いよいよゴールデンウィークに入りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?今回はCB1100EX、通称※しび江さん※の「へっちまん介護報告日誌」になります。

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(そろそろ山の路面も綺麗になり、安心して走れるようになってきました。)

私の介護日記の前に、※しび江さん※の現状を報告しておきましょう。現在の走行距離は、8000㎞。昨年10月末に購入してから納車半年。購入時の距離数は5700kmでしたから、2300㎞ほど乗ったことになります。これまでの変更点は、7600㎞の時点でタイヤの溝がなくなったので、純正指定銘柄(ダンロップ・スポーツマックス)に交換したことと、ハンドルポジションを変更したことです。納車以降、ハンドルライザーのネジを緩め、ハンドルを上げたり下げたりしながらああでもないこうでもないとずーっと微調整を続けてきたのですけど、どうしてもしっくりこなかったんで、いよいよ外科手術に踏み切った次第。

ポジション的には特段の負担はなかったんですけど、CB1100EXは「アクセルチョイ開けの操作が快感に直結するバイク」なんで、それを存分に楽しもうとしたときに、手首の操作角がネックになりました。

手首シンドイって書くと「CB1100ってひょっとしてスロットル重い?」って思う人がいるかもしれないけど、それはないです。スロットルはダイナの方が絶対重いけど、そっちは問題なく長距離走れてますから、やっぱり「ノーマルのハンドル位置では肘と手首の角度があわない」ってことなんでしょう。

自分はできるだけ後輪側に座りたいタイプなので、「ここが丁度いい」ってところに尻を落とすと、タンクから股間がかなり離れてる。その状態でハンドルバーに手を伸ばすと幅が広くて絞りがないから、どうしても外方向に腕が伸びちゃうんです。だからスロットル捻ると手首と肘にクル。出た結論は「ハンドル幅狭めて絞りを入れたらなんとかなるんじゃね?」ってところでした。

手首しんどい理由はもう一つあって、私は毎週のように5000字オーバーのブログを上げているわけですが、その書き直しとか修正含め、1万字近くキーボードを叩いてると思うんですよ。当然仕事でもテキストを叩くわけですから、手首より先をメチャメチャ酷使してるんです。これだけ酷使すると、手の筋と肘の筋がハードワークになり、

「慢性的に腱鞘炎気味」

になっちゃう。つまり私の肘と手首がハナからヨワヨワなんですね。ああ・・職業病が恨めしい。

ここで普通はハンドル交換という選択になるわけですけど、悩ましいのが標準でグリップヒーターが装着されていることなんです。普通のハンドルだったらグリップ外すのは力業で良いんだけど、グリップヒーター付いているとそうもいかない。そこで、まずは「ハンドルライザーにセットバックスペーサーを噛ます」という超安易な方法を試すことにしました。これでは絞りも幅もまったく変わらないんだけど、結構バックするから肘に余裕できそうだし、すぐに元に戻せるのが利点。

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(こちらハリケーンのセットバックスペーサー。お安いものもあるけど、剛性が必要なパーツに金をケチるとロクなことがないので、一番信頼性がありそうなものを選択。2.5㎝アップの2㎝バック。配線についてはキツキツではなく、まだ余裕がありました。)

で、取り付けてみた結果ですが、わずか2センチのバックとはいえ、スロットル握ったときに肘に余裕ができたおかげで、手首も自由がきくようになり、肘と手首のシンドさは解決。ハンドル幅と絞りは変わってないけど、手首と肘の痛みさえ消えれば、あとはどうとでもなる。これで日常使いのストレスが消え、とりあえずはメデタシメデタシと相成りました。

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(取り付け後の写真。斜め上にセットバックで、腕に余裕ができました。)

ポジションが落ち着いたところで、ここからはいよいよ※しび江さん※による、へっちまん介護報告。つまりは本編です。今回は車体編をお送りします。エンジン編はまた後日報告しますが、このバイク、車体もエンジンも「飛ばさなくなったオッサンには最高」です。

RSの足回りは走りに振ってるようですが、EXはもう流す一択。エンジンにしろシャーシにしろ、「こうやって走ると気持ちいいのですわ」って範囲がバチッと決まってて、そこでひたすら作り込んでる感じがするんですよね。

逆に言うと、乗り手に対して「私のコンセプトはこうですの♡」ってやんわりとカタに填めてくるところがあるから、「バイクは俺の命令を聞いていれば良いんだ!!」ってタイプの人は、このバイクの世界観とケンカして、「ナニコレ遅い!思うように飛ばせない!!」の一言で関係が終わる気がするんです。そういう万能性を求める人は「CB1300を買って下さい」ってことなんでしょう。

実際CB1100を購入して世間話をしてる時に、一番多く飛び出すコメントが

「CB1100遅いでしょう(笑)」

「あれは重くて遅いですからねぇ・・」

「へちまさんはアレで満足してるんですか?」

っていうものなんですよ。このセリフの奥にあるのは「リッターの排気量があるのに、実にふがいない」的なニュアンスです。これは、この1100ccという排気量とホンダの4発というブランドに期待されているものと、バイクの在り方に少々乖離があるからだと思うんです。

足回りを固めたRSはともかく、EXは「かなり人を選ぶかなぁ・・」と私も思う。なぜならこのCB1100EXのウリは「走りの情緒」というスペックに出ないもので、この手の評価ってオーナーによって大きく左右されると思うんですよ。

CB1100EXが目指したものは、空冷4発にしか表現できない「優しい世界」だと思うから、「リッタークラスの4気筒=速い」という先入観を一旦捨てて、頭を切り替えないといけない。

「エンジンのホンダが出したリッター四発なんだから、高回転で豪快なトルクと、キレのある吹け上がりがあるに違いない!」

「リッタークラスの凄さを心ゆくまで感じたい♡」

「これなら400ccに対して超イキれる!千切ってやるぅぅ!!」

「空冷4発の希少性がぁ・・」

な~んて理由で買うと「はれぇ?」ってなっちゃうと思う。私だってしばらくは、自分の中にあるホンダ4発とのイメージギャップに少々面食らっていたくらい。

CB1100EXは、リアの上にドーンと乗ってタイヤに過度に依存することなく、リーンで舵角を入れるという古典的作法で乗るバイクになってますから、コーナーを抉るような走りはできません。

今のスポーツラジアルは「潰したりシバいたりするほど本領発揮」ってところがあるので、ブレーキ残してタイヤを潰し、そこから曲げをコントロールした方が曲がるというトンデモ性能なんですけど、この手のオールドな仕立ての足回りって、前輪に荷重をかける走り方すると、うまく舵が入らないんですよ。タイヤにブレーキングとコーナリング両方完璧にこなすだけのグリップ余力や、ラジアルならではの複雑な変形構造がないからです。単純であるが故に、乗り手がブレーキと旋回の振り分けを考えないといけない。

CB1100でも特にオールドなEXの足回りは、モトグッチのV7と同じ、フロント18インチのスポークホイールにチューブタイヤの柔らかセット。ちなみにCB1100はリアすらもチューブ。(ちなみにV7のリアはチューブレス)しかも車重がV7より40㎏も重く、縦ジャイロという車体の振れを抑え込むような隠し球もございません。

結果どーなっちゃうかっていうと、アベレージ上げてワインディングを攻め込むと、負荷が増えるほどにタイヤにバルーン感が出て参ります。4気筒ですからバンク中の横方向はビターッと安定してるんですけど、縦の車体安定性に弱点がある。アベレージを上げていくと、現代のロードバイクの足回りに比べて圧倒的に

「ボヨンボヨン」

しているわけですよ。そりゃそうです。構造的にもホイールとタイヤの中にチューブというバルーンが入っているんだから。今やスポークホイールでもチューブレス化されてるバイクが多い御時世に、なんとも古風な仕立てで、

「うぉぉおおお!この超巨大チャリンコ感こそ昭和なんじゃぁああああ!」

と叫びたくなる。

昨今はちまたにネオレトロという「ノスタルジーの現代的解釈」が溢れ、現代的性能と昔風のデザインで商品力を高めるバイクが多い中、いいとこ取りにまったく走っていないのが素敵。令和の時代に入ってなお「昭和ノスタルジー」で勝負しているなんてのは、国産では空冷単気筒のSR400、バーティカルツインのW800、空冷4発のCB1100くらいだと思う。

※しび江さん※はバイクが提案してくるリズム自体が「時間がゆっくり流れていた時代のもの」なんで、乗り手がこれを存分に楽しもうと思ったら、時間感覚を令和から昭和にしなきゃいけない。この感覚の切り替えって、なかなか文章で表現できないから、歌で例えていきましょう。

こちらがストリートリプルをはじめとする現代のスポーツバイクのリズム感です。スタイリッシュで実に格好いいわけですね。

(皆さんおなじみ、今をときめくガンダムGQuuuuuuXのオープニング。米津玄師の「PLASMA」です。)

おそらくCB1000Fも時代の空気を読んで、このリズム感で出てくるでしょう。

で、こちらがCB1100EXでワインディング走ってる時のリズム感ですわ(笑)

(戦後昭和の名曲「青い山脈」。古くさいしリズムも単調だけど歌詞も曲も声も雰囲気も素晴らしい。これはこれで良いなぁ・・と思える人に是非CB1100EXを薦めたい。)

おわかり頂けましたか?リズムも雰囲気も、世界感すら根本的に違うんです。

CB1100EXのシャーシは、全てがキッチリ管理され、歌詞やリズム、映像までが緻密に計算されて作られている複雑音楽ではなく、オッサンがマイク一本で地声とメロディラインを武器に勝負するアナログ歌謡です。朴訥で、オシャレでもないし、真面目で性能面でも劣るけど、過激な走りさえしなければまったく問題ないどころか、その平和さに癒やされるんですよね。

癒されるといえば、私は、きんつば嬢の水平対向6気筒のトルクフィールに、「水子の霊が母を求めて」的なバブ味を感じるんですけど、CB1100EXのシャーシには「バツイチ・アラフォー美人の豊満な胸に顔を埋めてるようなバブ味感」がある。




「なんとも見境のない豚さんですね・・」




ってジト目で言われそうですが、大排気量の醍醐味はスピードという刺激だけにとどまるものではなく、分厚いトルクからくるバブ味が大いなる魅力だと私は考えておりますから、そこ大事ですよ。ただ、エンジンじゃなくシャーシでここまでのバブ味を出したリッターバイクって、なかなかないかもしれない。安心感と柔らかさを両立しないとバブ味って出ないですからね。実際、このアナログシャーシは、ホンダによる鬼調整がされていて、乗り手が速度さえ適正にコントロールしてれば、完全にバイクに身を任せて走れるようになっている。

バイクから「さぁ、存分に甘えて良いのですわ♡」って言われて、逆らえるライダーがいるでしょうか?私みたいな怠惰な豚ライダーは、その快感領域から出ようなんてまず思いませんよ。※しび江さん※みたいな女性がいたら、サカって押し倒すより、「ママ~♡」って甘えに行くのが男の本能。実際、走り込むほどに、バイクに甘えて走るのが1番のお気に入りになってました。これってもう、完全介護を受け入れてますよね。

1970年代、最先端のスポーツユニットだった空冷4発は、世界を相手に戦う日本の誇りでしたが、時代は進み、今の空冷は第一線を引いたユニットなんですよね。しかし一方では、その乗り味はノスタルジーに昇華され、趣味性は大いに高まった。だから、車体も現代の常識にあえて迎合せず、情緒感満点の仕立てに振ったのだと思うんです。

ちなみに同じ18インチのフロント構成を持つヴィーセ本口と※しび江さん※を比較するとそこにある主張の違いはかなり大きい。ヴィーセをワインディングに持ち込むと

「我輩は現代においてなおも戦うアナログ戦闘機!」

貴公は紅の豚となれ!!」

って元気いっぱいです。

サボイア
(こちら久石譲のアルバム表紙のサボイアS.21。ポルコの愛機です。古き良きイタリアの飛行艇ですが、モトグッチV7って私の中ではまさにこれなんですよね。)

そこが「老いてますます意気軒昂なイタリアン」って印象なんですけど、※しび江さん※は、

「紅の豚?いえいえ、あなたはセピア色の豚でいいのですわ♡」

って耳元でささやいてくる。でも、セピア色の豚って語感はいいけど、ぶっちゃけ何の芸もないタダの「老豚」ってことなんですよ。

「これまで頑張ってきたのかもしれないですけど、ロートルが無理する必要なんてないんですのよ。今の時代は、こんなに豊かなんですもの。」

「抑圧された免許制度の鳥カゴの中で見果てぬ馬力を追い続け、交通戦争に明け暮れた時代は終わったのです。アナタは既に退役兵。時代は戦後、人生テンカウントなのですわ」

「はわわわ~」

「そんな豚さんは、マッタリ走れる私の車体でぱふぱふしましょうね。」

「ふわぁぁああ・・」(ヨダレを垂らす)

どうです?脳が溶けるでしょ?そう、そこにあるのは、今まで知らなかった柔らかく優しい4気筒の世界。若き日の私にとって大型クラスの4気筒は高回転高出力とパワーの申し子であり、戦の道具みたいなものだったけど、乗り手と余生を送るために介護に振り切った4気筒バイクって、「こんなにも優しいんだな・・」って、ちょっと感動しちゃってますね(笑)



(オマケ漫画「豚の脳ミソは破壊しろ」)
ワガママボディ3
(和服って基本胸を潰して着るんであまり胸を大きくは描けないんですけど、私の漫画に登場するバイク達の胸は排気量に比例しますので、※しび江さん※は十分胸はございますし、体の柔らかさはウチのバイクで1番です。うーん、エロい。)