前回のブログから、約1か月。全国の数少ないモトグッチ・オーナーの皆様、お待たせ致しました、今回のコンセプトはズバリ

「イタリアンバイクの病巣をえぐる」

わかりやすく言うと「私という変態医師による身体検査」です。うーん、出だしから犯罪臭がハンパない。このブログの数少ない読者の皆様はこんな風に思ってるかもしれない。

病院とか行った方が

「ハハハハ、何を言ってるんですか?バカと変態はつける薬すら存在しない不治の病!病院などに行っても治らないのですよ!!そうですねジョドォォォ!!!(カリオストロ伯爵の声で)

実は私、長年イタ車は試乗するだけで、実際に所有したことのないイタ車童貞。今回初めてイタ車オーナーとなり、ようやく筆下ろしができたんです。真面目なインプレを期待している人もいるかもしれないけど、個人的には「イタリアンバイクから快楽と故障と笑いを取ったら一体何が残るのか?」(イタ車オーナーの皆様ごめんなさい)って考えているところもあるから、良質なお笑いネタをどれほど提供してくれるのか?イタ車にはその方面の打点の高さを大いに期待していたりします。

前回はエンジンについて「縦置きか?横置きか?錯乱状態である」という点を指摘しましたが、今回はそれ以外の部分から、イタリア人のオモシロ気質を探っていきたいと思います。

それでは元気よく参りましょう!まずこちらをご覧下さい。


ケース

こちらはV7を購入したときについてきた工具ケースです。どうですか?オシャレでステキじゃないですか?納車時に、これ渡されたとき「うわぁ!これ工具入れですか?(ちょっと薄いけど・・)はわわ・・さっすがイタリア・・超オシャレじゃん・・」って感動したんですよね。その瞬間、レッドバロンの店長さんが伏し目になった気がしたんですけど、納車の興奮で、それをさらりと流してしまった。で、一回り走って、バイク小屋に到着し、ワクワクしながら中身開けたら、出てきたのがこれ。

フックレンチ

「うぉぉぉおおおおおおおおおお!!」

フックレンチ


うーん、この残念感はバンダイが発売したクラピカの電飾フィギュアを見た時以来かもしれない・・。


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(フィギュア界の邪神伝説の一つ。バンダイのクラピカ。彼の切り札である「緋色の目」を電飾で再現しようという発想はチャレンジングなものでした。)
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(しかし、電飾を灯した瞬間、人々は理解した。これはフィギュア界に定期的に降臨する「暗黒邪神像」の一つであると。大手のバンダイが邪神を降臨させてしまった罪は重い。)

期待値を上げる演出は素晴らしいんだけど、中身が期待に添うものになってないと人は一気に冷めるんですよ。こんな綺麗なケースにド根性プレスで打ち抜いたフックレンチが1本って、誰が想像できようか。日本人って中身が粗末なものなら、ちゃんと粗品って書くし、それなりの仕立てしかしないじゃないですか。でもイタリア人は違う、「粗品を高島屋の包装紙でくるんで出してくる」んですね。ガワで必要以上に期待値が上がるから、それだけ落胆も大きい。このイタリア的な無頓着さが、私の中にある「和の心」を容赦なくかき乱してくる。「これが・・イタリア・・なの・・か・・ニャ?!」と納車早々ささやかなカルチャーショックを受けることになったわけです。


続いてこちらのエンジンスペックをご覧下さい。

65 PS/6,800 rpm、73 N・m/5,000 rpm 

これはV7の最高出力、最大トルクです。65馬力というのは、ライバルであるトライアンフのT100と同じであり、明らかにお互いが意識してつばぜり合いをしてるわけですが、これくらいの馬力とトルクならヘタレの私でも扱いきれそうで心が踊ります。

「よーしオジサン頑張っちゃうぞー、最高出力絞り出しちゃうぞ~」

なんて言いつつ、ガレージの中でデパートの屋上遊技場で盛り上がる6歳児のようにバイクに跨がり、キャッキャと喜んだりしちゃうんですね。

「よぉっーーし!最高出力の6800回転に向かって、アクセルぜんかーい!」(ぐいっとアクセルをひねるポーズ。)

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「ん?」

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「え?」

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「は?」



「・・・・」



「・・・・・・」



「・・・・・・・・・」


メーター2

いやいやいやいや、まてまてまて、ちょっとまて。なんでこんなことなってんの?おかしいでしょ!なんで最高出力がレッドゾーンで出ちゃってんの?最高出力出すと寿命縮んじゃうの?呪いのエンジンなの?狂ってんの?これじゃ馬力が絵に描いた餅になっちまうじゃないのおおおおおお!!

ちなみにレッドゾーンの意味をグーグルAIで調べるとこうなってます。

「レッドゾーンとは、エンジンの回転数が表示されているタコメーターにおいて赤く塗られている部分のことをいう。 この中に指針がある際は、許容回転数を超えてエンジンが回転していることを示している。」

確認ですけど、ほとんどの人の理解が私と同じはずですよね。そうですよね。私は間違っていませんよね!?で、馬力が低めのバイクって、ガチで走るときは最高出力まで引っ張りますよね。そういうラインですよね!そうすると、このバイクは元気良く走ろうとすると許容回転数超えちゃうってことになりますね。回しちゃダメなとこ入りますね。

初めはね。「男ならレッドゾーンまでシコってみろ!!赤玉出してみろ!って演出なのかニャ?おバカだニャ!」って思ってたんですよ。でも、ナラシ終わっていろんなところを走ってみて、このバイクのエンジンのキレ味を体感したら、「やっぱ違うわ・・」って感じてきた。だってグッチの開発陣はV7の高回転域を凄く丁寧に作り込んでるし、レッドゾーンを遊びの演出に使うような不真面目なメーカーだとはどうしても思えないんですよね。イタリアではレッドゾーンの意味が日本と違うってことも考えられるけど、それもおかしい。だって、どんな世界でも赤信号は赤信号ですよ。「ノンノン。日本では赤は止まれかもしれまセンが、イタリアでは覚悟して進めって意味なのデェェス。HAHAHA!ファンタスティコ~!!」なんてことはあっていいはずがない。

で、「困ったときはマニュアル見なきゃ」って色々調べてみたんですよ。そしたら、レブリミッターが介入して点火カット入るのは7400回転になってるんですよね。その点は6800回転で発生する最高出力とツジツマが合ってるんです。そうなると「タコメーターのレッドゾーン表示だけが辻褄が合わないゾ?」ってことになる。こういう矛盾って絶対に裏があるから、そこにある意図や真実がわかんないと、私的にはとても気持ち悪いんです。

そこで、その理由を私なりにじっくり調査、考察してみたんですよ。そしたら、少しずつ「恐ろしい真実」がわかってきたんです。イタリア本国に確認したわけじゃないから、あくまで私の推理ですけど、十中八九間違いないんじゃないかと確信してます。

では、このミステリーの謎解きですけど、実はですね・・。V7って2021年にモデルチェンジしてるんですよ。で、モデルチェンジ前は排気量750ccで52馬力を6200回転で発生していたんですね。つまり、この頃はレッドゾーンが6500回転の表示で辻褄あってたんです。それがユーロ5の環境対応で排気量が850ccになり、最高出力発生回転数が600回転上ブレして、馬力もそれに対応して上がったんですよ。そう、皆さん、もう真相がわかってきましたね。

このモトグッチって会社は・・・この会社はね・・

「メーターを前のモデルから、そのまんま流用しやがったんですよぉおおおお!!」(拳がブルブル震える)

最高許容回転数が上がってんのにレッドゾーン表示を変えてないんで、上ズレした600回転分、辻褄があわなくなってんですよ!一体ナニしてくれちゃってんの?そりゃ高回転方向にズレる分には、レッドゾーンそのままでも安全マージン増えるだけでしょうけどねぇええええ!!せっかくコストかけて環境対策して馬力も上げたってのに、タコメーターでコストケチってどうすんのぉぉおおおおお!!辻褄があわない理由が「家計の事情」って、あり得ないほどショボいんだが!!乗ってて最高にミジメになるんだがぁぁぁぁあああ!!オマエを蝋人形にしてやろうか!!!

はー!はー!はー!

まぁ、レッドゾーンが適当でも、V7は回転リミッター近くになると真っ赤な警告ランプが「死にそう!死ぬかも!!もう死ぬ!!!」って感じで派手に点滅してシフトアップを促すんで、「警告ランプついたらシフトアップで問題ナイジャナイ!日本人は細かくてウルサイデース!!」ってメーカーは主張するかもしんない。でもね。私が、わざわざスタンダードなV7 STONEじゃなく、V7スペシャルを選んでるのは、「クラシカルなスポークホイールとメッキ処理のマフラー、ハロゲンヘッドライト、アナログ2連メーターが装備されてるから」なんですよ。顧客はそこにエクストラコスト払ってんだから、その部分で手を抜いちゃダメ!!

「おいおいモトグッチさんよぉ!!しっかり作ってもらわんと困るでェ!出力特性変わったんなら、メーターもちゃんと辻褄あわせろやぁ!こんなところで銭ケチって男が下がるでぇエエエエ!!」

って、朝から新天地で酩酊してるオッサンのように横ブレしながら問い詰めていきたい。まぁイタリア人は最後の詰めが甘いとは言いますけどね。ああ、ここでも私の「和の心」は千々に乱れ、人間力が低下し、品がなくなってしまいました。残念です。



では最後、こちらをご覧下さい。

私の所有モデルは、近年のV7スペシャルの中では最もクソ地味なタンクなんですが、そこには、モトグッチの象徴でもあるイーグルマークの立体エンブレムが誇らしげに輝いています。ああ、素晴らしきかな、立体エンブレム・・。

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最近はコストダウンの関係でこういう見栄えのする仕立ては少なくなってまいりましたが、クラシカルなバイクには、やっぱり昔ながらの立体エンブレムが映えるんです。イーグルマークはモトグッチの魂であり、ブランドの誇りですからね。うん、やっぱクラシックバイクはこれだよ。こうでなくっちゃ、そのコダワリが大事なんだよ!・・って・・

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「・・・・・・・・・」

安シール


コイツはよぉ・・クリアーすら吹いてない野ざらし状態だよぉ・・貼っただけだよぉ・・もうイーグルマークの扱いが王様から奴隷くらいまで下がっちまってるよぉ・・・。いや、シールでも良いんですよ。「しっかりコストかかった立派なシールだな~」とか「パッと見ただけじゃシールに見えないな・・」って思えるやつならね!!でもこれ、シルバーテッカテカで安物感と昭和感凄いんですよぉぉぉおおお!!

最初に見たとき、「昔、駄菓子屋のオマケとか、超合金のオモチャに貼ってあったシールってこんなだったよな・・」って目を細めつつ分析してしまったくらいオールドでチープなシロモノですよ。この部分が全体の質感というかオシャレ感とぜんっぜん合わず、「浮いてるな~」って感じるんです。

もの作りにおいては、質感や考え方の統一ってのが大事なんです。どんなに頑張って質感高めても、一箇所や二箇所、それがガクンと落ちるところがあると、人はそこにばっかり目が行く。雑誌では質感高いところをやたら映すから、見栄えがするんですけど、実際に見ると「なーんか、イマイチ心躍らないな」ってものがあるのは、いろんな部分の統一感のなさに起因するところがあると思う。

その点ではV7って「外見にも乗り味にも小細工がない朴訥なバイク」「俺は、どこまでもありのままの自分で行く。俺を好きな奴だけついてこい!」って胸張ってる感じがあるんですよね。(問題は変態以外「誰もついて行っていないこと」ですけども、それはここではあえてツッコみません。)

このバイクに乗ってると、そんな作り手のメンタルの強さをヒシヒシと感じるんですが、その中でこのシールは、股間を隠す「手パンツ状態」というか、デザインにおける「アキレスのかかと」みたいなんです。タンク回りはコストをかけて、しっかり手当してるのに、ナゼここは駄菓子のオマケみたいなシールで小賢しく飾ろうとしたのか?

ただ、日本車なら「ナニコレ?ダッサ!」って言ってさっさと剥がしちゃうようなシールでも、イタ車だと剥がせないんですよ。「・・これがイタリア流のハズシなのか?・・このシールを理解することが、イタリア人を理解するってことなのか・・ニャ・・?」って思っちゃった時点でもうダメ。9割方、何にも考えてないんだろうけど、「考えた末にコレなのかもしれない」という1割の可能性が捨てきれない。その精神のせめぎ合い、葛藤に異文化と向かい合ったときの奥の深さがあるんですね。

既にかなりの字数になっちゃってるんで、そろそろ締めに入ります。これまで色々書いてはきましたが、私はこれらのことを「ネガととらえているわけではまったくない」んです。そもそも私は「イタリアを存分に感じたい!」って思いで、イタ車として濃縮度が高そうなV7を買いましたから、イタリア人っぽいものが出てくると嬉しくてしょうがない。

ハーレーもアメリカの大らかさを感じさせてくれたし、ストリートトリプルはバトル・オブ・ブリテンのような、ジョンブルの熱い心意気を感じさせてくれた。ではモトグッチは一体何を私に訴えかけてくれるのか?プラスであれ、マイナスであれ、大事なのはそこなんです。キッチリとしたモノを欲しいんなら日本車でいい。イタ車は、「俺はイタリア人だ!これがイタリアだっ!」って熱く訴えかけて来て欲しい。海外製品ってバイクを通してその国のバイク乗りの姿や文化を感じられるから素晴らしいんですよ。

バイクって不思議なもので、オーナーの気の持ちようで評価なんか正反対に変わるんですよ。で、そんなオーナーの気持ちをグダグダ方向に傾けちゃうのがイタ車です。国産車はツッコみたくなるし、アメ車はカスタムしたくなるし、イギリス車は背筋を伸ばして接したくなる。でもイタ車はなぜか「許したくなる」んです。自分の中の和の心と、イタリア人のラテンのノリとのギャップを楽しんでるから、ツッコミつつも「まぁ、いいか(笑)」って優しい目になっちゃう。

それこそがイタ車が、最も趣味的と言われる所以かもしれないんですが、そんな大らかな感覚にさせられちゃってる時点で、もうイタ車の術中、魔空間に引きずり込まれてるってことかもしれないですね。


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(モトグッチを一言で表現するなら「完熟の変態」、「変態生搾り」。今後もその愛すべき変態っぷりをレビューしていきたいと思います。それでは皆様、いつになるかわかりませんけど、また次回!)