先日、ひょんな偶然から、私のブログにコメントして頂いているCBX後藤氏とホンダの皆様、県外のブロガーの方々で、奥能登をツーリングすることとなりました。このブログ始まって7年目にして、初めてのボッチじゃないツーリングのご報告です。

え?どうして?なんでそんなことになってんの??

と多くの人が思うでしょう。私に会いに来た?んなわけない。そう、ホンダの方々は、ゴールデンウィークにM6.5の地震があった奥能登地方の応援にわざわざバイクできてくれたんです。義援金まで持参してくれたようなんですよ。

熊本地震の時に石川の人達から義援金をもらったそのお礼として、直接奥能登を訪問し、「能登の地域経済に少しでも貢献できれば」ということだったわけです。ありがたや~。この情報を私がどこから仕入れたかというと、CBX後藤氏がフォローしておられる、HAWK11所有のある方のブログで、「石川県にツーリングに行く計画がある」との情報が書き込まれていたんです。

これは一大事なのではないか?

CBX後藤氏こと死神博士は、世界的な組織、ホンダの社員の多くから、「厳しい人」「妥協のない人」と恐れられた人物のようなんですよ。そしてウチの*のじゃ子の「戸籍上の父」にあたる方です。それが奥能登にやってくるという・・。

ロケットカウル戦闘団HAWK11部隊員としては、大隊指揮官が石川を視察に来ると聞いて、途端に落ち着きをなくしてしまったわけです。石川を威力制圧目的地とするHAWK11部隊員として、制圧拠点である奥能登の原風景を知ってもらう必要がある。

石川県というのは本州を宇宙戦艦ヤマトに例えると第三艦橋のような立ち位置です。アニメをリアルタイムで見ていた人は知ってると思うんですが、ヤマトの第三艦橋は、デスラー艦隊の攻撃が激しくなると必ず破壊されるのがお約束でありながら、なぜか翌週にはプラナリアのように再生していることから、

「謎の第三艦橋」

「不死身の第三艦橋」

「実はデコイ」

など、いろいろとヒドイ言われ方をしているんです。能登半島は宇宙戦艦ヤマトと同様、北朝鮮の黒電話がご乱心の時は間違いなく攻撃を受けるだろうと想像される位置にある。しかも、16年前の能登半島沖地震を境に、次々と群発地震が続き、今回もゴールデンウィークに大規模な奥能登地震(石川県がつけた名称です)が発生。地球にまで攻撃されている状態なんですよ。過疎化が進んで、人手が足りない地域にはものっ凄い大打撃。もう完全に日本の第三艦橋のような過酷さの中にあるといっていいでしょう。

その一方で、能登の里山里海は世界農業遺産認定されるほどで、日本の豊かな原風景が広がる地域です。やっぱりバイクで来て頂くからには、一番良いところを見ていって欲しいし、ワインディングも楽しんで欲しいわけじゃないですか。

そこで、「石川に来るならご案内させて下さい」とブログに書き込んだのが発端。

なんかその時の盛り上がりが、「いよっしゃー!!得物がエサに食いついたー!」みたいな雰囲気だったのは、きっと私の気のせいでしょう。その後、話がトントン拍子に進み、ツーリングが7月15日、16日の両日に決定し、夜の宴会までが設定され、企画書なるものまで送られてきて、もの凄いスピードで全てがゴリゴリと進んでいったんですよ。

「これが製品企画と納期を司るホンダのLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)の能力なのか?ヤバイ。」どう考えても企画立案が3倍のスピード、3倍のクォリティ。私がこれまでやってきたメールで集合場所だけ送られてくる雑なツーリングとは、まったく仕込みが違うんですよ。あまりにも丁寧で、段取りがいい。スゴイ。この死神博士、シン・仮面ライダーの緑川ルリ子並に用意周到すぎるのでは・・。

そして、ついにその日がやってきました。参加は私を含め総勢7台。当日まで名前は伏せられておりましたが、ホンダの猛者の方々と、HAWK11繋がりのブロガーの方々を私が先導するという・・。私の背中を見てこの7名が走るということを考えただけで、老人用オムツを装着したくなる。

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(当日参加の7台です。)

当日の愛機は、ミッションコンプリートを優先し、後方視界がバカみたいに広く、巨体が目立つ、きんつば嬢を選択。できればHAWK11で行きたかったんですけど、ツーリングの先導役としては結果的にこの選択で良かったかなと思ってます。

で、現場に行って、参加者と初めてご対面。な、なんと、HAWK11のグラファイトブラックを購入された発案者の内田弘幸さんも参加されてたんですよ!!直前のスペシャルサイトの記事で購入されたのは知ってましたが、まさか、この奥能登ツーリングに参加とは!

「*のじゃ子の戸籍上の母キターッ!!(白目)

「ヤバイ。これはヤバイぞぉおおお!!」


皆様お分かりだと思いますが、

CBX後藤氏と言えば、開発発表の時に勇退していてその場に存在しなかった、謎のLPLです。残された人間の証言を総合すると、ショッカー首領級の存在と想像致しますが、噂はあれども姿はみえず。「CBX後藤」のハンドルネームでこのブログにコメされてるんですけれど、誰も見たことがないわけですよ。このため一部のHAWK11部隊員の間では、「蓋を開けたら実はAIだったというオチなのでは?」「キズナアイと同類ではないのか?」と実在を疑う声すら出ていました。実在してたら実在してたで、このブログで「死神博士」呼ばわりし、散々イジり倒してしまっているので、こんな失礼なことはない。

内田弘幸さんといえば、HAWK11の発案者という最大の功労者でありながら、このブログでは容赦なく、「耳変態」呼ばわりしてしてしまっています。これまた失礼極まるニックネーム。

失礼が限界突破してるにもかかわらず、すでにご両名がブログに「死神博士」「耳変態」でコメントしてしまい、その呼称が徐々にリアルワールドで浸透していきつつあることに、底知れぬ恐怖を感じ、老人用オムツの装着頻度も高まる今日この頃です。

そもそもですね。ブロガーがなんでこんな好き放題書けているかというと、

「天地が逆さになっても、本人に会うことはなんて絶対にないんだから、いっとけいっとけ!」

という安全圏から石を投げるような卑劣な精神があるからなんですよ。阪神タイガースの試合でワンカップ飲んで下品なヤジを飛ばすオヤジと同じ気持ち。窮地に陥ることなんて絶対にないと思ってるからこそ、ネタにしまくっているわけなんです。いざとなったらブログ閉鎖して、北北西に逃げ去ればいいじゃないかと。にもかかわらず、私は今、そのご両名の目の前に新兵のように立っている。

皆さん、まず報告しておきます。

「後藤氏はAIではありませんでした。」(当たりまえだろ!!)


つーか、スラッと背が高く、死神博士の英国風スタイルそのままなんですが・・。そして内田氏は、スペシャルサイトの写真のとおり、とても穏やかな人でした。ただ、「聴力が一般人より絶対高いな!」って感じの綺麗な形の耳をお持ちです。やはり耳が発達していないと「音にこだわる耳変態にはなれないのだな・・」って、あらためて実感した次第。

なお、その二人に私は吊し上げられることもなく、泡にされることもなく、はたまた脳改造手術を施されるわけでもなく、この2日間、実に優しい世界が展開されたんですよ。で、夜の宴会は大盛り上がり。

ということで、今回はHAWK11部隊員として、謎のヴェールに包まれた「HAWK11の父」、後藤元LPLについて、2日間の交流を通じて感じた私の印象を、そのまま報告させていただきます。

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(このメンバーでの先頭走行は、きんつば嬢にとってはかなりのプレッシャー。事実上の素行調査に感じたことでしょう。両日の優等生ぶりは、新入社員の面接試験のようでした。)


私が感じた後藤元LPLの人となりを一言で表現すると、

「今時、実に珍しい責任者らしい責任者」

ってことになります。私が見る限り、この世の企業内責任者ってだいたい2つに分かれるんです。

「責任とは何か?ということを理解している生粋の責任者」

「責任者の地位にはいるけど、それをイマイチ理解してない人」です。

そして、現実には後者の方がもの凄く多いっていうのが、私の実感です。責任者の育成って、どの会社も社内でやってると思うんですけど、私はデカい組織の内情ってまったくわかりませんし、内部的な責任者の役割って企業ごとに様々で、そこをコメントできる立場にありません。しかし、外部の人間から見た場合、巨大な組織の責任者って企業をはかる上での、大事なモノサシでもある。

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(ミリオタのバイブル。黒騎士物語。軍の規律に属しながら、祖国の勝利と「同胞を無駄死にさせない」という鉄の信念に全てを捧げる男、黒騎士中隊戦闘指揮官、エルンスト・フォン・バウアーの戦記。的確な状況判断、突出した指揮能力もさることながら、筋の通らない指令には「バカモン!俺のケツをなめろ!」という、ミリオタを狂喜させる伝説の名セリフが炸裂する。「さぁ諸君!責任というものを教育してやろう!」

たまに企業で社会的な不祥事が起きると、「それに会社の上層部が関与していたのか、していなかったのか」ってのが、やたら問題になるじゃないですか。それは、責任を取るポジションにいる人が起こした不祥事と、それ以外が起こした不祥事では、質がまったく異なるからなんです。

組織内のトラブルっていうのは、どんな優秀な組織でもゼロにはならない。何千人も雇用してれば、その中には不正なことやっちゃう人だっているわけです。大集団になればなるほど、全てを統率することは難しく、多少のイレギュラーが出ちゃうのはしょうがないこと。一部の不道徳な社員や、血気盛んな若手社員がやらかしたとしても、「大組織になれば、そういうこともありますよね。今後はしっかりやって下さいね。」っていうのが、常識的な外部の捉え方です。

しかし、役員などの上層部や、特定部署で権限を有する責任者が不正をしてしまうと話は違ってくる。だって、その人達は「社員を教育し、指導・監督する立場にある人達」だからです。

一般的に、指導・監督する立場の人が不祥事を起こすと、その支配下にあり、影響を受けていた部下も信用されなくなり、組織全体に不祥事を起こすモラル的な素地がある、と思われちゃうんです。結果、企業内でかなり大きな改革と、対外的なみそぎをしないと、次の一手がまったく打てなくなる。責任者とはそういう重要なポジションなんですね。

最近、中古車販売業の某大手中古業者が、「事故で預かった車を自社工場でわざと傷つけ、保険金請求額を水増ししていた」という事件が話題になっています。細かな内容は報道を見て頂くとして、致命的なのは第三者委員会が、「経営陣が内部告発をもみ消した」と認定したこと。内部告発制度は経営陣がクリーンであるということを前提に機能するものですから、これは「この企業は真っ黒です。経営陣のモラルは終わってます。」って第三者委員会から言われたようなもんなんです。これを受け、社長が給与を返上するようですけど、それで会社の信用が戻るわけがない。黒と認定された経営陣が刷新されない限り、今後こういうことが二度と起きないという保証がまったくないわけですから、この対応は何らみそぎになってないんですよ。

国土交通大臣が閣議後の会見で、「もしそういうことがあったとしたら、言語道断な話」と強く非難していたみたいですが、車検の指定工場を監督する国交省側からすれば、今後のモラル向上が、今の体制のまま可能であるとは毛ほども考えていないはずです。

ちなみに問題となっている中古業者の企業理念は以下のようになっています。

1.常にお客様のニーズにあったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供する
2.目標利益を確保して会社を存続発展させる
3.社員の生活安定向上を図る

一番最初に掲げたお客様のニーズと、クォリティの高いサービスの提供という企業理念から、どうやったら「保険修理費の水増し請求」という不正が生まれるのか、まったくもって理解不能。しかも、この企業理念を作った経営陣が、不正請求を誘導、黙認し、告発をもみ消していたということになると、この会社の企業理念は「社会を欺く嘘ですね!」ってことになってしまうわけですよ。企業理念が揺らぐということは、その企業の根幹が崩壊するということなんです。

理念や社是っていうのは、会社が従業員に示した会社の在り方であり、会社が顧客や社会に対して約束したものです。それを実行し、体現するのが責任者の役割なんですから、外部から見た責任者っていうのは「基本理念や社是の番人」でなければならない。

私が信用する企業の責任者像ってのは、頭でああだこうだと考えるのではなく、体が自然に企業理念どおりに動くよう訓練された「鍛えぬかれた戦闘指揮官」なんです。で、そのためには、軍隊と同じく、体に直に企業理念とモラルを叩き込んでいく必要がある。頭で考えてるから、巧妙な舌先三寸に丸め込まれてしまうんです。

「真に大事なものは、頭で考えるのではなく、肌感覚にしないとダメだ」と理解していたのが創業者、本田宗一郎という人物だったんじゃないかと思うんです。ホンダの創業者は倫理が、どういうものなのかということを本能的にわかっていた。だからこそ、現場を通じて技術者を徹底して厳しく鍛えたのではないでしょうか。

参考までにホンダの基本理念と社是はこちらです。

基 本 理 念22(これは創業者、本田宗一郎と藤澤武夫が遺したホンダの企業哲学。「全力を尽くす」という姿勢が、そのまま社是となっているのが極めて特徴的。)

今回勇退された後藤氏と、一緒に能登を回ってくれた渡部篤郎似の秋枝政男氏は、本田宗一郎を直接上司として体感した最後の世代なのだそうです。我々との話の途中で「本田宗一郎ならこうするよね?こんなことしないよね?」って二人で話しておられましたが、そこには「理念と社是の番人」としての姿が確かにありました。

企業のモラルというのは、最終的には人が守るものですから、企業理念を遂行する内部の意志の強さが全て。商売なんてのは、企業であれ、私のような個人自営であれ、「あなたの仕事はこの程度のレベルなの?」って言われないための、プライドとメンツをかけたガチの戦いなんです。

いつの時代になっても、企業の社会に対する責任というのは変わんないし、企業理念の実現のために社是に従い、企業は前進し続けなければならない。それを合議でやろうが、個人の才覚でやろうが、外部の人間は企業という一括りでしかものを見ないし、企業が社会に送り出すものだけが、その回答になっていくという事実も未来永劫変わらない。

なお、後藤氏は社内で「妥協のない人」と言われているようですが、私からするとホンダが「全力を尽くす」という特殊な社是を掲げて、それを社会や株主に約束した以上、製品作りにおける社是の代行者たるLPLに妥協がないのは当たり前だと思うんですよ。私的には「全力を尽くす」ってのは、かなり強烈な指針だと思うんですけど、それがきっと、ホンダのもの作りの姿勢の根幹でありプライドなんですね。

つまり、「厳しい」、「妥協がない」って文句は、LPLじゃなくって、社是を作った本田宗一郎と藤澤武夫に言うべきなんですよ(笑)

内部的に恐れられてるってことは、後藤元LPLが「社是の執行者として、正しく仕事してる」ってことです。厳しいのは、ホンダイズムを貫徹する、真の仕事人だから。

そういう厳格な指揮官オーラが上がってる人って、今どき、なかなかいないんですよ。組織が戦うために規律は絶対に必要で、その番人は通常、揺らぐことのない厳格さを備えなくてはならない。しかし、今はそういう番人タイプは、とても少なくなっている。

なお、こういう人は、役割を離れれば企業愛がとてつもなく深い方が多いんです。後藤氏も奥能登ツー参加者に対して、とても細やかな気遣いをしてくれたし、バイク業界全体とバイク乗りを愛する姿勢が滲み出まくってましたからね。


最後に、ロケットカウル戦闘団HAWK11部隊員の皆様へご報告。

私が見る限り、後藤LPLは「企業理念と社是の執行者であり、ホンダの番人」です。その番人が勇退にあたって、自ら指揮を執った最後の作品がHAWK11なんですよ。後藤氏は、ほぼ全てのホンダの大型バイクのプロジェクトに関与してこられた方ですが、HAWK11については、サイドカウルのHAWK11のステッカーの大きさ以外は、全て満足だそうです。

このバイクはスポーツバイクとしての過激さは他のリッタースポーツには及びません。しかし、ホンダの企業理念と社是が妥協なく注入されているという意味では、どのホンダのスポーツバイクより濃い存在かもしれない。バイクに何を求めるかは人それぞれだと思いますが、このバイクは裏ホンダでありながら、真正の「ザ・ホンダ」なんです。

ということで、今回の奥能登ツーリングに参加者したHAWK11部隊員から見た、HAWK11の父、後藤悌四郎氏の印象をお送り致しました。なお、奥能登ツーリングは走ってる時も楽しかったんですが、終わった後の余韻が凄くって、なかなか日常に復帰できておりません。

バイク乗りとしての夢のワンダーランドがそこに確かにありました。そういう機会と出会いを与えてくれたHAWK11に感謝ですね。


P.S. 本日、スペシャルサイトに開発者インタビューの大トリとして、後藤元LPLの回が上がってました。ツーリングの時に、開発者インタビューの最後を飾るのは後藤さんで、それが今週金曜日じゃないか?って聞いてたので、このブログを朝一番で上げて、スペシャルサイトの記事とぶち当てて「ライターの北岡さんと真っ向勝負じゃぁあああああ!」って、テキストをこの一週間狂ったように叩いたんです。

で、蓋開けてみたら、なんか、メチャ内容がカブってる(笑)つーか、ほぼ同じこと書いてるんじゃないか?(スペシャルサイトの方が圧倒的に品があるけど・・)でも、これは全くの偶然ですね。どっちが先になっても、内容パクったって言われそうなんで、「同じ日に上げられて良かったな~」ってシミジミ思ってます(笑)

後藤元LPLの印象は右から見ても、左から見ても、ライターの北岡さんが見ても、私が見ても、ほぼ同じってことですよね(笑)まぁ頑張りすぎて今日は死んでますけど・・。