてはつじつまが合わないではないか!!」

整備兵 「バカ言っちゃいけませんぜ!旧ザクはもともと和式トイレみたいなもんじゃねぇですか。考えてみてくださいよ。旧ザクで用を足してた連中って、ランバ・ラルとか黒い三連星とか、ケツが臭くて汚いオヤジしかいないでしょう。チリ紙でケツを拭き、立ち会いスタイルで踏ん張る姿こそ、オールドタイプの求める世界。その象徴がザクⅠですぜ!」

シャア 「俺ニュータイプなんだが?ウォシュレットでケツ洗いたいんだが?」

(きゅぴぃぃいん!)

「はっ!いかん、いかん、重要な用事を思い出した!キシリアのババァに呼ばれていたのだ!行かなければ!!(きびすを返す)

整備兵 (笑顔で肩をガッチリ捕まえる)

「・・・なに適当なウソこいて逃げようとしてるんですか?口で「きゅぴぃぃいん!」とかいわんで下さい。恥ずかしい。」(抵抗するシャアを引きずっていく)


シャア 「やめろ!やめてくれ!!ええぃ!ジオンのモビルスーツはキワモノか?!」

整備兵 「小ボケはいらん!さっさと出撃しろ!!」(コックピットに蹴り入れる)

シャア 「なんてことだ!ララァ!私を導いてくれ!私の母になってくれ!」

整備兵 「オッサンが17歳の娘でオギャろうとするのは犯罪ですぜぇ!」(思いっきりハッチを閉める)

シャア 「なにぬかす!性癖などバレなければどうということはない!!」(拳を振って力説)

整備兵 「よぉし野郎共!このピンク覆面ロリコンクソ野郎をカタパルト射出だ!!!」

シャア 「あああぁぁぁあああああああ!!」(ガンダムの目の前に放り出される)


どうですか?皆さん?私の言わんとしてることがおわかり頂けたでしょうか?そう、今回のV7はまさにこのサイバネティック・ザクⅠなのですよ。一般的な冷めた目線で見るなら「懐古趣味的なエンジンと車体に、はやりの電子制御を搭載し、フロントちょっと固めて激戦区のミドルクラスに放り込んだ」ということになると思う。

そもそも電子的に進化したデバイスを装備するのであれば、サスや車体も最新のものに進化しないとつじつまがあわないから、環境規制の更新は「設計が古いバイクが勇退する花道」であり「強制進化の分水嶺」といえるわけです。

その証拠にユーロ5で電子デバイスに対応しないことを選択したモデルがあらかた消え、ユーロ5+までしぶとく残っていたCB1300などの古参モデルも環境対応のコストがかさむという理由で消えていきました。残ってる古参兵って、W800くらいですが、あれは古参といいつつ、2019年に再復活したモデルですから、設計にある程度の余裕がありそうなんですよね。

でもV7は2007年にプレヴァ750のフレームとエンジンをベースにして登場した真の古参兵。そこから既に18年が経過しています。ベースモデルとなったプレヴァの登場は2003年ですから、そこから数えて22年。基本設計はCB1300SF(SC54)とほぼ同世代なのです。

普通のメーカーなら、このタイミングで現行V7に有終の美を飾らせるという選択をしてもおかしくはありません。「2000年組はもう定年だね♡」ってことで勇退し、シャーシとエンジンを現代の性能にアレンジし、ネオクラとして復活するまでがお約束の流れでしょう。しかし、V7は違います。2000年代のシャーシとエンジンで、イケるところまで戦っていくというバンザイ突撃精神を前面に出している。

電制化ってこの手のバイクの商品コンセプトからすると、あんまり好ましくはないんですよ。「オィィィイイ!古いのか?新しいのか?ハッキリしてくれ!!」ってなるからです。空冷エンジン積んだクラシックモデルなんて「今の時代に古き良きものの残滓」を求めていく層が風情を重視して買うモデルでもありますから、電子制御が必ずしもプラスにはならないんですよね。

古いエンジンに今でも根強いキャブ崇拝者がいるように、クラシック・テイストを求める層は「オールドライクであればあるほど本物」ってことになるから、電制化は進化したようで、顧客が求める本質からは後退してるという見方もできる。ホンダやカワサキなら、社内で「電制化が是か否か」という喧々諤々の論争が起きることでしょう。

でもモトグッチってメーカーは、そんな細かいこと気にしてないと思うんですよ。なぜなら、モトグッチのコダワリは縦Vの乗り味一択だからです。そこに執拗にこだわる一方で、その部分をハズしたときの、アバウトさというか、節操のなさはかなりのレベルです。もうね。ツッコんでたらキリがありませんよ。

現行モデルなんてネーミングからして、もうどうしようもない。V7は1967年にV型704ccのエンジン縦に積んでセンセーショナルに登場したのがルーツ。だからV7の7は当時の排気量700ccを指しているんですよね。しかし、前回のモデルチェンジでV9のエンジンをV7に転用したことで、排気量は853ccとなり、

「7の文字などどこにもないんだが?」

という状況になってしまった。普通なら「困った・・ヤバい・・どうしよう?」って苦悩するところだと思うんですけど、モトグッチはこれをあっさり踏み越えた。そして生まれたネーミングが




「V7 850」



オィィィィイイ!!もうメチャクチャだよ!


だってこれネーミング的には「V型700ccエンジンを積んだ850ccのモデル」ってことですから、「イカスミのパスタ、ミートソースがけ」みたいな訳のわからなさになってますよ!!

この他にも、最高出力発生回転がレッドゾーン表示のタコメーターを装備してみたり、日本語マニュアルが横置きエンジンになっていたり、油が切れるとサイドスタンドがまったく出てこなかったり、ミラーがダウジング棒みたいにグラグラだったり、ギア表示はシフトしてからゆっくりと変わる超遅延仕様だったり、燃料計がないのに、燃費計がサービスされてたり。もう気にしたら負けっていうところが結構ある。

私が思うに、これらは既存パーツを極力変えないで機能を追加できないか?と悪知恵を巡らせた結果の産物ですよ。

タコメーターのレッドゾーン表示は前モデルからの使い回しによるものだし、遅延ギア表示はギアポジションセンサーを入れないで、車速と回転数のみからギアを割り出してるからです。止まると車速がとれないからニュートラル以外は全てunknownになるという不気味さ。燃料計がないのも「フューエルコックの時代からタンクの構造を何ら変えてない」以外の何ものでもないでしょう。とにかく縦Vの乗り味を残すこと以外の部分には金をかけず、小手先で機能を追加しようとしているから、エラい中途半端なんですよね。

モトグッチは小規模メーカーですから、豪華にしようとすればすぐ価格に跳ね返る。小ロットで格好をつけようとすると価格はどんどん高騰します。モトグッチも昔に比べれば価格はかなり上がったけど、余計な物に金をかけず、マーケティング費用も最小限だから、このシャフトドライブの縦置き空冷という特殊なバイクがまだ輸入車としてはびっくりするほど安い価格で買えるんです。

私がモトグッチを評価している理由の一つは、縦Vに対するコダワリと情熱に振り切ったバイクを作っているにもかかわらず、輸入車として空冷最安値の位置にいることです。今のV7が搭載している空冷90°V型OHVは、価格対効果では文句のつけようがないほど磨き抜かれている。長年にわたるブラッシュアップにより、機械が綺麗に動き、洗練され、それが個性として昇華されているんですよね。このエンジンをブランニューで作るのは、極めて難しいと思うし、現代の技術で進化すれば、このエンジンの気持ちよさの一部が失われてしまうかもしれない。

だからこそモトグッチは電スロを搭載してサイバー化してでも「今のシャーシとエンジンをそのまま使う」という選択をしたんだと思います。今後を考えると、逆にハードル高い気がするけど、そういう核心部分のハードルは意地でも越えてくるのがモトグッチであり、それがこの小規模メーカーがしぶとく生き残っている理由だと思う。

モトグッチはいろいろと適当なところもあるけど

「縦Vの走りを、愛するイタリア国民に」

という1点に関してだけは、燃え上がるような情熱がある。モトグッチの社是は「情熱と伝統に根ざしたバイクを通じ、人々の生活を豊かにすること」であり、V7にとって「情熱とは縦置エンジンの走り」「伝統とはすなわち空冷OHV」なんだと思うんです。乗ると2気筒エンジンの構造上、最もシンプルで芸のないはずの空冷OHV2バルブに「こだわるに足るフィーリングとアイデンティティが確かに存在している」と感じられる。

V7はクラシックと言われていますが、モトグッチはこのバイクを決して「クラシックとして作っていない」と思うんです。そりゃ設計のシンプルさが古さ感につながっているところはありますし、実際に古いことは間違いない。しかし、エンジンの素性の良さをそのまま伝える「すっぴん美人の気持ちよさ」は現代の味を綺麗に調えたエンジンからは失われつつあるものですし、その動作にも「クラシックだから、設計が古いから」という懐古趣味的な甘えは一切感じられない。クラシックな機構で最前線を戦い抜くというモトグッチのコンセプトを考えれば電スロ採用も当然だろうと思います。

でも私は今のところ、今回のモデルチェンジは納得半分、心配半分で見ています。電スロはアクセル操作が軽くなり、エンジンの制御も緻密に行えることが利点ですけど、上手く調整しないと「アクセルの操作感や出力特性がデジタル的な違和感として感じられてしまう」という結構大きな欠点があります。その点は電スロ採用の現行バイクでも、かなりの濃淡があると感じてますけど、グッチ乗りは、アクセル操作の自然なフィーリングに異常にこだわりそうだし、モトグッチも最終的にはしっかり仕上げてくるとは思うんですよ。でも電スロ搭載初年度からその部分に高い完成度が期待できるかどうかは疑問なしとしない。そこら辺が今年以降のV7の評価をわけることになるんじゃないかな~って思っています。

とにもかくにもモトグッチの空冷Vには今後も第一戦で頑張って欲しい。毎年のようにディスコンがささやかれる中、ユーロ5+のハードルを越えてくれたのは素直に嬉しいです。現代のハイテクな水冷2気筒を向こうに回し、空冷OHV2バルブで戦い続けるこのエンジンはまさに「ロートルの星」。オッサンバイク乗りなんて毎日が逆風ですけど、そんな中で、「俺も頑張るから、お前もまだガンバレ!」ってバイクに言われている気がしますよね。

私の脳ミソも極めて構造が単純な空冷OHV2バルブで、日々有毒ガスをまき散らしてポンコツ化してきてるわけですけど、残念ながら人の脳には電子デバイスという救済策はありません。テコ入れされてクレバーになったであろうV7を見ながら、「お前は良いなぁ・・」と遠い目になっている今日この頃であります。



ヴィーセモト2.6
(初めて見たとき衝撃を受けたスカート穿き忘れネタ。私が見たのは「女子高生が寝ぼけてスカート穿き忘れたまま通学路を歩いている」って設定でしたが、パンツ丸出しで往来を歩くという犯罪臭を、ありえないボケで中和する悪魔的発想に心が震えた記憶があります。オタク達のエロに対するコダワリはモトグッチの空冷V以上かも。)