全国のロケットカウル戦闘団、HAWK11部隊員の皆様こんにちは。へっちまんです。HAWK11のインプレ。今回は車体編です。

私がこのバイクで一番感心しているのはシャーシかもしんない。確かにエンジンも素晴らしいんですが、アフリカツインのエンジンがイイって言うのは、最初からわかっていたことでした。

同型のエンジンを搭載したアフリカツインもレブル1100もしっかり売れてるし、ヨーロッパの主力であるNT1100にもこのエンジンは積まれてる。なによりホンダの中の人がこのエンジンに惚れ込んで、「アフリカツインのエンジンで作ってくださいね♡」って注文つけてるんだから、悪いわけがありません。

エンジンは商品力の核でもあるから、設計にも力が入ってるし、リッタークラスともなれば必要なところにコストをしっかりかけている。だから好みはあったとしても、悪いエンジンにお目にかかることって、まずないわけですよ。

その一方、アフリカツインのシャーシがスポーツシャーシとしていいかどうかは全くの未知数でした。

スポーツバイクのシャーシってのはいろいろと悩ましいと思うんです。エンジン以上に作り手の考え方が出るし、乗る側の好き嫌いも明確に出る。速さに取り憑かれてるときは、「ヨレるフレームなんて絶対イヤ!」って思ってるんだけど、どこかで肩の荷を降ろし、気楽に生きていこうとすると、「多少ヨレた方が面白いじゃん・・」って宗旨替えがおきたりする。

私はバイク人生のほとんどを公道という荒地で単独戦闘を続けてきた「ベトコンゲリラみたいなバイク乗り」なんで、サーキットのような美しく整備された路面など、もう何十年も走ったことがないわけですよ。そんな環境にいる乗り手に、「こちら最速ですからどうぞ♡」ってクッソ硬いシャーシを渡されても困っちゃう。

バイク漫画の主人公ならバンプで跳ねたリアをグキュッ!っと接地させつつ、路面からの入力で暴れるシャーシをニーグリップで押さえつけ、コーナー立ち上がりでアクセル全開!!なんていう格好いいシュチュエーションになるんでしょうけど、私はそんな絵ヅラになる前に、路面の突き上げで腰が崩壊し断末魔の叫びを上げて、マリオのように崖下に消える。

DSC_2761(*のじゃ子で、なぎさドライブウェイ。うーん。このパノラマ感。)

仕事で無理してガタガタになってるベテラン勢って結構いると思うんですよ。バイクは高性能な最新型でも人間は過走行のド中古。いろんなところがヤレてきて、ハードな入力には体が悲鳴を上げる。そんなときに「ベテラン向けのスポーツバイク」としてHAWK11が登場した。エンジンはある程度予測ができただけに、購入者の興味は「コイツはどんな乗り味なのか?中古のオジサンに優しいのかな?」ってところに集中したと思うんです。ちなみに現時点で、私自身がこのバイクのシャーシに抱いているイメージはズバリ

絶妙すぎる硬さ。

スポーツバイクとしては硬い方が良いけど、これ以上硬いと公道では楽しめなくなる。そんなキワキワのところでシャーシが作り込まれているんです。

ポジションだってミラーだってそれは同じ。とにかくキワキワまで追い込んでスポーツ走行と公道使用の狭間にあるエルドラド(黄金郷)を見つけていこうっていう強い意志を感じるんです。

それは見果てぬ約束の地であり、永遠の謎かけ、幻みたいなもの。乗り手自身も、そのギリギリの落とし所をバイクと一緒に見つけ出そうという渇望が必要になる。そこをしっかりやろうとしないとミラーもよく見えないし、ポジションが落ち着くところもわからない。でも、そのポイントを見つけ、バイクが求めるとおり正しく乗れば、すべてがパチッとハマるようになっている。

でも、そこでふと思う。なぜ、こんなキワキワの黄金郷を求める旅になったのか?と・・多分、怖い人の目が光っていたんでしょうね・・。

「それではインプレにあたりまして、過酷な開発現場で散っていった開発陣の皆様に哀悼を込め、HAWK11部隊員全員で黙祷を捧げたいと思います。」

「黙祷。」

(部隊員全員で黙祷10秒)

「お直り下さい。」


「いや・・開発者の人達・・まだ死んでおらんぞ・・」

(*のじゃ子、小声でツッコむ)

とりあえず小芝居でセコく字数を稼いでみましたが、その点をシミジミ実感したのはリアサスのプリロードを調整してた時ですね。うちの*のじゃ子は納車時、サスの動きが渋かったので、プリロードを少々抜いてあったんです。どうせ慣らしなんで飛ばさないですしね。で、3000㎞くらい走った頃に、「サスの渋さもとれてきたし、少しずつ締めていくかな・・」って思って、リアのプリロードを様子見しながら、1段ずつ締めていったんですね。

そしたらある程度締めたところで、ピタリと全てのピースがハマったんです。

フロントサスとリアサスの動きがしっかりリンクし

乗り味もキュッと締まり

それまで感じていた腰のキツさもスッと消え失せて・・・

リアのプリロードを1クリックしただけなのに、まるで台風の目に入ったみたいに、小さなモヤモヤ感がサッとなくなり、おおおおお!!ってなったんですよ。それがまた、ほぼ純正指定位置っつーのが・・(笑)

世界よ・・これがホンダだ・・

相も変わらず「お釈迦様の手のひら感」が凄いんですけど、手のひらの上の居心地が良ければ、釈迦の手だろうがゴジラの手だろうが、私には何の関係もない。

HAWK11は、新開発で華々しく作られたスポーツバイクではないですけど、実績のあるエンジン、フレームを使って、公道環境を走るスポーツバイクのジレンマをキワキワまで追い込んで成立させた「鬼調整のスポーツモデル」って感じがするんですよ。いやぁ、実にマニアック。懐の広い市販モデルっていうより、落とし所のスイートスポットをキッチリ見極めた、プライベーターが作ったバイクみたい。なんか、こういう追い込みのセンスが光るバイクに乗るのって、えらく久しぶりな気がするんです。

スペックモンスターなバイクは、この世に一杯あるわけですけど、高性能に振りすぎて実際の乗り味もモンスター化し、公道領域でいろいろと破綻してると感じるものはかなりあります。とにかく刺激的なパワーと硬いシャーシでゴリゴリ押してくる。若い頃はこっちの体も強靱で、気持ちもバイクに負けてないから、そのモンスター感に酔いしれることができるし、第三京浜に週通いだった頃は、そのシャーシから得られる恩恵が何より大事な価値だったりしたわけです。

でもやがて人は行きすぎた夢を追わなくなり、馬鹿げた走りもしなくなる。夢を見なくなったオッサンは、どんどん現実主義者になっていくんですよ。そこもってきて、歳食うと面の皮が足の裏の皮より厚くなってくるから、ブツクサお小言も垂れ流しはじめるわけです。

「公道バイクとして売ってるのに公道で乗りにくいっておかしくない?」

「何で俺がバイクにあわせて我慢しなきゃならないの?」

「ギャアアアアアアア!!」(←バイクに突き上げられて腰に電撃が走った時の悲鳴)

でも、そんなヘタレマンもスポーツを諦めてるわけじゃないんですよね。「中二病だって恋がしたい」ように、「ヘタレだってスポーツバイクに乗りたい」わけなんですよ。でも、この世のセパハンリッタースポーツって「エグすぎるわっ!?」って叫びたくなるようなトンデモ馬力ばかりじゃないですか。エンジンがエグければ、足回りやシャーシもセットでエグいってのはお約束。エンジンの馬力見るだけでどんな仕立てになってるのか容易に想像ができちゃうわけですよ。

その矛盾の辻褄をあわせるために電子制御サスが登場。ダンピングを可変させたり、スカイフック理論というバカにはワカラナイ難しい理屈を立てた複雑機能をサスに詰め込み、金の力でツジツマを合わせてるってのが今の最新鋭リッタースポーツというわけです。

でも、それって、私から言わせれば、非現実的な馬力に対する対症療法を積み上げ続けて、やたら複雑になってるだけなんです。スポーツの楽しさってもっともっとシンプルでわかりやすいものじゃないか?って思う。日本ではアウトバーンのような超高速走行はありえないんだから、馬力落とせば良いだけですよ。

欧州でのスポーツバイクの価値は「速度無制限のアウトバーンでどんだけ強いの?」ってことだから、超高速域まで一気に車体を押し上げるための馬力とその速度域でヨレないフレーム、足回りが必要不可欠なんですけど、国土のほとんどが狭いワインディングの島国では、そんな環境は存在しない。結局、この日本でリッターバイクの大馬力を楽しもうとすると、第三京浜や湾岸エリアでイケない行為に耽らなくてはならなくなるんです。

その点HAWK11の考え方はとてもシンプル。102馬力のトルク型。公道レベルで使える馬力上限は80馬力あたりと考えてる私にとって、まだ20馬力もパワーが余る。シャーシもリッターアドベンチャーをベースに軽量化してあるから、余裕があって柔軟性が高い。HAWK11はリッタースポーツを公道で扱う上でネガになっていた「馬力ありすぎてパワーバンドに入らない」「路面の凹凸によるハードな突き上げで腰が死ぬ」という2つの問題点を潰してるんですね。

HAWK11って、フレームも、サスペンションも、ブレーキも、はたまたシートまで、全部が全部、硬いんだけど硬すぎないんです。シャーシも当然ガチガチじゃない。かといってヨレるわけでもなく、いなすわけでもなく、フレームと足回りの分厚さで、「路面の外乱を正面から受け止めきる」っていう横綱相撲。これはアフリカツインのシャーシの衝撃吸収能力にものっ凄く余裕があるからこそ生まれる独特の「受けの世界」だと思う。この「硬いけど、乗り手の腰に悲鳴を上げさせない」っていう調整の落とし所が、オジサンには泣きたくなるほどありがたい。フロントブレーキも節度があってカチッと効くし、シートだって硬めでリアのトラクションを感じやすい設定でありながらも、尻がまったく痛くならない。

筋肉ペン入れ・3
(運動性能特化型のSSの筋肉はスポーツ理論に基づいた競技向きで、遊び向きではありません。でも万能型アドベンチャーをベースにしたHAWK11は、旅という過酷な労働環境で鍛えたナチュラルマッスルで構成されてる。出力は控えめながらタフで柔軟なんですね。その特性がイレギュラーな公道で走りの余裕を与えてくれる。)

HAWK11は、スポーツバイクらしく乗るとちゃんと疲れるんだけど、その疲れが抜けるとまたすぐ乗りたくなる。エンジンも美味しいところをたっぷり使えるし、不意のイレギュラーに遭遇しても「シャーシが全てを受け止めてくれる」という安心感があるから、乗るのに気合いや覚悟がいらない。気負いやプレッシャーがないから楽しいんです。その結果、リッタースポーツにもかかわらず、日常感というか、寄り添い感というか、愛犬感というか、メチャ常習性があるバイクになってるんです。

HAWK11に跨がると「なにやら新しいモノに乗ってる感じ」がビンビンするんですよ。これまで乗ったことのない感触があって、すごく新鮮。それは、私がベースとなる「アドベンチャーバイクを所有したことがない」から、フレームやエンジンを新鮮に感じるところも多分にあるでしょうけど、HAWK11が提案してるリッタースポーツの概念自体が新しいからってのもあると思う。

パワーウォーズに明け暮れるリッターバイクを横目で見ながら我が道を行く。日本専用と銘打ち、リッタースポーツの真骨頂である超高速域を切り捨てて、公道の有効速度域に特化した線引きの素晴らしさと、その調整にかけた手間暇と、そこから生まれた乗り味こそがHAWK11の価値だと思う。HAWK11の登場によって、日本の道によく馴染むリッタースポーツという選択肢が一つできたわけですね。

 結局のところ、HAWK11っていうのは、技術的にも価格的にも性能的にも、突き抜けすぎてしまった現代のリッタースポーツに対するアンチテーゼなんですよ。空力のためにデザインはこうでなくてはならない。エンジンもシャーシも尖らせなきゃいけない。他社を凌ぐ最強の性能でなくてはならない。そんな足枷を全部放り投げて、日本の道路環境にマッチしたスポーツバイクとしてホンダが最適調整した結果こうなってる。だからこのバイクは、決してリッタースポーツの本流にはなれないし、メーカーにとってアングラな存在でなくてはならないんです。

忍びの女って、ヒーロー達が大活躍する裏で、目立たずにひっそりと影の世界に生きてますけど、それ故、入浴シーンと働きの質だけが存在価値のクッソ使えるキャラなんですよね。そのキャラは道の駅の端っこで静かに生息しているボッチのエロ殿様ととても相性が良いわけですよ。私的には、

「走り屋が夢を捨てた先には何がある?」

「HAWK11があるじゃない!!」

って感じですかね。ツッコミどころとしては「夢を捨てた後って、別のカテゴリーへ行くんじゃないの?」ってことなんですけど、昔のレプリカ乗りは、枯れた枯れたと言いながら、走りの世界に未練タラタラ。それがその世代の業というものなんです(笑)



今回は総論的になりましたが、次回は各論。運動性について語ってみたいと思ってます。いつになるか不定期ですが、アテにせずお待ち下さい。