えー突然ですが、緊急企画です。な、ななななんと!!今回は

「ブラジャー VS ち〇こ」

いやもとい「Street Triple RS vs HAWK11」のワインディング対決でぇぇぇええす!!ワー!!ワー!!(セルフ喝采)

冬の間は慣熟走行に徹していたHAWK11ですが、山あいの雪もなくなり、路面も暖かくなってきましたので、いよいよ私のホームコースに持ち込んでみました。冬眠していたストリートトリプルRSも巣穴から起き出してこれに参戦。そう、ついにこの春、私のホームコースの峠道でこの両雄が相まみえることになったわけです。

となれば、テキスト書きとしては、桜吹雪の舞い散る下で行われたこの2台の他流試合の模様をお伝えせざるを得ない。

「はぁぁぁぁあ??HAWK11ってエンジンもシャーシもなーんもインプレしてないよね?それすっ飛ばしていきなり比較対決なの?コース料理の最初にいきなりステーキ出ちゃうの?その後に冷えたカルパッチョみたいなインプレ出すの?バカなの?」

って、いろんな筋からのツッコミが聞こえそう(汗)。・・まぁ、そうですよね。だって納車して約5か月、ウチの*のじゃ子はまだ「エンジンのインプレにすら入ってない」んですよ。次回書きます、次回書きますっていいながらどんどん伸びてってるんですよね。そうこうしてるうちに、いきなりストリートトリプルRSという、へちま王国の「山間ヘビー級チャンピオン」との選手権試合が始まってしまうという、もう「リングアナが選手紹介してる間に殴りかかる」みたいなグダグダ展開になってしまった。

肝心の対決のインプレにしても、*のじゃ子のエンジンとシャーシは後日のブログネタだから、そこはオブラートに包まないといけない。そうなると、具体的な感触は封印し、比較抽象論で書くことになるからメチャクチャぼんやりしてるわけですよ。なぜそんな無謀にチャレンジするのかというと、やっぱね。こういう対決モノは「興奮が冷めないうちに書いた方が面白いものが書ける」からです。この2台の走りがあまりにも違ってて笑っちゃったから、「その感覚が新鮮なうちに伝えないとダメかも~」と思ったんですよね。

まず春のホームコース一発目を走ったのは、私と3年間ホームコースを走ってきて、酸いも甘いも、屁の臭いまで知り尽くしたザラブ嬢。3年間散々語ってきましたから、もう今さらなんですが、こいつのワインディングでの走りの姿を例えていうなら、「体を絞り、鍛えに鍛えて、戦闘技術を高めた改造人間」って感じです。

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(桜が満開のワインディングにたたずむストリートトリプルRS、スポーツバイクとしての合理性に貫かれた存在です。)

何世代にもわたるモデルチェンジの中で鍛錬と進化を繰り返し、格闘スキルと戦闘経験を積み上げた闘争本能の化身。765ccという限定された排気量の中で、「どれだけの髙みを目指せるか」を追求した根っからのファイターなんですね。

まずもって標準装着してるスーパコルサの能力が凄まじい。このタイヤ、重心をヘリにもっていくだけで、路面にへばりつくようなグリップ力と、ギュルギュルとバカみたいに曲がる旋回性を発揮する。コーナーでなんとかバイクを華麗に曲げようと試行錯誤していた昭和生まれのロートルからすると、現代の最先端スポーツバイクの「タイヤが曲がってくれる」感覚は、とんでもないカルチャーショック。まさに

ヤック・デカルチャー!!!

いやもう、タイヤの端っこに重心預けるだけで、次々とコーナーをクリアできちゃうんですから凄い。昔からバイクがこんなんだったら、右に左にコケてスリコギになることもなかったのにぃぃいい!!多少オーバースピードでコーナーにツッコんだり、コーナー奥で曲率が高くなってたりしても、アクセルちょいと戻してリアブレーキを軽く踏むだけで、フロントがグワワワってインに入って何事もなくクリアしちゃう。ほんとバイク任せで申し訳ない。

「ご主人、大丈夫でしたか?」

「すまない、ザラブさん」

「謝罪じゃありません、そこは感謝です!」

「ありがとう、ザラブさん」

「さんじゃありません、ここは呼び捨てです!」

「わかりました、ザラブさん(尊敬のまなざし)

「・・いや・・わかってないですよね・・」

まさにこんな感じ。私みたいなヘタレでもバイクの邪魔しないようにしてるだけで、もの凄いアベレージを叩き出してくれるし、「今、ゾーンに入ってます」ってバイクがビシビシ伝えてくれるから、刺激があって走りも熱い。もはやこれはスポーツバイクに名を借りた、参加型アトラクションみたいなものかもしんない。「これが現代のSS系バイクの到達点なのか・・」って感激しかない。

ただし、私のようなジジィがこんな最新鋭バイクで戦えるのは、老いた肉体が耐えられるレベルまでです。悲しいかな体がバイクの動きに追いつかない。山本五十六じゃないけど「はじめの30分や1時間なら存分に暴れてご覧に入れる!!しかしその後は死んでていいですか?」って感じ。ちょっとシゴくと強烈なヨコGタテGの往復ビンタで爺の体はガッタガタ。

全力を開放すれば、闘争本能のまま私の制御外にブッ飛んでいくのは目に見えてるし、バイクが吠えはじめると、こっちも破滅的衝動が抑えきれなくなるんで、そうなる前に手綱を戻しちゃう。要は今の私じゃ肉体的にも精神的にも到底このバイクの全力を出し切れないわけです。

一方のHAWK11ですが、こちらはこちらでまたトンデモない。「速くない、でもちょっと速い」っていうフレーズを信用してホームコースで頑張ってみたんですが、もうね。ヤバイですよ。メーター読みのスピード見る限り、こちらもあっさり公道速度域の上限を超えていくモンスターバイクであることが確認できました。

まぁ素人の私なりに、その違いを端的に申しますと、HAWK11は他のSSみたいな戦闘技術特化型の改造人間じゃないんですよね。それもそのはず、エンジンもシャーシも、リッターアドベンチャーそのものなんだから。このバイクの走りを語る時には「本格設計のリッターアドベンチャーって一体どんな存在なの?」ってところをまず語らなくてはならないんです。

(こちらホンダのアフリカツインの宣伝動画・・ではなく、なんとなんとGIVIのケースのコマーシャル。アフリカツイン目立ちすぎィィィ。)

上の映像を見てもらえばわかると思うんですが、この手のリッタークラスのアドベンチャーって、未整備の悪路を、跳んだり跳ねたりしながら、とんでもないハイアベレージで走破していくバケモノなんですよね。大荷物を積み込んだ高負荷の状態でも、地平線に向けて問答無用、天地無用でブッ飛んでいく。そんな走りに必要なのは、戦闘技術より、強靱な骨格と心臓、体幹の強さなんです。

SSが「人の戦闘能力を極限まで高めた改造人間」だとすると、オフロード走行も重視したビッグオフ型のアドベンチャーって「野生のゴリラ」なんですよ。しかも、アフリカツインはただ荒野を走って行くだけのゴリラじゃない。遺伝子操作の結果、身体能力はそのままに、ツアラーやクルーザーの芸まで身につけ、強さと優しさを兼ね備えるに至った最強万能型の有能ゴリラなんですね。

ホンダはこのゴリラを、峠というステージに「大人のワインディングスポーツなので~す♡」ってブチ込んできた。これはね。もう反則ですね。だって、競技っていうのは本来、「同じ種族と思想の者同士でしか成立しない」はずなんですけど、ホンダ開発陣は格闘能力を競う改造人間同士の戦いの中に、「人ではないものを放り込む」という暴挙に出たんです。

これをシン・仮面ライダーで例えると、ショッカーの改造人間とライダーの戦いのさなかに突然「ゴリラ・オーグ」っていう未知の改造人間が現れたようなもの。で、尋常じゃない底力と身体能力を生かした戦いっぷりで、本郷猛もショッカーの怪人も大苦戦。それを見ていたコウモリ・オーグの博士が「むぅぅ・・これが死神と呼ばれた後藤の最後の作品か・・」って呟くんですけど、仮面取ってみたら中身ホンモノのゴリラで

「オィィィィイイ!!」

「なに考えてんの!!」

「ダメダメダメダメ!!」


って、そこにいる全員が総ツッコミするというそんなオチなんですね。

HAWK11のスペシャルサイトでデザイナーさんが、「なんとか小さく見せたかった」って言ってましたけど、そりゃそうですよ。だって、SS系バイクと並べたときに違和感ないくらいコンパクトにしないと、このネタはできない。身長2メートルのゴリラに、ただスーツ着せて仮面かぶせただけだと、体格見ただけで「あ、これもう人じゃないね」ってのがモロバレになっちゃう。この世にネイキッドやスポーツバイクをベースにしたアドベンチャーは数あれど、本格アドベンチャーベースのスポーツバイクがないのは、「小さいものを大きく作るのは簡単だけど、元がデカいものを小さく作ることはできない」からです。バイクは合理性の産物だから、そんな無理筋で奇天烈な発想は普通しない。

多くの人がHAWK11のデザインに感じてるチグハグさってのはおそらく「異形感」です。だってこのバイク一見普通に見えるけど、中身は限界までパッツンパッツンなんですよ。メインフレーム追ってくとナナメに3分割のタンクの中をムリヤリ通してる。このバイクが水平のラインと縦方向のラインを特に強調したのは、ステアリングヘッドとタンク後端を斜めに横切る「背の高い骨格」をできるだけ意識させないためでしょう。それはワインディングという選ばれし改造人間たちの戦場に、「人でないものを紛れ込ませる」という常識を度外視した試みが産んだ違和感なんです。

しかもムチャクチャなオーダーが発令されてるのに、恐いオジサン2人が睨んでるから、出力を落とすことは一切できない。そんな地獄の設計要求に若手技術者達が血反吐を吐きながら挑んだ結果、この大猿の怪異はちゃんと人の姿になった。しかし、元が人じゃないから不気味なオーラが上がってる。その異物感が「これまでのバイクの常識にはない」新鮮なキモカワさ、モンスター的な格好良さに繋がってるんですね。

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(満開の桜の下にたたずむHAWK11。その正体は大猿の怪異。こういう異形の存在には、桜がとてもよく似合う。)

で、乗って見たら当然といえば当然ですがとても明るくゴリラなんです(笑)。ザラブ嬢なら目を尖らせて、熱くストイックに追い込んでいく速度域でも、なかやまきんに君みたいに笑顔で「パワーーーー!!」って言ってて笑う。このキャラクターをもって「チグハグだ」という人も当然出てくるでしょう。でもそういう人はSS乗ればいいと思う。HAWK11はこれまでのSSには存在しなかった世界観を提供したくて、こういう仕立てになってるんですから。

ストリートトリプルRSが提供してるのは「SS譲りのフレーム、エンジンと最新技術を総動員し、乗り手と共に限界に挑むストイックな走りの世界観」です。

バイク自体がもつ戦闘技術、戦闘経験が高いから、乗り手のスキルを問わず速い。乗り手は走ろうという意志を前面に出していくだけで、バイクが高度な戦闘マニュピレーターを搭載したモビルスーツのように乗り手をサポートしながらワインディングを駆け抜けてくれる。エンジンのキレ上がりもレーサーライクで、アクセル開けるとめくるめく加速で非日常の世界が展開する。
排気音のギャンギャン猛る演出も心に刺さるし、とにかく乗ってて爽快で気持ちいいんですよね。765ccというミドルクラスのコンパクトなエンジンからもの凄いパワーを絞り出してるから、フルには全然扱いきれないんで「凄いものに乗っている」っていう満足感も高い。

対するHAWK11が提供してるのは
「アドベンチャー譲りの基礎体力の高さと走行質感で、ワインディングを明るく楽しく駆け抜ける世界観」です。

こちらは「小さくコンパクトなものから最大限の力を引き出した」バイクではなく、「そもそも巨大で余裕のあったものを小さな器に押し込んだ」バイクです。だから走りは元の万能ゴリラそのもので、とても大らか。既存のSSとはまったく違うけど、それは発想自体が特殊なんだから当然。このバイクは峠を限界近くで走っていても、突き詰めたものが持つ特有の暗さやハードさがまったくない。

エンジンはどこまで回しても、切迫感がなく、ふと直線でメーターみると「あれ?これ速度計壊れてない?」ってくらいヤバすぎる速度が出てる。高速コーナーで、旋回中に回転計見るとタコメーターが7000回転(レッドゾーンは8000回転)を指してたりするんですが、そこまで回しても「ゾーンに入ってる感じがまったくない」。本来なら恐ろしいまでの凶暴さをもつはずの1100ccのビックツインに一切の暴走を許さず、レッドゾーンまでコントローラブルに躾けきるなんて、トンデモない制御技術。さすがエンジンを知り尽くしたホンダだけのことはある。排気音もなんとも柔らかく牧歌的にトロトロいってて、公道速度の上限近くでも、無理してる感が全然ない。

その反面、頭の中は峠素人のお猿さんだから、乗り手がちゃんとコーチをしないとトルクに任せてパンチを大振りするだけ。でも大排気量車の猿回しを地道にやってきた年季の入ったトレーナーなら、このバイクの走らせ方はすぐにわかる。的確に指示さえ出せれば、ベースがリッターの排気量をもつ最強ゴリラなだけにとんでもなく速いんです。

ブラジャー&ちんこ
(高い戦闘スキルを持つ戦士vs大猿の怪異。スポーツバイクは速くあるべきという定義が支配する中、HAWK11は「楽しければ何でもアリ」という公道独自のルールを逆手にとって生まれたスポーツバイクです。)

この2台を交互に乗って改めて感じたのは、「公道でどっちが速いかを語るのはナンセンスだなぁ・・」ってことです。だって、どっちも本気出すと私のホームコースで出せる速度域の天井を簡単に叩いちゃう。当然ですけど「公道では公道での限界スピードしか出せない」からその天井に到達してるバイクは「どっちも十分すぎるほど速い」ってことになるんですよ。

しかし、似たような速さでも、そのあり方には本質的な違いがあって、ストリートトリプルRSの速さには、常に他のミドルクラスのライバルの影が見え隠れしています。ザラブ嬢の速さは同クラス、同価格帯のライバル達が進化を繰り返す中、それに負けないよう、相対評価で勝るよう、自らを磨いてきた結果の速さであり、それは「常に人より前に」というバイク乗りの根源的な闘争本能ときれいにシンクロするんです。だから、その速さに説得力があるし、とてもわかりやすいんですね。

一方、HAWK11は、「楽しさは数字じゃない」と言い放ち、スポーツバイクの最も重要な価値観である相対的優位性を真っ先に捨ててしまった。そのかわりに掲げたのは、定量化できない「乗り手の主観的な喜び」です。だから、このバイクは他者と競うという価値観を捨てて、なおスポーツバイクのもつ速さに何らかの意味を求め続けているバイク乗りにしか刺さらないという、実にややこしいものになってます。

もう大体予測できてるかもしれませんけど、この対決記事は、昭和のゴジラ対キングコングみたいに勝者が存在せず、両者リングアウトで終わるという予定調和になります。私自身が、何かと優劣をつけようとするこの世の風潮に辟易してますし、そもそもHAWK11が他のバイクと競うことを拒絶するところから生まれたバイクだから、結論としてはそうなっちゃいますよね。

この2台は同じスポーツバイクというカテゴリーにはいますが、その成り立ちや、見つめているもの、目指したものは正反対です。スポーツを「他者と競い勝利の栄光を掴むこと」と定義するなら、ザラブ嬢の方が、立ち位置として圧倒的に正しいといえる。しかし、スポーツを「楽しく、気持ちよく汗を流せること」と定義するなら、*のじゃ子は決して無視できない強いキャラクター性と吸引力をもつバイクになる。

結局のところ、それは消費者が一生をかけて追い求める「良いものとは一体なのか?」という問いかけの中にある、相対的価値と主観的価値の対立という永遠のジレンマの縮図なのかもしれませんね。