今回はバイクのブログではなく、閑話休題の模型ネタです。ブログのお題は昔の人気ドラマ「積木くずし」をもじって、「積みキットくずし(笑)」。ガンダムネタを大量に混ぜ込み、写真を数多く掲載して、私のブログには珍しくビジュアル的に華やかなものになってます。

古くからの読者の方は知っておられると思うんですけど、このブログはもともと2016年に開設された、アニメネタを織り交ぜつつ、過去に作った美少女フィギュアや模型をご紹介していく「へっちまんの素人模型」というブログでした。やがて私のもう一つの趣味であるバイクもネタにするようになり、「へっちまんの素人模型&モーターサイクル」と改題。この間、バイクネタのアクセスが増え続ける一方、模型は超低空飛行で、紹介する完成品もなくなったため、2年前に模型の紹介をやめ、「へっちまんのモーターサイコル」に再度タイトル変更して、現在に至っております。

私の人生における模型熱は、20体以上の美少女フィギュアガレージキットの製作並びに3年1500時間にも及ぶ木製帆船模型一級戦列艦ビクトリーとの激闘で、ほぼピークアウトした状態になっており、過去3年間で作った模型は、正月休みに戯れに作った無塗装パチ組みの「Figure-riseLABO 初音ミクV4X」のみというヘタレっぷりです。

20240309103152_IMG_5221+2
(透明感のある成形色を駆使してパチ組みだけでどこまでの質感を出せるかを追求したバンダイの意欲作。ボディは良いんだけど、表情がもうひと頑張りかな。)

バイクで表現するなら、ゴールドウィングからいきなりカブに乗り換えたような枯れっぷりなんですよね。まぁ美少女フィギュア作りまくったおかげで塗装方面で自らの限界を悟り、木製帆船模型で工作方面でも限界を知った感がありましたので、「模型はここら辺が潮時かな・・」って心境にはなってます。やるだけやった感がありますし。しかも、老眼で視力が落ちて目の焦点がぜんぜんあわないので製作意欲もガタ落ちですよ。

モデラーとしては、第一線から引退した感のある私ですが、実は先月の頭からコツコツと模型を製作していたんです。作っていたのはこちら。

「MGEXストライク・フリーダム」

mgex
(うおおおお・・・もはや箱絵からして恐怖の大王みたいになっちまってるぜ。「作れるもんなら作ってみろや(笑)」と言わんばかりにガン飛ばして、煽ってきてます。)

この模型の製作記を開始する前に、モチーフとなっている「ストライク・フリーダム」とMGEXというキットの説明を簡単にしておきますと、まずこのMSは「ガンダムSEEDディスティニー」というお話しに登場したキラ・ヤマト准将の搭乗機ですね。

舞台となった宇宙世紀コズミック・イラ世界は、地球の植民地であるコロニー連合(プラント)と、これを牛耳ろうとする地球連合の激しい覇権争いになっております。この両者の戦争は「血のバレンタイン」と呼ばれる地球連合のコロニーへの大量虐殺、核攻撃で幕を開けます。チョコの代わりに核ミサイルをプレゼント♡はマジでシャレにならない。この地球連合の攻撃に対し、プラント側が開発したのが、あらゆる核分裂を抑制し、レーダー、通信を妨害する「ニュートロン・ジャマー」という装置。これはファースト・ガンダムにおけるミノフスキー粒子みたいなもんですな。

敵からの核攻撃を防ぐため、コズミック・イラのほとんどの戦闘空域にはこのニュートロン・ジャマーが散布されてますから、兵器は「ほとんどがバッテリーを原動力にしているMS」になっちまってる。しかし、その戦争のさなか、プラント側でトンデモない新型MSが開発されます。機体内部にニュートロン・ジャマーを無効化する最高機密「ニュートロン・ジャマー・キャンセラー」を搭載し、破格の核動力を実現した超高性能インチキ機体です。核を憎み、核を放棄すると宣言したプラント側が禁忌の扉を開け、核の力で無双しようっていうコンセプト。

「地球連合が使用した核の力をもって、奴らを滅ぼすぅぅ!」

という「海の力でゴジラを殺す」的発想で作られたプラント側の殺意の集大成。このMSは試験的に2機作られ、「プラントを地球連合から武力解放し、真の自由をもたらす」という意味の「フリーダム」と、「地球連合側が犯した大罪に正義の鉄槌を下す」という意味の「ジャスティス」の名がそれぞれつけられます。「中東の武装テロリスト」が好みそうなネーミングで絶滅戦争に邁進するパトリック・ザラの心の闇がネーミングに表れちゃってますね。

面白いのは、圧倒的火力でプラント側を勝利に導くはずの「フリーダム」は、武力解放どころか、争い自体を否定する平和主義者のキラ・ヤマトの手に渡り、正義の執行者であるはずの「ジャスティス」は、体制に影響されやすく、「正義がイマイチ定まらない」アスラン・ザラの手に渡る。要はどいつもこいつも「コンセプト的に最も乗られたら困る人達」に乗られちゃって、絶滅戦争を回避することを目的とした第三勢力として戦うことになっていく。コズミック・イラ世界はこの手の矛盾を内包したシニカルさに満ちているのが特徴です。

maxresdefault (6)(デザインはフリーダムが戦国武将で、ジャスティスが必殺仕事人って感じですね。)

フリーダムはこの世界における「最強の暴力装置」であり、これを操るキラ・ヤマトは人工子宮というフラスコの中で遺伝子を魔改造して作られた「世界最強のMSパイロット」という設定ですから、そりゃ全編を通じて、とてもお辛い話になる。戦いを最も嫌う心優しき主人公が「最強の兵器を駆る最強の戦士」という、大いなる自己矛盾を抱えたまま、あまたの戦場をメンタルすり減らしながら戦い抜き、映画版に突入ってのがこの物語の背景です。映画の序盤でラクスがキラを評して「あの人が優しさで壊れてしまう前に・・」なんていってましたが、昔から物語がずっとそんな感じなんですよね。この設定に救いがないのは「価値観の衝突のない世界」ってのはこの世には存在せず、それ故に戦いも決してなくならないので、キラ・ヤマトの抱える苦悩は永遠に終わらないってことです。

fc7b2da8
(「人は優れた遺伝子があれば幸福になれるのか?」の問いかけに対しては、最高の遺伝子を持つこのお方が不幸のどん底にいるのを見れば、おのずと結論が出るんですが、それをわかってるのはこの人の周辺だけなのがツラい。)

今回、私が製作するストライク・フリーダムは、このキラ・ヤマト用に専用チューニングされたフリーダムの強化型後継機種だと思ってもらえればいいでしょう。ファンネルがついているので、ガンダムに対するνガンダムみたいなものかもしれない。なんせSEED世界を代表する主人公が乗る機体ですから、人気は非常に高く、映画でも最終決戦にキラの愛機として復活登場しました。

FREEDOM
(旧型になってなお、キラの剣として敵最新鋭機相手に一歩も引かず戦い続ける「ド忠犬MS」ストライク・フリーダム。)

映画では,、敵の最新鋭のラスボス機とエース機、艦隊支援砲撃の多重攻撃を粘りに粘り、仲人役アスランのサポートを受けて、ラクスの支援機クラウド・ディフェンダーと愛のエンゲージ。MSの形をした超攻勢型結婚式場と化し、新婦をコクピットに招き入れた後、要塞基地メサイヤへオデコビームでケーキ入刀。こちら新郎新婦お二人の初めての共同作業ですが、なぜかラクスの承認制。これは将来の暗示でしょうか?

返す刀で新婚初日から浮気を強要してくる狼藉者(ラスボス)を叩き切り、事件解決後は夕日の沈む海岸線へとハネムーン。そしてお二人の浜辺ロマンティクスの間は頭を垂れて忠誠ポーズと、苦労を重ねてきたキラに結婚から初夜まで、完璧なイベントプランをご提供。こんな有能で献身的なMSが過去にいただろうか?強いとか弱いとか言う前に、二人の門出を祝う演出と、その気配りに私の中で株が爆上がりですよ。

ちなみにこのキットの頭文字であるMGEXは「マスターグレード・エクストリーム」の略で、エクストリームの称号は「マスターグレードをギリギリまで攻めました」的な意味でつけられているみたい。このカテゴリーのキットは今のところ、ユニコーンガンダムとストライク・フリーダムの2つしか発売されていません。

ガンプラにはHG(ハイグレード)、RG(リアルグレード)、MG(マスターグレード)、PG(パーフェクトグレード)の4つがあり、マスターグレードは上から2番目になります。てっぺんのPG(パーフェクトグレード)は価格的に「パーフェクトに頭逝っちゃってるガンダム狂信者向け」です。PGは床の間に飾ってもサマになるくらいデカいんで、模型として楽しみたいのならMG以下を選択するのが現実的。模型って20㎝~30㎝が手頃で、あんまりデカいのは、作った後でディスプレイするところがなくて困るんですよ。私はPGのガンダムとザクを発売当初に作ってますけど、いまだに置き場所に困ってますし、デンドロビウムに至っては聖帝様にブチ切れられて、自宅におけなくなり、バイク小屋で沖縄シーサーみたいになってます。

IMG_5224(こちら最初期型のPGガンダム。製作は20年くらい前。リアルさを出すために、ミリタリー模型っぽいウェザリングを施してあります。プロポーションは昭和感満載ですね。)
2980600e.jpg
(HGのデンドロビウム。1/144のくせに、キット長が1メートルもあるという頭のおかしなキット。現在は自宅に置ききれずバイク小屋に鎮座しています。)

私のようにあまり数を作らないモデラーは「パーフェクト」とか、「エクストリーム」とか「最高峰」とかいう言葉に釣られる傾向にあって、MGEXは昨年の正月に「人生最後のガンダムにいいんじゃないか?」って買ってみたんですけど、箱を開けてみたら、ランナーがヤバイくらいぎっしり詰まってて、あまりの圧に「うっ」っとつぶやき、無言で蓋をまた閉めて押し入れに放り込んだ状態になっていました。今回再び引っ張り出したのは間違いなくガンダムSEEDフリーダムの映画の影響ですね。

模型ってのは購入してから5年くらい作らないとデカールが劣化しちゃうし、老眼が進行し、後は枯れ果てるだけの我が身ですから、年々製作のハードルは高くなるばかり。

「認めたくないものだな。老化故の衰えというものを・・・」

なんてカッコつけてる場合じゃない。もう数年放置すれば一生作ることもなく、押し入れで塩漬けとなるのは確実。作らない模型など邪魔な箱でしかないから、このままだと聖帝様のジト目から発せられる憎しみのコロニーレーザーで、グレート・デギンのように背中から焼かれるのは目に見えています。

私は昨年、聖帝様の圧力で、積んであったガレージキットやプラモを大量に売却処分してるんですけど、残した模型の中で一番の大物がこのMGEXストライク・フリーダム(以下「ストフリ」と略します。)ですから、そろそろ成仏させないといけません。

ちなみにこのモデルは100分の1スケールながら、

「定価が1万5400円という目ん玉ビヨヨン・プライス」

なので、製作にあたって、粗相は許されない高貴なものです。仕上がりに納得がいかなくても、価格的に再チャレンジは難しい。一昨年のクリスマス商戦に鳴り物入りで登場し、バンダイからある程度潤沢に供給されたとはいえ、常時模型店の棚に並んでるモデルではないですからね。近くの模型店に在庫がないからと、ネットで購入しようとすると、戦後の闇市みたいなプレミアがついている。ワンフェスで40個くらいしか作られない希少性の高いガレージキットならともかく、バンダイナムコが大量販売する市販モデルでプレミアって、ガンプラどんだけ人気なんだよ。もう世も末感がすごい。

ストフリは超人気機体だけあって、「とりあえず出せば売れるし、後ろの羽が豪華だから、割とお高いプライスも許容される」おいしいモデルとして、HG、RG、MG、PG、MGEXと全てに登場しています。バンダイナムコの収益を上げる魔法のランプとしてコスられ続けておりますから、最新のMGEXともなると、さすがに面構えが違う。パッケージからして真打ちの風格。まさにガンダム界のランプの魔神。

MGEXの狙いはガンダムに脳を焼かれた大人世代の財布の中身です。ターゲット層は年を食ってもアニメから足ヌケができず、通常のマスターグレード程度の刺激では満足できなくなってしまった、ジオン残党のようなタカ派モデラー。MGEXはそういうデラーズ・フリートな人達を満足させるため、「パーツやディティールを情け容赦なくエクストリームしたキット」と評しても良いでしょう。しかし、例えどんな高い山であっても、購入した以上は挑まなくてはならない。そう私は高らかに宣言する!

「待ちに待った時が来たのだ!」

「多くのキットが無駄死にで無かったことの証の為に!」

「再びモデラーの理想を掲げる為に!」

「積まれたキットの成仏のために!」

ガンプラよ!私は帰ってきた!!
(安彦良和先生タッチでアナベル・ガトーのパロ。)

まぁ、最後はガトー先生のように特攻して宇宙の塵と散る覚悟です。

なお、このストフリを作っても、まだ積みキットは存在します。フラフラと買っちまったグッドスマイルカンパニーの「ストレリチア」とか、

b1f7703685d0711f0e799e92501ab1d7
(機体造形にひかれて買っちゃった、ダリフラのストレリチア。ガンダムとは異なる柔らかい曲線で構成されてるのが魅力。)

ドラゴン社の「ドイツ軍ゴムボート渡河セット兵員13体付き」とか、ハセガワの「ライト兄弟のライトフライヤー1号」とか、なぜこれなの?っていう業が深いキットが残ってますけど、とにかく模型は作らなくてはお話にならない。1年戦争末期のジオニック社の技術者のように、「うぉぉぉおお!!何が何でも、ロールアウトさせるのじゃあ!!」と、一人円陣で気合いを入れ、製作に取りかかることにしました。

・・・えーと、すいません。この製作記、テキストがなんと1万字を超えちゃって、あまりの長さに、前後編に分けました。前編で5000字以上を費やして、まだ製作にも入っていないという恐ろしさ。私のグダグダなガンプラ製作記で暇つぶしをしてもいいかな・・って奇特な方は、近日公開予定の後編もどうぞ。