HAWK11の事故のあと、私は心の底から震え上がっていました。

その理由の一つ目は、20年前に事故をして、右手首を骨折したとき、「次事故ったらバイクを降りる」と聖帝様(奥方様)と約束していたこと。そして、二つめは、過去コメント欄でも少し述べたことがありますが、事故バイクである「HAWK11(愛称*のじゃ子)を聖帝様に内緒で購入していたこと」です。

「はぁぁあああ?奥さんに内緒で購入って・・そんなことが可能なの??」

と多くの方が疑問に思われるかもしれませんが、実は私のバイク小屋って自宅から徒歩5分くらいにある農作業場を利用してるんです。つまり、バイクを購入しても隠蔽しておくことが可能なんですね。

一昨年から聖帝様がきんつば嬢の後ろに乗ってタンデムツーリングを所望するようになったから、定期的にバイクにチェックが入るようになりましたけど、昔はそんなことは一切なかった。(というか、バイク小屋の鍵は私しかもってない。)だから昔は内緒でバイク買ってもまずバレなかったんですよ。ちなみにこのブログも、自分の部屋にこもって鶴がハタ織りするように作ってるから、聖帝様は内容をまったく知らず、興味ももってない。もし聖帝様が見てるとわかったら、私のブログは多分こんな風になる。

先日偉大なる指導者であり主体思想の体現者でいらっしゃる聖帝様が、半年ぶりに二輪戦闘部隊の格納拠点を訪問されました。聖帝様は整備された二輪戦闘車を見渡した後、このように述べられました。

「家計のため、家族のため、世帯主は弾道ミサイルのように働いてゆかねばならない、この部門は、犠牲精神がまったく足りず、生産性も皆無であり、革命的で無慈悲な労働強化の対象である。発足以来、何らの成果のないこの部隊が、未だのうのうと存続しているのは嘆かわしさの極みであり、今後予定されている台所改修工事の予算捻出のため、即刻部隊を解体し、戦闘車両及び装備品を売却しなければならない。」

この無慈悲な指令に、部隊長は膝をつき、悲嘆のあまり大粒の涙を流して号泣したとのことです。

マンセー!!!!!


そう、聖帝様の検閲を意識したとたん、私は北〇鮮ニュースの「北側クリステル」となり、テキストで聖帝様への賛辞を羅列するしかなくなるのです。このようなプロパガンダ一色のブログになることなく、私が自由にテキストを打てているのは、聖帝様がこのブログに1ミリも興味がないからなのです。

というわけで、バイク小屋にも来ない、ブログも読まない聖帝様には、購入以来*のじゃ子の存在は知られてはおりませんでした。しかし、ゴールデンウィークには、聖帝様をきんつば嬢の後ろに乗せてツーリングするという計画が実行される予定であったため、その時には確実に購入がバレる。そこで私はこのゴールデンウィークまでに、HAWK11の購入を聖帝様に打ち明け、東洋の誇る神秘「オリエンタルパワー・ドゲザ」によって、本件について慈悲を願い出るつもりでいたんです。

そう、この時のために、これまで2年間、私はきんつば嬢と共に妻への奉仕活動を続けてきた!

「近年の私のお利口さんぶりを考慮に入れれば、交渉の余地は十分にある!!」

まさに用意周到、私の好きな言葉です。

しかし、それを言い出す前に、予期せぬ事故が起こってしまったんですよぉおおおお!!なんという、なんという最悪のタイミング!!用意周到のはずが絶体絶命!私の嫌いな言葉です。

うう・・ヤバイ、これはやばいゾォォォオオ!!

自宅に帰宅してとりあえず聖帝様にことの顛末を報告致しました。

「すいません。車とぶつかってコケました・・」

「はぁーーーーーっ!?もう!!いい歳して何やってんの!!で?体は?大丈夫なの?」

「は、はい・・無事です。どこも痛くありません。」

「頭は?」

「頭は普段から大丈夫じゃありませんが、大丈夫です・・」

(ジト目)「で?どこで事故ったの?」

「〇〇谷の山道です。」

「なんでそんなとこ行ったのよ!」

「トトロを探しに・・」

「よし。殺すわ。」

「すいません!!ちょっと山を走りたくなりまして・・」

「で、どのバイクで事故ったの?3台のうちのどれなの?」

「・・・・・・!!!!!!」(一瞬、脳が激しくバグる)

「あ、あの・・」

「どれよ?ハーレー?ゴールドウィング?それとももう1台ツリ目の奴??」

「・・・あ、は、はい・・ス・・ストリートトリプル・・で・・す・・」

「ふぅん、やっぱりね。あのバイクはいつか事故ると思ってたわよ!」(フンッ)

皆様、お分かり頂けたましたでしょうか?そう、ビビリの私は、「事故を起こしてしまった」ことと、「内緒で*のじゃ子を購入した」こと、この二つの罪を同時に聖帝様に打ち明けることはできず、とっさに誤魔化してしまったんです!!

購入未承認のバイクでの交通事故など、聖帝様にとっては「下僕の許されざる裏切り行為」、高速回転からのライダーキックで首がもげるまである。本郷猛が優しすぎる男なら、うちの聖帝様は厳しすぎる女。自己保身のため、あろうことか、私はとっさに事故の罪に嘘の罪を上乗せするという「罪の重ねがけ」をしてしまったんです!!どうする?ねぇこれどうすんの??

この手の場当たり的な嘘って保育園の年長さんあたりがすると、「まあっ、こんなバレバレの嘘ついちゃってぇ、かわいいでちゅねー♡」ってホッコリされたりしますけど、50男の適当な嘘は可愛いどころか、暗い部屋と裸電球の下、カツ丼一つで夜通し詰められる未来しかない。私はこれまで飼い犬のように妻に懐いているフリをしてきましたが、「その影で主人に黙って悪行に走っていた」ということがバレれば、妻には私の日頃の下忍ムーブは心からの献身ではなく、「欺罔戦術」に見えてしまうかもしれない。しかも、その裏切りの結晶で事故ったとあれば、妻の怒りの呪詛は、背びれを通ってシン・ゴジラ級の放射能熱線になり、能登半島を焼き尽くしてしまう可能性がある。

シンゴジラ2
(聖帝様の聖なる怒り。言葉の一発一発がゴジラのレーザー熱線並の破壊力がある。事故よりもこっちの方がよほど恐ろしい。)

もうこうなってしまっては何をやっても時すでにお寿司。聖帝様を騙し通し、私がバイク乗りとして生き残るには「嘘をまことにする」しかなくなりました。

私は事故の翌日、即座にレッドバロンさんに電話し、

「すいません、ストリートトリプルRS、委託販売に持ち込んでいいですか!」

「え?突然どうしたんですか??」

「ちょっといろいろありましてっ!人生の危機なんです!下手すると二度とバイクに乗れなくなるんです!持ち込ませてください!今すぐ即!」

「わかりました!何か良くわかりませんけど、ありがとうございます!お待ちしてます!!!」

ということで、ストリートトリプルRSは既に私のガレージにはありません。賢い皆さんは私の考えていることが、もうお分かりですね。

ストリートトリプルRSで事故→

修理費が高額なのでやむなく売却→

バイクを売却したお金と相手からの保険金で、おじさん世代のスポーツバイク、HAWK11を購入しますた!


という嘘の煮こごりのようなシナリオでこの窮地を乗り切る所存です。あー、もう書いてて手が震えるわー。そのためには私の罪が明るみに出てしまう前に、「ガレージからストリートトリプルRSに消えてもらう」しか選択肢はなかった。

遊星から来た兄弟であるザラブ嬢には地球人側の都合により「急遽、遊星に帰ってもらう」という、悲しい結末になりました。私って基本衝動買いでダボハゼのように食いつく男だから、バイクとの別れっていつも唐突なんですけど、こんなダメダメな売却の仕方は初めてかもしれません。

ああ、3日前までバイク小屋に4台のバイクがあったのに、たった一つの事故が原因でスポーツバイク戦線がすべて崩壊し、今やバイク小屋には10年前から居座る牢名主の二大巨頭、ダイナとゴールドウイングしかいない。閑散としたバイク小屋は、まさしく私の夢の跡、広大な焼け野原じゃないですか・・。

イキったオヤジは必ず滅ぶ。ひとえに風の前の塵に同じ。 By バイク神

さらば私が夢見たハーレムよ。胡蝶の夢よ。しみじみ思うんですけど、やっぱりね。バイクの神様っているんですよ。そして、私がちょっとイキりはじめると、即座に天誅を下す。コーナー出口で車が飛び出してきたタイミングもドンズバでしたけれども、事故自体のタイミングも私の環境を根こそぎ破壊するかのような絶妙さ。そこに私は、神の無慈悲な裁きを感じざるをえない。

いずれにせよ、事故った後、天を仰いで「ああ、これでストリートトリプルRSは手放すしかないな・・」と思いました。もし、HAWK11の購入を素直に打ち明け、了解されたとしても、峠で事故っちゃった時点でスポーツバイクの2台持ちに許可を得られることはあり得ない。あと、HAWK11の修理費も捻出しなきゃいけない。願わくば6月末の車検までは乗っていたかったけど、以上の理由でストリートトリプルは急遽売却という運びとなりました。

ちなみに事故に対する聖帝様の反応は、「フレームが折れ、右方向に垂れ下がった眼鏡で事故報告」という最初の一発ギャグが効いているのか、今のところ思ったよりもキツくない。タンデムツーリングも予定どおり行われ、滞りなく終了しています。

実はうちの聖帝様も3年前、自家用車運転中に一時停止無視で飛び出してきた車に激突し、エアバックを派手に炸裂させて事故廃車にしておられるんですね。なお、その際の新車購入費と入金された保険金との差額は「お前の金は俺の金、俺の金は俺の金」というジャイアン理論で、私の口座から召し上げられていますから、「この世には避けようのない事故がある。」っていうのはお分かり頂いているのかもしれません。

そうはいっても車とバイクでは深刻度が違うので、機嫌を損ねたあげく20年前の古き血の盟約を持ち出され「事故したらバイクはやめるんだよね。昔約束したよね。ん?ん?ん?」って詰め寄られると、私はアホの坂田になるしかない。とにかくこのまま必要以上に刺激しないよう、寝た子を起こさぬよう、時を重ね、あらゆるものがうやむやになるのを待ちたいと考えています。

偽装工作、権謀術数、舌先三寸、私の好きな言葉です。


次回は、突然の別れとなったストリートトリプルRSについて、この3年間の総括を行いたいと思います。

ザラブ嬢さらば4
(バイクとの別れはバイク乗りの必然ですけど、エンジンも調子が出てきたところだったから、凄く残念。でも売るからには明るく送り出したい。)