ふと振り返ってみるとゴールドウィングというモデルとの付き合いもF6Bから通算で11年目になります。そこまで長く乗ってるんなら「ユーザーとしてゴールドウィングというモデルに対するなんらかの評価があってしかるべきなんじゃないの?」って声もあると思いますので、今回はそれを自分なりに考えてみることにします。
(今回は通算11年目に入ったゴールドウィングと私の関係性についてのお話。)
私のメインバイクであるダイナに関してはずっと以前から「我がバイク人生の救世主」と評してまいりました。90年代の走り屋根性が染みついて、その価値観に縛られていた私を開放してくれたのがこのバイク。高性能を追い求めた続けてきた人間が「徹底的に遅いバイクに救われる」というのも、なかなか皮肉が効いてますが、実際そうだったんだからもうしょうがない。
ダイナは速さ方向に独りよがりだった私を、遅さ方向に独りよがりな乗り味で屈服させるというとんでもないバイクでした。ハーレーは「ハーレーという乗り物」っていわれてますけど、良くいえば個性的。悪くいえば「日本や欧州のバイクの価値観の外にいる」ってことです。その正体はなんなのか?15年たったいまでも、よくわかっていませんけれど(笑)
いずれにせよ、私はダイナとのアイデンティティをかけた戦いに見事に敗れ、洗脳されてしまいました。その結果、濃厚なハーレー世界を垣間見ることになったんですけど、そこはまるで「パンツのゴムが切れてストンと下に落ちてしまったような」どうにも爽快で、飾り気のない、ノーストレスな世界でした。バイク乗りって「ニーグリップをしなくなり、股間に風を浴びて気持ちよくなるとヨコシマな考えもなくなるんだな」って改めて再認識した次第です。
確かに今でもワインディングをワッセワッセと走ったりはしますが、昔みたいにヒリついた走りはしない。「どこで一服したらキモチイイかな~?」なんて考えつつ、景色をキョロキョロ見ながら走ってるんですよね。
でも、そういう関係って、バイクが「これはやるけど、ここは苦手だからやらん!」ってハッキリ言ってくるから、こっちがいろいろと我慢しなきゃいけないんですよ。で、バイク側でいろんなことができるようにカスタムしようとすると、逆に良さがなくなっちゃう。しょうがないから「これはもうこういうバイクなのだ、それでいいのだ」と割り切って、ダイナで感じていた不満を解消できるようなバイクを1台増車することにしたんです。それがゴールドウィングF6Bでした。
ちなみにハーレーの空冷Vは確かに「哲学と文化の滲むとても良いエンジン」ですけど、「この世で最高のエンジン」だなんて、そんなのは幻想です。ハーレーの提供する世界と生き方だけを追求していくって人には、最高のエンジンかもしれない。でも、私は産まれも育ちも「90年代の日本の走り屋小僧のなれの果て」ですから。ハーレーの提供する思想は認めてるし、尊敬もしているけど、ハーレー至上主義の狭い世界にあわせるなんて到底できない。だから私はハーレーの新旧空冷V同士の世界が狭すぎる内ゲバ論争にまったくといっていいほど興味がありません。
そんな私がハーレーの空冷Vのパートナーとしてホンダのフラットシックスを選択したのは、ほとんど理詰めだったといえるでしょう。エンジンって形式によって得手不得手があるから、空冷Vツインで得られない栄養素を補おうとしたら、選択は必然的に正反対の多気筒エンジンになるんです。で、4気筒はこれまで山ほど乗ってきたから、もういいかなぁ・・6気筒超好きだし、もう一度乗りたいなぁ・・冬場にあったかい巨大カウルが欲しいし、走りも諦めたくないし、お値段も200万円以内で・・って考えたときに、ビタッとハマったのがF6Bだったんです。
このF6Bの初期型って格好いいんですけど、なんせ車重が385㎏。しかも、ゴールドウイング系の最大の売りであるバックギアをチョップしたから、買ってもすぐ手放す人が多かったみたいなんですよ。このため中古市場にリーズナブルで程度がいいタマが結構あったんですよね~。で、私はそれに飛びついた。それがまた、大ヒットだったんです。このダイナとゴールドウィングF6Bのタッグが、まるでテリーとドリーのザ・ファンクスみたいに息ピッタリで超ハマったんですね。

ダイナが私のバイクライフの方向性を決めたバイクだとすれば、ゴールドウイングは、私のバイクライフの願望の穴を全て埋め、きっちりと下支えしてくれたバイクです。乗り出せば、どんなシュチュエーションでも、そつなく、質高く、サービス満点の対応をしてくれるけど、ハーレーと違って、主張せず、前に出てくることはないし、ワガママも言わず、維持コストも安い。ガレージの中で「必要なときに呼んでください」って大人しくしてる。
海外製の主張の強いバイクに乗ったあとって、そういう存在がとにかく楽で便利なんですね。ホンダの良さって国産ばっかり乗ってるとわかんないところがあるけど、いろんな面で多少の危うさのある海外製に乗ると、その絶対的な安心感や破綻しない操安性は得がたい個性だってのがよくわかる。
そのホンダがフラッグシップとして徹底的に作り込んだゴールドウイングは、一言で表現すると、
「天元突破・超大銀河カブ」
って感じ。デカくて重いけど、公道領域では、動的質感は最高で、ほぼ過不足なく何でもできる殿様乗りのスーパーマルチプレイヤー。カワサキのH2やスズキのハヤブサ、ヤマハのR1が日本を代表する高性能技術のフラッグシップだとするなら、ゴールドウィングは世界のホンダが誇る日常系バイクの頂点。
ゴールドウィングに限らず、ホンダって、オーナーを優しくキッチリと支えてくれるイメージが強い。一部の過激なスポーツバイクはともかく、そういうスタンスはカブからゴールドウィングまで変わらないんじゃないの?って気がする。ゴールドウィングはそういう方向でのホンダの最果てです。
F6Bの後継であるSC79はメガクルーザーとして、さらなる使い勝手の向上を目指して大進化したんで、カブ化に磨きがかかってます。巨体で、超重量なんだけど、休日用とか祝祭用っていうには、日々の家事能力に長けすぎてるんですよね。乗ると重さや大きさ感が綺麗に消えちゃうし、低速トルクがアホみたいにあるし、ハンドリングもナチュラルで車体に余裕があって従順だから、扱いは昔のミドルクラスより簡単だったりする。で、乗り心地メチャ良くて、快適装備満載で、ちょっとした荷物を放り込める収納があって、取り回しも前進後退がワンタッチ(DCTなら)でしょ?もうロングツーリングから、タンデムライド、レンタルコミックの返却、コンビニへのチョイ乗り、ほぼ何にでも使ってますよ。とにかく使える用途が広いから、放っておいても距離が勝手に伸びていくんです。
私にとって一部の海外製の高額バイクって、完全にブランド品で、一流ホテルとか豪華客船みたいなイメージなんですよ。一度は乗ってみたいと思うし、体験してみたくはある。そこには文化圏の違いによる新鮮さや、海外モデルならではの華やかでめくるめく世界があることは間違いないと思う。
でも所詮バイクってのは乗り物で、基本的な性能があれば、楽しめるかどうかは乗り手次第なんですよ。バイクの種類や、どのメーカーを選んだかで人の本質が変わるわけではありません。「ハーレーで人生を変えよう」なんてキャッチコピーもあるけど、バイク買うだけで人生が変わるほど、世の中は甘くも簡単でもない。何かが変わったように見えて、その実、消費やモノに心奪われ、それが見せるマボロシに振り回されているだけってことがほとんど。消費欲にジャイアントスイングのように振り回されてきた私から言わせてもらえば、人間の欲がみせるマボロシなんて、冷めてしまえば蜃気楼みたいなものですよ。
長期に付き合えるバイクを求めるのなら、ブランド力や、人気、表面的な格好良さや、比較商品力での優劣だけじゃなくて「選択したバイクが自分のバイクライフにしっかりとアジャストするか否か?」「長期のメンテ環境が整っているか?」ってことも非常に大事じゃないかと思うんです。
話はちょっと変わりますが、ガンダムSEEDフリーダムの映画の中で、ラクス・クライン様が

って名言をラスボスのオルフェ君に叩きつけていましたね。いや~・・このセリフは実に見事だった。それまでラクス様に催淫光線をひたすら照射し、キララク勢のヘイトを溜めてたオルフェ君はこの一言で完全に地獄行き。リアルロボット系アニメなのに、純愛系アニメでもそうそう見られないような「格言級の名セリフによってフラれる」というのはアニメ史に燦然と輝く偉業。これで彼の「カマセ王」としての地位は盤石。その後の尺のほとんどでオルフェ君は人が変わったようにキレ散らかしますが、あれはもうしょうがない。だって、「生理的に無理!!」って言われる以上の酷いフラれ方したんですから。
ただね、私的には、あのラクス様の物言いはちょっと誤解を生むものだったと思うんですよ。だって、あの表現だと「必要性から生まれる愛」を否定してるように聞こえちゃう。確かに必要性と愛は明確に違うものだけど、かといって、不要なものを人は愛せませんからね。ラクスとキラって「互いを必要としてるから、あんなにラブラブ」になってんですよ。だからあのセリフを正しく言い換えるならば、
「オマエと私は互いに必要な存在かもしれないけど、それはビジネスライクな必要性で愛ではない。そもそも私はオマエを愛してないので夫としては超不要」
ってことを言ってるんですね。ああ、意訳したらもっと地獄でした。
なんでこんなアニオタ話をしたかというと、私とバイクの関係において「必要性から生まれる愛着」っていうのはとても重要だからです。ダイナとゴールドウィングは確かに付き合いが長い。でも、これだけ長く一緒にいると「バイクを買ったときの初期のトキメキ」ってもう全然ないんですよ。思い出すことすらできない。デザインだって、カスタムペイントだって、数年見慣れりゃ当たり前になる。その一方で、長く持つことによって生まれた愛着と、馴染むことによって生じる執着ってのが心の中にジワジワと湧いてきてる。必要性から愛が生まれてきてるんですね。
ゴールドウィングは、今の私の日常を考えたとき、必要性の面で最も高いところに位置するバイクです。このバイクが後衛職として多彩な能力でパーティを下支えしてくれてるから、私は前衛でいろんなバイクを楽しめてる。一昨年からは「聖帝様の御所車」というポジションも獲得してますんで、もはや私に仕えているのかどうかすらもわからない。
人は楽とか便利とかいう感覚を一度味わっちゃうと、そこに安住し、頼るようになってしまう生き物です。ゴールドウイングはそういう乗り手の心に静かに浸透し、その隙間を埋めていく。そして、いつしか、そのサポート能力に依存し、身動きが取れなくなっている自分に気がついて愕然とするんです。
ダイナが私の救世主だとすれば、ゴールドウイングは私に余生に舞い降りた、有能すぎる使用人。私はもはやその溢れんばかりのメイド能力に、どっぷり浸かり、完全なる依存状態となっているのです。
(オマケ漫画、「敗者の独(毒)白」)
コメント
コメント一覧 (26)
自分にとってはNTがまさに「スーパーカブ1100」であり、以前のCB750と違ってどこに行くにも乗るようになりました。確かにNTのコンセプトがまさに「平日の通勤から休日の遊びまですべてこなせる」というところにあるのでまさにピッタリのマシンなんですが、きんつば嬢もそんな感じで使えるとは・・・うーん・・・・恐るべし!あの大きさから「日常の雑務に使うにはどうなのかなあ」と思っていただけに改めて懐の深さに驚くばかりです。
自分のNTも二年点検を終えて益々愛着が増し(国内でほとんど走っていないことが余計に愛着を増す要因にもなってます、いいものはやっぱり自分だけで独占?したいですもんね・・・※のじゃ子さんみたいにやっぱりチェーンを切っておこうか(笑))生活から欠かせない存在になってきています。NTの能力にどっぷり依存し、今後のNTライフを楽しみたいものです。
へっちまん
が
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知人とバイクについて話してる時、乗ってたF6Cをカイザーカブ!とかレブル1800!と端的に評す事があるんですけど
大抵は冗談だと思われて取り合ってくれないんですよねw
F6Cの第一印象が重いは重いけど…こんなに今までの感覚で走らせられるモノなんだなぁ〜って考えてたことを今も覚えてます
車格大きくしても違和感無く走らせられたのってHONDAはスゲ〜事やってんだなぁ〜って
似たようなもんだろとM109Rに乗り換えたんですが……こっちはメタメタにされたのでより強烈です!
へっちまん
が
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・唯一無二
・妻とタンデムツーリングが可能
ゴールドウィングは最有力候補でした。実車を見れば見るほど細かいとこまで考えて作り込まれていて、”さすが優等生HONDAのフラグシップ!バイク界の神の牛車!!”と認めざをえませんでした。
ただ、金額とリアシートのゴツさ(それがタンデムには最高なのですが)が通勤にも使用するにはネックでした。
結局、一度も所有したことがないカワサキ車にしました。
Ninjya H2sx SEというどれだけ長い名前と思うバイクです。
私にはオーバースペックですが、カワサキの技術と意地の結晶は”バイク馬鹿”人生の最後のお供にはもってこいかと思います。
7月中旬に納車です😆
孤高で無駄でド派手で馬鹿げたバイクこそ私がずっと求めていたものだったんでしょうね。
”テリーとドリーのザ・ファンクスみたいに息ピッタリ”この表現だけで2台の関係性がわかりますね。プロレスもどの場面でタッチして選手が変わるかはエンターテイメントの重要な要素ですものね。
へっちまん
が
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私のは「S」でカウルが無いので高速走行は不得意ですが、チョイ乗りは大得意(それでも30km/L切らない)、ラゲッジスペースがあるところもGWと似てますね。
NC700S、大事にしていない訳ではないのですが、購入後10年過ぎてからは自転車置き場に突っ込むのも全然平気になりましたね。戻ってきて自転車に寄りかかられていても「まぁ、いいか」くらいで。昔のFZRやVTRでは考えられませんでしたが。
これだけ今の生活に馴染んでしまうと、問題は「次」が見当たらない事です。
へっちまん
が
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ダイナのような感じと言うとS30Zでした。いつもキャブの調子を、プラグを見ながら、エンジンと会話しながら、ガソリンとオイルの香りの中で自分が機械に寄り添っていく…でもツラくない。
逆にきんつば嬢みたいだったのはミラバン(5MT)でしたね、エアコン効く!パワステだ!荷物乗る!壊れない!車内泊もシート倒せてのびのび!その程度の商用車で満足するような安い男ですw
しかし我慢できずVTECのCR-XとドMマシンに…
全然関係なくて申し訳ないかもですが週末、友人とその奥さんが逝っちまったんです。新聞やニュースにもなってしまいました。飛騨川で沢登りしてる時に溺れて…登山のベテランゆえの慢心なのか今となっては分かりませんが。まだ奴ともミニ四駆の決着付いてないのに!!
訃報を聞いた時こそ「まぁいつもあぶない事してる奴だから覚悟してたわ…」と冷静に構えてましたが今になって何か悔しさみたいなものが出てきて、ミニ四駆仲間全員でキリン第二部のチョースケに対するモヒやマサキ、BSTのメンバーみたいになってしまってます。彼も昔、XJR1300乗ってたので走り抜けたひとりです。バイク乗りとして…
この魅入られた魂に、祝福を! R.I.P. T&K
へっちまん
が
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ウチのカブ1800もきっと仲間やと言うてると思います。全く長距離は乗らず六甲山しか行かない!
ならSSにしとけや〜と言われそう🥲でもカブのように使える(仕える)六気筒なんて世の中に無い絶対無二の存在で出会えて良かった🥰
くまもんステッカー貼ろうかな🤣
へっちまん
が
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50周年記念のゴールドウイング(出ると思う)を狙って貯金中ですが、値上がり極力しないでほしいです。ホンダさんお願い!
へっちまん
が
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このブログを読むと、11年前からつながる”運命”だったのかも知れないですね?
成功か否か?を問われると決して〇は貰えないモデルですが、
過去ネタで語られている観点は当たらずも遠からずと言えるし、
スーパーカブの様に扱う姿を見て、狙いを体現して貰えていたのも嬉しかった。
NC-Sのオーナーさんには申し訳ない?けど、最初の段階で機種のキーワードに
”Benly7X0"ってまじめに書いた(世には当然出ていないけど)記憶が。
正しく言い換えると…ストレート、解り易い訳です。
僕なら100%、こうやって伝えると思います!
今ではアウトでしょうが?…結構前から?あら、じゃあ時効ってことで(謝)
お邪魔しました!
へっちまん
が
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