石川のハーレーダビッドソンの正規ディーラーが、いつの間にか一つ消滅していました。なお、今回は8000字近い大長文で、ハーレーに対してかなり厳しいことを書いているので、ハーレー及びハーレーダビッドソン・ジャパン(以下「HDJ」と略します)に耳の痛いテキストは読みたくないという人はスルーしてください。本当は良いこと書きたいんだけど、悪いことばっかり目についちゃうのが最近のハーレー界隈ですね。

お話は先日ダイナのタイヤ交換でディーラーに行ったときのやりとりからはじまります。なお、音声は変えてあります。

「タイヤ交換?確認だけど、今回もメッツラーでよいのだドン?」

「え?なんでそんな【和田どん】みたいなしゃべり方になってるの?」


和田ドン
(ちなみにこちらが【和田どん】こと【どんちゃん】です。)

「人物特定を避けるためドン、このブログではいつものことだドン」

「そうでしたね・・」

「メッツラーはマラソンウルトラとクルーズテックの価格がほとんど変わんないのドン・・どっちにするだドン?」

「え?クルーズテックってマラソンウルトラより、かなりお高いタイヤだったんじゃなかったっけ?」

「たしかに発売当初はクルテクの方が高かったドン。でも、今はほとんど変わらないドン。」

「それ、マラソンウルトラが上がったの?クルテクが下がったの?」

「わからないドン!!」

「わからんのかぁぁぁい!では、いつもどおりマラソンウルトラでお願いします。」

「はぁぁぁあ!!クルテク興味ないドン?ここは話の流れ的にクルテクじゃないのカッ!!」

「いや~、満足してるものを変える必要はないってのが基本方針だから。マラソンウルトラでサスあわせしてるし、クルテク入れてまた空気圧の好み探すの面倒くさいじゃん?あと上位モデルと価格が同じって、もちが良くないケースが多いし・・」

「そんなヤル気のないことじゃ、もう脳死状態だドン!若者らしい覇気がないドン!チャレンジ精神はどうしたドン!」

「チャレンジ精神なんかもともとありませんが?」

「ダイナのカスタムの基本は不満の解消ですが?」

「カスタム費用がかさむのは日本で走ろうとすると不満だらけだからですが?」

「・・ウチの商品がご迷惑をかけて申し訳ございません・・ドン・・」

「まぁ今は満足してるからいいけどね。タイヤの銘柄変えて、もしこっちの走りにあわなくても、一度履いちゃうと交換まで、そのままになるでしょ?」

「大丈夫だドン。オマエみたいな適当な奴はどーせそのうち慣れて何も感じなくなるドン」

それならマラソンウルトラでも同じじゃね?」

「うぐぐぐぐ・・ものぐさだドン・・わかったドン・・いつもどおりのマラソンウルトラ注文しておくドン。」

「ちなみにいくらくらいになるの?」

「マラソンウルトラ前後で工賃入れて8万円くらいだドン。」

「昔は前後7万くらいだった気がするんだけどなぁ(遠い目)タイヤも少しずつ上がってるなぁ・・」

「ハーレーのパーツ代もクソ上がってるドン。SYN3なんて、高級酒並の価格ドン」

「たしかに・・」

(その後くだらない雑談を続ける)

「あ・・そういやさ~」

「何だドン?」

「文春でハーレー、エライ叩かれてるじゃん?」

「それ俺たちディーラーに聞くのかドン!気づかいというものがないのカッ?」

「そんなもんないでしょ?あれ事実なの?顧客に真実を教えなさい!」

「まぁ想像にお任せするドン。でも、長年石川でやってきたハーレーダビッドソン金沢の方は今年5月にやめちゃったドン。それで察するドン。今はうちが石川唯一の正規ディーラーだドン。」

「ええええええええええええ!!!」

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(今回は神々の黄昏ならぬ、ディーラーの黄昏。正直私はゲンナリしています。)

実は石川県にはハーレー・ダビッドソンの正規ディーラーがずーっと2店舗あったんですよ。その2店舗っていうのは「ハーレーダビッドソン金沢」「ハーレーダビッドソン石川」です。その2つのディーラーが距離にして1㎞くらいのところにあるという、なかなかのことになってたんですよね。私はダイナを購入する直前まで、ハーレーにはまったく興味がなかったので、購入したときにはハーレーのディーラーが石川県に何店舗あるのか?ハーレーにどんな車種があるのか?ってことは、まったく知らなかったんです。

そんな中で、私がたまたま入ったお店が、「モーターサイクルリバー」さんでした。当時はオープンしてから間もなかったみたいで、社長兄弟がアットホームに家族経営をしておられたんですよね。その後「ハーレーダビッドソン石川」に店舗名が変わり、年を追うごとにメカさんも営業さんも増えて、ディーラーらしくなって現在に至っております。ロクにバイクも買わず、ダイナに15年間しぶとく乗り続けている私は客の中では相当な古株のはずだけど、車検やタイヤ交換のときにしか行かないし、メカさんと話してすぐ帰る「妖怪ぬらりひょん」みたいな奴、という認識がされてるんじゃないでしょうか。

もう一方の「ハーレーダビッドソン金沢」の方は、お店にすら入ったことがないけど、マルヤスグループという、福井、富山、石川で3店舗経営してるグループ企業らしいです。本店は福井ですね。私の周辺でハーレー乗ってる人はこっちで買ってる人が多い。私のイメージでは、ハーレーダビッドソン石川はボッチのハーレー乗りが多く、ハーレーダビッドソン金沢はグループでわいわいやってる印象がありますね。

で、本年度の5月でこの「ハーレーダビッドソン金沢」の方が正規ディーラーの看板を下ろしたみたいなんですよ。

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(こちらがハーレーダビッドソン金沢。2017年に今の新店舗に移転しているみたいなので、そこから7年しかたっていない。ちょっともったいない気がします。)

内実を知らない客は「え?不景気で潰れたの?富山と福井は同じグループらしいけど、大丈夫なの??」って思うかもしれない。でもそうじゃないんですよね。うちのディーラーのメカさんに聞いてみたら、ハーレーダビッドソン金沢は、正規ディーラーを脱退し、マルヤスモータース金沢店という中古車販売に変わったみたいなんです。

「は?潰れてないのに看板だけ下げるって意味わかんないんだけど?」

ってことになりますけど、まぁ、そこにはいろいろと背景事情があるらしいのですよ。石川県だけでなく他県でもそういうことが続いてて、短期にバタバタと多くの正規ディーラーが正規販売店をやめちゃってるみたいなんです。結果、青森、鳥取、島根、山梨には正規ディーラーが一つもないっていう実に悲しい状態になっている。

それにしても、全国のディーラーが短期で次々と閉店してるっていう情報を聞くと、いくら何でも「はぁ?」ってなりますよね。だって輸入元のHDJの某社長は「2023年は120周年なんで、120%の売り上げをめざします!」って景気のいいこといっていたじゃないですか。でも蓋を開けてみたら、販売台数が上がるどころか、昨年以降ディーラー数が-10%の大幅減少って、どう考えても「アナウンスと起きていることが正反対」なんです。

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(就任当初のHDJ社長。カーウォッチから写真を転載させて頂いています。この頃はトライアンフから鳴り物入りでやってきたって感じだったんだけど、現在はディーラーとの関係は最悪みたいですね。)

「え?なにこれ!大量閉店って、いき〇り!ステーキかなんかなの?」って言いたくなるけど、ハーレーってい〇なり!ステーキと根本的に違いますから。だって、いきな〇!ステーキって自社出店だから、閉店も自社の経営判断でできるわけです。でも、ハーレーの各ディーラーって、HDJの子会社じゃなく、各地でディーラーオーナーが経営している独立資本ですから、ハーレーの販売をやめたら明日の生活の保障がないんですよ。だからそう簡単に、「やめろ?ハイそうですか」って納得するはずがないんですね。

この大量閉店の裏舞台の「真相は何なのかにゃ・・」ってネット検索してみると、


「週間文春の記事がずらずら出てくる」


という異様なことになっている。どうやら、今年のディーラーとHDJの軋轢がそのまま、まるっと文春のネタになっちゃってるようなんですね。こんな内部のゴタゴタを赤裸々に書いた記事がネット検索でゾロゾロ出てきちゃうと、いくら雑誌に広告打ったってハーレーのイメージが上がるわけがない。

ちなみに、この文春記事を読んだ一部の人は、いろいろ違和感を覚えたんじゃないでしょうか。私もそうでした。なぜなら、こんなリークは常識的に起こるはずがないからです。だって、ハーレーのブランド価値に傷がつくようなことは、ハーレージャパン、ディーラー双方にとって「何ら利益にならない」んだから。

「ハーレーの評判を落とした方が、自分達の利益になる」

という異様な状態にならないと、内部のゴタゴタなんて外に漏れるはずがない。今回はディーラーからのリークであることが、記事の内容的に明らかですし、文春もそれをまったく隠してないですから、「その異常さに釣り合うレベルの異常なこと」が内部で起きているってことになる。

で、文春にリークされた内容ってのが「達成不能な販売目標の下で実行されている、ハーレージャパンによるディーラーへの不良在庫の押しつけ」らしい。もー、内容があんまりにも馬鹿馬鹿しいんで、マジで呆れてる。

文春の記事を要約すると「HDJが独自に設定した売上目標をもとに仕入れた車両を、ディーラーに無理矢理に押しつけた結果、ディーラーの死活問題になっている。」ってことみたいなんですよね。うーん、なにそれ?バカなの?しかも目標設定は前年度120%なんですって。もう読むだけで疲れる。コロナ特需の終了と、車両価格の度重なる値上げによって、120%の売上げ目標達成なんて絶対に不可能な状況ですよ。

ハーレーって手頃な価格(ハーレーの中では)で売れ筋だった空冷スポーツスターがなくなり、近年の円安で価格が段階的にアップして、私から見ると「年々売れるタマがなくなっている」って状態になってる。X350だって、まだ何の実績もないんだし、慎重な消費者は気になる海外製のニューモデルが出ても、トラブル出切って品質安定するまで当面は様子見しますから、そんな売れるわけがないと思うんです。

本来なら「今年はどれだけ販売台数が下がるのか・・」って戦々恐々とするところでしょう。そんな状況の中で「前年比120%の販売目標」ってどう考えても無理じゃない?私なら即座に「売れる根拠はなんなの?あり得ないんだが?」って白旗揚げますけど、どうやらHDJが考えた目標の達成手法は、「正規ディーラーにバイクを押しつけること」だったようなんですよ。

結果、販売可能台数を大きく超えるバイクを押しつけられた正規ディーラーは、店舗に入りきらないバイクを中古市場に流す。本来は褒められたことではないですけど、ハーレーからの卸し値に対して中古買取相場が若干の黒字になる状態なら、ディーラーの経営にも影響はないわけです。しかし、細る需要に対し、供給過多をやり過ぎてしまった結果、中古相場がナイアガラの滝のように値崩れしてしまったんですね。こうなると中古買取相場が下がり、「中古流通に流す際にディーラーが持ち出しになってしまう」という状況に陥ってしまうわけですよ。特にナイトスターとローライダーSがガタガタです。

この状況下ではディーラーはお客に販売した利益をHDJから押しつけられた在庫処理に食われることになるから、配車されれば配車されるほど赤字になる。これじゃ店を維持していくことはできませんから、HDJとディーラーの利益が対立し、やがて不満が爆発する遅効性の時限爆弾になってしまった。

メーカーにとって中古相場の維持というのは、在庫調整及びディーラーとの健全な関係を保つ上で、とても重要な要素なんです。でも、現状はそこがもうグダグダに崩れちゃってるんですよね。

そもそもブランドって普通の商品に比べて、何らかの優位性があるからブランドなんです。そして、優位性のあるものって安売りの必要がないから高付加価値、高収益になる。でも、そういうものが市場に大量に溢れて、安売りをはじめちゃったら、それもうブランドじゃありませんから。今HDJのやってる市場への過剰供給は明らかにブランド価値の毀損です。

絶対に利益が出ない構造を押しつけられてるディーラーはそのムチャクチャに抵抗しようにも「ディーラー契約を更新しない」という脅しをかけられ、どうしようもなくなってるらしい。

文春記事を読む限り、それが昨年からの「正規ディーラー1割閉店」の顛末らしいんですよね。1割って少ないようですが、数にして13店舗。現在の中部地方の正規ディーラーが12店舗であることを考えると、相当な数なんです。

それにしても、昨今の状況で前年比120%UPの販売戦略に無理矢理突き進んでいくという作戦指揮は、もはや大戦末期の日本軍みたいな根性だけの竹槍突撃と同じにしか見えない。そんな作戦を実行しようとすれば、そのハレーションによって大量の血が流れることは目に見えている。ディーラーが文春に内実をリークしたのは「ハーレー全体のイメージダウンになったとしても、現在のやり方をかえさせないと・・」って腹をくくったからだと想像できますね。

私はね。別にノルマが悪いって言ってるわけじゃないんですよ。HDJも食ってかなきゃいけないんだから、輸入元が生きていくのに必要な販売ノルマは当然あると思うし、それはどの世界でも存在してるものでしょう。その一方で、正規ディーラーだって独立資本なんだから、自社で利益を上げて、食っていかなきゃならないわけで、HDJとディーラーは、そこに一定の緊張感はあるにしても、「本質的には Win-Winの関係であり、同じ方向を向いている」はずなんです。そんな関係であるにもかかわらず「なんで味方のはずのハーレージャパンに不良在庫を押しつけられて、事業廃止に追い込まれねばならんのか?」ってことですよね。これじゃ死ぬに死にきれないし、当然、自由かつ公正な競争とはいえない。

そもそもディーラーの撤退を決めるのは、「市場競争による自然淘汰」であって、HDJの圧力であってはならないんです。そんなの我々も到底納得できない。だって我々が直接取引してるのは各地の正規ディーラーでHDJじゃないんだから。ディーラーが「販売不振や高齢化で、やっていけなくなり、やむなく店仕舞いした」ってのなら、まだ諦めもつきますが、ハーレーの圧力さえなければ事業継続可能であるにもかかわらず、ハーレーが強制的に息の根を止めようとしてくるってのは顧客からするとあり得ないことです。

私はよくレッドバロンで海外製の新車を購入してますが、レッドバロンだって正規と同額なんですから、正規で買った方がいいに決まってますよ。でも正規ディーラーが近くにないからレッドバロンを選択してる。「バイクライフを充実させたければ、整備拠点は近くにあった方がいい。」って考えてるからです。

全国展開で売りたいんならメーカーは顧客のために各地域にしっかりしたメンテの拠点と態勢を整え、顧客に安心安全のバイクライフを保証するべきでしょうし、そのサービスのために顧客は高い価格を許容しているわけですよ。にもかかわらず、顧客とのつながりがある地域のディーラーを「ハーレーの都合で潰していく」っていうのは、既存顧客も一緒に潰しに来てるってことになるから、顧客に対する完全な裏切り行為です。HDJがディーラーを食い潰して業績を上げようとしてるんなら、私としては

「HDJなんていらん。」

って思う。あのね。ブルスカなんてやってる場合じゃないですよ。自分が取引していた正規ディーラーが消滅するという憂き目に遭った顧客にとっては、HDJがディーラーに無理矢理押しつけたバイクの収益で開催したイベントなんて、苦々しいだけってことになる。

この歪んだ販売計画による正規ディーラーの閉店が今後も続くとしたら、私の通ってるディーラーもなくなっちゃう可能性は多分にある。だって、既に山梨とかはディーラーがないんだから。となると、私は自分のバイクライフを守るために、いち顧客としてHDJに釘を刺しておく必要があるってことになるんですよね。そう、この問題に関しては、私には正当な利害関係があるんですよ。

正直いっちゃうと、私にとってはHDJとディーラーの確執なんて、別にどうでもいいんです。現状では中古相場もブランドイメージもガタガタになってるから、その責任を誰かが取らなきゃならないし、当然それは経営陣ってことになるんだろうと思うけど、HDJの経営なんかに、私は1ミリも興味ありません。そう、顧客に影響のない範囲でやってくれれば、裏がどうであろうが知ったことではない。実際機械式時計業界はもっとエゲツないけど、そういうのは散々見てきてるんだし。

私は「ハーレーに安心して乗り続けられる環境が維持され、保証されること」以外、何も求めてないんです。毎年HOGの年会費払ってるけど、イベントにだって出たことないし、私の年会費は全部お布施みたいなもんなんです。でも、その何割かはディーラーに入るって聞いてるから、バイクライフのサポート経費だと思って会員抜けてないんですよ。でもHDJに顧客のバイクライフを守っていくという意識すらないんなら、客が離れてもしょうがないんじゃない?って思います。

今回、こんなことになった原因はいろいろあるんだろうけど、某社長がメディアに露出し過ぎたことと、ほぼワンマンだったのがその一因じゃないかと考えてます。ちょっと格好をつけすぎた気がするんですよね。責任者は業績が上がれば評価も勝手に上がるわけだし、報酬も上がるんでしょうから、後ろでドンと構えてれば良かったんじゃないかと。

ハーレーワールドって、華やかで、スポットライトを浴びる世界だから、いろいろ派手なこと言いたくなるのはわかります。でも、威勢の良いことをアナウンスするのなら、責任者ではなく現場担当者にすべきだったんじゃないだろうか。責任者の言葉って文字通り大きな責任が伴うんで、それに自分自体が縛られてしまった結果、現実を自分の発言にあわせようとしちゃった気がするんですよね。

まぁバイクの空ぶかしにいいことがないのと同じように、言葉の空ぶかしも良いことなんてないってことなのかもしれませんね。




(オマケ漫画「文春砲炸裂」※なお、ブログ本編とまったく関係ありません。)
ゲス不倫2+1
(相変わらずギリギリのネタ。蓮如上人は80歳を超えてから、子種を仕込んだって逸話があるけど、バイク業界では、ネモケンさんがその領域に行けそうな気がする。ネモケンさん。これからも頑張ってください。)