いや~、暑い季節になって参りました。いよいよ夏のヘッダーにもなっております「ダイナの季節」といっていいでしょう。理由はシンプル、「風がメチャクチャあたるから」です。

まぁそもそも、このバイク、冬は全然ダメですからね。ダイナで冬に走るなんて、「寒中みそぎ祭り」に出場するようなもんですよ。

(こちらが「寒中みそぎ祭り」の映像。まさに道民の狂気。)

この寒中みそぎ祭りは神社の境内だから「神事です!」ってことになってるけど、場所がどっかのアジトだったら絵ヅラは完全に「拷問」です。後ろの水かけてる人に吹き出し付けて「奴はどこだ!どこにいる!死にたいのか!ええぃ!吐けぇ!くぬっくぬっ!」って台詞入れてもフツーにハマる。こういうの見ると神事か拷問かは「シュチュエーションとやってる人の気持ちの問題なんだな~」って改めて思う。

私だったら初手からクチビル紫にして震えながら出てきて、最初の冷水一発で「ぎゃあぁあああ!!」って叫んで階段を転げ落ち、ホスピタルにご送迎ですよ。あまりのふがいなさに神々の怒りを買うことは間違いなく、いいことなんて一つもない。これに耐えることが「道民の証」であるならば、私は決して北海道に住むことはできないと断言する。

でも考えてみて下さいよ。冬のカウルレスバイクって極論すると、この寒中みそぎ祭と似たり寄ったりじゃないですか?「とりあえずアクセルを握ると開けてしまう」というバイク乗りの逃れられぬ習性を利用し、バイクメーカーが巧妙に仕込んだ、精神修行、自虐的変態行為とも評価される。

だってジレンマが凄いじゃないですか。

「一刻も早くおうちに帰って暖まりたい!コタツに頭まで入りたいっ!」

って思うけど、

「あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーアクセル開けてスピード出すとクッソ寒い!早く帰りたいけどアクセルが開けられないんじゃぁあああああ(泣)」

ってもう腸捻転になりそうになる。家に近づきたいのに、冷気攻撃で近づけないのってヒドすぎます。

一方で、この世には、それを自らの精神修養として実践してる修行僧の方々もいる。寒い季節にゴールドウィングで走っていると、そんなバイク小乗仏教僧に遭遇することがあります。こっちはカウル付きのバイクで「重ね着ビバンダム君」になってるのに、真冬にカウルレスのバイクにライジャケ1枚とかで走ってる猛者達です。見た瞬間、「オィィィイイ!!その格好でこの気温で走れるの?体毛凄いことになってるのぉぉおお!?」って叫びたくなる。

コイツらは私からみるとラグクラフト神話に出てくる外宇宙の狂気みたいなものなんですよ。遊星からの物体Xに体を乗っ取られているまである。目撃するだけで、不定の狂気に陥りそうになるんですけど、そんな生物に限って、こっちに元気いっぱいピースサインを出すんですよ。

キャァァァアア!!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ、オマエ、さっきからなんで冬の話をしているの?梅雨明けして夏まっさかりなんだけど?

ええ、そんなツッコミがそろそろ入る頃だと思いましたよ。真夏に冬の話というなんて「クソ暑いから」に決まってますよ。これから夏のこと書くんで、話の入りくらい涼しい話題の方が良いでしょ?って倒れ込みです。皆様少しは涼しくなれましたでしょうか?



ということで、ここからクソ暑い本編に入ります。

前置きで述べたように、冷気というのは死に直結しますから、それを体全体で浴びていく冬のダイナは「スーサイド・スクワッド(自殺部隊)のハーレクイン並のイカレた自殺バイク」です。

ハーレークイン
(こちらアニメ誌の表紙を飾ったハーレクイン様。アニメの彼女は、革ジャン、ビキニにホットパンツ、指だしグローブとウチのダイナと装束がそっくり。)

しかし、風があたることがプラスに作用する夏になるとダイナは最高の乗り物に変わる。そう、私の所有する4台の中で、真夏はダイナが一番キモチいい。だって殿様乗りで走り出せば、目の前に超大型扇風機がある状態じゃないですか。子供の頃、暑くなったら扇風機の前に陣取って「あ゛~~~~」っていってた、あの再現ですよ。

「え?でも、夏に空冷大排気量って、狂ってますよね?メチャメチャ暑いですよね?」っていう人もいるかもしれないけど、チッチッチ違いますねぇ。真っ青な空に入道雲が立ち上る夏こそ、クルージングの季節なんです。そして、クルージングこそクルーザーの本領発揮の場じゃないですか。夏にハーレーが地獄なんてのは、政令指定都市の渋滞ロードにいるからでしょ?でも、こっちはね。ラララ、ランドならぬ、ドドド、ド田舎なんですよ。

東京はコンクリートジャングル。こっちにあるのはマジモンのジャングル。「本日は、こちらで熊が目撃されましたぁん♡」って情報が毎日スマホに送られてくる。当然、都市化されてる面積などハナクソのようなもの。駅前なんて文字通り、単なる駅の前にすぎません。一歩踏み出せば、そこに広がるのは圧倒的な田園風景です。

そんな地域で山に向かえば、そこはもうジュラシックエリア。目の前の道路では猿の大群が大移動、全身を包むのは、エアコンの作られた風ではなく、大自然エキス満載のモノホンの風。マイナスイオンも飽和状態だ。この環境下で、どう体温を下げ、快適度をあげるのか?頭を捻って夏対策をし、それが上手くハマったとき、脳内に勝利のファンファーレが鳴り響き、ワインディングは真夏の盆踊り会場になる。それが「田舎のバイク乗りの夏祭り」なのですよ。

そして素晴らしいことに、夏の暑さへの対抗策ってのは、田舎の農家の皆様が既に実践済みです。そう

「首に濡れタオル」

これです。もうね。夏の暑さ対策は、恥も外聞もなくカールの親父と化すだけです。それに必要なのはホムセンに売ってる冷感タオル980円のみ。

「えええええ!首タオルなんて、オッサンすぎて恥ずかしいだろ!!」

っていう人。

「バカモン!俺のケツをなめろ!!」

そもそもオッサンがオッサンすぎて何が悪いのか!お前もオッサンのくせに、オッサン以外の何になろうというのか?そんなことより、まずはカッコ悪くても生きのびることを考えろ!ってことなんですよ。冬でもスタイリッシュな格好にこだわりたい♡というスケベ心を出したあげく、意味不明な電熱凍死未遂事件を呼び込んだ私は、

「大自然を前にしたときは、なによりまずは生存だ!」

ということをバイクの神から教わったんです。今年も北海道で事故が頻発してますが、バイクは常に自分の限界と真摯に向き合う必要がある乗り物で、慢心したり、無理したり、やせ我慢をしたりすると、あっという間に危機に陥るんです。真夏という極限の環境の中で走りたかったら、

「カッコやメンツなんて気にしていたらダメ」

所詮バイクなんて、行き着くところは孤独な戦い、一人遊びじゃないですか。観客がいないところで演技する役者なんて誰一人いないし、アイドルだって嘘まみれ、一人になればダレまくりですよ(注※「推しの子」知識)。オジサンが快適性を追求した結果、「シン・オジサンの姿になりました」なんて、極めて普通のことなんです。

バイク乗りって、スピードに関しては楽天家のくせに、恥の概念になると江戸時代の武士みたいに考え方が堅苦しいんですよね。炎天下のバイクなんて、ファッキンなホットリミットなんだから、もっとバカらしく、ポジティブな考え方をしましょうよ。そう、私は蔑まれる世のオジサンライダーを代表し、世間に向かって叫びたい、

「汗まみれで清潔検査に不合格だと?不潔検査合格と言えっ!」

「加齢臭?それこそ人の熟成の香りっ!!」

「生え際が後退してる?違う!私のスピードに髪がついてこれなかったのだ!!!」


このように、自分の現状をネガティブに語るのではなく、プラス側に変換して言い放ち、反論に耳を塞いでしまえばダメージなんて10分の1以下。あえていおう、蚊に刺された程度であると!!そのような思考の果てにようやく人は「メンタルゴリラ」の称号を得ることができるのですよ。

まぁ最初は恥ずかしいかもしれませんけど、首に冷感タオルってダサい以外はほぼ無敵ですから。バイクは走ってさえいれば風があたるから、気化熱で一気に体温を下げられる。30℃くらいなら空冷オンリーでもなんとかなるけど、35℃レベルになれば、さすがに冷感タオルを使って空水冷にチェンジしないと乗り手がオーバーヒートしちゃいます。灼熱の環境は、「空冷に対する水冷の優位性」を身をもって体感できる実に有益な機会なのですね。

このように、乗り手に対しては空水冷を勧める一方、バイクに関しては私は空冷エンジンを推していきたい。なぜなら、空冷エンジンは

「風が存分にあたる殿様乗りのバイクが多い」

「走ることでバイクも乗り手も冷えていく」

「乗り手が暑いときはバイクも暑さに耐えている」

という「バイクと乗り手の一体感がある」からです。当然暑いとタレるけど、乗り手だってタレてますから、文句をいう筋合いじゃありません。そして走行風で乗り手もバイクも共に冷えるいう特性が、走ることへのモチベーションを高めてくれる。逆にいうと「走ってなきゃバイクも乗り手も枯れ死」するから走らざるを得ない。

真夏のダイナって、「ああ・・涼しくなるってだけで人はこんなに幸せになれるのか・・」って感じさせてくれるんですよ。全身への風当たりが豪快なバイクほど、この幸せ指数は大きくなるから、ニーグリップなしで足をフリーにし、全身で風を浴びていくハーレーの幸せ度はマジでハンパない。特別なことをしてるわけでもなく、走って風を浴びてるだけなんですが、暑くなればなるほど、

「生命賛歌」

って感じがするんですよね。冬は走ることによって死に近づくけど、夏は走ることが生きることに繋がるんです。だからこそ「ただ単に涼しい」ってことが、とてつもなく幸せに感じるんですよ。この、「ささやかなことにメチャ感動する」って、バイクに乗り始めた頃のトキメキの原点だと思う。その忘れていた感覚を年を食っても存分に味わえるのが「空冷バイクの夏」ってわけです。

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(あまりに暑いなら日中を避け、夕刻に走るって手もある。夏は日が沈んでも暖かいから走れる時間帯も広い。)

でも、これが水冷エンジンになるとちょっと勝手が違ってきます。水冷ってエンジンを冷やし、性能を維持することについては、極めて合理的です。夏でも性能は落ちないし、バイクにとってはいいことづくめ。でも、乗り手にとっては、それがアダになることもある。

水冷エンジンは熱を水に転嫁してバイクの中で環流させてるから、「水に転嫁した熱をバイクからどう排出するか?」ってことがとても大事になるわけですよね。基本はラジエターから自然放熱で排出するんだけど、それが追いつかないと、電動ファンを回す強制空冷に入ります。その強制空冷のタイミングってのが、「バイク乗りが暑さに苦しんでいる停止時である」ってことに水冷の最大の問題がある。これはバイクが涼しくなろうとして、乗り手に熱をぐいぐい押しつけてくるっていう、「どっちが死ぬの?」という内ゲバの構図なんですね。ゴールドウィングは熱風の乗り手への直撃を防ぐため、ラジエターを側面配置し、ファンの風を横方向に逃がすことで乗り手に一切の熱を伝えてきませんけど、これはでかいバイクだからできることで、普通は前から熱風がドドーッと押し寄せるわけですよ。

一番暑いときに強制空冷によるファンの熱風を浴びた日にゃ、もはや「バイク主催の強制ガマン大会開催!!」って状態になる。ハイパワーバイクになりますと、気筒数が多く圧縮比も高いくせに、車体もコンパクトだから、発生熱量が激ヤバです。フルカウルだと、熱を逃がすところはカウルの隙間だけになるから乗り手の股間への最大熱量攻撃が始まる。その結果、排気量とパワーが上がるほど、環境が過酷になり、まるで

「★我慢大会決勝戦★」

のような様相を呈していくってことになるんです。

これに対して空冷エンジンは、エンジン単体の温度でいえば水冷の比ではないですが、それを見越したクリアランスがありますし、なんといっても乗り手に熱を押しつけてこないってところがいい。空冷に求められているのは「熱くなっても耐えられる設計と、走り出したときに存分に冷える構造」なんですよね。だから、走り出しさえすれば全てが解決する。エンジンを冷やした後の熱風は後方に抜け、走ってる限りバイクの周りには熱はこもらない。停止時だってエンジン熱でサウナ状態にはなるけど、水冷バイクのように「サウナ+熱波ロウリュ」のダブル攻撃になることはありません。とにかく、止まっているときはバイクも乗り手もしんどいけれど、走り出せば「乗り手もバイクも爽快感に包まれる」ってのがありがたいんですよ。

私は思うんですけど、多くのバイク乗りが感じてる夏の気持ちよさって、「走行風で涼をとること」なんだと思う。それを「バイクと乗り手の両方でやっちゃおうぜ!」ってのが空冷バイクなんです。だから私は夏場はハーレーが一番のお気に入りなんですね。

夏場にダイナで走ってると、アベレージがものっすごく落ちるんですよ。飛ばすより、風をどう浴びるか?ことの方に意識が向くからです。自分にとって一番キモチいい風の強さを速度で調整することになるわけですが、そうすると必然的に低アベレージになってるんですよね。日没までが長く、日が落ちても暖かいから急いで帰路につく必要もなく、時間的な余裕はたっぷりある。低アベレージだから、空を眺めてたり、景色を楽しんだり、クルージングの良さも存分に発揮されるんです。で、疲れたら涼しい木陰でコーヒー飲んでまったり一服でしょ?

あ~~~・・・幸せなんじゃぁあああああ・・・(体をくねらす)


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(私の海沿いのド定番コーヒースポット。日陰と海風があり、バイクと水平線の両方が視界に入り、人はまったくいない。先日はここでアリにたかられつつ、1時間ほどスマホで音楽流してボーッとしてました。)

でも、そういうささやかな幸せが、今の私にとっては、すごく大切なことだったりするんです。バイクってのはベテランだろうが初心者だろうが、楽しみ方の本質ってそう変わんないんですけど、長いことバイクに乗ってると、いろんなものを背負い込んで、とってもややこしくなっていくんです。

でも、夏の焼けつく日差しの前では、そんなことはまったくもって関係ない。初心者だろうがベテランだろうが、若かろうがオッサンだろうが、真夏の日差しは容赦ない。そこで求められるものはシンプルに涼しさであり、真夏ほど風のありがたさとバイクの気持ちよさを感じられる季節はないんですよね。

そんなシンプルさがバイクの原点で、それが存分に感じられるから、私は真夏のハーレーが好きなんだろうと思います。


強制空冷式7
(うちのダイナは、インジェクションマップを少々イジって、低回転域を濃くし、点火時期を変えてあります。ハーレーで夏を気持ちよく走るのなら、日本仕様のカラッカラの空燃比だけはなんとかしたいところですね。)