ああ皆さん。ズゴックの中からコンニチハ。

いやー観てきましたよ。「ガンダム SEED フリーダム」を。この映画評は、ネタバレがありますし、「ガンダムはまったくわからないゾ」って人にはまったく刺さらないと思いますけど、土曜日のレイトショーを見て、この分量のテキストを2日で上げてるんですから、私がどんなに盛り上がったかがわかるはず。そもそもこのサイトは私の廃テキストの閲覧所ですからね。まぁバイクもネタとしてはカスってますし、読み物としても楽しめるように作ったつもりなので、暇な人は読んでいって下さい。

ポスター
(ガンダム公式から引っ張ってきました。20年越しの完結編って感じですね。)

ガンダムSEEDってGガンダムと並んでガンダムの中でも好き嫌いがある作品なんですけど、王道嫌い(というか固定された価値観がいや)な私は好きな作品です。でも昔はGガンダム好きとかSEED好きって言うとガンダム原理主義者から異端扱いされた時期もあったんですよね~(遠い目)

特に1作目のSEEDは良かったっすね。今でもOPとEDの西川貴教と玉置成美の声が脳内再生されるし、バイクで聞くアニソン曲の中にも、SEEDと続編のディスティニーの曲はきっちり入ってる。そんな懐かしアニメが久方ぶりの復刻映画化ってことで、興味は大いにあったんですよね。

しかも今回は予告で一瞬ではありますが、私所有のHAWK11が映るという「絶対に観に来い」と言わんばかりの挑発があって、「オイオイ、こりゃもう行くしかねーな」ってことでレイトショーに飛び込みました。それにしても客の入りが良くってビックリだよ。入場特典が品切れしてましたから。

で、観た感想は・・いやー良かったですねぇ。何が良かったかというと、いろいろと吹っ切れていたところですね。TV版では広げた大風呂敷がそのまんまだったんですけど、映画版ではそれを強引ながらもしっかり閉じたし、その閉じ方がわかりやすかった。この映画、SEEDが好きか嫌いかで評価がそもそも割れると思うけど、私は評価しています。いやもう昨年から邦画は観るやつがみんなアタリでヤバイですよ。

まず、バイク好きの視点から申しますとですね。この映画はヤバい!なななななななんと!!主人公のキラとヒロインのラクスが暮らす家に、

白のゴールドウィングとブルーのHAWK11が並んで止まっちゃってるの!!

あのね。これは事案ですよ。とんでもないですよ。熱核融合炉とバッテリーのハイブリッドで動くモビルスーツがいる時代に、未だガソリンエンジンのバイクが残っていることがおかしい。しかも、休日に二人がゴールドウィングに乗って、タンデムツーリングしちゃうんですよ。ゴールドウイングもHAWK11も、まだ現役で動いてんですよ!!多分製造中止から150年~200年くらい過ぎてると思うけど車体ピカピカだよ。

ねぇ、これホンダの仕込みなの?どういう事かわかってやってんの?

あのね。キラ・ヤマトとラクス・クラインと言ったらガノタ(←ガンダムオタクのこと)では知らない人がまずいない超、超ビックネームなんですよ!ラクスは、宇宙の歌姫で、アイドルで、艦隊指揮できて、政治ができて、演説すればプラントが動き、家事も完璧な、もの凄い人なんですよ!金輪際現れない、一番星の生まれ変わりなんですよ!HAWK11がそんな御方の愛車に選ばれたって事がどういう意味を持つかわかりますか?

これから何年経とうが、バイクに関する説明はほぼいらなくなったってことですよ。

「HAWK11?それどこのバイク?全然知らないんだけど??」

「は?何言ってんの?HAWK11はラクスたんの愛車なんだが?(ニヤリ)

「な、な、なんだってーーーー!!」(顔を真っ青にして、後ずさり)

もうこれだけ。ガノタにとってキラとラクスは、現人神のような存在。そしてガノタこそが世界の多数派。HAWK11をダサいなんて言おうものなら、「ラクス様のセンスを疑うのか!」と絶叫したラクス信者に極刑に処せられる可能性すらある。ラクス・クラインの愛車に選ばれたという事実により、HAWK11はアニメ界で絶対的な地位を獲得したといえるんです。

ちなみにゴールドウイング・ツアーもキラとラクスのタンデムライドで株がブチアゲ状態になってる。この映画以降、ガノタの女子の間では「白のゴールドウイング・ツアーでタンデムすること」が夢になるでしょう。レイヤーとかオタク女子にモテたいならツアーの白。この一択ですよ。

いや~ホンダでこれをしかけたの誰よ。とんでもねぇことやってくれましたよ。これでゴールドウイングとHAWK11はアニオタ界隈で20年は安泰だよ(笑)

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ちなみにラクスがHAWK11に跨がってるという事実は、ラストバトルの重要な伏線になっている。物語後半で敵の攻勢に押されるキラのピンチを救うべく、ラクスがウィング・モジュールに搭乗し、ガンダムに合体するんですけど、そのウィング・モジュールの姿がまんま白い鷹なんです。そして操縦姿勢はHAWK11と同様のセパハン前傾。イメージが綺麗に重なるんですね。そして合体後は二人の能力と愛の力で覚醒したフリーダム・ガンダムが無双しまくる展開になります。

細かいことは割愛しますが、ラストバトルは「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ!!」という、ミもフタもないもの。もう大乱戦のやりたい放題なんですよね。実は私ってば、こういう頭使わない力押しのお祭り展開がメチャクチャ好きなんですよ。

でもTV版のSEEDってそんな話ではありませんでした。2003年当時の世相を反映し、かなり暗い話で、終わり方にも救いがなかった。初代ガンダムは宇宙移民と地球に住む人類の確執がもたらす抗争でしたが、SEEDはもっと根が深くて、人類と、遺伝子操作で生み出されたコーディネイターの確執でした。コーディネーターってのは明確に進化した人類であり、人類の嫉妬と警戒心はハンパないから、初代ガンダムよりさらに和平が難しくなっている。若き主人公達はその対立の中で、愛する人を失い、どのように争いのない世界を築くかを模索することになります。

そんな抗争状態に終止符を打とうと、続編ではラスボスのデュランダル議長が、「ディスティニー・プラン」を提案します。まぁこれは簡単に言うと遺伝子による優生学をベースにした全体主義社会への移行プランです。人の遺伝子を解析し、生き方を政府が提案することによって、人をあるべきところへ誘い、争いをなくそうという試みでした。まぁベストではないけど、人類はバカすぎるから、殺し合うよりはマシだろうという大人の折衷案だったんですよね。

主人公達は人の自由な意思を尊重しない、このデイスティニー・プランを否定し、デュランダル議長は戦いの果てに敗れます。しかし、国家による管理を否定する一方で、「ではどうするのだ?どう争いを止めるのだ?」っていうデュランダル議長の正論に、主人公達は答えを出すことができないんですよね。争いのない世界とは、どういうもので、そこに至るために何を目指すのか?っていう問いかけへの結論が出せないまま尺がつきるという、非常に収まりの悪い終わり方をしてたんです。

これの何が問題かというと、「長い長い旅路の果てに誰も幸せになっていない」ということなんですよ。SEEDはエヴァとそこら辺が共通していたんです。これはずっとSEEDを見続けた人にとっても、なかなかに虚無感が深く、しんどいエンディングだったわけです。

アニメって世相を反映してたりするんですけど、その頃の日本社会はバブル崩壊とともに訪れた経済的苦境で、それまでの常識がガラガラと崩壊していた時期だったんですよね。失われた20年のど真ん中にあった日本はそれに変わる新たな価値観を何ら提示できていなかった。個性より社会が優先されていた昭和の時代から、一人一人の個性を重視する社会に移行する過渡期でもあったわけです。社会全体が自信を失って、政治もアニメも未来を提示できない。生き方に答えがない。そんなアナーキーな時代背景が反映されていたと思うんですよ。

で、それに対して、今回映画版が出した答えは

「世界全部を幸せにすることはできないね。でもそれはそれで置いといて、まずは自分達が幸せになっちゃおう!そう、主要キャラだけでも、幸せになっていこう!」

ってことなんですよ。うーん、実にあっけからんと明るいじゃあないか。個の幸せはミクロだけど、それを広げていけば、マクロな幸せになるわけだから、方法論としては間違ってないといえる。

で、そこでクローズアップされてくるのが「愛」なんですよ。このパワーワードを出したら、アニメ世界での問題は大概解決するっていう最終兵器をリアル・ロボットアニメで惜しげもなく出してきた。その英断を私は支持する。結果、最終戦闘は「チョンガーが彼氏彼女持ちにことごとく駆逐されていく」という、非道かつ香ばしい展開になっちまいましたが、愛の名の下に散るなら悪役モブ達も本望でしょう。

直江兼続のように眉間に愛を頂いた以上、主人公達を攻撃する奴らは全て「人の恋路を邪魔する奴ら」なんで無礼打ちでいいんです。「愛の名をもって誅す」ですよ。そこには政治も、思想も、人種も、差別も存在しない。私みたいなアホでもこれならばわかる。そしてラストバトルがとにかく熱い。何が熱いかというと、昔TV版の挿入歌として流れた西川貴教の名曲中の名曲「ミーティア」が流れるんですよぉ。あ゛あ゛あ゛あ゛・・当時のファンはこれだけで涙腺が決壊するんじゃああ!!ずるい!!

(戦闘中に流れると友軍の勝利が確定する、SEEDの定番処刑ソング「ミーティア」です。西川貴教の熱唱が、いつ聴いても熱すぎますわ。)

映像的にも愛を掲げる陣営がどんなに強いのかを存分に見せつけなければならないですから、普通にライフルで撃墜してるようじゃダメ。当たり前すぎて愛の絆は伝わらない。今回の敵パイロットは主人公達の心が読めるという強敵なんですけど、主人公側のエースパイロット達はこれまでにない手法で敵の攻撃をことごとく撃退する。それが面白すぎて頭がおかしくなる。例えば準主役のアスランを例にとると、

①なぜか赤いズゴックで決戦場に乗り込んでくる。

②主人公のフリーダム・ガンダムをかばって大破したズゴックの中から、ジャスティス・ガンダムが出てくる。

③彼女をオカズにしたエロ妄想で敵を赤面させ、興奮と動揺で混乱したところを容赦なく袈裟斬り。

ズゴックだけでも笑えるのに、これだけボケてくれれば、もうこの作品は伝説になるしかない。

一連の戦闘シーンでニクいな~と思ったのは、過去作で活躍したキャラクターをもれなく登場させ、全員にキッチリ役割と見せ場を用意したこと。そこには全てのキャラクターのファン層を漏れなく成仏させようという優しい意図が感じられた。そして、全員が「決して救えない混沌とした世界」「良くわからない大義やプロパガンダ」のためではなく「自分の身近な幸せを守るために必死になって戦っていた」のが良かった。それは誰かが考えた幸せを人に押しつける社会ではなく、多様性と軋轢を受け入れつつ、幸せとは、平和とは何かを個々が考えていく、今の世相を反映したものでした。

そしていよいよクライマックスがやってくる。そう、「愛とは合体だ!そして合体すれば最強だ!!」ってことで、敵のラスボスの攻勢で、ピンチになったキラのフリーダム・ガンダムに純白のピチピチスーツに身を包んだラクスがウィング・モジュールで合体する。これってもうお嫁入りですよね。

そこに顕現したのはまさに

「下半身フリーダム・ガンダム・ラブラブ完全体」

合体の末に生まれたこいつはもう、ラクスとキラの子供みたいなもんですよ。幸せのウェディングオーラが全身から立ち上っちまってるよ。テクノロジー的な説明は皆無だったけれど、見た瞬間「ああ・・この幸せバリアを抜ける兵器は存在しないな・・」って思ってしまう圧倒的な説得力。敵艦隊のミサイル一斉掃射をことごとく打ち落とし、レーザービームを跳ね返し、額から超大出力のエメリウム光線を発射して、日本刀を両手に構えて大暴れ。

序盤からラクスを寝取ろうとちょっかいを出しまくり、ややこしい理屈をこねながら催眠術でエッチな空間に誘い込もうとしていた竿役詐欺師のインテリ童貞寝取り野郎(※ラスボスです)に天誅を下し、神々しいまでの無敵ぶりを見せつけて事態をあっさり収束させます。あまりの無敵っぷりに、観客が茫然自失となっているところで、バッサリと映画が終了。即エンディングテーマが流れはじめます。

凄いのは、そのエンディング中も、絵ヅラが凄まじく浮ついていることです。SEEDでくっついたカップル達がお互いのイチャイチャシーンを存分に見せつけていくんですよ。そして、最後にパイロットスーツを脱いで真っ裸になったキラとラクスが、夕日の沈む海辺に佇むシーンが映し出されるんです。ガンダムが家臣のように頭を垂れる中、「これからアダムとイブで真の子作りですね♡」な状態で終わる。

そんなマッパの絵ヅラになった理屈は1ミリもわからないけど、幸せオーラの奔流で、観客に悲惨な戦争を振り返る隙を一切与えないのはある意味凄い。もうね。イチャイチャのガブリ寄りで強引に押し切っていこうという姿勢がハンパないんですよ。見ているこっちも、うぉぉおお!よくわからんが大団円なのじゃぁああああああ!!バカボンのパパじゃないけど、これでいいのだぁああ!!って叫びたくなる。

後でよくよく考えると核ミサイルとか地球にバンバン落ちちゃって、地球は前よりガッタガタになり、無政府状態はより極まった気もするけど、ヒロインのハダカがスクリーンに大写しされてるのに、そんな野暮なことを考えてる奴はいない。多分キラとラクスの子供が、ウルトラハイパーコーディネイターとなって、コズミック・イラを救うからそれでいいんです。

とまぁ、ガンダムSEEDフリーダムの劇場版はこんな感じの大団円でした。SEEDファンは見ておくと、少なくとも一つの区切りにはなりますね。世界はまだまだこれからだけれど、主人公達は幸せになったし、イチャイチャが中途半端だったと思う人々は、同人誌でセルフ補完すれば良い。とにかくネタの宝庫だったんで、二次創作は捗るでしょう。

あと大破したズゴックの中から出てくるジャスティス・ガンダムは模型ネタとしてはあまりにも美味しい。挑戦する奴は絶対沢山いるから、しばらくはジャスティスとズゴックの模型は品薄だと思いますねぇ・・(笑)また、これは私事ですけど、作中に搭乗したギャンがあまりにも格好よくって萌えた。初代ガンダムではあまり活躍できなかったけど、映画では強かったぞ!マ・クベ様もきっとあの世でニッコリだ!乗ってるのは、尻軽でケバいメイクのツインテギャルだったがなぁ!!!(笑)

(マ・クベは出てきませんが、ギャンは出てくるぞ。冒頭6分間が公開されたので差し替えました!ギャンの雄姿を存分にご覧下さい!)