さぁみなさん。今回は覚悟してくださいね。写真も多いし、テキストも多いし、漫画も盛った。そう、このブログ、ゴールドウィング50周年企画展示の「The King of Motorcycles を目指して」に対抗し、「ザ・キング・オブ・クソブログを目指して」っていうコンセプトになってるんですよ。
じゃあ何がクソなのかというと、物量です。縦に一本グソのように果てしなく長い。進めても進めても終わらないので、途中で8割の人がイヤになって読むのを止めると予想しています。しかし、このウザさこそが、私のブログの全部盛りの姿なのですよ!!それでは本文をどうぞ!!!!
ここ最近のホンダコレクションホールの目玉は、初代GL1000から数え、50周年を迎えたゴールドウイングの記念展示となっております!!パチパチパチ!!
いやーあらためて検証いたしますと、ゴールドウイングは50年間で7回フルモデルチェンジしてるんですよね。最初の頃はアメリカ市場の要求に応えるように、3年から6年くらいでモデルチェンジを繰り返してたんですけど、GL1500からいきなりモデルライフが長くなり、GL1500は13年、先代のGL1800はなんと16年。この2モデルで約30年引っ張っているんですよね。現行のダブルウィッシュボーンを搭載したGL1800だって、気がつくと今年でなんと8年目なんじゃが・・。私が歳をとるはずじゃのう・・。
まぁ、これは水平対向6気筒を搭載してから、「競合相手がほぼいなくなったので、モデルチェンジを頻繁に行う必要はなくなった」ってこともあるでしょう。モデルライフが長いのに、中古価格が安定しているのもGLの魅力。ベース価格は高いけど、購入があまり苦にならないのは、下取りがわけわからんほど高止まりしてるからですね。国によっては、500万円~800万円とかトンデモない価格で販売してるみたいだから、距離を走っていても輸出すれば高値がつくのかもしれない。
私もF6B時代からゴールドウイングに乗って12年目です。普通の人よりはGLに詳しいつもりではありますが、そんな私でもビカビカの歴代モデルをズラーッっと並べて見せられると、新たに気づくことは結構ある。
まず最初に衝撃を受けたのが初代GL1000。とにかく「バイクとして非常に良くまとまってる」んですよね。GL独特の異形感がまったくなくって、スタイリングに安定感がある。そのまとまりの良さはパッと見りゃすぐにわかるレベル。余計なものがなく、プレーンで、品質感が高く、見た瞬間「これはいいバイク」「メチャ走りそうですわ」って雰囲気が漂ってる。まぁオーラがあるってことですよ。

ちなみに歴代GLのキャッチフレーズは
初代GL1000
「キング・オブ・モーターサイクル」
GL1100、インターステート
「キング・オブ・ロング・ツーリングバイク」
GL1200、アスペンケイド
「キング・オブ・ロング・ツーリングバイク」
GL1500
「アメリカン・キング・オブ・グランドツアラー」
GL1800(SC47)
「ザ・キング・オブ・モーターサイクル」

「キング・オブ・モーターサイクル」って、一昔前はハーレー雑誌もよく使ってたこともあり、私は一時期F6Bとダイナという2台の「自称キング・オブ・モーターサイクル」に乗ってたわけですけど、「良いバイクだな~」って思ったことはあっても、「これは王ですわ♡」って感じたことは一度たりとてないんですよね。そりゃそうですよ。「バイクという機械が表現するべきなのは性能と機能と質であって、地位なんかではない」んだから。
私にとって、地位っていうのはステータスでもあるけど、ある種の「呪い」や「呪縛」でもあるんです。社会で生きていると、役割に応じて地位というものが与えられたりはするけど、それは、その人がより能力を生かせるよう、コミュニティが用意してくれるものです。だから、地位によって人の能力や価値が変わるわけじゃないし、その地位のためにコストを要求されるってのもおかしな話なんですよね。でも、多くの人は「地位によって何かが得られる」って勘違いしてるから、そこにコストを惜しまない。それを呪いといわずして何というのか?
私にとって「King」って言葉はそういう「どーにもならん呪い」の象徴です。消費において王の地位に留まろうとする限り、そのコストを常時支払わねばいけないし、王の中の王になりたい♡なんて背伸びした日にゃ、そこにかかるコストは青天井のインフレーションなんですよ。
GL1100はとにかく、この中でどれが欲しい?っていわれたら、真っ先に選んでいたと思う一台。「ぼくのかんがえた、りそうのあめりかん」にスッゴク近かったんです。そもそもGL1000に心を打ち抜かれてましたから、それをロングに仕立て、アメリカ風味をタップリかけたGL1100は「日本でアメリカン・クルーザーに乗るのならこんなのがいい!」って心から思えた。あと、なによりシートが凄いんですよぉ。革フェチにはこの威厳のあるシートはたまらんです。シートだけでいいねを5000回くらい押せる。
(オィィィ!見てくれよ、このクッソコストのかかったシートを!分厚く盛り上がるクッションと深く深く縫い込まれたタック、明らかに職人が手作業で縫い込んでるじゃん。今のバイクにこんなタックシートがあるか?社長椅子にもこんなのねーよ!)
(この極上シートの座り心地を想像するだけで尻が喜んでしまう。シートが「Hey Siri」ってこっちに呼びかけてくるから、俺はAIだったのか?って思っちゃう。)
そして、究極はワルキューレ・ルーン。これは今回のコレクションホールのバイクの中でも、目に焼き付いて離れない一台。レーサーは爆発するような情熱と熱量の凄さがありますけど、このルーンは、ぶっちゃけ「ルナティック」です。つまり狂ってる。
(見た瞬間に松田優作のように「なんじゃあああああ!こりゃぁあああ!!」って天に向かって絶叫したくなる。それがワルキューレ・ルーン。発売は20年前。日本での販売価格はベースモデルのGL1800のなんと倍以上。)
(ウインカーにマフラーにホイール。どれも凄いけど、特にホイールの質感がヤバい。もう四つん這いで覗き込んじゃいましたよ。ああ・・精神がルーンになる。)
(全体がメチャ質が高いクロームメッキとメタリック塗装で覆われている。フロントはなんとスプリンガーフォークだよ!オィィィイイ!!頭がおかしいのか??)
ワルキューレ・ルーンはもともとショーモデル。市販予定ではなかったものを、無理矢理量産して市販したらしい。しかも「ショーモデルに限りなく忠実に作っちゃった♡」というありえないほどの狂いっぷりを見せている。ぶっちゃけこの特別記念展示において、「平均的ご家庭の奥様方で構成されるカントリーな婦人会にジュエリー満載のゴージャスシロガネーゼが現れた!!」ような壮絶な事態になっている。
この手のバイクはこだわればこだわるほど製造コストが無限に上がっていく傾向にありますが、マトモな企業なら、どこかで歯止めを効かせるんです。しかし、その局面でホンダのいらん変態ぶりが炸裂してしまったのでしょう。ホンダのモットーは質の高い商品を適正価格で、というものですが、質の高い方に振り切って適正価格をやったんですね。当時のLPLが「凄い価格になりますけどっ!カスタムビルダーが作るより全然お安いんですよっ!!ビルダーにメーカーの恐ろしさを教育してやりましょう!さぁ俺のケツを嘗めろ!!」っていう俺ケツ理論を発揮して行くとこまで行ってしまったのだと思う(笑)
とにかくディティールとクロームの輝きの質がヤバいんですよ。あまりの輝きに、目がおかしくなりますから。ついてるパーツは到底量産品だと思えないクォリティ。質感を上げれば上げるほど部品は重くなっていきますから、最終的な装備重量はなんと418㎏に達しています。
オィィィイ!!どんだけ重いんだよ!!バカなの?死ぬの??
ヘタすると歴代GLベースのモデルで、最も重いのがコイツかもしれない。
しかも、このスーパーゴージャス頭のおかしなバイクは完全受注で全世界でコツコツ約4000台くらい作られたらしいんですよ。これ量産バイクと考えると少ないけど、この質を維持してトータル4000台ってクソ多くないか?だって、ショーモデルを4000台作れって言われてできますか?まぁ4000台作りきったのは量産メーカー、ホンダの意地でしょうけど、製造現場は血反吐ものだったと思う。
あと、この手のモデルは部品単体で買うとクソ高いんですよ。バイク見てると「私、コケたら大変なことになりますのよ♡オーーホッホッホ!!」って高笑いしてて背筋がゾッとする。もう一度言っときますけど、「💀価格は当時のGLの倍💀」ですから。パーツ価格は一体何倍だったんでしょうかね(笑)いや~怖いですね~。
ということで、最後は漫談みたいになっちゃいましたけど、今回のブログはここで終了。8000字オーバーの狂気のテキスト量に、大量の画像、そしてこの後に、とどめの漫画があるという、大長編、大ボリュームと相成りました。皆様いかがだったでしょうか?あまりに果てしない縦の長さに「いつ終わるんだ?もう勘弁してくれ!」と多くの方が思ったことでしょう。でも大丈夫。作ってる私も「マジで勘弁してほしい」と思いながら作ってますからね。もう泣きが入っていますから。
じゃあ何がクソなのかというと、物量です。縦に一本グソのように果てしなく長い。進めても進めても終わらないので、途中で8割の人がイヤになって読むのを止めると予想しています。しかし、このウザさこそが、私のブログの全部盛りの姿なのですよ!!それでは本文をどうぞ!!!!
ここ最近のホンダコレクションホールの目玉は、初代GL1000から数え、50周年を迎えたゴールドウイングの記念展示となっております!!パチパチパチ!!
いやーあらためて検証いたしますと、ゴールドウイングは50年間で7回フルモデルチェンジしてるんですよね。最初の頃はアメリカ市場の要求に応えるように、3年から6年くらいでモデルチェンジを繰り返してたんですけど、GL1500からいきなりモデルライフが長くなり、GL1500は13年、先代のGL1800はなんと16年。この2モデルで約30年引っ張っているんですよね。現行のダブルウィッシュボーンを搭載したGL1800だって、気がつくと今年でなんと8年目なんじゃが・・。私が歳をとるはずじゃのう・・。
まぁ、これは水平対向6気筒を搭載してから、「競合相手がほぼいなくなったので、モデルチェンジを頻繁に行う必要はなくなった」ってこともあるでしょう。モデルライフが長いのに、中古価格が安定しているのもGLの魅力。ベース価格は高いけど、購入があまり苦にならないのは、下取りがわけわからんほど高止まりしてるからですね。国によっては、500万円~800万円とかトンデモない価格で販売してるみたいだから、距離を走っていても輸出すれば高値がつくのかもしれない。
私もF6B時代からゴールドウイングに乗って12年目です。普通の人よりはGLに詳しいつもりではありますが、そんな私でもビカビカの歴代モデルをズラーッっと並べて見せられると、新たに気づくことは結構ある。
まず最初に衝撃を受けたのが初代GL1000。とにかく「バイクとして非常に良くまとまってる」んですよね。GL独特の異形感がまったくなくって、スタイリングに安定感がある。そのまとまりの良さはパッと見りゃすぐにわかるレベル。余計なものがなく、プレーンで、品質感が高く、見た瞬間「これはいいバイク」「メチャ走りそうですわ」って雰囲気が漂ってる。まぁオーラがあるってことですよ。

(「これ欲しいィィイ!これクレぇぇぇえ!!」って叫びたくなるのがGL1000。今見てもあまり古さを感じない。ちょっと今風じゃないかな~って感じるのはサイドカバーのデザインくらい。造形美の素晴らしさって永遠なんですね。)
1975年、ベトナム戦争終結を祝うように、当時の最大排気量をひっさげて登場したGL1000は、特性をパワーに振ることなく、トルクに振っていることからも、乗りやすさを重視した設定であったことは明らか。シャフトドライブを採用したのは1000ccという強大なトルクデリバリーに対し、当時のチェーンの品質では耐久性に疑問符がつく点を考慮したからってところもあるんじゃないでしょうか。
搭載された水平対向4発は、車体を必要以上に長くしないためにエンジンの下にミッションを潜り込ませるという画期的な構造を採用し、車体もギュッと締まってコンパクト。縦置きクランクの特性で直進安定性も十分。もうね。「いかにもちゃんと走りそう」なんです。バイクをぽんと出されて「これはCBです」っていわれても納得かな~っていうほど、スタンダードでフォーマルな出で立ちをしているんですよね。
ちなみに昔はコイツが「アメリカにおけるZ1の対抗馬だったのかにゃ~」なんて思っていたのですけど、GL1000の販売価格はZ1の1.5倍以上なんですよね。これだけ価格が離れちゃうと実質的な対抗馬にはなり得ないでしょうから、当初からアメリカ人の好みを想定したアメリカ戦略用モデルであったと推測されますね。実際現車を見た印象は、ガツガツ走るというより、気品がある高級モデルって感じ。
そんなアメリカで、ツアラーとして頭角を現したGLシリーズは、その後は市場の要求に応え、ゴージャスなグランドツアラーとしての道を歩んでいきます。真っ直ぐ続く道をひたすら走るアメリカにおいて、この手のバイクの商品力はハンパなく、旅要素が強くなるほど、販売台数も伸びていきます。初代GL1000からホイールベースを伸ばし、よりツアラーとしての資質を高めたGL1100&インターステートなどは、アメリカで「年平均25000台ペースで売れていた」のですから凄まじい。もうね。Z900RSが腰を抜かしますよ。
(こちらはGL1200、アスペンケイド。古き良きアメリカの文化を感じさせますね。)
その進化の過程を見ると、主力市場のアメリカにおける高度成長と高級概念のインフレーションをまざまざと見せられるような気になります。
その進化の過程を見ると、主力市場のアメリカにおける高度成長と高級概念のインフレーションをまざまざと見せられるような気になります。
ちなみに歴代GLのキャッチフレーズは
初代GL1000
「キング・オブ・モーターサイクル」
GL1100、インターステート
「キング・オブ・ロング・ツーリングバイク」
GL1200、アスペンケイド
「キング・オブ・ロング・ツーリングバイク」
GL1500
「アメリカン・キング・オブ・グランドツアラー」
GL1800(SC47)
「ザ・キング・オブ・モーターサイクル」
歴代GLに燦然と輝く「キング」のコンセプトどおり、GLはどんどんデカく、重くなっていったんですけど、これって、アメリカが豊かになっていく過程そのものなんですよね。で、バイクって「大きくなればなるほど印象は車に近づいていく」ってことが、この展示を見ているとよ~くわかる。
「それがゴールドウイングというバイクの存在の面白さであり、ジレンマでもあったんじゃないか?」って私は思うんです。ハーレーはハーレーでありさえすればいいんですけど、GLはホンダというバイクメーカーの中の一モデル。「その定義をどうするのか?」が非常に難しかったんじゃないかと思う。
それがピークを迎えるのがGL1500で、このモデルは前から見た印象が、バイクというより車なんですよね。
(こちらGL1500。私が限定解除した当時のGLがこれ。当時は東京に住んでましたけど、都市部でみるGLはバカでかいですよ~。「こんなデカくて重いの誰が乗るんだ?」って思ってましたね。装備重量410㎏です。)
細部も当時の高級車を彷彿とさせるものがあって、ゴージャスだし、とにかくデカい。バックギアまで入れちゃって、いろんな意味で「もうバイクやめて車でいいや♡」って方向に振りきった感があるんですよ。
そんなGL1500のキャッチフレーズは
「アメリカン・キング・オブ・グランドツアラー」
キャッチからも、バイクの文字が綺麗さっぱり抜けちゃってる。当時のアメリカはベトナム帰還兵の社会復帰問題などがあり、バイカーが次々とアウトロー化。ハーレー系に乗る人々のガラが非常に悪かったので、あえてその客層に迎合しない方向性を打ち出したかったって意図もあったんじゃないかと思います。
細部も当時の高級車を彷彿とさせるものがあって、ゴージャスだし、とにかくデカい。バックギアまで入れちゃって、いろんな意味で「もうバイクやめて車でいいや♡」って方向に振りきった感があるんですよ。
そんなGL1500のキャッチフレーズは
「アメリカン・キング・オブ・グランドツアラー」
キャッチからも、バイクの文字が綺麗さっぱり抜けちゃってる。当時のアメリカはベトナム帰還兵の社会復帰問題などがあり、バイカーが次々とアウトロー化。ハーレー系に乗る人々のガラが非常に悪かったので、あえてその客層に迎合しない方向性を打ち出したかったって意図もあったんじゃないかと思います。
(GL1500からそこはかとなく感じるハイソカー的雰囲気。バイクにおける高級の定義を、当時の高級自動車と同じところに見いだしていたのかも。)
で、それをなんとかもう一度バイクに戻そうとしたのが、先代GL1800だったんじゃないかって気がするんです。でも、この時点では市場はゴールドウィングに貪欲にいろんなものを求めており、そんな販売面での要請と、運動性を求める開発陣との板挟みの中、玉虫色の落とし所になっているんじゃないかと思うんですね。
で、それをなんとかもう一度バイクに戻そうとしたのが、先代GL1800だったんじゃないかって気がするんです。でも、この時点では市場はゴールドウィングに貪欲にいろんなものを求めており、そんな販売面での要請と、運動性を求める開発陣との板挟みの中、玉虫色の落とし所になっているんじゃないかと思うんですね。
車になりたいのか?バイクなのか?ゴージャスさなのか?走りの良さなのか?
それを絞りきれないまま、膨らむジレンマをバイクの中に凝縮し、全部をこなしてやろうとしたのがGL1800(SC47、SC68)ではないかって印象がある。つまりは全部盛り。キャッチコピーも「ザ・キング・オブ・モーターサイクル」。ツアラーに限定しない、あらゆる意味で、王の姿を打ち出そうとしたのかもしれない。
それを絞りきれないまま、膨らむジレンマをバイクの中に凝縮し、全部をこなしてやろうとしたのがGL1800(SC47、SC68)ではないかって印象がある。つまりは全部盛り。キャッチコピーも「ザ・キング・オブ・モーターサイクル」。ツアラーに限定しない、あらゆる意味で、王の姿を打ち出そうとしたのかもしれない。

(歴代GLを眺めてみると先代GL1800は「バイクにおいて王様とは何?」って考えた結果、全てを兼ね備える存在になろうとしたんだろうな・・って気がする。)
まぁ、ある意味では中途半端なんだけど、いろんなものを一つに押し込んだ結果、「何ものでもない独特な、ぬえのような妖怪感」があるのも先代GL1800なんですよね。でも、それこそが人の業だって気がして、私は嫌いじゃない。しかし私の好みはどうあれ、機能的インフレはさらに進み、車体も大きくなり、バイクの運動性に最も影響を与える車重は417㎏に達してしまう。初代に比べてなんと150㎏も太った巨体になっていたんです。
それが現行モデルでどうなったのか?それがこのブログのオチになる。
実はですね。今回の展示には、とても奇妙で、特徴的で、象徴的なところがあったんですよ。それは、
「この50周年記念展示に現行のSC79が存在していない」
ということなんです。
「はぁ?それどういうこと??」
って皆さん思いますよね。
だっておかしいでしょ?GLの50周年特別記念展示なんだから本来は、「過去から現在までの50年分のGLをずらっと並べる」のが当然だし、「50年の最後の8年は現行のSC79が担当している」んです。にもかかわらず、現行のSC79は1階の休憩室にあるだけで、この記念展示ブースには並べられていなかったんですよ。でも、この展示をずーーっと見て来ると、それがなんとなく理解できるんですよね。


(先代と現行型の比較。横幅がギュッと詰められている。車格も一回り小さいのですが、乗った感覚は二回り小さなバイクに感じる。まぁ一言でいうと無駄感がない。)
私は水平対向6気筒というエンジンのトルクフィールが大好きでGLを買っている口で、大地を踏みしめながら、タップリしたトルクでガーッと進んでいく乗り味が好きなんです。決してタンデム用途のメガツアラーが欲しくて買ってるんじゃないんですよね。それ故、走りに不要な箱をまるっと排除したMT仕様を選んでいるところがあるんですが、現行のSC79って、それまでの歴代GLとコンセプトがかなり違う気がするんです。
ゴールドウイングは現行のSC79で、過去の進化を否定するかのような猛烈な凝縮化に向かい、デザイン文法もアメリカ専用から明らかにヨーロッパ市場を意識したモノになっている。現行のSC79は私には「ゴールドウイングとパンヨーロピアンを合体させて2で割った」ようなバイクに見えるんです。
(こちらがST1300。パンヨーロピアン。)
(こちらがST1300。パンヨーロピアン。)
同じ機能を持ちながら、世界中の顧客に受け入れられるよう、とにかく合理的でコンパクトでユーザーフレンドリーに作ってあって、余分な贅肉を徹底的に削ぎ落としにいっているのがわかるんですよね。それはとりもなおさず、アメリカ市場から世界へと市場を拡大したことと、「巨大で乗りにくいものはこれからの時代、決してプレミアムではない」という時代の価値観の変化を捉えたものだと思う。
そこにあるのは異形感ではなく、巨大にナリながらも初代のGL1000で感じたような、「極めてまっとうで締まったバイク」感です。フロントのダブルウィッシュボーンの強靱さにより、対応速度域も見違えるほどに上がってます。
ちなみに現行モデルであるGL1800・SC79のキャッチフレーズは
「ザ・ホンダ・プレミアム・ツアラー」
わかります?現行型のSC79は歴代ゴールドウイングで初めて
「キングの文字が外れてる」
現行型は、ハーレーのウルトラに対抗するかのような、デカくて威圧的でゴージャスな王者路線を止めて、それよりも「よりホンダのツアラーらしくある」ことを選んだんだと思うんです。そんなSC79はGLの進化の現在形であり、パシフィックコーストやパンヨーロピアンなどの歴代フルカバード・ツアラーのDNAもその内部にしっかり取り込んでいると思う。
だからこそ、ゴールドウィングの50年記念展示の副題である「The King of Motorcycles を目指して」というコンセプトに対して、あえて「現行型を外したってところがあるのかな・・」って私は感じました。
昨今は経済的な成功よりも自分らしくあるという個性を重視するようになってるから、「王様という地位に依存した価値観」はいかにも古いんですよね。日本じゃ既に中古買取業者の社名になってて、イジり倒されるまである。
いやね。みんなでわいわい走ってる方々は、集団を形成してるから、何らかの地位が生まれることもあるかもしれないですよ。でもね。私は僻地で単騎駆けなわけですからねぇ・・。家臣がいないのに王って言われても、「はぁ?ネタですか?イジりですか?」ってなるじゃないですか。
「キング・オブ・モーターサイクル」って、一昔前はハーレー雑誌もよく使ってたこともあり、私は一時期F6Bとダイナという2台の「自称キング・オブ・モーターサイクル」に乗ってたわけですけど、「良いバイクだな~」って思ったことはあっても、「これは王ですわ♡」って感じたことは一度たりとてないんですよね。そりゃそうですよ。「バイクという機械が表現するべきなのは性能と機能と質であって、地位なんかではない」んだから。
私にとって、地位っていうのはステータスでもあるけど、ある種の「呪い」や「呪縛」でもあるんです。社会で生きていると、役割に応じて地位というものが与えられたりはするけど、それは、その人がより能力を生かせるよう、コミュニティが用意してくれるものです。だから、地位によって人の能力や価値が変わるわけじゃないし、その地位のためにコストを要求されるってのもおかしな話なんですよね。でも、多くの人は「地位によって何かが得られる」って勘違いしてるから、そこにコストを惜しまない。それを呪いといわずして何というのか?
私にとって「King」って言葉はそういう「どーにもならん呪い」の象徴です。消費において王の地位に留まろうとする限り、そのコストを常時支払わねばいけないし、王の中の王になりたい♡なんて背伸びした日にゃ、そこにかかるコストは青天井のインフレーションなんですよ。
「王の世界にはインフレしかない」という点にGLが気づいて、王様というレースから足抜けをした。ハーレーは今まで続けてきた排気量インフレによる王様型販売形態をどうするのか、岐路に立っているって感じだと思いますね~。
で、ここからは余談なんですけど、今回のゴールドウイング展示で、メチャクチャ目を惹いたモデルが2つあるんですよ。それはGL1100と、ワルキューレ・ルーンです。
GL1100はとにかく、この中でどれが欲しい?っていわれたら、真っ先に選んでいたと思う一台。「ぼくのかんがえた、りそうのあめりかん」にスッゴク近かったんです。そもそもGL1000に心を打ち抜かれてましたから、それをロングに仕立て、アメリカ風味をタップリかけたGL1100は「日本でアメリカン・クルーザーに乗るのならこんなのがいい!」って心から思えた。あと、なによりシートが凄いんですよぉ。革フェチにはこの威厳のあるシートはたまらんです。シートだけでいいねを5000回くらい押せる。
(オィィィ!見てくれよ、このクッソコストのかかったシートを!分厚く盛り上がるクッションと深く深く縫い込まれたタック、明らかに職人が手作業で縫い込んでるじゃん。今のバイクにこんなタックシートがあるか?社長椅子にもこんなのねーよ!)
(この極上シートの座り心地を想像するだけで尻が喜んでしまう。シートが「Hey Siri」ってこっちに呼びかけてくるから、俺はAIだったのか?って思っちゃう。)
そして、究極はワルキューレ・ルーン。これは今回のコレクションホールのバイクの中でも、目に焼き付いて離れない一台。レーサーは爆発するような情熱と熱量の凄さがありますけど、このルーンは、ぶっちゃけ「ルナティック」です。つまり狂ってる。
(見た瞬間に松田優作のように「なんじゃあああああ!こりゃぁあああ!!」って天に向かって絶叫したくなる。それがワルキューレ・ルーン。発売は20年前。日本での販売価格はベースモデルのGL1800のなんと倍以上。)
(ウインカーにマフラーにホイール。どれも凄いけど、特にホイールの質感がヤバい。もう四つん這いで覗き込んじゃいましたよ。ああ・・精神がルーンになる。)
(全体がメチャ質が高いクロームメッキとメタリック塗装で覆われている。フロントはなんとスプリンガーフォークだよ!オィィィイイ!!頭がおかしいのか??)
ワルキューレ・ルーンはもともとショーモデル。市販予定ではなかったものを、無理矢理量産して市販したらしい。しかも「ショーモデルに限りなく忠実に作っちゃった♡」というありえないほどの狂いっぷりを見せている。ぶっちゃけこの特別記念展示において、「平均的ご家庭の奥様方で構成されるカントリーな婦人会にジュエリー満載のゴージャスシロガネーゼが現れた!!」ような壮絶な事態になっている。
この手のバイクはこだわればこだわるほど製造コストが無限に上がっていく傾向にありますが、マトモな企業なら、どこかで歯止めを効かせるんです。しかし、その局面でホンダのいらん変態ぶりが炸裂してしまったのでしょう。ホンダのモットーは質の高い商品を適正価格で、というものですが、質の高い方に振り切って適正価格をやったんですね。当時のLPLが「凄い価格になりますけどっ!カスタムビルダーが作るより全然お安いんですよっ!!ビルダーにメーカーの恐ろしさを教育してやりましょう!さぁ俺のケツを嘗めろ!!」っていう俺ケツ理論を発揮して行くとこまで行ってしまったのだと思う(笑)
とにかくディティールとクロームの輝きの質がヤバいんですよ。あまりの輝きに、目がおかしくなりますから。ついてるパーツは到底量産品だと思えないクォリティ。質感を上げれば上げるほど部品は重くなっていきますから、最終的な装備重量はなんと418㎏に達しています。
オィィィイ!!どんだけ重いんだよ!!バカなの?死ぬの??
ヘタすると歴代GLベースのモデルで、最も重いのがコイツかもしれない。
しかも、このスーパーゴージャス頭のおかしなバイクは完全受注で全世界でコツコツ約4000台くらい作られたらしいんですよ。これ量産バイクと考えると少ないけど、この質を維持してトータル4000台ってクソ多くないか?だって、ショーモデルを4000台作れって言われてできますか?まぁ4000台作りきったのは量産メーカー、ホンダの意地でしょうけど、製造現場は血反吐ものだったと思う。
あと、この手のモデルは部品単体で買うとクソ高いんですよ。バイク見てると「私、コケたら大変なことになりますのよ♡オーーホッホッホ!!」って高笑いしてて背筋がゾッとする。もう一度言っときますけど、「💀価格は当時のGLの倍💀」ですから。パーツ価格は一体何倍だったんでしょうかね(笑)いや~怖いですね~。
ということで、最後は漫談みたいになっちゃいましたけど、今回のブログはここで終了。8000字オーバーの狂気のテキスト量に、大量の画像、そしてこの後に、とどめの漫画があるという、大長編、大ボリュームと相成りました。皆様いかがだったでしょうか?あまりに果てしない縦の長さに「いつ終わるんだ?もう勘弁してくれ!」と多くの方が思ったことでしょう。でも大丈夫。作ってる私も「マジで勘弁してほしい」と思いながら作ってますからね。もう泣きが入っていますから。
コメント
コメント一覧 (22)
コレクションホールシリーズ第2回、待っていました。
しかし歴代のゴールドウィングを見て思うのは、どのモデルもすごくお金かけてますよね。やはりフラッグシップモデルはメーカーの顔ですから、贅沢にコストかけるんでしょうね。限界はあるにしても。
その極致がワルキューレルーンですよね。これのホイールって、日本の職人さん夫婦による手磨き(バフがけ)だって聞いたことがあります。なので1日に20セットくらいしか作れなかったって。なので異様なほど輝いているんでしょうね。車体もライン組み立てでは無く、手組みだった可能性もありますよね。
こういったとんでもねえバイクって、所有しなくても良いけど一度乗ってみたいとは思いますね。スズキのM109Rとか、トライアンフのロケット3とか。ボスホスは別にいいです。
きんつば嬢になってからの路線変更仮説、大変興味深かったです。ただこの路線で行くと、ゴールドウィングの姿は今後大きく変わっていく可能性がありますね。ただのツアラーになっちゃってたら悲しい。
私はかつてのゴージャスな1500に乗ってみたいなあとか、てんこ盛りの先代もいいなあと思います。現行きんつば嬢にも乗ってみたい。私はこういったゴージャスてんこ盛り系も好きなんでしょうね。ですが今ってツアーしかないんですよね。残念。あのでかいタンデムシートはいらんです。ない方がかっこいい。
最後の漫画のきんつば嬢、面白かわいいですね。「グッ」がいい。
へっちまん
が
しました
えー、パーツリストをざっとですが純正価格は前後フェンダーとタンクで150万円超えます。めっきのホイールは前が確か20万円、後ろが43万円、エンジンガードは1個約11万円、エアクリフィルターは相対的にお得な8000円くらい、価格リストに3桁-4桁USDがずらりと並んでおります。もちろんパーツは米国経由、日本製でも米国経由です。
それでもお金出して買えるならまだいい方でスペアパーツ集めにヤフオクとebayを毎日にらめっこしてます。今なら車体ごと買った方が安いまであります。
それでもいいんです。この見た目のバイクを所有できるなら何でもやります。
完全に魅力にやられております。
へっちまん
が
しました
撤収!
へっちまん
が
しました
強いて言えば、寺沢武一氏のCG画の世界で、ドミニク嬢が寄りかかっている画ぐらいしか想像できませんw
あと、ルーンと並べて見劣りしない乗り物って、ロールスロイス・ファントムぐらいかなぁとも思います。
ルーンのラジエターカバーの縦の格子がロールスのパルテノングリルっぽいですし
でもルーンと並べたらロールスですら引き立て役になるでしょうね
へっちまん
が
しました
夕食を済ませ、今度は反芻しつつテキストを読み進める羽目に。私の消化器官はまだまだ順調だけど、読解力と持続力のほうは、加齢に伴い怪しくなってきたようです。
ズバリ!欲しいのは、GL1000と ダブルウィッシュボーンGL1800です。取り回しを考えるとGL1000か? 改めて眺めてみると、半世紀前の発表当時に感じた違和感は何処へやら。CB750four に匹敵する完成度が見て取れます。異形のサイドカバーも、ガソリンタンクの内包を考えると、むしろ好ましいデザインかと。
テキストでは、呪い呪縛の文節が秀逸でした。こうも分かりやすく書かれると、座布団を3枚!って感じでした。
へっちまん
が
しました
同じ1800でも先代は超デカいっすね〜現行めっちゃスリム!
先代のまま乗り続ける人の気持ちもわかるし、現行から入った新規層の気持ちもわかる
ワルキューレシリーズって暴れん坊将軍こと徳川吉宗が城下町でちょっとハッチャけた姿ような感じに思います
初代は花街でチョイワル、F6Cは旗本三男坊の新さん……
それに比べてルーンはマツケンサンバIIッッ!!
あんなん見たら誰も彼も浮かれ騒ぎですよ、仮面ライダーで何の手も加えられず登場したモデルってアタマオカシイ(大絶賛)
コンセプトの3種のうちT2のルーンが選ばれたわけですが、個人的にT1のホットロッドも好きですね(マグナ系に近いかも)
へっちまん
が
しました
およそ15年ぶりくらいになるタンデムで無謀にも100㎏超の友人を後ろに乗せてのスタート、水平対向の洗礼か、極低速で横揺れががががが!
重い重い重い重い重いィィィィッ!!
乗り方を知らず腕だけで支えたらスタートしょっぱなから立ちゴケしそうになりました。
股関をシートにうずめるようにして足を八の字で踏ん張るようにしたら安定しました。
走り出したら凄まじいちょくし
へっちまん
が
しました
確かに推測の通りかも知れませんね?まさかKingつながりで展示内容を決めた?
まああながち?解らないでもないですが、この推測は凄いと思いました。
何処に在るのか?と思ったらギャラリー内に有りましたね?笑っちゃいましたが。
以前の展示を観ていた者としては「なんだかなぁ?」って感じでしたが、満足して頂けた?様で何よりです。・・・Runeのねたですかね???w
何に満足したのか?については第三幕で語られるのでしょうか? 怖いですね。
あとコメントし辛いとの書き込みもありましたが、気にせず書き込んで下さいね!
何ならモデルのダメ出しに付き合いますか?www 皆様も想いのままにどうぞ!
へっちまん
が
しました
メイドちゃんが欲しいのですよ。今日は暖かったのでフルロックターン練習とアップの為に空いた道で遊んでたのですが、ちょっと調子に乗るとステップがガリッと来て【程々にね〜😋】と窘めてくれるのが良いです。停止からアクセルチョイ煽りでクラッチ繋がるし、リアブレーキ加減だけで半クラッチしてくれるし、シフトダウンのブリッピングは無茶苦茶上手い😋唯一の不満は如何にも仕事してると言いたげなガチャガチャ作動音のみです。是非へっちまんさんもDCT乗ってみて下さい。前モデルの大袈裟が無くなり引き締まったSC79は私には最高🤣
もうすぐ待望の六甲で〜す。
へっちまん
が
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