全国の数少ないモトグッチ・オーナーの皆様、おはようございます。にわかオーナーによるモトグッチV7のインプレです。バイク乗りとしてはもう食用に適さないほどカビが生えちゃってますが、モトグッチオーナーとしてはピチピチの新参者なんですぅ♡キャッ♡

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(昭和生まれの昭和育ちですから、選ぶのはメッキマフラーにメッキスポークホイールのV7スペシャル。クラシカルはバイクはシルバーに輝いてないと、どうにも落ち着かないという世代です。)

今回語っていきたいたいのは、あらゆる意味でV7を変態バイクにカテゴライズしている、縦置V型2気筒エンジンの謎についてです。

このエンジン、多くの方が「これ、なんで縦置なの?」って思ってるはず。実際、ウチの聖帝様がこのバイク見た時の第一声は「うわぁ!エンジンが横になってるじゃん!なにこの変なバイク!」でしたからね。もう、ネーミングからして疑問符がついてるわけですよ。

「・・いや、これ横じゃなくて縦置V型といってですね・・」

「は?何言ってんの?目がおかしいの?誰がどう見ても横でしょ?だってエンジンが横にハミ出してるじゃない!」

「いや、エンジンは横になってるけど、クランクは縦だから縦置きなんです。」

「は?クランクって何?どれのこと?」

「いや、外からは見えないんですけど・・」

「はぁぁ?見えないものを基準に縦っておかしいでしょ!このエンジンは誰がどう見ても横向きでしょ!それをわざわざマニアックな理由で縦で呼ぶなんて・・あ~~ヤダヤダ、・・これだからバイク乗りってマニアっぽくて嫌なのよ!オタク特有のコダワリってやつ?キモッ」

「!!!!!!!!!!!」

これが普通の反応ですよ。バイクは進行方向に長く、普通は長い方を縦呼びするから、進行方向に対してエンジンが横向きに乗っかってるこの配置は、「横置き」以外のなにものでもない。

でもこのどうにも収まりの悪い違和感ってあんまり指摘されないんですよね~。なぜなら、この手のタテヨコ論争が出るのって、現行バイクでは「モトグッチだけ」ですから。他に縦置きエンジンを搭載してるバイクはBMWのRシリーズとホンダのゴールドウィングがありますけど、BMWは水平対向2気筒(フラットツイン)、ホンダは水平対向6気筒(フラットシックス)って呼ばれてます。この2つはエンジンのシリンダー配置自体に特徴があるから、わざわざそこに「縦置き」なんていう面倒臭い枕詞をつけなくてもいいんですよ。一方のモトグッチはV型2気筒のバイクがこの世の中に星の数ほどあるから、それと区別するためにあえて搭載方法の特殊性を意味する縦置きという枕詞が必要になるってわけです。

じゃあ、このエンジンがなぜ縦置きと呼ばれているのか?それは「ドライブシャフトを駆動するにはクランクを縦にするのが合理的」っていう大前提があるからです。パワーのある大排気量車やメガツアラーには、車重や大トルクによる高負荷に対応しつつ、チェーンメンテが不要で耐久性がある「シャフトドライブ機構」がハマるんですよね。

バイクって「運動性や乗り味のかなりの部分がクランクに支配されてる乗り物」だから、技術者も自然に「クランク中心の発想」になっていて、それでクランクを中心に「タテだ~、ヨコだ~」って言ってるんだと思うんですよね。呼び方が完全に「技術者目線」になっているわけです。

でもね。我々乗り手や消費者はからすれば、そんなの関係ねーんですよ。クランクが縦になってるからって理屈はわかるんだけど、そもそもクランクって置くものじゃなくない?置くってのは、土台の上に何かを乗っけるときに使う表現ですけど、クランクはエンジンに組み込まれてるもので、フレームの上に置かれるものではない。置かれるのはあくまでエンジンであってクランクではないはずなんですよ。

だから私的には、この縦置き表現は、どうにも違和感が残る。でもこのブログでいいたいのは、縦とか横に決着をつけることではないんです。

「そんな何の役にも立たない、こだわりはどうでもいいじゃない!」

ってことなんですよ。確かにモトグッチのメーカーホームページにアクセスすると、明確に「縦置きVツイン」って書いてありますよ。でもね。下の写真を見て下さい。こちらは、V7の取扱説明書の記載の拡大です。


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「クォラァァアアアアア!!こっちは横置きになってんじゃねぇかぁぁあああああ!!!」

もうね。モトグッチ自体が混乱の果てに完全にアイデンティティを喪失してますね。イタリアメーカーのいい加減さを差し引いてもこれはない。メーカーからして混乱してるんだから、我々ユーザーが混乱するのは、もはや当たり前といえる。いや~、闇は深い。

実はですね。このグダグダの原因はハッキリしてるんです。先に提示したモトグッチのマニュアルって日本語と英語の並列記載なんですよね。で、英語読みの方を見ると「トラバース・マウンテッド」って書いてあるんですよ。これは日本語に訳すと「横方向にマウントされた」って意味になる。マニュアルではこの英語表記を直訳したから、「横置き」って表現になっちゃったんだと思うんですよ。じゃあ、本国イタリアではどうなってるの?ってことでイタリアのホームページ見ても英語圏と解釈は同じ。つまり本国イタリアでもグローバル英語圏でも、このエンジンは「横置き」と呼ばれているんです。だから、「縦と言おうが、横と言おうが、全然間違いじゃない」ってことになる。それどころか世界的には横置きの方が圧倒的に優勢だと思われます。

「お前、バカだな~モトグッチのエンジンは横置きじゃなくて縦置きっていうんだよ。これだから知識のない素人は。プッ(笑)」

「フ・・愚かな(ジョジョ立ち)・・本国ではこのエンジンは motore trasversale a V di 90と表記されているのだっ!(ビシッと指さす)そして、これは「90°V型横配置」を意味するっ!つまり俺はイタリア呼びしているだけ!わかったか!わかったら消えろ!アリーデヴェルチ!(さよならだ!)」 

「な・・なんだってぇぇぇーーーー!!!!」(吹き飛ぶ)

(こちらが私の知る数少ないイタリア語の一つ「アリーデヴェルチ」の元ネタです。スカッと爽やかアリアリラッシュ。)

このように、あえて横置きと呟いて、油断したマウント爺のツッコミを誘ってからのアリアリラッシュも十分可能。この返し技があることより、ヨコタテの攻防は緊迫感に支配される。格闘ゲームと同様、返し技があると思うと、下手にツッコむことはできなくなりますからね。

「こ・・こいつ・・いまこのエンジンを横置きと言ったのか?くっ・・何も考えていないのか・・それとも返し技への布石なのか・・どっちなんだぁぁぁあ!!(ゴクリ)って状態になってしまうんですよ。

でもね。これはハッキリ言ってグローバル表記が正しいと思う。消費者側から見ると、これどう考えても横置きにしか見えないし、無理して縦置き表記にする実益があるとも思えない。「そうはいっても、日本ではもう縦置きが定着してるんだから、今さら横に変えられないでしょ?」ってことであれば、いっそ縦置き、横置き表記をやめちゃって、グレードアップした表記にした方が絶対いい。私が新たに提案したいのはこれ。

「90°V型2気筒十文字(じゅうもんじ)置き」

ううううぅうう・・かっこよ・・中二病の血がうずきますな!中二病患者は、大概「†終焉の堕天使†」とか、「†慟哭の守護者†」とか、「†神罰の地上代行者†」とか、名前に十字架並べるの大好きですからね。

この表記が実現すれば、赤のモトグッチ買ってエンジンヘッドを赤に変え

「ふああぁぁあはははははは!!我が愛機の名はブラッディ・クロス!!闇の炎に抱かれて消えろ!!」

とか痛いこといい出す輩も相当数出てくるはず。来年にはモトグッチ自体が「電人ザボーガー」みたいな色のバイクも出してくるし、もうガチオタ専用バイクとして生きていくこともできるかもしれない。

コルサ
(こちらV7の特別仕様、V7 Stone Corsa 色味が完全に電人ザボーガーです。ありがとうございました。)

このようにネーミングからして問題点噴出のモトグッチの「縦置V」なんですが、悲しいかな市場では全く人気がございません。その原因はやっぱモトグッチが「この気持ち良くて素敵なエンジンを横向きに置いちゃったから」だと思うんですよね~。

そう、このエンジンは見た目が問題なんですよ。V7は空冷だから、ラジエターがなく、エンジンの全体像がバイクの正面側から全部見える。その時エンジンから受ける圧がなんとも凄いんです。

マツケン5+1

皆さん、この縦VポーズがVに見えますか?どう考えてもYじゃないですか?モトグッチって、脱腸みたいに張り出したエンジンがデザイン上の個性になってるから、シリンダー部分がノビノビとデカい。結果的に見た感じが「メチャクチャ横に倒れそうな形」になってるんですよ。同じ縦置きでもフラットツインは水平にシリンダーが張りだしてて、しかも思いっきりエンジン搭載位置を下げてますから、見た目は完全な凸型。視覚的安定感は抜群です。

しかし、モトグッチは違う。視覚的にめちゃ不安定。重量級バイクに30年以上乗ってる私ですら「・・これ・・倒れないの?・・」って思っちゃうくらいですからね。

OHVなんでシリンダーヘッドはそんなに重くないから、エンジンの重心位置はそこまで高くはないんですけど、V7はエンジンの上に21リッターという大容量の燃料タンクをズドンと乗っけて、さらに上を重くしていますから・・。直立時はどっしり安定するだろうけど、ある程度傾いたら一気に逝っちまうことは想像に難くない。

しかもですよ。本来はこの手のタチゴケしやすそうなバイクって、「コケしても傷はつきませんよ!丈夫ですからっ!」って、タフな風体してなきゃいけないんですよ、でもV7は普通のネイキッド。「下手にコカしたら、心臓部であるシリンダーヘッドが接地して大変なことになるぅぅうう!」ってのが見た目から容易に想像できる。

「我輩は不安定なのだ!しかも、コカしたら、大変なキズモノになってしまうのだ!」っていう、とんでもないハラスメントを乗り手に仕掛けてくるワケですよ。

こんなのビギナーにとっては「不幸とダンス」どころか「死神にバックハグ」な未来しか想像できないと思う。だからといって、タチゴケバンパーつけようにも、ネイキッドバイクってガードつけると教習車みたいになるし、ガードすべきシリンダーの取り付け位置が高いから、「重心がさらに上がる」という悪循環に陥るんですよね。

結果的に日本では大型バイクのエントリーポジションに位置しているにもかかわらず、見た目のデンジャラスさが災いして、ビギナーには敷居が高いバイクになっちゃってるんです。

ただ、ビギナーを遠ざける一方で、それが「ちょっとくらいデンジャラスな緊張感があった方がバイクは楽しいじゃん」っていう変人を引きつけるフェロモンにもなってるんですよね。昔はケツ上げワンワンスタイルで、「大馬力とお呼び!」ってムチとロウソク振り回すSS女王様と一緒に、純度が高く中毒性のある快楽を求めていた時期もあったんですけど、私はいつしか、リスクの高いハードプレイより、日常の中にある「ささやかな快楽」を模索していくようになっていたんです。

そんな私にモトグッチの「コケたらエンジン終わります感」はなかなかに魅力的で、このバイクで走っていると「亀甲縛りをした上にスーツを着て、何ごともないように日常を送っている」みたいな、なんともいえない背徳的な気分になってくるんです。

信号待ちで、タンクから豪快にハミ出してるシリンダーヘッドを見下ろしながら、「ふわぁぁ・・もしコケたら・・コケちゃったらぁ・・きっと絶望的な状況にぃいいぃ・・・って頬に手を当て、静かな興奮で股間を熱くすることができるんですよ。とってもお得じゃないですか?

そう考えると、このエンジンの呼称は縦置きでも横置きでもなく、

「変態置きが最もふさわしいのかもしれないな・・」(目を細め遙かな地平を見つめる)

・・・なんて感じちゃってる今日この頃です。