今回は事故にちなんで、バイクにおける任意保険について私が考えてることをアレコレ書いてみたいと思います。

誤解しないで頂きたいのはこのブログは「任意保険に入れ!!」とかいう教条的なものじゃありません。私は現実を淡々と分析していくノンポリブロガーで、思想的な背景は非常に希薄な透明人間。良識のスポークで人の喉笛を後ろから突くブラックエンジェルズではありませんから、そこは誤解のないようお願いします(笑)

ブラックエンジェルズ
(懐かしのブラック・エンジェルズ。小学生の頃、主人公の雪籐洋二に憧れて、なんとか自転車のスポークをはずそうとしてたんですけど、今の私はどう考えても喉笛を突かれるクソオヤジ側です。)

かなり前に半ヘルの記事でも書きましたけど、私は人に「ああしろ、こうしろ」って言いたくないんですよね。特定の人から見れば非合理で許せないような選択でも、各々のバイク乗りが、様々な事情の下で導き出した結論は尊重すべきだというのが私の考えです。

ネットでいろんな意見が発信されるようになって、つくづく思うのは「発信力を基本とする世界は声の大きさと、正論が支配する」ってこと。でも、現実はまったく違いますよね。だって現実ってイレギュラーが混ざり合って混沌としてるじゃないですか。理論や良識で現実を押し切れるんなら学者さんがこの世の最高峰ですが、実務畑では「現実を理想にあわせようとする学者さんは、ビジネスでは一番使えない」ってのが定説になっていたりする。

確かにどんなものにも理想形はありますよ。でも実際には、そんなユートピアはこの世のどこにも存在しない。だって理想郷には経済社会に一番大事なコストバランスって概念がないんだから。例えばバイクが最も理想的な運動性を発揮できるのはサーキットですけど、一歩外に出たら、サーキットのように金をかけた路面など、どこにも存在しない。バイク雑誌ではサーキット走行をベースに運動性能を語るけど、この世の市販バイクは凸凹でイレギュラーだらけの公道でヒーヒーいいながら走ってるわけですよ。

そんなリアル世界では、現実のルールを理解し、その中で地道に実績を積み上げてきた人達に力がある。寡黙ながらも堅実に生きてる層がこの世を黙々と回してるんですね。うちの聖帝様なんてネット世界に何一つ興味ない現実主義者ですが、結論のキレ味とスピードがケタ違い。私が1か月くらい悩んで出した結論を一瞬で出しちゃう。その徹底した現実主義の前では、ブログという仮想世界でウンコ長文を垂れ流してる私など、「下水の中のリケッチア」も同然なんです。

パタリロ2
(私のブログにタマに出てくる、「下水の中のリケッチア」はパタリロのこのやりとりが元ネタです。この会話、私と聖帝様のような緊張感とトゲトゲしさに満ちている。)

いつもながら前置きがクッソ長くなってますが、先に述べた理想と現実のギャップを地で行くのがバイクの任意保険です。125cc超のバイクにおける任意保険の加入率は4割台で半数割ってる。車両保険になると入ってる人なんて1%くらいしかいない。

ではバイクにおいて任意保険未加入の6割の人達が「頭壊れてるバカなのか?」っていうと、これだけの母集団がバカだったら、「バイク乗りは全員マッドマックスの悪役並みのバカ揃い」だってことになりますけど、そんなわけない。この結果が物語っているのは「任意保険がバイク乗りにとって、価値あるものになってない」ってことです。

消費者はコストや費用対効果に対して、極めて理知的で現実的であるというのが、私の考え方のベースです。皆、限られた収入の中でやりくりして、家計をバランスさせながら日々を生きてるから、必要なものと不要なものの見極めはとてつもなくシビア。

そんな中、バイクの車両保険の加入率がほぼゼロに近いって理由は実に簡単です。それは

多くの人にとってバイクは生活必需品じゃないから。

生活必需品ならどんなに高くても保険入って直さなきゃいけないけど、都市部なら地下鉄や在来線が充実してるから、最悪チャリンコでなんとかなるし、田舎では生活の基盤は車だから、バイクはなくても支障はない。結局のところ「バイクは事故ってブッ壊れても、必ずしも直す必要なんてない乗り物」なんです。実際、*のじゃ子がいなくなって悶々としてるのは私だけで、家族の日常生活には1ミリたりとも影響は生じてないんです。

保険の役割ってのは「もしもの時のセーフティネット」ですから、セーフティネットを張る意味のないものに高額な支払いはしないってのは極めて普通の感覚。オヤジの道楽のためだけに存在するバイクの車両保険に毎年大金かけるんなら子供の教育に使った方がいいってことになるわけですよ。

次に任意保険ですが、これは対物も対人も約6割の人が入ってないという結果になってます。バイクって基本的にコケる乗り物だから、事故してる人はこの世に一杯いると思うけど、そういう人から見ても「絶対に任意保険入っとかなきゃヤバイ」っていう切迫感がないんだと推測されますね。

任意保険が必要か不要かはとりあえず置いておいて、事実だけを述べますと、私は*のじゃ子の事故を含めると過去に10回バイクで転倒事故してて、うち5回が自損事故、5回が相手方がいる事故でした。相手方のいる事故5回のうち4回が車、1回がバイクとの接触事故です。

その中で相手にケガを負わせたのって、バイクと接触した一回だけ。その時の相手方は高校生の女の子でした。右直事故で、相手が直進でこっちが右折でしたが、相手方は赤信号での交差点進入。信号赤なの見てなかったんですね。加えて免停期間中にバイク運転してたから無免許運転。

この事故で私は右手首を骨折し、哀れ愛車のVmaxは一発廃車。相手はSR400でブッ飛んで鎖骨骨折。過失もクソも10:0の事故でした。相手は任意保険に入ってなくて、ひたすらゴネるだけ。しょうがないんで、骨折については相手方の自賠責に請求したんですけど、Vmaxの物損分をまったく払わないから、親権者相手に調停して泥沼の法廷闘争になりました。まぁ後で聞くと裁判所から50万円近い罰金がきていたらしく、当時の50万円は大型バイクの中古がポンと買える値段でしたから、親も金がなかったんでしょうね。

残りの事故は全て私が大なり小なりのケガをして、車のドライバーはピンピンしてますってオチ。車はいざ事故になれば相手方に重大なダメージを与え、加害側になることがほとんどだから、保険が大事になるんですけど、バイクはそこがかなり微妙なんですよね。

物損にしても、相手の車は小破で、コッチは全損ってことが多い。今回のHAWK11も相手の修理費42万円に対して、こっちは修理費76万円です。バイク事故って交通弱者のバイクに有利なように過失割合も振れるから、こういうパターンだとこっちがもし保険入ってなくても、相手方への支払金額と、相手方保険会社から支払われる金額を相殺するとそれで相手方への賠償が終わっちゃうケースが多いんです。だから、「事故ったらバイクを失う。趣味なんだからそれでやむをえない。」って割り切りがあれば、物損については保険かけなくてもなんとかなっちゃうケースが多いんですね。相手がフェラーリやポルシェだったら・・とか考え出すとキリがないですけど、そういうイレギュラーに金払うかは、今度は確率の問題になる。

確率と言えば、10年ほど前、同期の自営業者が酒の席でガン保険の話をしてたんです。「いやぁ。この前保険の営業さんに勧められてさぁ。俺がガンで死んだら妻が5000万円もらえるんだよね~。もし何かあっても安心!どうよ!俺って家族思いじゃね?これが俺の生き様じゃあ!」ってこやつは最初得意げに喜んでたんですよね。でも、私は話聞いて「・・マジか・・」って思ったんです。

だってその保険、月額の掛け金がなんと2万5千円だったんですよ。そりゃ保険入るのは自由だし、止める権利もないけど、40代でガンになる確率って1%台ですよ。つまり99%掛け捨てになるってのが統計上あきらかになってる。で、これに対して月額掛金が2万5千円?はぁ?これだと40歳から50歳になるまでの10年間で300万円の身銭をつぎ込むことになっちゃうんだが・・。

「99%の確率で掛け捨てになるものに300万円も払うなんて・・コイツこれでよく自営やれてるな・・」って逆に感心しましたよ。で、それをこの同期の友人に伝えたら、そいつ、速攻で保険解約したんです。「オィィィイイ!かっちょいいお前の生き様どこ行った??」ってツッコみたくなりましたが、結局そいつは50歳までガンにはなりませんでしたので、300万円がまるまる浮きました。お礼に何か驕って欲しいですよ。マジで。

問題が起きる確率と掛金のバランスって保険ではとても大事な要素だと思うんですけど、それを無視して、もしもの時の安心感を買うためだけに「保険に入んなきゃダメ」っていう人が凄く多い。でもね。金の使いどころのバランスをどう取るかが、消費能力であり、そのバランス点は家族構成やその人の経済状況によって違うから、そこに私はどうこう言うつもりはまったくないんですよ。保険のために食費や子供の学費削るってのは、バイク業界という極めて狭い世界にとっては正しくても、一般のご家庭にとってはとても正義ではないでしょう。

「いやいや、歩行者はねたらどうするの?大変なことになるでしょ?だから保険は絶対だ!」

って言う人もいるかもしれない。確かに人身事故を想定するなら保険はマストです。車だと私の周囲にも人身事故をやっちゃった人がいるし、2トン近い車の質量を考えると、もし何かあれば大事になる確率が高いから、そりゃ「保険には絶対に加入しなさい!」ってことになるけど、バイクは実際どうなのか?常々思うんですけど、任意保険の加入を勧めるのならその根拠としてバイクの全事故に対する対歩行者の事故確率を明らかにするべきでしょう。そして、その損害が自賠責保険の範囲内で収まらなかった割合も。そのデータを出さないで、「高額賠償のおそれがあるから、とにかく入れ!」っていうのは、もはや宗教。有償である以上、資料をしっかり提示して保険加入の有用性を説明して頂く必要があるし、それで、はじめて我々は保険というセーフティネットに支払う対価の妥当性を検討することができる。

でもね。保険を勧誘する人は絶対にそれやらないですね。だって保険の本質は「掛け捨てになった人から利益を得る」ことなんですよ。確率論に持ち込まれると、ほとんどが掛け捨てという事実がクローズアップされちゃう。だから保険勧誘は確率論ではなく、リスクヘッジ論に終始する。「バイクで歩行者をはねて3億円の支払いを要求された」とか、損害賠償の支払いリスクがいかに大きいかをひたすら語るんですよね。

でもねぇ。3億円とか5億円とか、人の命を賠償額の多寡で語ること自体、もうすでにどこかおかしいと思うんですよ。人を傷つけたという本質的な罪よりも「相手方に支払う金銭の多寡」の方が重要であるかのような感覚になる。

それだと逸失利益がなくて賠償額が高額にならない高齢者ばかりの過疎地域に住んでれば安心じゃん!ってことになりかねないけど、そんな考え方は倫理的にありえないでしょ?人を傷つけて大事に至れば加害者の人生はいずれにしろ終わりです。だから、賠償額がどうのこうのではなくて、バイクを原因としておきた対歩行者の加害事故の件数が、バイク乗りの分母に対してどれだけのものであったのか?ってことが大事じゃないかと私は思うんですよ。

まぁ、ここまでいろいろと書いてきましたけど、保険とバイク乗りってハナから相性が悪いんですよね。だって「全身剥き出しで凄い速度出るから、安全性はお察しだけど、超楽しいから乗ってみて♡」ってのがバイクなんです。バイクはいろんなリスクを受け入れた人達の乗り物だから、リスクを負いたくない人のためにある保険とは本質的に相性が良くない。

「保険に入れ!」「保険に入ってない奴は常識外!」って無保険者を糾弾するお偉い事業者の方もいるけど、私の経験では口先だけで現実が変わったことなんてない。真に現実を変えたいなら、事業者側で創意工夫するのが筋だと思う。

ちなみに数ある保険加入の試みの中で、私が感心したのはレッドバロンの任意保険です。あれって指定の任意保険に入るとバイクがトラブったときに、全国のレッドバロンで無料のレッカーサービスが受けられるようになるんですよ。全国無料24時間フル対応のレッカーサービスと組み合わせることによって「保険に入ろう」というモチベーションが凄く上がる。

保険料金見ても一般的な任意保険と変わんないから、すごくお得感がありますよね。保険の内容だけで付加価値が出せないんだったらレッカーサービスと組み合わせて保険に入ってもらおうというレッドバロンの取り組みは素晴らしいと思います。私は入ってないけど(笑)

れっどばろん
(こちらレッドバロンのホームページから画像転載。画像クリックでサービス概要に飛べます。)

最後に任意保険に対する私個人の意見はどうか?っていうと、余裕があるならやっぱ入っておいた方が良いですねぇ。

私が任意保険に入ってる理由は、事故の相手方への補償もあるけど、「事故した時に、相手方との交渉を保険会社が代行してくれる」ってのが大きいんです。事故というものは起こってしまったら、その後は必ず大なり小なり金銭のやりとりになる。だから事故の日に全てが終わるんじゃなくて、示談になるまで、ずっと解決しないんですね。バイクって乗るのに繊細なメンタルが要求されるから、事故のショックやケガから速く回復して健全なメンタルを取り戻さなきゃならないんですけど、そんなときに相手方との交渉とかもの凄いストレスなんですよ。

車とバイクが事故した時の車側って最初はブッ飛んで大の字になってるコッチの体が心配だから、「大丈夫ですか?すいません、すいません!!」ってペコペコしてるけど、人身事故にならなかったってわかるとほとんどが「バイクが悪い!」っていってくるのがお決まりのパターン。今回もまさにそんな感じになっている(笑)

事故って、結果だけ見ると「運動物が激突した」っていう物理の問題じゃないですか。だから凄くシンプルですし、年間もの凄い数の事故が起きる中で、処理ノウハウも積み上がってて、解決は凄くテキパキと機械的なんです。でも人の感情や欲望はそういう機械的処理を受け入れようとしない。だから、相手によっては超がつく泥仕合になるんですね。事故の時より事故の後の方がイヤな思いをすることが多いんです。

だから、相手との交渉を保険会社が全部やってくれる任意保険は事故後のメンタル回復にもの凄く有用なんです。

保険は一番安いのでもいいからとりあえず入っておいて、「保険会社っていう対事故専用メンタルの盾を装備しておいた方がいいんじゃないか?」ってのが、事故を繰り返してきた私の持論。先程書いた女子高生との事故の時にホント嫌な思いをして懲りましたから、それ以降保険には入るようにしています。ちなみに私は対物500万円、対人無制限、搭乗者保険なしってのに入ってるけど、じつはこれってかなり安い保険なんです。ドラクエでいうと革の盾ですけど、これで十分。新規加入で年間3万2000円。保険料率が一番下がってるダイナで、年間約1万7000円。月額にすると1500円から2700円くらい。これくらいなら、多くの人にとってあまり負担にもならず、事故から復活するときの助けになるんじゃないかな~って思ってます。





おまけ漫画、シン・過失ライダー 第2話 

過失ライダー第2話2
(若い頃の私はどん底生活だったんで、保険に入っておらず、事故率maxと賠償能力ゼロのダブルタイフーンを回してました。最初の頃はことごとく自損事故で修理は全部自腹。途中からは対車との事故がほとんど。事故は相手方の過失割合の方が高いものばかりでしたから、金が足りなくて自分のバイクが直せない~ってことはあっても、賠償額の支払いで相手に迷惑をかけたってことは幸いにもなかったです。)