私はバイクとの出会いはご縁だと思っています。(チーン)

「オィィィイイイ!!なんか法話みたいなのがはじまっちゃったんだけど!!」

とツッコみそうになった方、安心してください。私は、この世の縁(えにし)を語れるような、そんな高尚で徳の高い人間ではありません。

消費の世界で浪費家が「ご縁」なんて言葉をもち出すときは、「ほぼ9割方が自己弁護」なんです。自らの浪費のバカさ加減を薄めるために、適当な方便を引っ張ってきて、それをコスりまくることで罪悪感を緩和してるだけなんですね。

ええ、わかっていますとも、全ての元凶は私の浪費癖であることは・・。そう。また「☆欲しの王子様☆」になっちゃったんですよ。内面的な心理描写をまったく無視して、観察日記的に見れば、私がバイク店にフラフラと吸い込まれ、無一文になって出てきたってだけですよ。それって「ボッタクリ☆バーの色仕掛けでケツの毛まで抜かれて出てくるオッサン」と外形的には何ら変わんない。

だからこそ、「ご縁」とか「運命」とか「えにし」とかとりあえず言っとかないと、「こんのスカポンタンがぁあああああ!!!」ってことになっちゃうわけです。

長年バイクに乗ってきて、自分なりに「刺さるバイク」「刺さらないバイク」ってのが、ものっ凄くハッキリしてきたってのはわかるけど、悲しいことに「どのタイミングで何が刺さって、何が刺さらないのか」っていう部分については、自分でも良くわかっていないところがある。私は欲望センサーが振り切れると、すぐに白目になって契約しちゃうんですけど、それがどんなタイミングでやってくるかは、崇高なるバイク神の御意志で、私が考えてもしょうがないんです。ただ、多くの人にとっては「衝動買い」にしか見えない事象でも、私的にはその発動には一定のメカニズムがあるんですよね。

私がバイクを見て欲望に支配され、白目と化してしまう要件は

「対象となったバイクに対し、自分の中で檻のように沈殿してくすぶっている何か」

があり、

「バイクに出会うタイミングが運命的」

で、

「そのとき財政的な余裕がある」

という3つの要素がゲッターロボみたいに合体したときです。三つの要素が一つになって、消費の魔王が百万パワーとなり、良識をタコ殴りにしはじめる。そう、心の奥でそっと囁く声がする。

「魂を売る。それだけでいいんだ。」



昨年までは、この3要素に加え

聖帝様(←妻です)のご理解、ご納得を得なければならない

っていう欲望の進撃を阻む超巨大な壁があったんですよ。でも、きんつば嬢によるタンデム接待が功を奏したのか、聖帝様が「自分の金で買う分には勝手にすればいいんじゃん?」ってある日突然言い出して、最大の壁が消滅しちゃったんですよね。今の私は欲望の侵攻に対して丸裸。巨人の進撃を食い止める壁がなくなった王都ミットラスみたいなもんですよ。このため、いつでもどこでも白目になって「通帳残高崩壊の悪魔的契約」を行うことが可能になってしまっているんです。

でもね~。そうはいっても、私自身が消費者としてそれなりに枯れてますからね。そこをこじ開けるような「運命的で衝撃的な出会い」なんて、いくら何でもそうそう起きませんから。アニメで言うと「遅刻しそうになってパン加えながら走っていた主人公が、同じく遅刻しそうになってる美少女と曲がり角で鉢合わせしてラッキースケベ♡」くらいの運命度が必要になるんです。

最近ではヴィーセ本口さんが、この三位一体が綺麗に揃った典型的パターンでした。それまで私はイタ車を所有したことがなくて、それをちょっとしたコンプレックスとして引きずってたんです。その中でもモトグッチV7は、小学生の頃に、こち亀でその存在を知って以降、ずーっと私の中でくすぶり続けていたバイクでした。しかし、私はこれまでの人生で

V7の実物をこの目で見たことは一度たりともなかったし、今後も見ることはないと思っていた

東京にいた頃は、教習所で大型免許がとれなかった時期だから、大型輸入車自体が少なくて、たまにドカの900SSや883が走ってるのを見るくらいだったし、田舎に引っ込んでからはソロツーの世界に入っちゃったから、V7を見るもクソもなかったんですね。そのV7が、たまたま忘れ物を届けに行った赤男爵で私を待っていた。しかも新車で・・。奇跡か?

赤男爵なんて年に1回行くか行かないかですよ。その絶妙なタイミングで置いてあるってどういうこと?乗り出し価格もストリートトリプルの売却費用とHAWK11の事故の焼け太り分とガレージキット処分金額を足したものとほぼ釣り合っていて、持ち出しはほぼゼロ。

こんなの、もうこうなるしかないんですよ ↓ ↓ ↓

ルパンダイブ
(全ての世間体と衣類を一瞬で脱ぎ捨て、欲望全開で襲いかかっていく通称ルパンダイブ。据え膳食わぬは男の恥。浪費家は特定の環境下におかれたときに、一瞬で理性のタガが吹き飛んでしまい欲望の虜になるのが特徴です。)

そう、消費において運命を感じてしまうと、浪費家はそこから逃れることなどできない。あいだみつを風に言うなら「買っちゃったっていいじゃない。だって運命だもの♡」って感じ。理由さえつけば人の心は弱いもの。今回も、運命にガブリ寄られて、あっという間に土俵下でした。

ここからは、バイク購入に至る顛末と私の心のアップダウンをとくとお楽しみください。





ことのはじまりは10月の初旬でした。タイヤ交換とシャフトドライブのオイル交換,12ヶ月点検などで、きんつば嬢をホンダドリームに預けたんですよね。で、タイヤ交換と点検整備が完了したって連絡を受け、週末にきんつば嬢を引き上げに行ったんです。そのとき、たまたま店の奥に1台の黒いバイクを見つけて、そのバイクに目が釘付けになってしまったんですよ。

「へぇー、珍しいね。走ってるの赤ばっかりで黒は初めて見たかも・・。これ売りものなの?」

「ええ、ついこの間、買い換えのお客様の下取りで入ってきまして・・。程度が良いので認定中古車扱いで売ることにしました。」

「・・・距離は?」

「1万5千㎞です」

「ほぉ~・・」(バイクの周りを回り始める)

その時、私はあくまで平静を装っていましたが、もうこの時点でバイクから「買ってくださいまし!買ってくださいまし!!買ってくださいまし!!!」って凄いオーラを感じて、「うっ・・」って30㎝くらい腰が引けちゃってたんですよ。ただ、その日はバイクを引き上げにきただけだし、午後は天気が良さそうだったから、さっさと店を出て、そのままニュータイヤの慣らしツーリングに出かけたんです。

で、問題はここから。この出会いで、数ヶ月前から私の中でいろいろとくすぶっていたものが急激に目覚めはじめちゃって(それがどんなものなのかはまた後日)、2日くらい悶々とすることになったんですね。しょうがないので、「・・とりあえずアタリつけて、もう一回見に行くか・・」ってことで、週明けにドリームに電話をかけてみたんです。

「あー、この前店にあった認定中古のホニャララなんだけど~・・あれ、気になってるんだよね。車検って残ってるのかな。」

「残り車検1ヶ月なんですが、それでお売りするわけにも参りませんし、納車の時は新規の車検は付けることになると思います。」

「となると今の表示価格よりさらに上がるよね。」

「まぁ、そうですね。ただ、このバイク、先約で商談中のお客様がおられまして、そちらの方が優先になります。」

「あ~そうなの。それはしょうがないね。」

正直、この時点で、それまでのイケナイ邪念は急速に霧散しちゃって「スン・・」って状態になってました。消費の炎がぐわーっと盛り上がる前に水ぶっかけられて消火した感じ。店員さんのあまりノリの良くない反応からも、「これはもう、自分のところにやってくる流れじゃないなぁ。」って思ったんですよね。

英語圏のことわざに「幸運の女神には前髪しかないのじゃ!」って金言がありますが、運命の女神も見事なくらいの「後ろハゲ」で、前髪つかみ損ねると、もう掴むところがない。だからこそ、すぐ行動しないといけないんですけど、悶々としていた2日間の迷いが女神を遠ざけたみたい。その時の心境は、「ああ、このバイクとは、ご縁がなかったな・・」って、割とアッサリしたものでした。

ちなみにこのバイク、グーバイクにも出品されてたんですけど、その日の夜には、そこからも登録がなくなってたんですよ。で、それ見て「あ、やっぱ先約の方が押さえたんだな。」って思ったんですよね。

で、それから数日後、赤男爵の作業予約に空きがあったんで、モトグッチV7をオイル&フィルター交換のために持ち込んだんです。オイルリザーブ契約してるから、当面オイルはタダだし、私の通う店にはなぜかモトグッチのオイルフィルターが常備在庫されてるから、さらっと行っても交換ができる。で、交換待ちの間に事務所で店長と与太話になりました。

(パソコンを見ながら)最近どうですか~?なんか気になるバイクありますかぁ~?」(これ、店長の常套句です。)

「そうね~。ドリームにあるにはあったんだけどね~、先約があって売れちゃったみたい~」

「へぇ(横目でこちらをチラッと見る)、それなんてバイクですか?」

「ホニャララだね~。ホンダドリームに綺麗な中古があったんだけど、まぁご縁がなかったよね。タマ数あるようで、走ってるとこあんま見ないし・・。」

「おっ!それ同じやつが、明日店に入ってきますよ!」

「え?は?ナニィィィイイイイ!!!」

「いや、超奇遇ですけど、明日買い取る予定になってるんです。モノ見てなくて電話で状態聞いただけですけど、走行1200km・・だったかな?程度は良いんじゃないかと思いますよ。」

「オィィィイイイ!!なにそれ!奇跡じゃね?色は??」(椅子から立ち上がる)

「赤ですね。」

「・・なんだぁ・・赤かぁ・・・」(着席)

「ダメっすか?」

「赤はピンとこないんだよね~。ドリームで見た黒はメチャクチャ刺さったんだけどなぁ・・」(頬杖をついて虚空を見つめる。)

「そこはまぁしょうがないですね。」

「ちなみにさぁ、それ買い取れたら、いくらで出す予定なの?」

「〇〇〇万円くらいですかね」

「は~~・・プレミア価格じゃん。」

「それでも一時期に比べたら全然マシですよ。」

「そんなに高かったの?」


「最近は相場下げてますけど、業者オークションでも程度のいいタマがなくて取り合いです。ヒキがありますから、これ以上は下がらないんじゃないですかねぇ・・。この手のは年式が古くなっても、根強い需要がありますから、古くなればこなれて安くなるっていう、中古の良いところがあんまないんで、予算が許せば新しいのがオススメですよね~」

「・・まぁ・・それはわかってるんだけどさぁ・・(ため息)

「とりあえず、明日天気良ければお客さんが持ち込んでくれることになってるんです。入ったら連絡しますか?」

「一応は見ておこうかな・・電話くれる?」

「わかりましたぁ。」





(翌日の午前10時半頃、携帯が鳴る。)

「へっちまんさん。おはようございます!昨日お伝えしてたバイクが入ってきましたよ~!!」

「はやっ!朝一じゃん!まぁヒマ見つけて、また見に行くわ」

「あの・・その前にお伝えしておかなきゃならないことがありまして・・」

「え?」

「申し訳ありません。実は私、へっちまんさんに2つ間違ったことをお伝えしていました。」


「なに?」

「まず距離なんですけど・・・5700km走ってました。」

「ああそう。程度さえ良ければ距離は別に気になんないから。ドリームにあったのだって1万5千㎞走ってたし。」

「あともう一つが重要なんですが・・・」

「ん?」

「すいません。バイク、赤じゃなくて黒でした(笑)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



💀ズギューーーーーン💀

0c96a2b838576941a9342a704bf574f5


💀どかーーーーーーーん💀

大爆発


「オ、オ、オ・・」

「オイィィィィィィィィイイイ!体清めてすぐ行くわ!そこで待っとけクォラアアアア!!!」(風呂へ全力疾走)





1時間後・・


「どうですか?」

「うん、いいね。車庫保管だね。申し分ないね。」

「まだ洗車もしてないのにこの綺麗さですから。立ちゴケ傷もありませんし。お高いコーティングもされております。」


「で、価格はおいくら?」

「〇〇〇円です。」

「げ・・・昨日聞いたときより距離増えて価格上がってんじゃん。」

「すいません。本当はウチで買い取って出すつもりだったんですけど、売主さんと価格があわなくて委託販売になっちゃったんです。で売主さんの希望価格にレッドバロンの仲介手数料のせるとそれくらいに・・。」

「相場以上のものは買えないなぁ。昨日話していたのと同じ価格でいいんだったら、今決めるけど?冬に入ったら、どうせ売れないんだし、長期在庫イヤでしょ?」


「ですよね~。お客さんに確認とってみます」

店長がその場から離れ、事務所から電話をかける。しばらくして店長が帰ってくる。

「へっちまんさん!OKだそうです!!」

「・・・・OKなんだ・・・・・」(超遠い目)

「今決めるっていった手前買いますよね」

「・・あのさ・・確認なんだけど・・」


「なんですか?」

「ホンダドリームとレッドバロンが結託して劇場型詐欺やってるんじゃないよね・・」

「なにとんでもない妄想してんすか?ありえないでしょ?」

「・・だよねぇ・・・・」

とまぁ、こんな感じです。それまでの流れから、私は「運命の女神とすれ違ってしまった」と思ってたんですけど、どうやら本命は別にいて、注意深く私をストーキングしてたようなんですよ。それが今、ナイフを持って私の背後から忍び寄り、後頭部をメッタ刺しにしているんです。

この時点で私の良心は運命の女神の凶刃に倒れ、完全に白目ゾンビと化した私はいつもの通り、売買契約書自動署名人形になってしまったというわけです。委託販売のバイクが赤男爵にあったのって僅か数時間。右から左で委託手数料ボロもうけの店長は心の中で、秋の収穫の踊りを踊っていたことでしょう。

まぁ私も委託で売ることはあるから、委託してる側の気持ちも良くわかるんですよ。「自分が預けた数時間後に購入希望者が出てくる」なんてのは、タイミングがハマりすぎてて売る側にとっても「完全に運命」なんですね。往々にしてこういうタイミング逃すと長期委託になって「ヒィィ・・全然売れねぇ・・」ってことになるから「これ逃したらヤバい!売らなきゃ!」ってことになるんですよ。だから、売り側も価格を下げてくれたんだろうと思います。


ということで、私の元にやってきたバイクがこちら。

20241104_121329327

「CB1100EXのファイナル、2022年式のダークネスブラックメタリック」です。

20241104_142705499(現在、操作系を微調整中ですので、撮影する度にハンドル角度が変わってるのはご愛敬。)

なお、このバイクが納車されてから1週間ほどした頃、ホンダドリームさんから連絡がありました。

「へっちまんさん。前回お電話頂いた時に、うちのCB1100EXが気になってるとおっしゃってましたけど・・・」

「ああ、でもあれもう売れたんでしょ?グーバイクの登録消えてたよね。」

「いえ・・実は先約でご商談していたお客様が諸般の事情で買えなくなっちゃいまして。それでいかがかなって」

「あらら~。こっちはとっくに売れたと思ってたから。赤男爵にちょうど良いタイミングで入ったファイナルの黒を買っちゃったよ。」

「・・・・」

まぁ、こういうものですよね。前回の電話でもうちょっと引き留めてくれたら、結果はまた違ったのかもしれないけど、電話ではそんなそぶりもなかったですから。運命の女神の前髪をつかみ損ねると後で掴むところがないってのは、買い側もそうだけど、売り側も同じ。

私としても一旦つれなく通り過ぎたけど、他人が前髪を掴み損ね、その結果こっちに戻ってきたものより、自分でダイレクトに前髪を掴みにいった奴の方が気分が良いことは間違いない。とりあえず、今回の取引に関してはいろいろな意味で、ホンダドリームさんとは、ご縁がなかったってことなのでしょう。商売って結局はそういう縁のものなんですね。

ということで、新たなメンバーCB1100EXさんの購入の顛末をお送り致しました。次回でなぜCB1100が刺さったのか?ってのを自分なりに考察し、一連の購入記を終了したいと思います。




(オマケ漫画「答えあわせの後に・・」)
紹介CB1P

紹介CB2P1