人様から見ると、私のダイナってほぼフルカスタム状態だと思うんですけど、このブログはじめて8年間、カスタム内容を細かく紹介したことはないんですよね。

そこで、今回はこのダイナを通して「カスタムとは何か?」という、見果てぬ命題を考察してみたいと思います。皆様のカスタムの多少の参考になれば幸いかも・・。でもテキストがまた長いんです・・ごめんなさい。

ちなみに私のダイナのカスタムは、基本的にほとんどがボルトオンで、バイクのディメンションを変えたり、フレームなどの切った貼ったはありません。なんでかって言うと、自分のできる範囲で、手の届く範囲で、コツコツやってきたからです。

ダイナカスタム
(こちらダイナのカスタム概要です。とりあえず大物だけ。ミラーとかウィンカーとか細かいものは純正ですけど、ハーレーは純正も質がかなり高いです。)

記憶を掘り起こせば、最初のカスタムはハンドルバーでした。なんでハンドルだったかというと、ダイナはポジションが大柄なアメリカ人基準で、小柄な私に全然あわなかったからなんですよね。このハンドルが好みにあうものに落ち着くまで、ああでもないこうでもないと、3回くらい交換してるんです。はやくも沼にハマって、無駄金が・・・んー・・・。

しかも、市販品では残念ながら、私の体格にビタッとくるハンドルがなかった。幅は丁度良いんだけどプルバックが・・とかプルバックが丁度良いけど、ハンドル幅が広すぎて・・・とか、どうにもハマらない。しょうがないので、ディーラーの店長に泣きついたんです。そしたらアッサリと

「ああ・・それなら、プルバックの丁度良いハンドルの左右をカットしちゃいましょう♡」

ってことになり、幅を縮めた上で、ドリルで新規にスイッチボックスの固定穴を開けて貰って、それで落ち着いた。「おお、これが現物あわせのハーレー世界なのか・・」ってちょっと感動しましたね。あとグリップとペグとシフトレバーはクリアキンでドレスアップ。クリアキンってアクセルグリップが太めなんですけど、そのおかげでアクセル入力が軽くなり、長距離がメチャ楽になりました。ペグは今年経年劣化でゴムがちぎれちゃって、2セット目に交換、まだ販売在庫があったようでほっとしました。あと、夜に走ることが多いので、ヘッドライトも明るいLEDに変更してます。

DSC_1686
(ヘッドライトはLED、確かCVOあたりのパーツからの流用だったと思う。)

その後、幅が広く、尻がはまり込んでオマタが開き気味になるシート形状をなんとかしたいってことで、ド定番のK&Hのシートに交換。このK&Hのシートも購入から10年を迎え、ウレタンスポンジがヘタって板みたいになっちゃったので補修に出してます。そしたら「シートの補修はできないカラ、そういう奴には新品を8割の価格で卸してルゾ♡」って対応で、結局新品に・・。これも2セット目になっています。これに関しては、このブログでも顛末を書きました。(→)あれから、もう3年も経ったんですね・・。

足回りについては、減衰が効いておらず接地性に難のあったリアサスをオーリンズのストリート用に交換し、最終的にはフロントサスもオーリンズに交換。タイヤも色々試した結果、メッツラーのマラソン・ウルトラで固定してます。

エンジン回りは低回転域で薄すぎて違和感しかない特性をなんとかしたい・・ということで、吸排気の変更とインジェクションチューンに着手。マフラーは田舎の夜走り&近所迷惑を考えると車検対応マフラー以外に選択の余地はありません。

初代マフラーはデイトナのスリップオン(スラッシュカット)でしたが、その後に発売された同じデイトナ製のフルエキ「ノスタルジアマフラー」に変えてます。当時はダイナ用の車検対応フルエキゾーストって、このノスタルジアだけだったんですよね。とにかくバンク角がなく、マフラーを大地で削ぎ落としながら少しずつバンク角を広げていくという奇特なマフラーですけど、割と見た目が好きなんです。なお、1本目はあまりに路面にコスりまくったため、衝撃で車体との結合部分が折れちゃった。今は2本目です。吸気はオカルト・エアクリーナーの名を欲しいままにしている、ジャパンドラッグのタイフーンエアクリーナーシステム。タイフーン効果で吸っているのか?エレメントがスカスカだから吸ってるのかわかんないけど、とりあえず吸うことは間違いない(笑)

そして、お楽しみのインジェクション・チューニングですよ。当然ダイナが初体験。当初は吸排気の変更にあわせて燃調を少し濃くするためにサブコンを入れてたんですけど、しっくりこなくて「やっぱ、ざっくりじゃダメだな~」ってことでフルコンのダイノジェット・パワービジョンを購入。実はコイツには「オートチューン」という「アナタの走りを解析して燃調をこっちで適正化してやんよー!」という夢のモードがついていたんです。「おおおお!!これでくそザコな俺でもチューニング楽勝なんじゃね?」って思って購入したんですけど、現実はさにあらず。このオートチューンを使ってセッティングすると、一本調子で、とてもつまんないエンジン特性になっちゃうんです。また、オマケマップとして販売元のシャフトさんの設定も4つ入っていたんですけど、全てヌケのいい吸排気系を前提としてるのか、私のダイナの吸排気じゃいささか濃すぎたし、いずれのマップもノーマルの特定回転域で気持ちよくステイさせる良さが消えていたんですよね。要はこれらのマップはトルクの谷を「無駄なもの」として消してしまってるんですよ。でも私にとってはこのトルクの谷こそハーレーの良さそのものだったんです。

しょうがないから、アメリカ仕様のノーマルマップをダイノジェットのホームページから引っ張ってきて、それをベースに実走を繰り返し、点火時期と燃調をパソコン上で打ち替えながら、ああでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返しました。

このインジェクションチューンの一連の試行錯誤により、身に染みたことは、「他人が求める着地点と、自分が求める着地点は明確に違う」ってことです。ショップのカスタムって、「そのショップが考える最良であって、私の求める最良ではない」んですよね。

こんなこと言うとミもフタもないけど「他人は決して自分の好みや要望を正しく理解してくれるわけじゃない」んです。販売元は多くの人にインジェクションチューンの効果を証明するため、「パワーが出る方向に流れる」傾向になりがち。でも、私はスピードや馬力を否定したハーレーの生き様に惚れたんで、ハーレーにパワーいらないんですよ。求めるのはより良いフィーリングなんですけど、そんなものは定量化できませんし、ショップ側も一人の客にそこまで時間と労力をかけることはできない。顧客だってフィーリングの修正を頼むにしても、それが何回も続けばやがて気が引けてくる。そんな中で自分の感覚を徹底重視した調整をしようとすると、「結局自分でやらなきゃいけないのは自明の理」だったともいえます。

そもそも、乗り手が感じるハーレーらしさって人によって違うわけで、「目指すゴールラインは自分にしかわからない」んです。だから、感覚領域にこだわるチューニングって自分の希望や理想をしっかりと頭に描いた上で、自分なりの評価のモノサシをしっかりと持って自分自身が深く関与しないとうまくいかないし、とっちからかってしまう気がしますよね。

結局のところ、サスにしても燃調にしてもカスタムにおいて大事なのは、どんなに面倒くさくても、自分の感覚を重視して、最後は自分がケツを持つって覚悟なんだろうと思うんですよ。この手のものはDIYでやる日常メンテと同じで、所詮

自 己 責 任

なんですね。その大変さを楽しめるかどうかは、もうその人次第。それも含めてバイクの選択やカスタムは自分探しなんです。

外装については、こりゃ完全に個人の好みの世界ですね。ビキニカウル装着、フロントのウィンカー移設、カスタムペイント、アンダーガードあたりが主なカスタムです。ちょっと大きめのティーラ・ビキニカウルは走行時の安定感と風当たり軽減に十分な効果があって、かなり効いたアイテムかもしれない。これも初期モノはヘッドライトステーが振動で折れて苦労しました。今は取り付けパーツがゴッソリ変更された対策品になってますが、そこに至るまで都合2回折れてます。グラデーションのカスタムペイントは昔からやってみたかったんですが、ようやく夢が叶いましたね~。

DSC_2061-1
(カスタムペイントならではの赤黒のグラデーション塗装。イメージは悪の女王ドロンジョ様。)
カスタムペインと1
(ちなみにこっちがブログで初めてお見せする、初期のカスタムペイント。アンダーカウルがやりすぎだったのと、ビキニの赤面積が広すぎてドロンジョ感に欠けてましたね。あとサイドカバーのメッキもダメ。最終的にアンダーカウルは取り外し、ビキニカウルやサイドカウルのペイントも、もう一度やり直しているんですよね。こういう変なこだわりで無駄金を使う。)

以上がダイナのカスタムです。ポジション、エンジン、サス、外装、ほぼ全てに手を入れていますけど、これ、一気にやったんじゃなくて、購入から8年くらいの歳月をかけてコツコツと少しずつやってるんですよね。多くの人が「そろそろ売却かな~」というようなタイミングでようやくカスタムが完成するという倒れ込み。

ちなみに、ダイナの取り付けパーツの費用をトータルすると、合計で約125万円ってところです。でもね。これって今ついてるパーツの価格を足しただけのカウントなんですよ。購入したけど、「付けてみたらダメだったでござる」とか「やっぱこっちの方が良いな」って入れ替えたパーツや、シートやマフラーなどヘタったり折れたりして同じものを買い直したパーツなど、それらの価格をああだこうだと足していくと、

+100万円くらいかかってます・・・まさに狂気・・

これでも取り付けは可能な限り自力でやったんで、工賃はかなり浮いている。パーツも全てネット割引で購入したから非常にお安く上がってるのに、この価格になるってのはぶっちゃけイカれてますね(笑)

このようにダイナには大枚がつぎ込まれているんですけど、その一方でそれ以外の3台は、ほとんどノーマル状態から手を入れていないんですよね。自分でも極端だな・・って思ってますけど、それは自分の中で「カスタムとはなんぞや?」っていう点に一応の結論が出たからだと思うんです。

ネットを見ると、カスタムとはバイクのパーツを交換や追加、取り外しなどして、

「自分の理想やスタイル、趣味に合わせてバイクを改造すること」

って書いてあります。

もしそれがカスタムの定義だとするのなら、若い頃に私がやっていたカスタムは「正しいカスタムじゃなかったんだろうな・・」と改めて思う。昔の私にとっては、カスタムパーツを付けて、バイクのグレードを上げることが「他者との差別化であり、マウント行為」だったんです。その結果、「バイクが一体どうなっていくのか?」「自分にとって本当に良くなっているのか?」ってほとんど検証していなかった気がする。カスタムをしまくって、それ以上カスタムできなくなると急に熱が冷め、売却してしまったりしていました。

当時の私にはカスタムに一番大事な「自分の理想やスタイル」ってものがなかったんですね。あの頃の私には「理想にたどり着くための経験値」が絶対的に不足していて、理想どころか、自分の走りに対する考え方、好みすらもなく、カスタムの良し悪しを判断できる基準がなかったんです。そんな私のカスタムは

「バイクへの愛情をカタチにしたい!バイクに貢ぎたい!」

っていう盲目的なものだった。私は愛情表現的な動機もカスタムの一つの在り方であると思ってます。でも、マズいことに、その頃の私はそれを必要以上にこじらせた。

「ノーマルはバイクへの愛が足りない!!」

「所詮あいつはノーマル!!!」

「ダサっ!!!」、

というノーマル否定の考え方になっていたんです。ノーマルがイヤだからカスタムしているわけだから、どれだけノーマルから離れたか?がカスタムの判断基準なんですね。それをあえて表現するなら、

「カスタムを目的としたカスタム」

というべきでしょう。手段と目的が一致してますから、カスタムするだけで満足できる。でも、それはまだバイク乗りとしてカラッポだった私が陥った「カスタムの呪い」みたいなものだったのかもしれない。

若き日の私はスピードの呪いとカスタムの呪いの両方がダブルバフでかかっていたんで、とりあえず速くなりそうなパーツをどんどん付けていくって価値観に振り切れていたんです。カスタム雑誌のロードライダー(現在廃刊)とか見て、「うわ、すげぇ・・こんな見た目にカスタムしたいわぁ・・」って目をハートにしてた。なぜこんなカスタムになったのか?という必然性を考えることなんてまったくしない。レーサーレプリカなんて、とにかくサーキット仕様に近づけていけば格好がついたし、たとえそれが乗りにくいものでも、「これでいいのだ、本物とはこういうものなのだ。バカボンのパパなのだ。」って自分を納得させることができた。でもそういうカスタムは、公道の乗り物としてはマイナス方向に進んでいただけなんですよね。

そんなときに出会ったダイナは「アメリカの文化と正義と常識」で、私のそれまでを明確に否定したバイクでした。ダイナによって、ようやく私は「スピードの呪い」から解放されることになります。御年38歳でした。うーん、遅すぎる。

ただ、いざ呪いから解放されてみると、私は頼るべき基準のない、どうにも薄っぺらなライダーだったんです。ハイハイすらできない38歳児だった。このダイナは、そんな中年幼児がカスタムを通じて、自らを見つめ直し、自己を確立していった「第二次成長の歴史そのもの」なんです。

TC時代のダイナって、日本の道路事情でそのまま乗ろうとしたら、割と穴だらけで、カスタムのなんたるかを学ぶ素材としてはうってつけでした。いくつになっても、新たな学びって楽しいもんで、だからこそカスタム沼にハマったんだろうと思う。そして、その過程で「自分の好みに向かうカスタムって凄く難しいし、金がかかるんだな・・」って改めて感じたんですよね。

だって、機能パーツにしても、ほとんどのパーツが「取り付けてみないとわからない」ものばかりじゃないですか。しかも、取り付けること自体が目的じゃなくなったから、取り付けた後にパーツが自分の好みにアジャストしているか?という検証もしっかり行わなくてはならなくなった。で、ダメなものは、こりゃダメだ・・って外すわけでしょう?だから、ハンドルバーだけで3回も変える羽目になったし、エンジン設定も自分でやらざるを得なかったし、外装だって落ち着くまでにいろんなパーツを付けたり外したり、塗り直したりしているんです。

ダイナで、ようやく私は「自分の理想やスタイルを求める」というカスタムの定義に対し、正しく向き合ったんだろうと思います。そして、それは失敗と散財という茨の道でもあった。そんな道なき道を歩みながら、自分の求めるものは何かを真剣に考え抜いた結果、掲げられたカスタム方針は「ダイナのノーマルの良いところをできるだけ消さないように、自分の体格と日本の道路環境にあわせる」っていう、至極平凡なものだったわけで、これはもう皮肉としかいいようがありません。

ダイナのカスタムの過程で、私はもう一つ重要なことに気づきます。それは、国産バイクのノーマル仕様のレベルの高さです。これはF6Bを購入してダイナと乗り比べることによってさらに顕著になりました。まぁ、昔からノーマルのバランスの凄さには薄々は気づいてたんですけど、それを認めることは、ノーマル否定型カスタムを続ける私のアイデンティティ崩壊に繋がりかねないから、ずっと目をそらしていたんですよね。

でも、それを自分の中で認めて以降、F6B、きんつば嬢、HAWK11、モトグッチV7、いずれも、ノーマルにほぼ手を入れておりません。V7は緩みまくるミラーと調整できないブレーキレバーを交換してはいますが、それは製品の穴を埋めるためにやむを得ない最小限の措置です。

ようやくノーマルの良さを心から認めることができた私は、長年続いた「カスタムの呪い」からも解放された。理想やスタイルに向かうカスタムって「自分でバイクを良くするんだ」って覚悟がいるんですけど、それって「メーカーと同じことを自分がやる」ってことなんです。そのチャレンジを真剣にやってみると、否応なく

「メーカーの調整の偉大さを知る」

んですよね。私のダイナは、最後はなんとか、それなりのモノにはなりましたけど、そこに8年の歳月と200万円オーバーという金がかかっちゃってるんですよ。実に高い授業料ではないですか。

今の私はノーマルについて、非常に大きな敬意を払っていて、その調整の真意やバイクのコンセプトをしっかりと理解することなく、カスタムに走っちゃうのはもったいないなと思ってます。新車の大型バイクって1万㎞くらいは本調子がでてこないこともあるし、ノーマル状態を乗り込んで、そのバイクを自分なりにしっかり理解してからでないと、より良いカスタムの方向性も自分の中で出てこない気がするんですよね。

ちなみに今の私は基本ノーマルで、ある特定部分の満足度が私の中での5割を切るようなら、バイクの印象を改善する意味も込めて、カスタムパーツを投入し、その穴をしっかり塞ぎグレードアップを図るって方針です。満足度5割からのカスタムパーツ投入は、上がり幅もでかいわけですから、価格に見合った効果が十分に期待できるし、もともとその部分のバランスが悪いわけだから、バランスが崩れることもあまり考えなくてもいいってことになる。

高額な大型バイクになりますと、それなりにいいパーツが奢られていますから、相対的な満足度は7割~8割くらいはいく気がする。となると、カスタムはそれをより高めるために行うわけですけど、8割方満足できているものに大がかりな資金とセッティングの労力をかけて、「その満足感をさらに1割かさ上げしますか?」っていうと、それはバイクのカテゴリーや、目的、乗り手の価値観などによるでしょう。

アメリカの道路事情に特化し、排ガス関係でもかなり無理してたTC時代のダイナは、いろんな面で日本の環境で走るにはカスタムが前提で、それがとってもよく効くバイクだったわけですけど、穴を全方位に埋めようとすると、他の優秀なバイクが買える金額になってしまう。そして、そこまでやっても決して万能になるわけでもないですからね。

ダイナを購入してから15年。オッサンになればなるほど、あんまり冒険しなくなるから、「え?高い金払ってノーマルから変える必要ある?」ってことになりがち。そんな心境がさらに深まると、

「おお・・ノーマルこそが一番美しい・・・」

って思うようになるから不思議。もはや「カスタムの呪い」から「ノーマル信仰の呪い」に移行した感すらある。所詮、バイクがどう見えるかってのは、「乗り手の考え方次第なんだな~」って改めて感じたりいたしますね(笑)

ということで、今回はこれまでのダイナのカスタムと、今の私のカスタムに対する向きあい方、考え方を書いてみました。私はバイク乗りとしては、既に立ち枯れてますけど、カスタムについての考え方も、一周回って落ち着くところに落ち着いたんじゃないかな~って感じてる次第です。



(オマケ漫画「罪の自覚」)
カスタム

カスタムP2
(ハーレーのいいところは、やっぱ丈夫なところと、普遍的で飽きがこないところ。金かかるけど、カスタム費用の回収期間も長く取れるのが救いですね。)