全国のロケットカウル戦闘団、HAWK11部隊員の皆様おはようございます。そろそろ、*のじゃ子(HAWK11)が私の戦闘機として実戦配備されて1年が経とうとしています。主力戦闘機なのに春先にいきなりSUVに撃墜されるなど、いろいろと激動の1年でしたが、終わってみれば走行距離は7000㎞超えました。タイヤも1セットを使い終わり、そろそろ新車の興奮もなくなったきた今日この頃。そこで、今回は、ど定番のブログネタ、「このバイクに1年乗って感じてた良いところ」を書いていきたいと思います。

DSC_3156(現代的なデザインでありながら、これほど日本の寺社仏閣に溶け込むバイクがあるだろうか?まさに走る神器。)

ちなみに、私が「いいな~」ってしみじみ感じているところは3つあります。これは人によっては悪いところと認定されることもあると思うんですが、バイクの個性をどのように感じるかは人それぞれですから、気楽にお読み下さいね。



まず一つめは「直進安定性が高く、バイクに身を委ねて走れるところ」です。

私って、重量級クルーザーをメインバイクにしてることからもわかるように、直進安定性が高く、どっしり走るバイクが好きなんですよ。公道バイクの走行質感って、「ビタッと真っ直ぐ走ることである」と考えているくらい。そこがシッカリしていると、バイクに頼もしさとか、安心感を感じられるんで、そういうバイクを好んでます。人生自体が酩酊千鳥足ですから、「せめてバイクくらいは真っ直ぐ走りたい」という深層意識がそうさせるのかもしれないですが、そこは深く考えたくない。

「でも、それじゃコーナリングでのキレは落ちちゃうんじゃないの?」ってツッコむ人もいるかもしれないけど、それについては「コーナーでそんなにキレなきゃだめですか?」って蓮舫さん口調で逆ツッコミを入れてみたりする。

確かにグイグイ曲がってくれるのは悪いことじゃないんだけど、曲がることが直進安定性より優先されるか?っていうと、私の中でそれはないんですよ。曲げるってのは乗り手の方でナントカできるところがあるけど、「真っ直ぐ安定して走る」というのは、バイク側でやってもらわないとどうしようもないんです。どんなに曲がりたくても、日常走行のシュチュエーションって、90%くらいを「直進と停止」が占めている。一般の公道がうねうね曲がりくねってたら、目的地着く頃には車の中の人みんなゲロっちゃうわけですから、日本道路公団において「負荷の強いコーナーは悪」なんです。つまりコーナリングのキレを味わえるようなコーナーがそもそもないんですね。それが日本の道路ってものですから、真っ直ぐ走ることが得意でないと、公道適正がグッと下がるのは当然と言える。

クソ遅くって曲がんないクルーザーが人気あるのも、「日常使うには直進性能がある方が使い勝手がいい」という事実を如実に物語っているわけですよ。

そんな中、セパハン前傾の純SSってホイールベースが短く、重心も高く、基本曲がりたがりの特性が多いんですよね。加速したり減速してる方が安定するし、楽しいし、やたらめったら曲がりたい。だから、車の後ろダラダラ走るのがとにかく苦痛。信号待ちではすぐ最前列に出てシグナルダッシュしたくなるし、吸い寄せられるように山奥のワインディングを目指しちゃう。一般公道はつまんない直線で構成されてるから、特別な道に出張っていかないと楽しめないんですね。で、日頃鬱憤を溜め込んでるから、環境が整うとハメを外して「狂乱のヒャッハー☆サバト」が展開されるってわけですよ。

でもHAWK11は乗り手が曲げようとしない限り、特段曲がりたいそぶりは見せないし、ワインディングは得意だけれども、「もっと曲げるのじゃあ!曲がれるところへ行くのじゃあ!」とせっついてきたりはしない。だからバイクに身を委ねて、普通に下道を走ることができちゃう。ホイールベースが1510㎜で、「スポーツバイクにしちゃ長くない?」って思われるかもしれませんが、昔の1100カタナやローソンレプリカ、900ニンジャなど、1970年代から80年代の往年のリッタースポーツだってホイールベースは1500㎜前後でしたから、全然普通です。

こういうバイクは今の「とにかく問答無用に曲がる」バイクのイメージからすると、「曲がりませんね~」って評価されるのかもしれないけど、全然曲がりますから。昔の大パワーバイクは高速域の直進安定性を出すために、ホイールでかくて立ちの強いバイクが多かったし、そんな頃はフロント19インチとか18インチでも、最先端スポーツバイクだったわけです。当時を基準にすれば、今のバイクが曲がりすぎなんですよ。コッチは曲げるのを楽しんでいきたいんだから、バイクの方で曲がってもらう必要はないまである。

まぁ色々と長くなりましたが、HAWK11は公道で重要となる「真っ直ぐ走る」ことを大事にしてるんで、そこを私は評価しております。




次、二つ目は、これまで何度も言ってますが、「アクセルレスポンスが素晴らしい」です。

私はウチの*のじゃ子に慣れてきた2000㎞あたりから「ほぼスポーツモードに入れっぱなし」になってます。タイヤの減りが速いのもそれが原因かもしれないけど、スポーツモードのレスポンスの感触が好きすぎて、それ以外のモードに入れなくなっちゃったんですよね。このスポーツモードの感触って今まで乗ってきたスポーツバイクの中で私的ランキング1位です。

具体的にどこが良いのかっていうと吸いがいい。しかもエンジンに任せて好きなだけ吸うっていうんじゃなくって、まるで測ったみたいに、こっちが必要としてる量をキッチリ、タイムラグなくエンジンに取り込む感覚があるんです。だから1100cc、102馬力のエンジンが完全に右手の制御下に入る。要はアクセルとパワーの出の感覚がズレないように吸気していくような躾けになっているんですね。この緻密さは電スロであることも効いてるんだと思うけど、その調教レベルがたまらない。「お座りとかチンチンもやります!言うこと聞きます!」っていうレベルじゃなくて、リッターバイク様に対して「ご主人様とお呼び!」って上から目線で言えちゃうようなレベルに達しております。このおかげで今の私のバイクラインナップの中で、*のじゃ子が乗って楽しいバイクNo1になってます。

低中速域の微細領域まで緻密に意思疎通ができるスロットル特性を作り込んだバイクって、これまでちょっと経験ない。少なくともキャブではこんなの無理でしょう。開発陣の動画を見ると、吸気の担当者がものッ凄く苦労したらしいですけど、それがこの特性に結びついているのであれば、購入した乗り手としては、「そのご尽力に心から感謝の意を表します」と表彰したい。(但し、記念品等は一切ない。)

思えば、キャブの頃のリッターバイクって、ゴウゴウと燃えさかる焚き火で料理してるようなワイルドなところがあったと思うんです。低回転でガバ開けすると空気の流速が高まるまでもたついたり、回転が高まるにつれて二次曲線的にエアを吸っていって、高回転域ではマッドマックスのモヒカン☆ヒャッハー珍走団のように力の暴力を垂れ流す。まさに「自然の摂理どおりなのでぇす♡」っていう豪快な出力特性のものが多かった。そんな野外バーベキューみたいな荒ぶる火力で、乗り手はなんとかコーナーを調理しようと試行錯誤してたんですけど、タイヤの性能も今ほど良くなく、トラコンもABSもない時代に高出力優先の特性にしてたんですから、その火力を扱うにはそれなりの場所とスキルが必要だったし、リスクも高かったんですよね。うまく料理が仕上がることの方が珍しくて、私なんかは、すぐに焦がして、真っ黒になってたりしたんですよ。

でも、HAWK11の出力特性は昔の同クラスのリッターバイクに比べれば、まるでパロマのガスコンロのようです。火力は十二分なれど、乗り手がコントロールできないほど燃えさかることはない。火力調節も微細領域からパワー炸裂の最強火力まで、こちらの意志で自由自在。極低回転はさすがに厳しいですが、2500回転あたりから上は、ツインならではのキレとトルク感、コントロール性が両立した出力特性がレッドゾーンまで維持される。このため、前傾ポジションによる速度麻痺もあいまって、「これホントに100馬力ナノカ?」「なんでこんなに扱いやすいノカ?」って頭にハテナマークが出るほど圧迫感がない。スポーツバイクにある怖さやとっつきにくさがないから、100馬力の火力を安心して料理に使えるんです。昔は45馬力でも開けると怖いバイクは沢山あったけど、*のじゃ子に乗ると、「怖いって馬力があることじゃなくって、馬力を制御できないってことだったんだな・・」って改めて感じちゃいますね。

このバイクのスポーツモードは大パワーを扱ってきたベテランを想定して、ラフなアクセル操作は許容しない味付けになってますから、人によってはそれを「乗りにくい」と感じたり「ドンツキ」と表現する人もいるかもしれないけど、それは単に「パワーの出方に遊びがない」だけであって、私はこのような特性をドンツキと呼びたくないんですよ。

ドンツキって私的には、「アクセルを開けた以上にバイクが前に出ちゃう」とか、昔の一部の2スト原付みたいに「開けても反応が鈍くて、おかしいな・・と思って、追い開きした瞬間、いきなりドカン!」というような、アクセル操作とパワーデリバリーの間に「乗り手の感性と合わないプラス方向のズレがある」ってやつを指してます。HAWK11のような特性は「ツキがメッチャいい」とか「スロットルにダルさがなく締まってる」と表現すべきなんじゃないかと思う。

HAWK11のスポーツモードは絶対的なバワーを出すんじゃなく、「パワーの出方がアクセルワークに忠実になる」という素晴らしい仕立てになってるんです。アクセル開度低めの部分の優しさを削りとり、微細領域から1100ccが忠実に応答する。リッター超えのパラツインは全域でトルクがあるだけに、この設定の魅力が際立つんです。

でも、こういうキワキワ感を存分に楽しめるのは、加速減速をガッツリ受け止められる前傾姿勢があってこそ。上体が起きた立ち乗りだったら、このスロットルの解像度の高さは楽しむどころか、逆にストレスに感じちゃうと思うんですよ。だから私にとってHAWK11の前傾姿勢は、このステキなスロットル設定を味わうための必須の仕様であって、ネガじゃないんです。この世にはこの前傾ポジションだからこそ楽しめる世界ってのが確実にあって、HAWK11は「めくるめくセパハンの世界」をちゃんと作り込めてると思うんですよね。

30年以上リッターバイクの上にいて、自分は特別な乗り手ではなくタダの一般モブライダーという自覚はあるし、「他人様が所有している使いようのないパワーをうらやましいと思う心の贅肉」もいつしか消えてました。そんな私が求めてるものは「爆発力のある加速感」でも、「コマのような旋回性能」でもないんです。私のへタレっぷりを考えると、性能高すぎるのって逆にマイナスなんですよね。それは刺激性が高いストリートトリプルRSに乗ってた3年間で気付いてたことなんですけど、*のじゃ子に1年乗って、より明確になってます。

おっさんになった私が公道スポーツに求めてるものってしっかりとした考え方と方法論に基づいた仕立てから生まれる気持ち良い感触なんですよ。最終的に求めるものは「正確で質感の高い操作系」「キッチリ制御された適度なパワー」「入力をそのまま地面に伝える忠実な車体」あたりかなって感じてます。

要は「正確、忠実、制御、質感」。パワーというカタログスペックより、ここら辺のスペックに出てこない仕立てが、おっさんがスポーツして満足感を得るためには大事だと思うんですよ。多くのモデルが年次改良される度に、メカ部分は変わんないのに、「良くなったね、乗りやすくなったね」って言われてるのは、スペック外の重要なところが向上してるからですよね。煮詰めて良くなるってのは、逆に言うと「デリバリー当初のモデルは、まだ煮詰まりきってない」ってことでもある。

これについては、多少の荒さが個性につながるところもあるし、それが好きって人は当然出ると思うんですけど、そういう個人の好き嫌いは別にして、機械としての良し悪しで考えれば、スペックに出ない要素をしっかりと作り込むのが、100万円を超えるバイクのあるべき良心的な姿じゃないかと私は考えてるんですよね。

多くの200馬力級リッターSSって、最強感は凄いんですけど、私みたいなヘタレの一般人に提供する場合、それをどう調教するかの部分で、かなり難しいところがあるはずなんです。ベース火力が全てを消し炭にできるレベルであるにもかかわらず、必ずしも凄腕料理人が厨房に立つわけじゃないわけですから。下手すると火力暴走で大ヤケドするってことになりかねない。それに対してどの程度の責任を負うのか?ってのは各メーカーの考え方によると思いますけど、「火力は出すだけ出しましたんで、後は自己責任でヨロ~」というスタンスもあれば、「メーカーの方できるだけセーフティネットを張らなきゃマズいじゃん」っていうスタンスもあると思う。2代目Vmaxの「初心者は乗らないで下さい~」みたいなキャッチコピーはまさに前者の自己責任型のバイク作りをしてるってことですよね。

ここら辺の塩梅はメーカーによって様々でしょうけど、今のリッターSSクラスって各メーカーが「個人の味覚の限界をとっくに超えるような、赤唐辛子山盛り入りのラーメンを、どう美味しく食べさせるか?」っていう命題に向かって突き進んでる気がするんですよね。化学調味料と具を色々入れて、食べやすくはしてるけど、ベースが激辛であることは何ら変わりはないし、過剰なものは、実用から乖離して所有満足度やステータスの器になるから、バイクはどんどんその方向に突き進んでいく。

そんなところに「排気量はタップリありますけど、具はシンプルで丁度良いお味の中華そばです。」ってスッと出されたのがHAWK11で、なんとなく気分的に刺さったんですよね。



最後に、三つめのいいところ。それは「私の日常圏内で私以外が乗っているところをほぼ見たことがない」ってことです。

私はこれを「ツチノコ状態」と呼んでおりますが、これってどっちかというと、マイナス面に捉えちゃう人がの方が多いかもしれない。だって、人気のないモデルには、「他人から羨ましがられる」という相対的価値が存在しませんから。ただ、私は自分が設定した独自の価値で幸せになれるという自己完結タイプですから、「これいいじゃん!!!」って選んだものを、人様がほとんど理解できないってのは快感なんですよ。みんながニューガンダムだー、ストライクフリーダムだー、ガンダムエアリアルだーっていってる中で、

「いやいや、やっぱマンダラガンダムでしょ!!!!」

っていってるようなものかもしれない。

マンダラ
(こちらがマンダラガンダム。頭がパンチパーマ(!)、手と胴が数珠(!!)、下半身が釣り鐘(!!!)という、もはや「足など飾りです!」を通り越し、「体など仏具です!」になった究極のガンダム。この聖なるモビルスーツを攻撃するには、地獄に堕ちる覚悟が必要。)

まぁ、お前の感覚がおかしいといわれればそうかもしれないけど、その手のものは好き者しか愛でないんです。主役機は大衆のためのマスだから、時代に応じて変わり続けながら受け継がれるけど、ニッチ方向にアクセルをべた踏みしたものって変わりが全然出てこないから、永遠の存在になってるんです。

先に紹介したマンダラガンダムは、誰が見ても完全なキワモノなんですけど、HAWK11はキワモノ感はない。造形物の美しさを作る面やエッジ、色の質という基本のクォリティがしっかりしてるからです。私はよく*のじゃ子のことを仏具っていってますが、仏具って普及価格帯でも手抜きしたものってほぼないんですよね。仏前では敬虔で荘厳な雰囲気が必要だし、シンプルなものに緊張感を出すためには面やエッジをしっかり立たせるしかないんです。

難点を上げるとすれば、アフリカツインをベースにして、一定価格で作らないといけないという制約上、盛ったところと抜いたところがはっきりしてるとこかもしれない。なんだかんだと乗り出しが100万円台半ばという高額設定になるんで、その抜きが許せないという人もいると思うんですよ。ネットの意見も良いところよりマイナスを見るものがほとんどでした。でも、マイナスを消すということは、クォリティを平均化するってことで、今度は盛れなくなっちゃうから個性が消えるんですよね。価格が天井知らずになることを覚悟して全部盛るという方向もあるけど、ホンダはそのスタンスはとらないメーカーです。かといってクォリティを平均化しちゃったらHAWK11を作った意味なんてなくなっちゃう。

HAWK11のデザインは、良いところを見つけて評価するのか?悪いところに目が行くのか?という受け手のスタンスによって評価が真っ二つになる。でも個性って「当たり前の考え方をしない」ってことだし、HAWK11は「個人のパーソナルな熱量を盛った同人誌みたいなバイクだ」ってホンダが自らが言ってるんだから、このバイクはこれでいいんです。


それでは最後に1年間の総括を

HAWK11の個性って「日常で楽しめるリッタースポーツ」であるってことです。多くのSSが公道という日常を斬り捨ててるのと同様に、HAWK11はサーキットなどの特殊領域を斬り捨ててる。刺激と日常、どっちがいいかってのは人によると思うけど、セパハンを採用してるスポーツバイクって大概前者になるんですよね。

常に最高性能のものに乗り換えていただくという形で販売しているから、消費サイクルが速く、あまり馴染んじゃダメなんです。性能にあわせてデザインだって、どんどん尖らせていくって方向です。おっさんはどんどん丸くなるのに、バイクはどんどん尖っていくから、置き去り感も出てくるんですよ。

そういうサイクルから抜け出して、乗り換えのためのわかりやすい進化ではなく、内に籠もったパーソナルな深化を目指したスポーツバイクがHAWK11だと私は感じてます。進化と深化、なんかエヴァンゲリオンの言葉遊びみたいになっちゃいましたが、これはいわゆるホンダの中の碇ゲンドウみたいな人達が企てた、バイク乗り補完計画の「疑似シン化第一形態」かもしれないな~、なんて思ってます。

良い素材でしっかりダシを取ったものは、最初は薄味に感じても乗れば乗るほど、こちらをどんどん侵食し、いつの間にか居場所を勝手に確保します。ホンダはHAWK11を上がりバイクって言ってたけど、1年を経過して、私も「多分、スポーツバイクはこれで上がりになるんだろうなぁ・・」と思ってますから、もはやすっかり浸食された感覚がありますね。



*のじゃ子1年3
(大人のエロさをやっていこうと思ったんですけど、色々あってギャグ堕ちし、表と裏の二重人格に分裂してしまった*のじゃ子さん。ワガママな大人の相手は大変です。)