秘密だよ
(秋用のヘッダーのために描き下ろしたものをブラックアウト。つまり今月中旬に変更予定の秋のヘッダーの主役はこの新入りになります。)

前回のブログで*のじゃ子(HAWK11)の事故が解決し、「トロイの木馬」ならぬ「トロイのKADOYA」のおかげで、約20万円の焼け太り資金が手元に残ったことをお伝えしました。バイクの修理費も一時的に立て替えはしましたが、最終的には特段の持ち出しもなく、私の手元にはそれなりの金額が残る結果になったんです。

それに加え、今年の4月、私は所有していた大量のガレージキットをヤフオクで売却し、金に換えています。なぜかと申しますと、祖父の23回忌の開催に執念を燃やす父から、「法事の前に模型部屋を住職の待機室として明け渡すのじゃあああああ!」との御下命が下っていたんです。模型部屋はサーフェイサーの白い粉で腐海の地下空洞のように真っ白になっており、私としては「これこそ白き清浄の地!」と叫びたいところですが、そうは問屋が卸さない。

壁際には美少女フィギュアの箱が積み上がり、作業机にはピンセット、ヤスリ、ドリル、ハサミ、小型のこぎり等、人体解剖に使うような不気味な小道具が並んでいるため、全体的な印象は「色魔淫界」「いけない手術室」「猟奇空間」「不浄の地」って感じで、「我が家で一番穢れたスポット」と言わざるを得ない状況になってたんですね。

あまつさえ、積みキットの中には巫女服ミニスカパンチラフィギュアまで存在しており、これを寺のご住職に見られようものなら、「神を冒涜する極めて罰当たりな一族」という屈辱的な評価を受けてしまうことは必定。小さな町内の模範的な家庭として、「世帯主の恥ずかしすぎる趣味を隠蔽しなければ!」と皆がやっきになるのは、今後の生活を考えれば必然のことであったと言えましょう。

私が愛するものって悲しいかな、家族にことごとく支持されてないんです。バイクもイラストも美少女ガレージキットも全く理解が得られない。美少女ガレキは、私の「オタクカルチャーへの敬意」と、「模型製作への情熱」「女体という宇宙の真理に対する探究心」という欲望のトライアングルが絶妙に交差した奇跡の創作物なのですが、一番理解が得られてない。「良識ある成人男性として、そのようなものに携わるのはいかがなものか?」という意見さえガン無視すれば、私の中での満足感は非常に高い趣味だというのに・・。

しかし、どんな趣味にも必ず終わりはやってきます。フィギュア製作は、小さな3次元の物体に「面相筆で顔を描く」という作業を要求されるため、老眼になって近くのものの焦点があわなくなると、製作がとたんに厳しくなってくるんです。

ここ数年、視力がみるみる衰え、近距離で目の焦点がまったくあわなくなった結果、数ミリレベルの細かい作業が全然できなくなったんですよね。また、週一くらいのペースでブログと挿絵描いてると、ガレキなんて作ってる暇はまったくないってのもある。

「今のところ、作るガッツも暇もない・・それなら欲しい人のところで幸せになった方が良いよね。」ってことで、オークション代行業者に頼み、ガレージキットを残らず断捨離することにしたんです。レアものもいくつかあったので、売却の結果、代行業者の手数料引いてもトータル30万円くらいの手取りになりました。まぁ購入金額もかなりの額になるんで、儲かったなんてことは1ミリもないんですけど、作らずにただ積んであるというプレッシャーからは開放された。私はあくまで作ることにヨロコビを見いだすタイプで、コレクターじゃありませんから、作れないなら、売却ってことで良かったんだと思ってます。

しかし、これにより短期間に私の手元にかなりのお金が集まってしまった。人間っていうのは、こういうアブク銭を握ると、大概ロクなことが起きないし、そもそも私みたいな奴は、大金を持ってはいけない。だって消費に関しては、私はまさにブレーキの壊れたダンプカー。過去何度も聖帝様に懲罰房行きを食らってるんですね。ハーレーは魂がフリーダムだけど、私は財布のチャックがフリーダム。要はガバガバということなんです。

そんな私が催眠商法の網にかかったのは、*のじゃ子の事故のドタバタが一段落し、少しずつ解決の方向が見えはじめてきた5月下旬頃でした。始まりはとても些細な出来事だったんです。バイク小屋でまったりコーヒー飲みながら、ふと小屋の隅っこに目をやったら、段ボール箱の物陰に奇妙な物体を見つけたんですね。

「あれれ!?」

それはストリートトリプルRSのタンデムシートでした。ストリートトリプルってアタッチメント方式でシングルシート仕様とタンデムシート仕様どちらにも変更できるんですけど、私はずっとシングルシートで走ってたんで、小屋の隅にあったタンデムシートの存在に気付かず、委託販売申し込みのときにレッドバロンに渡し忘れちゃったみたいなんです。

「こりゃいかん」ということで、翌日それをレッドバロンに預けに行ったんですけど、そのついでに、そこら辺に並んでる売り物を眺めていこうかなって店内を散策したんです。そして惨劇が起こってしまった。


~以下、回想シーン~


(店内をバイクを眺めながら、ぶらぶらしていたへちま。一点を凝視して突然固まる。)

「は?は・・はぁぁぁぁあああああ!?」

「な、な、なんだってぇぇぇぇえええ!!」

「なぜこんなものがここにィイイイイ!!」


(バイクの周りを素早く動き回り、ためつすがめつバイクの細部を眺めはじめる。その様子を見て、店長が音もなく隣にやってくる。)

「あ!へっちまんさん。ひょっとして、これに興味あります?えへへ、珍しいでしょ?2、3日前に入ってきたんですよ。」

「はぁぁぁあ?珍しいなんてもんじゃないでしょ!一体誰が買うのよこれ??」

「いやぁ・・ウチのエリアのお客さんって、明らかに変人が多いんで・・こういう奴の方が売れたりするんですよ~。」(私の方を流し目で見てニヤっと笑う)


そんな・・なんで、なんで、こんなタイミングで、こんなものがここに入っているんだ・・・これはきっと幻だ・・新手のスタンド攻撃を受けて、俺は幻を見せられている・・・・(顔を手で覆う)


「跨がってみますか(笑)」


「・・ば・ばかな・・現実だ・・と?・・・」




・・・読者のみんな!あ・・・ありのまま
今起こった事を話すぜ!

『おれは委託でバイクを売ろうと思ってたのに
いつのまにか逆に買わされそうになっていた』

な・・・なにを
言っているのかわからねーと思うが

おれも何をされたのか
わからなかった・・・
頭がどうにかなりそうだった・・・

催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ

もっと恐ろしいものの
片鱗を味わったぜ・・・・・



もうね。脳みそが完全にポルナレフ。これはね。明らかにスタンド攻撃ですよ。「店長の岸辺露伴みたいなスタンド能力で、私の深層心理が読まれ、操られてる」って結論以外ありえない。

だって私、昨年の6月に*のじゃ子(HAWK11)を購入してるんですけど、そもそもそのタネ銭となった資金は、今目の前にあるバイクを買うために私がコツコツ貯めてたものだったんです。だから、本来は*のじゃ子じゃなくて、このバイクが4台目として将来バイク小屋に収まる予定だったんですよね。でもホンダが凶悪な変態ロケットカウルを予告なく出してくるもんだから、そっちに根こそぎ貯金とられちゃって、私も「ご縁がなかったってことかなぁ・・・」って思ってたんです。

その因縁のバイクが、このタイミングでレッドバロンの在庫車として入ってるっておかしくない?これがどれだけ異常な事態か皆さんはわからないでしょうけど、こいつは絶対に、こんなところにポンとおいてあるようなバイクじゃないんです。だって私は30年を超えるバイク人生を通じて

「一度たりともこのバイクの現物を見たことがなかった」

んですよ。中古バイク屋にすら置いてあるのを見たことがない。道の駅で出会ったこともない。いつでもどこでも、どんなときでもです。そんなバイクとの初遭遇が、ザラブ嬢の委託販売をお願いしてるレッドバロンで、私があぶく銭を握ってるタイミングってどういうことなの??人は理はコントロールできるけど、偶然までは避けられない。だから、この世に偶然ほど恐ろしいものはないんです。


「ダ、、ダメだ・・逃げなければ・・ケツの毛まで抜かれかねない・・」


しかし、あまりの衝撃に体が硬直して動けない。こちらの欲望を見透かしたように楽しげにバイクを語る店長は、まるでバッファローマンの前で牛丼を注文するキン肉マン。笑顔の中に「今からお前を食っちゃうぞ」というナチュラルな圧力が感じられる。店に来るまで1ミリも想定してなかった異常事態に頭が沸騰し、通算21台のバイクを購入してきた経験が何の役にもたってない・・でも、ナメられたまま簡単に寄り切られるワケにはいかない!

そうだ、しっかりしろ!ここで湧き上がってきた欲望に負けてしまえば、有り金を全部むしられるだけだ!!くそくそくそっ!!どうする・・・・そっそうだ!こんな時こそ、ジョースター卿の教えだ!欲望に負けてはいけないと思うからダメなんだ!意識しすぎるから、とらわれてしまうんだ!!逆に考えるんだ!もうこの際「欲望に負けちゃってもいい」って考えてみたらどうなんだ!!





















・・・そして私は欲望に負けた・・・・















・・契約社会というのは、一度書面を交わしてしまうと、もう後には戻れません。光の速さで無一文。でも、消費ってのは決してためらったり、振り向いたりしてはいけないんです。

なぜなら消費とは若さであり、愛だからです!!!

我々世代は、「若さ=振り向かない」「愛=ためらわない」ってことを、やたら顔の濃い宇宙刑事に教わったんですよ!そう、今こそ渾身の決めゼリフを叫ぶときだ!


「あばよ資産!」

「よろしくバイク!!」



・・・・・・そういえば、この宇宙刑事も、金欠でよく借金してましたっけ。ぶっちゃけ、裸一丁で敵陣に突入するような楽天家タイプってのは貯蓄できない男の典型例なんですよね~。


(こちらが顔の濃い宇宙刑事。主題歌は、我々世代の魂に深く刻まれる名曲。子供向けとは思えない深みのある歌詞とコブシのきいたメロディーは国産旧車乗りにもピッタリ。コケて落ち込んでいるとき、この曲にどれだけエネルギーをもらったことか。)

※なお、購入したブツは6月末に納車され、その後2800㎞程を走ってます。この謎バイクの正体は次回のブログでお届けしたいと思います。


スタンド・完成
(この漫画を予約投稿のブログに仕込んだところで、力尽きて爆睡しました。漫画仕立てはキャラを沢山描かなくちゃいけないので、思った以上に時間かかります。)