つい先日、昨年6月末に納車された、ヴィーセ・モトグチ嬢(MotoGuzzi V7)の走行距離が5000㎞に達し、2回目のオイル&フィルター交換と点検を行ったので、これまでの経過報告を簡単にしておこうと思います。ちなみに、初回点検は慣らし終了の1500㎞で行い、オイルとフィルターを交換し、タペットの調整を行ってもらってます。そこからおいおいとエンジンを回し始めましたんで、今回はエンジンを存分に回した後の最初のオイル&フィルター交換ってことになります。

DSC_3371(こちら、山間にあるしだれ桜の巨木とヴィーセ・モトグチ嬢。バイクと桜を眺めながらのコーヒーがまた美味いんですよ。)

まずは、皆さんお楽しみの初期トラブルなんですが

「えーーっと・・一切ないです・・ごめんなさいっ!!」

ああ・・なんで私は謝っているのだろう?

国産だったら「は?故障がない??そんなの当然でしょ?」ってことでしょうけど、グッチだと「・・壊れないなんて・・自分だけがこんな幸せでいいのかな・・」って後ろめたく感じてしまう。そう、なぜかわからないけど、申し訳がない気持ちになるんですよね。レッドバロンの店員さんも、モトグッチがノントラブルなんて「ぶっちゃけありえない」と思っているのか、

「オイル漏れはどうですか?え?ない?はぁ・・」

「ブレーキ鳴きはありますよね?え?ない?はぁ・・」

となんとも微妙でしまらない反応。キミタチひょっとして私の不幸がご所望なのかね?

でもね。そもそも納車されたV7を眺める限り「ひ弱さを感じない」んですよね。コイツ、たたずまいがマジで「旧ザク」なんですよ。現代のハイテク国産車のように、先端技術が知恵の輪のように複雑に組み合わさってるのではなく、実に単純でシンプル。OBDやトラコン、ABSがついてるとは信じられないくらいハイテク感ゼロ。いろいろと熟成も進んでるのが見てわかるんで、なんというかこう、壊れるどころかアナログな信頼性をヒシヒシと感じてしまうんですよね。

購入したレッドバロンは過去にモトグッチをソコソコ売ってるみたいで、「グッチはボルト緩みとオイル漏れが持病ッス!!」ってアドバイスしてくれましたので、ツーリングから帰ってくる度に、バイクの周囲をまわり、「ネジは緩んでいねが~」「オイルは漏れていねが~」とナマハゲのように覗き込んでいるんですが、何かが起きるような気配はまったくないんですよ。

実は私、かなり前から「モトグッチは絶対に買うゾ!!」と心に決めて金も貯め、「後はルパンダイブをキメるだけ」という状態から、ずっーーと踏ん切りをつけることができない期間があったんです。それは、私の中でのモトグッチのイメージが

「性病を患っている峰不二子」って感じだったからです。

私は縦置きエンジンの滑らかなリーンが大好きなんで、乗り味が好みなのはハナからわかってた。でも、「下半身が黒いモノで濡れそぼっちゃってる」っていう印象が拭えなかったから、購入に踏ん切りがつかなかったんです。

でも、いざ購入してみたら、心配していた黒いシタタリはなく、マイナーな不満点は、「こちら側で是正や対処ができる」部分がほとんどだった。現行のV7は、これまで数多くのモデルチェンジを重ねてきただけあって、バイク本体の完成度は、かなりのレベルに到達してて、想定していたほどの大きな不満がでなかったんですよね。

これに加えて持病のオイル漏れすらないとなれば、不満箇所は「モトグッチがこれまでのモデルチェンジで手を入れず放置してきたところ」と相場が決まってくるわけです。モトグッチの中でもV7はシンプルなだけに「ここは力入れてるゾ!ってところと、「ここは、どうでもいいんじゃね?ってところの落差がある気がする。この国には全てを丸く整える目配りがイマイチできてない。よく言えば「メリハリが効いている」、悪く言えば「詰めが甘い」「雑」「手抜き体質」という状態になっております。う~ん、ビバ!イタリア!!

この点については先日のブログで指摘した、「最高出力がレッドゾーンに入っちまってる、お笑い蛸メーター」が最たるものです。エンジンにこれだけ力を入れてブラッシュアップしておきながら、見せ場である蛸メーターで手を抜くのはいい加減にも程がある。一応リミッターまで数字はメモってありますんで、「モトグッチが錯乱し、レッドゾーンを塗り間違えた」と割り切れれば、回転数は読めるので使う分には支障はない。

この「使う分には支障はない」っていうのが、「イタリア人の免罪符なんだろうな」と思う。モトグッチはレッドゾーンで最大パワーのアホ仕様だけど、ノーマルの回転能力に対して意味不明なくらい高く設定されているダイナの「メンツとハッタリだけのレッドゾーン」も頭の悪さでは負けていない。コイツらマジでいい加減なんですけど、この手の適当さを許し続けるのに慣れてしまうと自分の感覚がガバガバになってしまうので、文句は一応言っておかなくてはならない。

そんなV7ですが、ノーマルで地味に困ったのは「ブレーキレバーとミラー」でした。私は納車されるとまず操作系の調整をかなり細かくやります。特にブレーキ&クラッチの引きしろとシフトレバーとリアブレーキの踏み加減の調整はかなり念入りにやってると思う。理由は簡単で、バイクが4台あってとっかえひっかえ乗ってるとバイクごとに操作感覚が大きく変わったら乗りにくいからです。

操作の感触はバイクごとに違いが出るのはしょうがないけど、クラッチやブレーキの引きしろをしっかり統一することで差をできるだけなくしたいんです。その点、うちのヴィーセは、クラッチはワイヤーだからいいんですけど、問題はブレーキなんですよ。こいつ「ブレーキレバーに調整機能がない」んです。しかも割と深く絞って効かせるブレーキだから、このレバーだと絞りきると人差し指がはさまっちゃうという悲しさ。

私はクラッチもブレーキも中指・薬指・小指の外3本で引いてます。昔は人差し指と中指の2本がけだったんですけど、バイク屋勤務時代にいろんなバイクを買い取り、試乗点検で乗るようになって、

「クラッチ操作やブレーキ操作をしてるときでも、常にグリップは抑えておきたい」

「どんなに渋くて重いブレーキやクラッチでもキッチリ引かなきゃいけない」

っていう2つの要素が必要になったため、いろいろ試行錯誤した結果、最終的には「親指と人差し指を輪にして常にグリップを握り、中指、薬指、小指で操作する外3本がけ」になっています。スポーツバイクなどの繊細な入力は、人差し指と中指操作に軍配が上がると思うんですが、いろんなバイクに乗ることを想定すると、外3本がけの方が柔軟性があるんですよね。どんな重いバイクでも取り回しが安定するし、激重クラッチも渋いブレーキも、この操作なら引き切れます。このため、バイクの試乗インプレによくある「このバイクはクラッチが重いです、軽いです」ってのは、私にはほとんど関係ない。私のインプレでこのあたりが一度も出てこないのは、そこに意識が全くいっていないからです。

 うちのヴィーセの「ブレーキが効かない」って印象は、初期のサスのボトムに制動力が食われてしまうことと、ストッピングパワーの立ち上がりの弱さ、あともう一つ、人差し指が挟まって「ブレーキを引き切れない」ってのが大きかったと思う。調整さえできれば何の問題もないんですが、それができないんじゃ、ブレーキレバーを交換するしかありません。

さっそくネットでV7用のブレーキレバーを検索してみたんですが、2021年以降のモデルで検索するとリゾマってメーカーの奴しか出てこないんですよ。しかもアルミ削り出しでなんと3万1千円もする!?

「はぁぁあああ?ブレーキレバーにそんなに出せるかぁぁああ!どんな富豪相手に商売してんの?!」

海外モデルってね。本体の価格に比してパーツ価格が高すぎるから、いろんなところ手当てしていくと最終的にとんでもないことになるんですよ。日本製バイクみたいに穴が少ないわけじゃないから、割といろいろなカスタムが必要になる中で、このパーツ価格の高さは、明確なデメリットといえますね。

いろいろ探し回った結果、「イタリアのアコサット」というブランドからCNC削り出しの調整機能付ブレーキレバーが出ているのを発見。それでも1万5千円とメチャ高いけど、これならリゾマの半額だし、引きしろは無段階調整ができるみたい。モデルチェンジ前のV7用みたいですが、メーターすら変えないモトグッチさんなのだから、マスターシリンダー周りも一緒だろ?ってことで、写真で新旧モデルと比較してみた結果、「絶対つくわこれ。」ってことで注文しました。

Webike!で注文したら、「在庫がないので、イタリア取り寄せで2ヶ月半くらいかかりますが・・」ってメールが来ましたが、迷わず発注。これでブレーキの引きしろ調整が可能となり、ようやく快適にブレーキが引けるようになりました。

それにしても、ポン付けができるってのに、現行の850専用のパーツとしてではなく、旧モデルのパーツとしてしかこのレバーが出てこないのはどういうことなのか?これが業界の闇なのだろうか?

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(アサコットのブレーキレバーに交換。クラッチレバーと比べると随分ショートなので、左右でかなり見た目が変わっちゃいますが、見た目より操作性重視っす。)

あとはミラーですかね。

「旦那ァァアア!!このメッキミラーはいろんな意味で、かなりの安物ですぜ!!」


まぁ、これはあくまで「バイクの価格に比して」ってことで、エストレヤだったら許してます。ただ、このミラーはV7のクォリティと振動に明らかに見合ってないんですよ。

ストリートリプルの純正ミラーも元気良く加速すると風圧に負けてアッチ向いちゃってましたが、ミラーがしっかりしてくれないと、ストレスが溜まるんですよね。振動が少ないエンジンなら、これでも大丈夫なんだろうけど、うちのヴィーセは停車時に左右にめっちゃ振れるんです。そんなバイクにロングステーでミラー部分が重く、ネジの精度がよろしくないってシロモノでは「振動で緩んでください♡」って言ってるようなもんですよ。

ハーレーなんかも車体はメチャ振れますけど、振れても良ろしいようにパーツはハーレー専用品でしっかりしたもの付けてるんですよ。でも、モトグッチのミラーはどう考えても、「そこらの汎用品を取りつけてあるだけ」って感じだから、振動面に対応できていない。で、この純正ミラーの価格がネットで6000円オーバー。もうありえんだろ?グッチさん中抜きしすぎだよ。どう考えても2000円以下の質感でしょこれ。メッキもイマイチというかイマサンレベルで、ハーレーとメッキの質とは比べようもない。

クラシカルな中にモダンさもあるV7の本体デザインに対し、「これはダウジング棒なのデスカ?」ってツッコミたくなるほど、ミラーのデザインは昭和臭漂うもの。グリップからも大いにハミ出してて、すり抜け時にも邪魔。17㎜の常識的なトルクで締めても、いつの間にか、しおれたヒマワリのように下を向いていたり、遊女のようにしなだれかかってきたりで、締める→緩むの不毛な二百三高地状態を繰り返しており、もはや耐えられません。

ただ「取り付け部分が10㎜ネジの汎用ミラーならどんなもんでもつく」という点はありがたい。もう社外品を選び放題です。ということで、この手のバイクではド定番の

「タナックスのナポレオンミラー」

を2つ購入。定価は随分上がって、1本6000円超だけど、Amazonでは4500円で買える。取り付けも、位置を合わせて17㎜のレンチと六角で指定箇所を締めるだけ。締めつけた感じも剛性感があって素晴らしく、メッキの発色、厚みも申し分ない。強めに引くとミラーがねっちょり前後に動くけど、これは車のミラーに当てたり歩行者を引っかけたときの衝撃緩衝機能らしい。さすが日本製、ミラーが回る理由が緩みではなく、安全性からとは、さすがである。

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(遙か昔からあるド定番の社外ミラー、タナックスのナポレオン。左右兼用です。建て付け、剛性感、メッキの質等はハーレー純正にも引けを取らない。当然V7の純正ミラーとはモノが違う。)
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(ブレーキ側が純正ミラー。クラッチ側が交換後のナポレオンミラーです。メッキの輝きの質やカチッとした作り、デザイン性の違いは距離が離れたところからも感じられます。また、ブレーキレバーとクラッチレバーの長さの差もよくわかります。)

ということで、現状、うちのヴィーセ・モトグチ嬢は、ブレーキレバーとミラーをカスタムということになっております。バーエンドウェイトのメッキの質の低さにも耐えられなくなって、やがて交換する可能性が高いけど、まぁそれだけやれば、刺さったトゲのような小さな不満点は全て解消されるでしょう。

ヴィーセについては、「大枠は良いんだけど、細かいところで詰めが甘いな~」って思うところがいくつかある。その一方で「多少のことは大目にみようか・・」って気にもなるんですよね。それは、このメーカーの強い個性と、その製造手法によるものです。

このバイク、じっくり眺めてみると、今だ組み立て、組み付けを人力でやってる家内制工業みたいなバイク造りなのがわかるんです。モトグッチは人間味のある乗り味だって言う人もいるけど、確かにこの造りならそういう味がするのもわかる。近年値上げを繰り返しているけど、人件費や輸送費が高騰する昨今、価格はもっと上がってもおかしくないと正直思う。でも、モトグッチは海外製としては買いやすいところでまだ踏ん張ってくれていますから、「しょ、しょうがないわねっ!ダメなところは、こっちでなんとかしておくからっ!これからも頑張って作っていきなさいよねっ!」ってツンデレ気味に許しちゃうんですよね。

今後、じっくり距離を走り込み、バイクと私の相互理解が進んでいく中で、次なるカスタムの欲望が湧いてくるかもしれません。しかし、ヴィーセは現状でも、かなり満足できる走りを提供してくれているので、ダイナのように「全面的にカスタム」なんてことにはならないはず。今回のような小さな不満はさておいて、大局的に見れば、「強い個性、バイクとしてのバランス、古き良き旧車風味、コダワリとユルさのイタリア精神などが、実にうまくブレンドされている、面白くも、味のある縦置きマシン」と評価できると思ってます。




オマケ漫画
工場4
(こんな自虐ネタを描いていると、やがてはMotoGuzziからゴルゴ13のような刺客が送り込まれるかもしれない)