今回はなんとまぁ、難しいブログタイトルをつけてしまったんでしょうか?「上がりのスポーツバイク論」なんてお題としては難しすぎて、いきなりセルフ絞殺状態なんですけど、タイトルとは裏腹に中身はほどんどネタになっております。そう、あきらかなタイトル詐欺。テキストも品のないおっさん向けで、不適切な表現も満載ですので、同じHAWK11ユーザーでも下川原リサ女史には決して読んで欲しくない内容になってます。それでもいいという方は期待せずにお楽しみください。

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(夏は夕暮れ時が一番走りやすくて美しい。全てがセピアに変わった世界で、沈む夕日に照らされるバイクをボーッと見てるのが最高。)

HAWK11が発売された際に

「若い頃から趣味としてバイクを乗り継ぎ、いつの間にか“上がりのバイク”が視野に入る年齢になった。そんなベテランのライダーに向けたモデルです。」

なーんていうアナウンスがなされたため、HAWK11を語る際に、「上がりバイク」ってネタは避けて通れなくなった感があります。

私が思うに、この「上がりバイク」ってワードは、現実的に上がりを真剣に考えている人か、そうでない人かで、受け止めが大きく変わると思うんです。私自身も「うむむ・・結構挑戦的な帯をつけたな~」って思いました。だって、上がりってのをまったく考えたこともない人に対して、いきなり

「これで上がれやぁああああ!!」

ってあんなマニアックなバイクを差し出したら

「なんでやねぇええええん!!」

って反応が返ってくるに決まってるじゃないですか。この状態をわかりやすくいうと、婚活マッチングアプリで

「お前の余生の伴侶はこいつなのだぁああああ!」

って

「そこそこ濃い性癖の女」

をあてがわれたみたいなもんですよ。これは、かなりの抵抗が予想されるでしょう。だって、ほとんどの人は「最後のバイクなんだから、そこはキラッキラに輝いてる美女をよこせよぉおお!」ってなるはずですからね。

ライダーとして元気一杯、登り調子の頃は、殆どの人が「上がりは高額でもいいから、やっぱ最高性能のバイクで・・・」なんてピンクな夢見てるんじゃないかと思うんですよ。頭に浮かぶのはパニガーレとか、S1000RRとか、CBR1000RR-Rとか、ハヤブサとかなんじゃないでしょうか。

しかし、バイクも人生も、そんな華々しい上がり方をするのは容易ではありません。人生だって、最後に隣にいるのはキラキラの美女じゃなくて、ババァになった配偶者じゃないですか。

バイクって「乗り手の映し鏡みたいなもの」ですから、乗り手の精神がイケイケで、肉体的にも充実していれば、最高性能のSS系モデルで華々しくバイク人生のラストを飾ることもできるでしょう。でも人は、ずっと最前線を張り続けることはできないし、衰えていくからこそ「上がり」ってものを考えるんですよね。

私だって「最後くらいはイケイケのスポーツバイクで有終の美を飾りたいっ」ってことで、ストリートトリプルRSでラストランを決めることを夢見たわけですよ。でも現実はどうだったでしょうか?それから3年後、私のスポーツバイク担当は、いつの間にかHAWK11とモトグッチV7になっていた。どうしてこうなった?俺の夢はついえた!なぜだ!!

「ジジイだからさ・・」

ストリートトリプルRSに3年乗って得た感想は、「うぉぉおおお!最高!!!これで上がれるぅううう!」ってポジティブものではなく、ぶっちゃけ「ううっ・・俺もう若くないですね・・ぐすん・・」という、悲しくも現実的なものだったんですよ。

ここで誤解して欲しくないのは、決してストリートトリプルRSが悪いわけじゃないってこと。それどころか、こいつは噂に違わぬ「公道最強クラスの殴るマン」だった。まるでブルース・リーですよ。「アチョー!ホワチャァアアア!!」ってストイックにキレッキレの蹴りやパンチを出す。強い。

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(ストリートトリプルRSことザラブ嬢。ホント素晴らしいキレ味でしたねぇ。)

でもね。性能が高くてガチなバイクって、凄~く「お負荷が高い」んですよ。結果オジサンの体がそれに耐えられなかったんですね。バイクの性能は予想どおりというか、予想をはるかに超えていたけれど、自分のクズっぷりも予想をはるかに超えていたんです。

このクラスになると必要になるのは「反射神経と集中力と基礎体力」なんですよ。高性能パーツとハイテクノロジーをてんこ盛りにした現代のSS系は、電スロ、トラコン、クイックシフター、スリッパークラッチなんかでバイク側が乗り手のラフな操作を補正してくれるし、コーナーも超高性能タイヤのグリップ力と旋回力で蹂躙してくれるから、昔よりイージーに凄い運動性能を発揮する。誰でも速く走れるようにサポートが充実しまくってるんですよね。だから、まずはそのキレッキレの機動力に対応できる体が必要なんです。

でもおっさんは時代遅れの操作技術はあるけど、基礎体力がないんですよ。何年もダイナでヨダレ垂らしながらふんわり走っていた退役軍人が、いきなり最前線に放り込まれても、カラータイマー光りっぱなしになるだけ。もうね。腰が弱くて過度な突き上げに耐えられんのです。ワインディングはメチャクチャ楽しいんですけど、その代償として体がガタガタになっちゃう。さりとてバイクにあわせて鍛え直すようなガッツは既にありません。いやー現代のバイクの性能って、「乗り手の脆弱さやふがいなさを浮き彫りにしちゃう」んですね。

趣味って仕事じゃないから、定年ってのがありませんし、ポンコツでも誰からも文句をいわれないから、ずーーっと続けることができるんです。でも、長い間、その世界に粘着してると、自然にいろんなものが見えてくる。今では憧れだった高性能スポーツの「欠点や矛盾点」もわかるようになるんですね。

大排気量SS系バイクの最大の問題点は、公道では「オーバーキルの人斬り包丁を腰に差してるのと同じ」ってことです。いったん刃を抜けば、そのキレ味に誰もが高揚感と無敵感に包まれる。その手のバイクの商品力はそういったものなんだから、そこはしょうがないし、アメリカで銃が買えるように、自己責任の下でそういうものを購入できるのも自由の一つだと思う。

でも、その業物を迷惑にならないよう振り回すのは難しい。こらえ性のない奴に妖刀を差し出せば、試し切りをしたくなるのが人の業。その欲求に負けない強い自制心が必要になる。でも、人は弱い生き物ですから、何かの拍子にバグって凶戦士になってしまったりするんですよ。

漫画でいうと、あの有名なキリンが、おかしくなったバイク乗りの典型ですね。私は彼をこのブログでかなりイジってますけど、スピードに対する夢が消え、キリンという存在を冷静に見られるようになってからは、彼をヒーローとみることができてないんですよ。そう、ある時期からキリンは私の中で、憧れではなくギャグ要員になっている。価値観の呪いで自らをがんじがらめに縛り、それを無理矢理肯定するために多くの美辞麗句で速度依存症に理由付けを与えようとする姿に、いじらしさすら感じてしまう。

彼は若かりし頃、関越で大事故起こして、大ケガしてるんですけど、そこからなんとか生還した後、広告代理店の役員に収まってるんですね。そう、キリンはバイクさえ与えなければ、ビジネス的にも社会的にもかなり有益な奴なんですよ。で、バリバリ仕事して出世街道を走ってるうちはそっちに注力してるから、バイクはBMWのR100RSなんです。今でこそBMWはイケイケのイメージありますけど、あの頃のBMWって実にのどかですからねぇ・・。大事故した後、世間を欺くにはピッタリのバイクです。

でも、キリンさんは残念ながら生粋のスピードジャンキーだったため、ちょっとしたきっかけで日常が崩れはじめるんですよ。ポイント・オブ・ノーリターンかノータリーンか知らないけど、女の尻を見た途端、空冷ポルシェの尻を思い出し、シャイニングのジャック・ニコルソンみたいに頭がイカれた状態に戻っていくわけです。やがて「バイクは剥き出しのファルス(おチ〇チン)なのである」ってエッチしながら、頭のおかしな妄想にも浸りはじめる。そう、彼は女性とのエッチより、「ポルシェの尻をカタナで突いてた方が気持ちいい♡」いう、実に倒錯した性癖を持っていて、それが再び湧き上がってしまうんですね。

キリン
(キリンはこの手の台詞が全編に溢れてて洗脳力が極めて高い漫画なんですが、スピードへの夢が覚めて即物的に見れば「自己陶酔で酔っ払っているだけ」とも言える。私はその酔っ払ったところをネタにしてるというわけです。まぁいろんな意味で楽しめる漫画であることは間違いない。)

バイク乗りのバイブルになっているキリンの1巻から4巻ってのは、そんな変態的性癖に抗しきれず、東名でポルシェと組んずほぐれつして、ポルシェをブチ抜き、その快感で海にいろんなものを射出して、「あー気持ちよかった・・」ってショッポ吹かして賢者モードに入るという、見方によっては

「とある男の超性欲砲」

って名付けても差し支えないくらいのトンデモない話なんですよ。このとき、キリンは38歳だったらしいですが、これって私がダイナ買った歳なんですよね。案外、そこら辺が、頭のおかしな者達の人生の分岐点なのかもしれない。

で、このキリンさんは、その後もチラチラ外伝的なところで現れるんですけど、乗ってるバイクのチョイスがK100RSとかになってんですよ。もう実に笑える。あれ直列4気筒を無理くり縦置きしたフラットツイン以上のド変態クソ重バイクなんです。彼にとっちゃバイクはファルス(おチ〇チン)の象徴ですから、大人しく走るにしても、小さいのはイヤだったんでしょう。でももう激しいプレイすることもできないし、かといって普通じゃつまんないからK100RSという変態バイクをチョイスしたってことなんですよ。

いろんな虚飾を剥ぎ取ってしまえば、あの頃のバイク乗りは

「アヒャヒャ→事故→反省→アヒャヒャ→事故→反省」

という愚かな円環のことわりのど真ん中で踊るピエロです。あのね。飛ばす奴がかっこよさげに語る「バイクとは・・スピードとは・・・」みたいな哲学的なモノローグは、頭の中の「アヒャヒャ♡」を悟られないように、都合のいい理屈をつけてるだけですからね。

そりゃね。「ふっ・・ポルシェとバトって由比の海に飛んだのさ・・」ってタバコを吹かして目を伏せてつぶやけば、カッコもつくかもしれないけど、その後に「うふっ♡5回目なの♡」って続いたら、それもうただのバカですから。でも、そうなりかねないし、実際そうなってるのがスピードに脳をやられた人種なんです。

私はバイクの事故歴が10回になり、ついに2桁の大台に乗っちゃってるんですけど、事故の影響やそれに伴う逆風って年を取るほど強くなってるから、もうさすがに11回目はマズいわけ。

そんなバカがいい歳してスポーツバイクでケガしないように走ろうとすれば、この「アヒャヒャモードに入らない♡」ってことが重要になる。乗り手を熱く煽ってくるようなバイクだと、速度依存症の奴はすぐにアヒャヒャになっちゃうから、どっかで必ず事故るに決まってるんですよね。それが自分でわかってるから「乗り手を煽らず、走る醍醐味があり、変態性の高いバイク」に自然と落ち着いていくんですね。

「え、まぁ、言ってることはわかるけど、最後の変態性ってなに?」

って思う人はいるでしょう。

でも、そこが大事なんですよ。「操作する醍醐味が高く、性能が尖ってなくてカッコいいバイク」って、ぶっちゃけ「ビギナーさんに超オススメのバイクじゃね?」ってことになるじゃないですか。でもね。それだけじゃベテランはダメなの。あのね。ベテランの乗るバイクには、ベテラン臭が必要なの。で、ベテラン臭って何か?っていうと、「ビギナーの人は決して選ばない何かがある」ってことなんですよ。それが濃いデザインだったり、特殊機構だったり、壊れやすさだったり、車重だったりするんです。これをこのブログではわかりやすく総称して

変 態 感

って言っているんですね。そして、HAWK11が採用したロケットカウルというのは、デザイン面での最強クラスの変態性を誇るアイテムなんです。

女性には縁遠い話だと思いますが、キリンで語られたように、確かに男にとってバイクはファルス(おチン〇ン)の象徴みたいなもんなんですよ。つまり、バイクを覆うフロントカウルは「チ〇コケース」ってことになる。そう、ベテランになると中身はしなびつつあるから、おっきくて変な形の「チン〇ケース」を付けたくなるんです。ロケットカウルというのは、機能性じゃなくて「〇ンコケースとしていかに凄いのか?」が問われているんです。

HAWK11は、ベテランのそういう変態性癖を十分に理解した上で製作されたバイクです。リッターオーバーでセパハン前傾のくせに、出力特性もハンドリングも「シゴけばメチャ速いけど、アヒャヒャモードに入らない」っていう要件をしっかり満たしてる。しかも造形凝りまくりのロケットカウル専用設計で、外装素材はなんとFRP。「チン〇ケース」として、牙大王に献上しても差し支えないレベルに達しておりますので、変態性はブチアゲ状態です。

HAWK11ってカタログ上はレギュラーモデルですけど、生産数が1200台程度で日本専売ってことを考えれば、「アフリカツインをベースにした特殊なホンダ内製カスタムモデル」っていう方が近いと思うんですよ。

メーカー製カスタムって、V7とV7レーサー、SV650とSV650X、Z900RSとZ900RSカフェのように、売れ筋のネイキッドモデルではお約束になっている。そのほとんどが、カウルをつけてベースモデルよりちょっとお高く、ローハンドル化して前輪荷重増やしたり、リアサス変えたりしてスポーツ性を高めてるんですよね。で、そういうベーシックモデルのカスタム仕様が、ベテラン向けの公道スポーツとして丁度良かったりするんです。

HAWK11は、ベースモデルに砂漠の女王・アフリカツインを引っ張ってきたから、一見違和感があるかもしれないけど、「ベーシックで熟成度、完成度の高いモデルをセパハン化する」っていう考え方自体は、おっさんカスタムの王道路線なんですよ。スロットル特性や足回りのセッティングも見直した上で、外装全取っ替えで15㎏くらいのダイエットをやってますから、オンロード・カスタム仕様としてみれば手を入れすぎなくらい。なにより、ホンダのトップラインの車体とシャーシをベースにしてるから、動作質感や操作質感が極めて高い。そこには、少量生産モデル特有の隙や甘さなど一切ありませんので、流用が気にならないどころか、「高級アドベンからの流用ごっつあんで~す!」な状態になっているんですよ。

歳食ったベテランのバイク選びって「自分の求めてる性癖を満たすかどうか?」ってところがものっ凄く重要になるんです。市場人気とか、資産価値なんて、乗ったときに得られる無形の感動に比べりゃカスみたいなもんですよ。バイクは私と一緒に公道を駆ける伴侶ですから、床の間に飾ったり、売って金にするような感覚などハナからない。自腹を切るからには、「私にとってどれくらいの価値があるか?」が一番重要になるし、趣味って本質的にはそうじゃなくてはならないと思う。

大型バイクに乗り始めてはや32年。あの頃にキリンを愛読してた大型ライダーなんて、基本褒められたことをしてきてない。品行方正を気取って、人のことをどうのこうの言えるような立場でもないし、心の綺麗なビギナーに戻ることも不可能です。だから、せめて晩年は「無害な変態」として、出先でコーヒーでも飲みながら、大人しく余生を送っていくのが一番いいんです。老兵は隅っこでモブとして目立たず静かに生きるのみ。

でも、そういう気分に寄り添ってくれるバイクって案外少ないんです。昔は多モデル少量生産だったけど、今は少数ラインナップ少量生産だから、メーカー側でそういうバイクを作る余力もなかなかない。でもこの世から変態層は決して消えることはなく、自分らしさや多様性を許容しはじめた社会の中で、逆に変態層はどんどん生み出されているわけです。

その一方、もの作りは利益のために合理化され、自分がどこに出しても恥ずかしくない変態として仕上がった頃には、国内では、そういう香りがするバイクが消えているという、実に嘆かわしい状況になっていた。

そこに、前触れもなく突如として現れたのがHAWK11だったというわけです。ただ、これで上がれるかどうかなんて、オーナーの私にだってわからない。でも、今後こんな変態バイクが出てくることはなさそうだし、乗り味に不満もないので、長く乗れそうだと感じていることは事実です。

いろんな御託を並べたところで、上がりの形は人それぞれ。所詮はバカの戯言ですので、一般論にはほど遠い。

まぁ気楽に聞き流して頂ければ幸いです(笑)



(オマケ漫画「大いなる見解の相違」)
※のじゃ子3コマ1-3

※のじゃ子3コ2