今回はちまたに溢れるラノベのタイトルみたいなお題になってますけど、中身はハーレーの「走りの殿堂」についてのお話です。

数ヶ月前、ディーラーでダイナのフロントタイヤを交換したときに、メカさんとこんな会話がありました。(なお、メカさんは話し方による人物特定を避けるため、テキスト入力した後に、人格をファンタジー世界の「冒険者ギルドの受付嬢」に変換してあります。別にメカさんが美人エルフとかではありませんので、その点ご留意の上お読みください。

「フロントタイヤの交換と、ホイールベアリングの交換が終わりましたぁ~。それにしても、もう7万4千㎞ですか~・・結構走りましたねぇ~」

「もう2台目のダイナ買ってから10年だからねぇ・・時の流れるのは早いねぇ・・(遠い目)」

「買い換えは考えてないんですかぁ?」

「まぁこのダイナで走りの殿堂、10万マイルの走破を目指してるから。」

「へぇ~、殿堂・・ハーレーにおける「無事これ名馬」の称号ですね。で、へっちまんさんはハーレーギルドのH.O.Gには所属してるんですよね?」

「走りの殿堂が欲しいためだけに今までずっと年会費払ってます。」

「なるほどぉ、データー上では前のローライダーが2万6千㎞で追突事故で廃車になってるようですから、距離的には通算10万㎞ってところですねぇ?そろそろ殿堂入りも見えてくる頃ですかねぇ。」

「そう、あと6万㎞なのよ~。60歳になるまでには達成したいんだよねぇ・・」

「え?あと6万㎞って?えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

「あの・・へっちまんさん・・ひょっとして殿堂入りするのにホントに実走で16万㎞走るつもりなんですか?
・・え、バカ・・?


「は?なんつった?今バカって言わなかった?」

「いえ、なんにもー(目をそらす)・・
念のためにひとつお聞きしときますけど、へっちまんさんは私達ハーレーギルドが主催してる「ぶるー・すかいへぶん」に行ったことはありますか?」

「ないです。」

「はぁぁぁ・・(アホを見る目)」

「なに?」

「じゃあ、ギルド主催のイベントに参加はしたことあります?」

「ハーレー購入してから14年間、ただの一度もありません。」

「はぁぁぁぁ・・(虫を見る目)」

「え?なに?なんなの?」

「へっちまんさんは、ギルドから送られてくる定期通信は、まったくみてないんですかねぇ?」

「うーん、はじめの頃はさらっとはみてたけど、あんまり興味のあること書いてないから、今は会員証だけ抜いて捨ててるね。」

「はぁあああ!?なにやってんですかっ!!そこにちゃんと書いてありますよ!!!ギルド主催のイベントに参加すると、それに応じたマイレージが加算されるんですよ!例えば、毎年開催される「ぶるー・すかいへぶん」に参加するとそれだけで2000マイル、3200㎞分の走行距離が加算されるんです!これまで14年間皆勤してれば、富士スピードウェイまでの距離を考えると、すでに走りの殿堂になってるはずですよ。」

「え?みんな実走で16万㎞走ってるんじゃないの?」

「そんな人はほとんどいませんって!へっちまんさんの住んでるようなロクに信号もないような、牛のウンコ臭いド田舎ならともかく、渋滞しかない都市部でそんな距離稼げるわけないでしょ!!」

「馬鹿にすんなよ!信号くらいあるわ!・・ということは、ギルドのイベントに出まくれば、あっという間にマイルがたまるってこと?」

「そうですよ!3年くらいで殿堂に到達する猛者もいるんですよぉ!(胸を張る)」

「それ、お前がドヤることでもないよね・・でも、別に実走でもいいんでしょ?」

「まぁ、そうですけどぉ・・、それじゃ年会費捨ててるようなもんじゃないですかぁ。会員なのに会員のメリットないし、H.O.Gへの貢献度もゼロですよ。」

「でも、あんなマウント社交場に行ったら、人のかっちょいいハーレー散々見せられて、買い換えたくなっちゃうじゃん。」

「いや、それが狙いでしょ!・・社交イベントなんて半分はそれが目的なんですから!ハーレーも売上げ上げるためには、へっちまんさんみたいな堅物にも買い換えてもらわなきゃいけないわけですしぃ(流し目)・・。10年もずっと車検と整備だけなんて、こっちは上がったりなんですよぉ」

「それは申し訳なく・・・」


「だいたいですねぇ、初期装備で殿堂入りなんて、革のよろい着たっきりで、デスピサロ倒すみたいなもんじゃないですかぁ。ギルドにもっと金を落として下さいよ。変なところに金使いすぎなんですって。ダイナのカラーだって元は黒だったのに、今は呪いのアイテムみたいな色になってるし・・」

IMG_4891+2
(確かに言われてみれば呪いのアイテム的な感じもしますねぇ。)

「・・いやこれ、君がこの店に入る前に、ここの店長に依頼して塗装してもらったんだけど・・店長の推しカラーなんですけど・・」

「まぁ~♡なんてステキな色なんでしょう♡美しすぎて・・目が~、目がぁぁあああ・・!!」

そもそも、イベントでマイル稼いだら、走りの殿堂じゃなくって、イベントの殿堂になっちゃうじゃん?俺別にバッチが欲しいんじゃないから。ダイナと10万マイル走るっていう目標と、達成感が欲しいのよ。」

「脳みそが石でできてんですか?石仮面ですか?考えが固すぎでしょ?そんなの、とりあえず走りの殿堂もらってから、自分で勝手に16万㎞目指せばいいだけじゃないですか。あれはハーレーが提供してるイベントのクリア報酬みたいなもんなんですよ。16万㎞走ったから殿堂なのではなくて、ハーレーギルドへの貢献度が評価されて「アナタはエライっ♡」って認定されるのが殿堂なんです。別に役に立つ特典もないんだから、苦労しない方がいいでしょ?遊びですよ。ア・ソ・ビ。今時、そんなストイックな考えは流行りませんからぁ・・。まぁ個人のポリシーですから、好きにすればいいんですけどぉ・・(あきれ顔)」



思いっきり脚色してはありますが、まぁ内容はこんな感じ。

私はハーレーに乗り始めて、かれこれ14年。ダイナ・ローライダーひと筋で生きてきた超粘着性ライダーなんですが、振り返ると14年間で10万㎞しか走れてないんですねぇ・・(まぁそのうちの4年間くらいは、仕事の都合で年間1000㎞くらいしか乗れない時期もあったんですけど・・)。コロナ以降は暇もできて、距離乗れてると思うんで、あと8年くらいあれば、殿堂に到達できるような気がするんです。

私の中でダイナとは「まだ6万㎞くらいは走れる」っていう確信めいたものがあるんですね。確かにハーレーは長くつきあっていける世界観を持ってるバイクなんですけど、それだけでは16万㎞は乗り越えられない。そこには何らかの秘策が必要なんです。

だって、私は天性の浮気性だから。

これまでは10万㎞どころか1万㎞も走らず手放したバイクも数多い。その私がこれまでダイナに乗り続けてこれたのは、「ジョースター卿の教え」のおかげなんです。

ジョースター卿は、漫画の中で、こう言っておられたんですよ。

ジョースター卿の教え2
(2週連続のジョジョネタ。この「ジョースター卿の教え」は頑なな倫理感や常識を崩壊させるのに非常に都合が良いので、「悪魔の教え」とも言われています。)

そう、クソ真面目に1台と添い遂げようとするから窒息するんです。「浮気しちゃダメだ!!」と考えるから、浮気をしないために大枚はたいて「最高の1台」を求めようとしたりする。でもね。もしも、この世で最高の1台に出会ったとしても、それで浮気性が治ると思ったら大きな間違いですよ。

山登りを趣味にする人が、マッターホルンに登ったからっていって、満足して山登りをやめるわけがないし、そこにだけ挑み続けるようなこともない。人は常に新しい刺激を求めてるんですよ。しかも、現代のバイクって、こちらの心を見透かしたように、いろんなキャラを用意して熱烈に誘惑してくる。

そんな状況で、1台と添い遂げるには、ひたすら欲望を我慢する必要がありますが、そんなことできるわけない。ストレス抜くためにバイク乗ってんのに、そこでストレス溜めてたら本末転倒。だから、ここはジョースター卿のように逆に考えるべきなんです。

そう

「浮気しちゃってもいいさ♡」

と。


・・・・その結果どうなったか・・皆さんわかりますね。

倫理が崩壊し、多重婚ライダーになっちまったんじゃあああああ!!

恐ろしいことに、一度浮気を許容すると、タガが外れてバイクがどんどん増えていく。そりゃそうです。行動原理が「浮気しちゃってもいいさ♡」なんだから、金の続く限り浮気するわけですよ。実際、ジョースター卿の教えは、

「自分を甘やかすときの言い訳づくりに最適」

なんです。本来この教えは「執着の断捨離」みたいなことを言ってるんですけど、それを執着や欲望の肯定に使ってる時点で経典の解釈がおかしくなってる。でもそんなの関係ねぇ。とにかく、



全てジョースター卿が悪い




バイクって、ずっと乗ろうとすれば、いつまででも乗れる。しかし、その最大の障害は「乗り手の浮気性」という病気です。でも、その解決方法って、「我慢」「ハーレム」かのどちらかしかない気がするんですよ。

「1台のバイクに長く乗る」

それは遙か昔からずっと抱いている私の夢であり、私はその夢に向かって、浮気しまくるという斜め上の道を選んだのです。

そんな私にとって「走りの殿堂」は一つの区切り。ダイナを所有し続けるための言い訳です。ダイナとだけは、「ここまで一緒に行こう」っていう目標がある。だから浮気しても、常に「ダイナには乗っとかなきゃなぁ・・」って心の中では思ってるんですね。

余談ですが、実際に目標にしてみると、「走りの殿堂の10万マイルって実に臭い距離だなぁ」って思うんですよ。だって、実走だと、毎年1万㎞乗ったって16年。5000㎞なら32年。晩年にハーレーにたどり着いた人にとっては、その後のバイク人生のほとんどを縛る距離なんです。ここらへん、ハーレーはとても商売が上手いんですよね。

浮気性の私は、オドメーターが15万㎞とかになってるワンオーナーのバイクを見ると、それだけで、その乗り手に憧れたものです。しかし、憧れを抱きつつも、自分では走行距離を目標として設定したことはなかったんです。

ハーレーの走りの殿堂はそこを上手く突いているんですよ。ハーレーの戦略と私の願いが一致したのが「走りの殿堂」であるとも言える。目標って漠然としたものではなく、具体的に可視化するのが凄く大事なんだなぁって改めて思う。可視化して思いははじめて夢として形になるんですね。

私にとって過去どんなバイクとも到達したことのない実走10万マイル、それをダイナと共に走破する。それが浮気性の私の中の唯一の一途さであり、ささやかな野望であり、夢なのであります。

恥ずかしい2
(ヤンキー娘はド直球に弱く、イジり耐性が低い方が可愛く見える。この真理を中高生の教科書に載せていきたい。)