全国のロケットカウル戦闘団の皆様。おはようこざいます。新年1発目のHAWK11のブログ。大作になっちゃったので、前編、後編でお送り致します。

HAWK11は私がこれまでで唯一「発売前に現車を見ることなく予約購入したバイク」です。

私はあんまり衝動買いするタイプではなくて、割とグズグズしてる人なんですよ。モトグッチなんて10年前F6B購入したあたりから、次は縦V欲しいんじゃぁああ・・なんて金貯めながら考えてましたけど、「現車を見たことない」って理由でずっと踏ん切りがつかなかった。でもHAWK11の購入にあたっては現物なんか見てません。それは「現車みようがみまいが、結局これは買ってしまう・・。」とある意味悟っちゃったからなんですよね。その理由は大きく分けて2つある。一つはロケットカウル。もう一つはアフリカツインベースだったことです。今回はそのうちのロケットカウルメインで語る前編です。

DSC_2924(はぁ~。ロケットカウルが妖しくも美しすぎる。市販車でここまで本気で作った真性ロケットカウルはもう絶対出てこないと思う。)

思い起こせば私がHAWK11の存在を知ったのは2022年の6月初旬でした。大阪モーターサイクルショーで3月には発表されてたみたいなんで、情報としては遅かったんですよね。

最初見た時は

「ふわぁああああ・・・ナニコレ・・うわ・・ガチ真性のロケットカウルじゃん・・いやいや国産でこんな立派なロケットカウルは・・え~っと?いつ以来だっけ?・・」

と顎に手を当て、マジマジとパソコンの画面をのぞき込んでいたんですよ。年末のブログにも書きましたけど、長い間バイクを見てると、それがファッションで作られたのか、スタイルで作られたものかってのは判別がつく。HAWK11のデザイン要素と設計手法は、わかる人だけ買えば良いってものだから、ロケットカウルも含め、理解のハードルはかなり高い。メディア向けの技術説明会でもロクな回答がなかったみたい。まぁ、これは「スタイル重視」の典型ですね。スタイルって理屈じゃなくて個性とポリシーを重視したものだから技術的に説明のしようがないんですよね。上がりのバイクっていうのは、このバイクが狙ってるスタイルを理解できるか?っていう意味も含まれてるんでしょう。それ以降、このバイクを折に触れチェックするようになったんですよ。そしたらね~、これがまたクッソ面白かったんですよね。

うはははは、ネットではボッコボコにされてるゾ(笑)

おおおおお、ヒョーロン家もわけわかんなくて戸惑ってるゾ(笑)

しかも、カフェレーサー好きの人からも叩かれてるじゃねーか(笑)

うん。どうやら、ほとんどの人が、このバイクの良さをわからないらしいんですよね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なら、俺が買うしかないんじゃね?

そんな感じで、思考がトンデモない方向へ倒れ込んでいってしまったんです。踏ん切りがつくまではグズグズしてても、一度そういう方向に考えがいっちゃうとブレーキが効かなくなって、白目になって契約してしまうのが私の典型パターン。心の中でブレーキはかけてみるんだけど、欲望のアクセルをベタ踏みしたままでブレーキかけてるから止まるわけない。数日後にはホンダドリームに予約注文の電話を入れてしまっていたんですよ。うーん。怖い。

当時ネットでは多くの人がいろいろネガティブ意見を述べていましたけど、それらの意見は大別すると、デザインのチグハグさと、エンジン&シャーシをアフリカツイン(NT1100)から流用したことを問題にしてて、まぁそういう気持ちもわからんでもなかった。でもこれ、私から見ると個人のワガママを詰め込んだ「マニアの内輪ウケ」みたいなバイクで、長いこと乗ってきた人にしか刺さらない要素がかなり多い。スタイルが賛否ある点は、個性重視でマスを狙わないデザインを採用し、スタンダードなデザインをずっと見てきたベテランの裏をかくような要素をてんこ盛りに入れた結果です。それを私は「尖った個性」と受け入れることができたけど、多くの人にとってはそうじゃなかったってだけ。

流用については人によって考え方は色々あると思うけど、一般的にはバイクの製作方法って、ざっくり分けて次の3パターンがあると思うんですよ。

①エンジンを含めた完全新設計。

②過去実績のあるSS系等のエンジンを転用して、シャーシ周りを新設計。

③既存バイクのエンジン&シャーシをまるっと流用して、サスやポジション、デザイン変更などでフォームチェンジ。


最新鋭のSSモデルなんかはサーキットでの戦闘力優先で必然的に①が多い。各メーカーが勝つために威信をかけて作ったフラッグシップモデルだから、ガチの新設計で、ほとんどの人がメカ的には満足すると思う。その一方で、極めて高額で200万円近くの価格になり、買う人の負担はかなりのものになるし、性能だってリッターSSだと公道走行をメインにするにはブッ飛びすぎてる。100馬力のHAWK11ですら全開を維持するのは大変なのに、200馬力のバイクに乗ってアクセルをこれ以上回らないところまで開け切れる人がどれほどいるのか?

そういう現実を前にして、妥当なところをバランス良く攻めたのが②のパターン。過去の実績あるエンジンを公道用にデチューンし、シャーシ周りを新設計ってやつですね。これは総合バイクメーカーのほぼ全てがやってて、開発費を抑える観点や、公道に適した乗り味にするためには当然の手法です。

そして最後に残るのは③。エンジン&フレームをまるごと実績のある他車種からもってくる流用型。HAWK11はまさにこれ。歴史的名車であるKATANAだってGSX1100Eに未来的な外装かぶせて最高速セパハン仕様に仕立てたものですし、BMWなんかは同一のエンジン&シャーシにパラレバーやテレレバーを組み合わせて造り分けてる「同一コンポーネント派生流用型」の筆頭格です。

今の私はバイクを割と長いスパンで見てるんで、①②③の差は、あんまり気にならない。大型スポーツならどれ採用しても公道性能は十二分だし、時間はとっても残酷で、新しさを全て過去に押し流していく。今流用されてるものは5年前の新設計ですからね。そうなると、逆に実績があって枯れたエンジンやシャーシを流用したモデルの方が、長いことパーツも出るし、熟成度も高いし、刺激や性能に依存しない分、色褪せなかったりするんですよね。

そりゃあね。私だって完全新設計が良いっていう主張は痛いほどわかります。でもそれで尖ったデザインやるのはリスクがデカいんですよ。新設計のバイクは、とにかく開発費がかかる。そして開発費がかかるほど「顧客誘因力が高く、年間目標販売台数をクリアできるデザイン」にならざるを得ない。この典型例が新型のGSだと思う。

昔のGSのデザインは泥臭さを感じる「プロユース・スタイル」で、本物感があって私は好きでした。パンアメリカも無骨路線を狙ってますよね。一方、新型GSのデザインからは、そんな泥臭さはほとんど感じない。「トレンドを意識したデザイン」に舵を切ったからですね。装備もこれでもかとてんこ盛りだし、ヘッドライトのバツマークなどは、目新しさやオシャレさを意識した意匠なのは誰の目にも明らか。

GSについては、「質実剛健路線でプロユースを堅実に抑える」って方法論もあったと思うけど、それだとこれ以上パイが広がらないし、ブームの終焉とともに販売台数が激減する可能性もある。BMWは他ブランドの攻勢に対抗するため、今回のモデルチェンジでは市場シェアを重視した。結果、スタイル重視からトレンド重視に変わったんですね。「売れ筋のデザインを採用せずしてシェアをとれるわけがない」から、シェアを意識するのなら、このデザインはしようがない。

これは作業服専門で現場の人達の支持を受けていたワークマンが、店舗を綺麗にし、貧乏臭さを排除して一般層に訴求しようとしてるのと似てますね。誤解しないで頂きたいのはこれって良いとか悪いとかじゃなく、企業側の商品戦略上の選択なんですよね。GSというバイクの存在がBMWの中で大きくなり、屋台骨を支えるモデルになった結果、取り巻く環境も求められているものも大きく変わったってことです。

バイクってのは開発費をかけるほど、関与する人も増えていき、外野の声も入ってきて、大きな意志の集合体になるんですよ。そこでの意志決定は論理的で積み上げ型になるから、突飛なものは出てこない。理でわかる。これに対して、エンジン&フレームをまるっと流用する企画は開発予算が少ないから、失敗を恐れずにやれるし、開発体制も小規模で発想もシンプル。目標も明確になってる傾向が強い。要はピュアなんですよね。

だからってやりたい放題できるのか?っていうと、こっちはこっちで「骨格となるベースモデルから大きく変えられない」とか「予算が少ないから、やりたいことを絞らなければならない」とかいう制約がでてきます。商業プロダクトの世界では、「金はあるけど自由はない」か、「自由はあるけど金がない」のどちらか。ただ自由があって金がないのは、創業時は誰しも同じ。資金の制約を情熱と創意工夫で乗り超えて、どれだけのものを生み出せるかが勝負なんですね。

HAWK11は限られた予算の中で、これまでのホンダになかったパーソナルなバイクを作ろうってコンセプトだったはずです。だからこそバイクのデザインで最も濃い逆伝家の宝刀「ロケットカウル」を抜いたんでしょう。私がロケットカウルが好きな理由は、造形物としての魅力が極めて高いからですけど、こと販売面から評価すると過去に売れたためしがない「特級呪物」なんですよね。これまでいろんなメーカーが、この特級呪物を攻略せんと挑んでますけど、大ヒットさせたメーカーはない。実際、2017年に発売されたBMWのRnineTレーサーは2年ほどで販売中止。一昨年に投入されたスピードトリプル1200RRも販売僅か1年で生産終了が発表されちゃってます。大々的に出てきても、あっという間に散るのがロケットカウルというものなんです。

ちなみに同じロケットカウルを名乗っても、私が惹かれるのは現行ではHAWK11とスクラクトンRSのオプションカウルの2つだけ。造形的にはHAWK11のロケットカウルが抜けてると思う。スピードトリプル1200RRやアグスタF3のものは、同じロケットカウルといわれていますが、なんか違うんですよねぇ・・。私的には、水木しげるが描いた妖怪ねこ娘と、ゲゲゲの鬼太郎第6期のねこ娘くらいの差を感じる。

ねこ娘(確かにどっちもねこ娘なんですが、前者は妖怪で、後者はアニメの王道ヒロインです。ちなみに昨年、友人と「ゲゲゲの謎」を見ましたけど、館内が女子ばっかりでビビりました。腐女子ウケが凄いみたいだけど、あれに腐女子要素を見いだすとは最近の女子のアンテナは高すぎる。)

近年のねこ娘は8頭身美人で可愛くて萌えもあるけど、私にとっては妖しい魅力を放つものだけが妖怪であり、バイクカウル界の大妖怪がロケットカウルという認識なんですね。

HAWK11の開発陣はこの特級呪物を「最後まで守り抜く」と豪語していたようですから、その意気や良し。パーソナルなものって作り手の推しやポリシーを叩きつけることでしか生まれない。そう、まさにマ・クベの壺であるべきなんですよ。

ガンダムに敗れ、マ・クベは死に際にこう叫びました。

「おお!ウラガン!あの壺をキシリア様に届けてくれよ!」

「あれは!いいものだ!!」

このセリフがあまりにも有名になりすぎたせいで、マ・クベについては「どこの誰かは知らないけれど、壺は誰もが知っている」という月光仮面状態になってしまった。


壺
(こちら以前プレミアムバンダイとノリタケがコラボして販売された「マ・クベの壺」。この商品企画は多くの人に衝撃を与え、4万円という価格にもかかわらず一瞬で完売。結果、マ・クベより壺の方が有名になってしまった。マ・クベ涙目です。)

いくら老け面だからって、24歳のキシリア様が壺をもらって喜ぶわけがないんですが、「自分の好きなものを人に無理矢理押しつけていこう」というスタイルは嫌いじゃない。稀代の壺マニアが、壺のモビルスーツに乗り、最後に壺を押しつけて天に召される。それはあらゆる意味で「上がりの壺」。ディズニー風にいうならば「壺に願いを」。斜め上ですけど、そこまで一つのものを愛した彼を私は大尊敬してる。それこそスタイルでありエゴであり個性だからです。

HAWK11の開発陣は、まるでマ・クベがキシリアに壺を押しつけるがごとく、自らの信奉する真のロケットカウルを我々に押しつけてきたんです。それは私が願ってやまなかった真正ロケットカウルであり、夢にまで見た神器であり、バイク界の特級呪物。その工芸品を思わせるような造形の魅力は1年たった今でもまったく色褪せていない。私はこのロケットカウルを作った八重樫裕郁氏に伝えたい。

八重樫ぃぃいいいい!これがお前の上がりのロケットカウルかぁぁああ!!」

「これはぁ!いいものだぁあああああ!!」(光りに包まれて爆発)

こういう共感が、もの選びには一番大切で、これがHAWK11を選んだ最大の理由です。


あ、そうそうガンダムといえば、今度上映されるガンダムSEEDの映画版予告にHAWK11がワンカットだけ登場してました。うーん、宇宙世紀でもまだ現役で走っているとは・・もはやバイクを超えた何か。やはり特級呪物は永遠です(笑)

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(ヒロインのラクス・クラインが乗ってます。ガンダム作画陣の中にHAWK11のファンがいるのは間違いない。)





ということで、今回はここまで。後編に続きます。



オマケ漫画「特級過呪怨霊*のじゃ子」
特級呪物4