突然ですが、近年私の中でマットブラックがちょっとばかしブームになってます。ヘルメット選ぶときに「ブラックのクリアー仕上げとマットブラックのどっちを選びますか?」っていわれたら、即決でマットブラックを選んじゃうくらいハマってる。

皆さんはこのマットブラック仕上げについてどういうイメージをもたれているでしょうか?

「あまり好きではないなぁ・・」

という方も相当数おられると思います。そう、私も昔はこのマット仕上げを敬遠していました。しかし、今は完全にマットブラック推しです。なぜ私が宗旨替えしちゃったのか?今回はその個人的理由をブログにしたいと思っております。

私の所有バイクでは、SC79のゴールドウィングが「マットバリスティックブラックメタリック」というクッソ長い名前のマットな黒赤です。

私自身は普段この色をメイド衣装になぞらえてイラストを描いているんですけど、聖帝様はうちのきんつば嬢を「ゴッキー♡」っていうんですよ。オィィイイ!失礼すぎるだろ!自らを後ろに乗せてタンデム走行してくれてるバイクに対してあまりにも酷すぎるネーミング。メンタル化け物か?しかし、バイクを全体的に俯瞰して眺めると、その名称を無下に否定できないのも事実なんですよ。

個人的にはせめて「グリフォン」とか「ブラックオックス」とかのネーミングにして欲しいわけなんですけど、聖帝様はロボットアニメを一切見ないんで、私のようなアニオタを喜ばせるようなステキな表現はまったく期待できない。あまりに不憫なので「そのネーミングなんとかならない?」っていってみたら、真顔で「じゃあ黒毛和牛にする!」って返事が返ってきた。

ヤメロォォオオオ!!!

いやいやいや「黒毛和牛」って呼ばれるくらいなら、まだ「ゴッキー」の方がいいですよ。とにかく「黒毛」はダメ。ヤバイ。このブログの読者の方々は、まだ「黒毛」の恐怖をわかっていないと思うんですけど、テキスト打ちとして、これほど恐ろしい単語はないんですよ。悪魔憑きとか狐憑きとか、この世にはいろいろな憑きものがありますけど、「黒毛憑き」が一番タチが悪い。だって「黒毛」の称号を賜った瞬間、全ての生きとし生けるものが全て「具材っぽいナニか」に変わってしまうんですから。

例えば私のペットは超カワユイ「黒ウサたん」なんですけど、これを「黒毛ウサギ」と呼称したなら、もはや行き着く先は鍋の中。ジビエです。どんなに可愛がっていても「黒毛ウサギ?3歳?いつ食うの?今でしょ?」って言われますよ。

これは動物だけじゃない。美しい黒髪のご令嬢だって、「黒毛令嬢」って呼称した途端、もう完全にAVのタイトルじゃないですか。どっかの毛がやたら黒くて濃いんだろうな・・って、想像力が宇宙の果てに羽ばたいて、私の評価がまた地の底に落ちていく・・。これも全て「黒毛の呪い」の効果です。

それほど「黒毛憑き」って怖ろしい。「黒毛」という枕詞をつけると、どんなに可愛い存在も、愛玩性を根こそぎ剥ぎ取られ、単なる品種に堕とされる。毛という文字だけなら、毛ガニのように、まだ土俵際で踏ん張れるかもしれない。しかし「黒毛」になるともはや助かるすべはない。

「黒毛オコジョ」

「黒毛ラッコ」

「黒毛コアラ」

「黒毛浜辺美波」


・・・・そう、全世界が黒毛化したとき、弱肉強食の時代がやってくるんですよ。ああ・・テキスト打っていてあまりの絶望感に脳ミソから黒い毛が生えてきそう・・・・・いけないいけない、マットブラックを語るはずだったのに、いつの間にか外宇宙から精神干渉を受け、「黒毛」について熱く語ってしまいました。

話を戻しますが、私の所有バイクでは、きんつば嬢がマットブラック。ヘルメットではシンプソンのバンディットPROとSHOEIのZ8という主力2つがマットブラックです。つーか私が所有してるの殆ど黒系じゃない?ダイナのカスタムペイントも赤黒だし、HAWK11は銀黒、モトグッチV7も黒銀だし、メットも黒しかない。そんな黒変態の私の推しがマットブラックなんですから、この色も相当ねじ曲がってることは間違いない。

一般的にマットブラックって割と敬遠されがちな色なんですよね。その理由はハッキリしてます。手入れが「面倒くさい」からですな~。なにが面倒って、従来のツヤあり塗装でできたことが、マットではできない。これまでのクリアー吹いたツヤあり塗装の手入れって、「基本的にツヤを回復させる方向でケミカルを使う」わけですけど。マットな仕上げってツヤが出たらダメなわけだから、今までやってたことが全部禁じ手になるんですよ。

わたくし、こう見えてもマット塗装には非常に詳しいんです。だって40代半ばまでは、美少女フィギュアガレージキット製作を趣味としていた腐れモデラーですからね。しかも、モチーフは「バイク+女の子」。その塗装にあたってなにより重要なのはツヤの調整なんです。ツヤを調整しながら、金属と生命体を塗り分ける。両極端の技法を駆使するから、ツヤありとツヤなしの違いって骨身に染みてるんですよね。

IMGP50321(こちらイタレリの1/9スケールの「ドカティ916」とグリズリーパンダのガレージキット「麗夢&魔理沙」を合体させた「麗夢と魔理沙のゆっくりレーシング」、バイクと女の子を組み合わせることで魅力が数倍になる。製作は10年以上前です。)

塗装でツヤを出すためには、クリアーを厚めに吹いてコンパウンドでテカテカになるまでひたすら研ぎ出す必要がある。表面が鏡面のように平滑であることが美しいツヤの基本ですから。それに対し、人物はツヤを出し過ぎちゃいけない。生命感を出すために、髪は半ツヤ、肌はマットに仕上げなくてはならないので、塗装面を粒子の粗いつや消しクリアーで適度に荒らし、出すぎたツヤを調整するんですよね。

つまり塗装面を研ぎ出して平滑にして光りを綺麗に反射させるのがツヤあり仕上げ、適度に荒らして光の反射を抑えるのがツヤ消し仕上げなんですね。

最近のホンダのマット仕上げは、塗装じゃなくて色プラです。おそらく色つきのABS樹脂の表面を荒らして、つや消し仕立てにしてるんだと思う。ツアーはちゃんと塗装してありますけど、無印はそういうところでコストダウンしてるんですねぇ・・。ただF6Bにあった「あからさまに色プラで~す♡」みたいな仕上げではなく、プラ素材特有の安っぽいテカリを排除することで少しでも高級感を出そうとしてる努力は認める。これは「環境への配慮から有機溶剤を使用する塗料をできるだけ減らしていこう」というホンダの戦略なのかな~とも思ってます。でも、所詮プラはプラ。高級感のあるツアーに比べると、あんまり見栄えはしないし、質感もそこまでじゃない。でも、購入するときは「それも時代の流れでしょうがないかなぁ・・安いし・・」と割り切ったところはありますね。

どの世界でも専門的な技術が不要で、お手軽で綺麗に仕上がるってのはある意味では正義なんです。昔はフィギュアの顔が描けるってのは、美少女フィギュア製作でものっ凄いアドバンテージだったけど、それだと「漫画絵が描ける人しかフィギュアを作れない」ってことなる。そのため、今のフィギュアでは「瞳デカール」がトレンドになり、昔のような筆職人じゃなくても可愛いフィギュアが作れちゃう。塗装もガンプラみたいに素材自体に色をつけたり、デカールやラッピングなどの貼りものを駆使して、面倒な塗装工程を減らしていってます。その方向性はもはや創作における流れであって、バイク業界も例外ではないでしょう。それで満足できない人は、「どうぞご自由にカスタムペイントしてくだちゃい!」って時代がそこまで来ているんですね。

しかし、このマット仕上げ、最近出てきたものであるがゆえに、多くの人がメンテの知識を持ってないんですね。これまでの常識で、何も考えずにワックスかけちゃうと、せっかく細かな粒子で荒らしてマットにしたのに、それがワックスで綺麗に埋まっちゃって、ピッカピカになってしまうんです。ワックスって表面を均一にして光らせるのがお仕事なわけですから、マット仕上げの天敵といえる。このため、そういうバイクには水なし洗車の必殺アイテムである「フクピカ様が使えない」という大きな大きなデメリットが出てくるんです。

フクピカ
(こちら水なし洗車ケミカル「フクピカ様」。あまりに優秀なので様付けです。残念ながらマットカラーには使えない。)

ちなみに私はバイクをほとんど水洗いしてません。汚れてもフクピカ様で拭くだけ。いや~フクピカ様のアオリ文句、「水なし洗車」は伊達じゃありません。私の11年乗ったダイナを見て、ディーラーのメカさんも「まだまだ綺麗ですね~」っていってくれるんですけど、ほぼフクピカ様で撫でてるだけですからね。水洗いはよっぽど汚れたときだから、年に1回程度かも。

このため私は長らくフクピカが使えないマット塗装は手入れが面倒臭いから避けていたんですよね。でも、きんつば嬢は私が購入した時点で、箱なしMTは「マットバリスティックブラックメタリック」というつや消し黒しか選べなかった。しょうがない選択だったんですが、購入してつきあっていくうちに「マットブラックって、なかなか良いんじゃね?」って思うようになってきた。

ちなみに私がマットカラーの手入れに使用しているケミカルはフクピカと並ぶもう一つの定番、プレクサスです。プレクサスはマット塗装だろうがクリアー塗装だろうがプラスティックだろうが樹脂だろうがシートだろうが、関係なく使用できる「脳死ケミカル」の筆頭格。ワックス成分は一切入っていないコーティング系ですから、マット塗装にも普通に使えちゃう。汚れも取れるし、過度にテカることもなく、ツヤを抑えたシットリとした仕上がりになる。他にもヤマハからマットカラー専用のクリーナーが出てるみたいですけど、面倒臭いのでそれまでヘビーユースしていたプレクサスをそのまま使ってます。

プレクサス
(へっちまんオススメの脳死ケミカル「プレクサス」。ドンキやAmazonで買えます。つや出しって書いてあるけど、ワックスじゃないのでマットカラーに使っても、テッカテカにはならない。)

ただ、どんなに気を遣ったところで、つや消し状態が永遠に維持できるか?っていうとそれはないですね。走り終わったら丁寧に表面を拭き上げるという習慣を繰り返して数年も経てば、外装表面のザラザラの粒子がクロスで少しずつ削られて、徐々にツヤが出てきちゃうんですね。「なんだ、つや消し塗装ってやっぱダメなんじゃねーか」って思う方もいるかもしれない。でもね。だからこそ良いんですよ。磨き込んだマットブラックの行き着く果てはナチュラルな黒光り。そこにあるのは、

「だーーっはっはっは、見ろぉ!この黒光りする俺様のピーーーをな!!」

ってやつなんですよ。そもそもデカいバイクを選ぶ人間は「股間から巨大なものを生やしたい」っていう願望がどっかにあるんですよ。ビックバイクなんて、私に言わせりゃ股間につけた天狗の面ですよ。デカさや排気量にこだわるのも、それが男らしさの象徴みたいなもんだから。気筒数が多い方がいいってのも「キンタマついているのが男なら、キンタマ6つにしたら、それもう男の中の男じゃね?」ってことですよ。ゴールドウイングなんて、タンデムシートで女まで囲っていこうっていう股間巨砲主義の権化みたいなバイクなんですよ。それが黒光りするなんて、もうバックに軍艦マーチが流れてるような状態です(陶酔)。

とりあえずアホは妄想は脇に置いておくとしても、鈍く黒光りするブラックってなかなかに良いものなんです。マットブラックって最初はパッとしないんですけど、徐々に染みるようなツヤが出てくるところがいい。マットにこだわってつや消し状態を維持しようと思うと大変ですけど、ここは発想を転換し「ツヤのない状態から、自分でツヤを育てていくのだ」って感覚で付き合うと、マットカラーは凄く味があるんですよね。

クリアー塗装は初手から非常に美しい。でも、その輝きは新車時が最高で、そこから経年するほど表面に小傷や磨き傷がつき、ツヤが少しずつ失われていったりする。しかしマット塗装は最初は目立たないし、高級感もあまりないんですけど、その後しっかり手入れすることによって、少しずつ良い感じにツヤが育っていくんです。そして、その変化っていうのは毎日付き合ってきたオーナーだけがわかる密やかで微妙な変化。まさに自己満足の極地。

DSC_0799(こちら納車した頃のきんつば嬢。当初はちょっとガンメタっぽい色だった。つや消しというより乾いてるような質感でした。)
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(こちら現在のきんつば嬢。磨き込みにより黒みが強くなり、光りの当たり方によっては、まるで重金属のように鈍く輝いちゃうんですよ~。これがたまらない。)

上の写真のように購入したときは、ちょっとグレーっぽいマットカラーだったきんつば嬢は、現在は淡く黒光りする独特なブラックに変貌してます。ご覧になってお分かりだと思いますが、光りすぎず、落ち着きすぎずの輝きが凄くナチュラルで味がある。マット仕上げだからといって、ずっとつや消しで楽しむ必要はないと思うんですよ。ツヤがないってことは裏を返せば、「自分でツヤを与えていける」ってことなんです。つや消しを維持して楽しんでいくのも良いけれど、それに飽きたら、つやを擦り込んで育てていくって楽しみがある。経年で劣化するのではなく、手入れすることによって味のある方向に変化していくってのは、このマット仕上げの魅力かな~と思うんですよね。

付き合ってて感じるんですけど、マット仕上げって、ちょっと革に似てるところがあるんですよね。オーナーが大事に手入れをしていれば、色気がどんどん増してくる。皆さんも一度騙されたと思って、ヘルメットあたりでマットブラックどうですか?大事に長く付き合っていくつもりなら、味があってオススメのカラーです(笑)




見返り
(黒毛和牛のステーキを持つきんつば嬢。3年間手塩にかけて磨き込んだマットブラックの外装の色艶はすでにA5ランク。いつでも出荷できます。)