今回はコレクションホール探訪「特別編」です。ガイドさん達との宴会で聞けた話っていろいろあったんですけど、どれがいいのかな~って悩んだあげく、タイトル通り、今が旬のCB1300ネタを選びました。これはCB1300SFだけに限らず、高性能サス全てにあてはまるネタなんですけど、私が語るにはちょっとハードルが高すぎたかもしれないと後悔しています。

CB1300SFといえば、2月28日にファイナルエディションが発売され、今一番ホットなバイクかもしれない。ファイナルはファーストモデルのデザインに回帰し、30周年モデルみたいなこれ見よがしの華やかさはなくなったけど、それがまたストイックでいい。

image-01(ファイナルは「ビックワンであること」というアナウンスのとおり、33年の刻を越え、初代BIG-1のオマージュとして登場。こりゃ~オヤジ世代を殺しに来ましたね。)

だって、90年代にバイク全盛期を過ごした人々がまず真っ先に思い出すのが、今回のツートン仕様でしょ。このタンクの塗り分けはCB1100RからCB1000SFに受け継がれたホンダの伝統。もはや思い出の中にしかない初代BIG-1カラーを、ここで出してきたってのは、「ああ、これで本当に最後なんだな・・」って、ちょっとホロリとするものがある。

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(このカラー見てジーンとするのはもうオッサン。1992年にビックワンが発表されたあの頃の記憶が甦る。)
25_CB1300SF
(SP仕様はいわずもがなですけど、スタンダード仕様のブラック×グレーのツートンも、登場当時のカラーパターン。メチャ渋くていいんですよね~。)

で、価格がスタンダードで172万7000円、SPで210万1000円・・・・って、

ノーマルもエラい高いけど、SPはさらに高ぇええええ!!差額37万円だよ!目ん玉ビヨヨンだよ。

いや~これだけ価格が上がっちゃうと、スタンダード買うだけでもヒーヒー言っちゃいますよね。私は以前、CB1100のブログで「CB1300SFについては純国産のSHOWA+NISSINがいいのではないかにゃあ?」なーんて大見得を切ったんですけど、純国産だけを理由にするのは、「国粋主義者みたいで良くなかったな・・」と我ながら少々反省もあるんですよね。そこで、「スタンダード仕様とSP仕様の性能と価格差をどう考えるのか?」ってところを自分なりに総括しておきたかったのです。

ちなみに昔の私は、「高い金払えば、そりゃ良くなるでしょ?良いことづくめでしょ?」って、シンプルな考えをしてました。でも、今の私は、

「全てにおいてそうとばかりは言えないな~」

と思ってます。

で、コレクションホール旅行の2日目に、宇都宮で餃子を食べながら、死神博士とA枝さんに、この点について質問してみたんですよ。で、そこで聞いた「開発者側の視点」を、私の「消費者としての視点」でコーティングし、まとめてみたのがこのブログ。長年OHLINSと付き合っている私の忌憚のない意見になっておりますので、購入を考えている人はどちらを選択するかの参考にいて頂ければ幸いです。

では、まず最初にCB1300SFのスタンダードとSP仕様のサスの比較をしてみましょう。

<スタンダード仕様>

フロント

SHOWA43㎜正立フォーク、プリロード無段階調整、伸び側減衰無段調整、圧側減衰調整なし

SHOWAフォーク
(うーん、実に普通。しかし2018年までは、このSHOWAが主力サスだったことを忘れてはいけない。)

リア
SHOWA製ツインショック。プリロード5段調整、伸び側減衰15段、圧側4段調整

SHOWA
(こちらはリアサス。OHLINSほどではないけど、調整機構はしっかりと備えられていて、こっちの方がホンダらしいっていえばらしい。)

<SP仕様>

フロント
伸び側圧側を左右完全分離させたOHLINS製ワンウェイカートリッジ式43㎜正立フォーク。プリロード無段階調整、減衰は伸び側、圧側共に20段調整。


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(キタァァァ!OHLINSと言えばこの金歯ゴールド。俺は凄いぞぉぉおお!ってまずは見た目でビビらせる。このサスでヘロヘロした走りは許されない。)

リア
OHLINS製ツインショック。プリロード無段階調整、減衰は伸び側圧側共に20段調整。

OHLINS
(派手さはともかく、良いもの感は最高。見た目だけで「やはりOHLINS欲しい・・」という人がいるのもうなずける。)

知ってる人は知ってると思いますけど、OHLINSのサスって凄く繊細な動きをするんですよね。スプリングレートが高く、しっかり踏ん張るくせに、乗り心地まで良くなっちゃうという魔法みたいなサスであります。

そこはサーキットの最前線で今日も戦うOHLINS。サス製造にかけた手間とノウハウが違います。フリクション低減のために手作業に近い工程を入れたり、専用の表面処理を行ったり、オイルの流れを多段積層円盤バルブ方式で徹底的に管理したり、取り付け部分もピロボールを採用したり。外観もインゴットからの切削製造で、あらゆる点で一般量産品より工程も多く、製造原価はハネ上がる。数も作れないから販売価格はさらに上がる。「量産性を度外視し、性能重視で特別に手間暇かけて作られたサス=OHLINS」ってことなんですよね。

死神博士やA枝さんなどの話を聞いても、OHLINSがレースを通じて積み上げてきた高性能サス作りのノウハウは、ホンダから見ても「さすがだ・・」と唸るものがあるそうです。そんなOHLINSによって提供される高いサス能力でCB1300SFを作り込んだのがSP仕様なのですから、これはもうタダモノではない。

SP仕様を語るときに、「後日OHLINSを入れると、これより価格が高くなるから、最初からSP仕様を・・」っていう意見がありますが、後日リプレイスのOHLINSを入れても決して純正と同じ味にはならない。なぜなら、「これはOHLINSのポン付けではなく、ホンダとOHLINSが共同開発し、CBの走りをさらに上のレベルに押し上げることを目指して製造調整された専用サス」ですから。OHLINSサスの能力を持ちながら、ホンダならではの仕上がりになっているらしい。

ホンダの大型に乗ってて私が凄いな~って思うところは、「シャーシやサス、エンジンが渾然一体となり、一つの生き物のようにまとまって動いていく」感覚があることです。このためタイヤを純正銘柄から変えることすらためらわれちゃうのがホンダ。そこをもの足りないと捉える人もいるようですが、私は明確にホンダの美点だと感じてる。OHLINSの滑らかな乗り味を使って、それが実現できているとすれば、マジでSP仕様は感触面では最高ってことになります。

しかし、しかーし、そんな簡単に結論がでるのなら、「高価格帯にSHOWAなんていらないわ」ってことになっちゃうけど、そんなことはない。ライダーとしては諸手を挙げてバンザイのOHLINSも、消費者としては言いたいことが山ほどありますよぉ!!そう、右脳のアホな私と違い、財布を預かる左脳の私は「OHLINSやブレンボも良いことばっかりじゃないなぁ・・」って思いが強いんですよね。まずはハッキリ言いましょう。

「あらゆる面で高ぇよ!!」

新車価格もスタンダードより随分お高くなってますけど、れに加えて維持費も覚悟しなくてはならない。

なぜなら繊細で上質な動きを重視し、そこに大枚をはたく人ほど、「味オチに対してガマンできない」からです。そう、初期のフィールが素晴らしいほど、その満足感を維持しようとして、「定期的にお手入れをしないと・・」という脅迫感に駆られ、その身を焦がすことになる。

基本的に上質で、高級で、繊細なものは、ケアの頻度も上がるわけです。繊細であるが故に、メンテも一筋縄でいかず、ほとんどがメーカー送りになります。ハーレーの純正ブレンボに至っては整備どころか「ヘタったらキャリパー全てをまるっと交換でぃす♡」なんて、血反吐を吐くようなことになっている。このため、ニッシンやショーワに比べるとメンテ費用は爆上がり。キャリパー1つが軽く10万円を超えるから、ダブルディスクなら20万円以上。もう請求書を見る前に失禁対策に老人用オムツを履かないといけないレベルです。

誤解のないよういっておきたいのは、私は別にそれに異を唱えているわけではありませんからね。それだけの繊細さを持つサスやブレーキだから「素人に手を入れさせたくない」というメーカーの方針もわかる。問題は消費者である我々が、その点について、ご理解と、ご納得と、お覚悟をした上で購入することを要求されているってことなんです。

私がダイナ嬢に取り付けてるOHLINSは「2年2万㎞ごとのメンテ」が推奨されておりますが、これはCB1300SFのOHLINSサスだって何ら変わることはないでしょう。でも、2万㎞ごとにオバホに出してると「消費者としての私の左脳が崩壊しちゃう」ので、私はフロント、リア共に4年ごとにオーバーホールしています。距離にすると2万4千㎞から2万6千㎞くらいですね。

今のOHLINSのリアサスは通算10万㎞ですから、合計4回オーバーホールをしてます。ツインショックのオバホはOHLINS送りで2本で合計3万円。どうもOHLINS側で過去のオバホ履歴を保存しているようで、最近は距離を乗ってるからか、ロッドなどの大物の部品交換が入るようになり、前回は6万円くらい請求されちゃいました。

もうね。請求書見て「はぃぃいいいいいい?」ってなるじゃないですか。だって、購入時の価格が「7万5千円」だったんですぜ?(今は価格が上がって11万円以上する)そのオバホに6万円ですぜ?

「オィィィイイ!どんだけ生き血を吸うんだよ!チューチューが過ぎるんじゃないですか?そのうち新品を買った方がお安くなるんじゃないの?!」

って叫びたくなる。私のは一番安いサスですけど、これが20万円とかするサスだったら、オバホ代がいくらになるのか?想像するだけで漏らしそうになってしまう。それに対してSHOWAは楽ですよ~。総合的な量産性や、コスト、耐久性、整備性、必要十分な性能を綺麗にまとめたスーパーバランス型ですから、ぜーんぜん気を遣わない。十分以上に走るし、ヘタりにくいし、ヘタってきてもベタベタまで使って、「しょうがないや~(笑)交換!!」と思えるから、オバホなんてしなくてもギリまで精神はド安定ですよ。

そう、私が「SHOWA&ニッシン推し♡」なのは、コストを含め乗り手に良心的で、乗ってて過度に気を遣わないからなんですよ。

「いやいやいや、そんなこと言うけど、お前はダイナにOHLINSを入れてるじゃないか!」

っていわれるかもしれない。でもね。ダイナとCB1300は全然違いますからね。

ダイナの純正フロントサスはストップ&ゴーの多い日本で走るには性能が明らかに不足してるし、構造も単純極まる投げやりなシロモノです。もうね。フロントにOHLINSのインナーカートリッジシステム入れた瞬間、一気にストッピングパワーや運動性が上がって、バイクがヤバいくらい乗りやすくなりましたから。

FKSインナーカートリッジ
(こちら私がダイナに入れているOHLINSのFKSインナーカートリッジシステム。価格はスプリング込みで約16万円。純正の外観を一切変えることなく、中身だけOHLINSクオリティにするという、クソ地味コンセプトが素晴らしい。)

ダイナのオーリンズはセコセコ面倒くさい調整を繰り返し、セッティング出しやメンテナンスに苦労しても「ノーマルと比べて、日常ユースで苦労に見合う圧倒的な実益」があるわけ。これに対して、ホンダの採用するSHOWAは既に

「日本の公道では十分すぎる性能を持っている優良品」

じゃないですか。CB1300はスタンダード仕様でもメチャクソ良くできた超熟成型バイクで、これをさらにOHLINSで追い込んでいきましょう♡なんて奴は「基本的に変態野郎」です。そもそも2018年にSP仕様が追加されるまではSHOWA+ニッシン一択で、その時点でCB1300の評価はすでに盤石だった。それまでCBを選んでいたベテランライダーの誰からも文句が出ていなかったことからもSHOWA+ニッシンの出来の良さは過去の歴史が証明しているわけですよ。

「いやいや、そうはいってもOHLINSはより調整幅が広いし、高負荷な走りかできるじゃん♡」

って反論もあるでしょう。でもスタンダードのSHOWAだって、プリロードと伸び減衰の調整機構がちゃんとある。でもここで言いたい。

ぶっちゃけそれイジります?

私はサス調整機構のあるバイクより、ないバイクの方に沢山乗ってきましたけど、公道ユースで別に困ったことはないんですよ。調整機構はノーマルをさらに自分好みに追い込みたいという欲望を満たすものだから、自分好みの走りというのが確立していないと、OHLINSの幅広くきめ細かい調整能力ってほとんど意味がないわけですよ。

加えてホンダのサス調整力ってハンパないから、そこからさらに上を目指すんですか?OHLINSが得意とするような、高負荷領域を使い切るほどの走りしますか?それってスタンダードじゃ無理ですか?ってことになると「うーん、どうですかねぇ・・」ってことになってくるわけです。

つまり、私にとって同じOHLINSでもダイナに入れてるOHLINSは「公道の安全に必須」なものであり、CB1300SFのOHLINSは「さらなる変態層向け」という評価になってるんですね。

SP仕様が追加されると、どうしてもそっちに目がいくかもしれないけど、SHOWAという実績ある優良品を前にして、さらにエクストラコストをはたき、超優良品を選ぶってことなら、見た目だけでなく、その差をしっかり堪能しないと意味がない。でも、それには一定以上のライディングスキルと手間暇と感受性と環境と資金力が必要になってくるわけで、そんなややこしいところに足を踏み入れるか?否か?が買う側に突きつけられてると思う。これはまさにその変態の世界へ一歩を踏み出すか否か?を乗り手に委ねるホンダの本気の挑戦状ですな。

で、そのエントリー代が37万円ってわけですよ。この37万円という差額がまた実に悩ましい。スタンダードとSPの差額で、他のいろんな感動体験に手が届いちゃうじゃないですか。例えばカドヤの一番良い革ジャンをフルオーダーで仕立てても、37万円もあれば、12万円くらいオツリがきちゃう。残りの12万円でヘルメット選び放題。ブーツも選び放題です。この差額で、最高品質の装備アイテムが上から下まで綺麗に揃っちゃうわけですよ。

私の経験だと、公道ライダーの満足度勝負なら、

「CB1300SF(スタンダード)+フルオーダーの革ジャン」


「CB1300SF(SP仕様)+ツルシの革ジャン


では前者が勝ると思うし、長期的に見ると後悔しないと思う。フルオーダーして体に合わせて作った質の高い革ジャンってマジ着心地とカッコが最高ですからね。バイクという機械に一生モノは多分ないけど、革ジャンはバイクが変わってもずーーっと使える相棒なんで、SPに手が届く資金があるなら、スタンダードとの差額で革ジャンを体に合わせてフルオーダーという選択肢もある。

a1vs
(カドヤの最高峰ブランド・ヘッドファクトリーの革ジャン。とっても良い照りじゃないですか~。採寸して体格にきっちりあわせ、着丈や袖を好みの長さに設定するフルオーダーは割高になりますけど、体に合わせた革ジャンは一生もので、絶対幸せになれます。)

資金っていうのは有限で、公道ライダーの喜びはバイクだけじゃありません。より良いバイクライフを送るためには、「RPGのキャラメイク」と同じで、資金力というポイントを、パラメーターのどこに割り振るのか?が大事になる。そして、それは簡単なようでかなり難しい。

金を湯水のようにかけ、性能を追うサーキットユースなら迷わずOHLINS+ブレンボのSP仕様を選べば良いでしょう。しかし、公道ライダーの勝負はスピードや性能ではなく、バイク生活から得られる感動の総合値ですから。

CB1300SFは、消費者にとって「バイクにおける豊かさとは一体何なのか?」「公道における高性能の線引きとは?」ということを問うている。スタンダードが超絶良く出来ているCB1300に、さらにその上を行くOHLINSを徹底チューンして入れたからこそ、そのジレンマが先鋭化し、消費者を激しく突き上げてくるわけですね。

ここまで長々と書きましたけど、結局のところ結論は出ない。各々が自分なりの回答を見つけていくしかないんですけど、そんなことを諸々考えた上で選択することが大事なのです。消費において重要なのは後悔をしないことですから・・。

まぁ私がもし選ぶのだったらSHOWA+NISSINですかねぇ・・。だって私は変態じゃないし・・・。OHLINSのゴールドってヘタレの私にはプレッシャーなんで、レンタルで体験できれば十分かな(笑)あと、やっぱり黒が好きですからね~。

・・あ、ちなみに私は買わないですよ。私には※しび江さん※さんがありますから。


オマケ漫画「厚遇の代価」(本編とは一切関係ありません)
50周年特別2.1
50周年・特別2
(2月は無双したきんつば嬢ですが、他のバイクの嫉妬の対象となり大ピンチです。リコール修理も終わって絶好調ですが、当面ブログ内では活動自粛かも・・)