バイクの雑誌を見ていると定期的に革ジャンの特集記事がありますね。特にハーレー雑誌は革ジャン特集を交互にやるからエンドレスに革ジャンの記事みてる気がする。今回はこれまでコツコツ革製品を買ってきた私から皆様にお送りする、独断と偏見に満ちた革のお話です。要は「バイク用の革ジャンはどの革選べばいいの?」ってコトです。

革ジャンに使われる本革の代表的なところは、牛革、ゴート(山羊革)、シープ(羊)、馬革、鹿革、あたりでしょうか。ネットのサイトとか見てると、革の比較なんかがあったりして、順位付けがされてたりする。私の見たサイトでは、バイク用の革のランキングでは

馬革 鹿革牛革 ゴート

になってました。まぁ・・わからんではないけど・・安易にこんなこと言い切って大丈夫なのか??

ちなみに私は着道楽ではないんで、どっちかっていうと、一度選んだ革ジャンやブーツをひたすら長く使うタイプです。そんな私が今のところ所有している革ジャンは2着だけ。

1.ラングリッツの 「キャスケード」

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以前こちらのブログ(←クリックで飛びます)にも書きましたけど、「とにかくラングリッツに見えないようにこだわってカスタムした」という私のモブな人格を全面に出した一品。シルエットが大好きなキャスケードをドレスカラーに変更して、無理矢理クルーザー用に。革はライトウェイトカウハイドですが、ほんまライトウェイトなの?ってくらいゴツくて丈夫。共に13年、13万㎞以上走ってきましたが、まだまだ現役です。唯一のアキレス腱はTALONのジッパー。あまりに壊れるんで、途中からYKKに変えちゃいました(笑)


2.KADOYAのヘッドファクトリー「AS-1VS」

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ザラブ嬢と*のじゃ子に乗るとき用に昨年購入したライダース。ベースの「AS-1VS」は牛革製なんですけど、フルオーダーだと革が自由に選べるんで、ゴート(山羊)に変更してあります。光りものが目立つのがイヤだったんで、ファスナーもブラックに。格好よりも機能性重視で着丈は長めにして、前傾姿勢対応で背中側の着丈を前側よりさらに2㎝延ばしてあります。見てわかると思いますがシンプルで超地味なところが良。製作期間は5カ月でした。

下半身はシュチュエーションによって「安物のジーンズ」「特殊素材の裂けないジーンズ」を選択してるわけですけど、私の休日の服選びって、完全な「のび太」なんですよ。上・革ジャン+下・ジーンズ。選択肢がそれしかない。

「はぁぁあああ?」

「のび太のクセに!」


「そんなんで格好いい革ジャン語れんのか!!」

と今心の中でツッコんだ方に言いたい。

「のび太に格好いい革ジャンが語れるかぁぁぁああああ!!」

あのね。「私は格好いい革ジャンが何か?」なんて語るつもりは毛ほどもありませんから。牙一族の末裔にオシャレなんて語る資格があるわけない。私が語るのは革の選び方であって自分の装飾の仕方じゃありませんから、そこんところ誤解なきようお願いいたします。

ちなみに私は、1900年代前半から中頃あたりのオールドスタイルが好きなんで、革製品も凄く好き。これまで、革小物や鞄、靴、時計の革ベルトを含めると、大量の革製品を購入してきました。だって革ってやっぱ味があるし、どれも表情豊かで、フェチズムをガンガン煽ってくるんですよ~。でも、その本質はバイクと同じで「長く使いながら自分に馴染ませていく耐久消費財」なんです。だから購入して数年間使ってみないとその真実がわかんない。

バイクはレンタルしたってせいぜい1日か2日しか借りられないから、最後は目をつぶって「ヨイショォォオオオ!!」って買うしかないけど、革は大物買う前に、「グローブとかの小物でお試しができる」じゃないですか。だから、いきなりネット情報を鵜呑みにして選ぶんじゃなく、まずはグローブあたりで長く使って、「その革の本質を見極めてみる」のがオススメ。革ジャンって「この世の革製品の中で一番贅沢に革を使う」ものですから、買ったからには添い遂げないといけない。失敗は許されないなって思うんです。

で、結論から申しますと、私はバイク用の革ジャンには

固くてもいいならとりあえず牛革。柔らかいのが欲しければゴートでいい。

と思ってます。先ほどのサイトとは結論真逆ですね。なぜかっていうと「この2つの革はありふれてるから」、もうちょっと踏み込んで言えば、「ありふれているが故に、マニア向けの繊細な仕上げがされてないケースがほとんど」だからです。この2つの革は革本来の防御力が前面に出ててタフなんですね。

ちなみに私のいうタフって意味は、「コケたときの引き裂き強度がぁ~」って意味じゃないですよ。引き裂き強度がぁ~とか言ったって、それは「革の厚みを同じにした時」にはじめて比較できる概念で、革の厚さなんてメーカーやモデルによって様々だから、実際に手に取ってみないとわからないと思うんですよ。

私が言ってる「タフさ」ってのは「バイクで普段使いしたときの耐候性」です。

もし皆さんが大枚はたいて、20万円くらいするピカピカの革ジャン買ったとしますよね。で、ある日「それ着て道路工事の棒振りのアルバイト行ってくれますか?」って言われたらどうします?「アホかぁああああ!!そんなドカチンバイトになんで革ジャンなの?俺の大事な一張羅をダメにする気なの?!」って叫ぶと思うんですよ。でもね。考えてみれば、バイクの上ってそれとたいして違わない環境じゃないですか?

前からは「大型トラックの排気ガスやホコリ、飛び石、虫」

上からは「強烈な太陽の熱放射と紫外線、そして鳥の糞」

内部からは「加齢エキスがたっぷり入った男汁(オェェェェェエ!!)

もうね。バイクの上の乗り手を守るために、ヤバイくらいの汚辱攻撃を内から外から毎日のように浴び続けてるんですよ。そういう酷い環境って「最高の革の使いどころとしてそもそも無理があるでしょ?」と私は思うんです。

皆さんが考える良い革ってどんな革でしょうか?やわらかくって、手触り良くって、軽くって、風合いも素敵って革なんじゃないですか?そしてやっぱり見た目も気になると。その代表格ってライダーズで言うとやっぱ「丁寧な鞣しをした馬革とか鹿革」になると思うんです。

鹿革なんて時計拭きにも使われるほど、きめが細かくて柔らかくってシットリとした革で「レザーのカシミア」なんて呼ばれてるし、馬革も柔らかくって薄くて軽くて、コードバンのテリなんて、「はうぁ~・・美味しそう・・食べたい・・」ってため息漏れちゃうくらい最高。この2つは確かに稀少で良い革のイメージがある。しかし、それ故に手の込んだ鞣しや染めで仕上げされてるケースが多くなっちゃうんですよ。稀少で数が取れない鹿革はほとんどが風合い重視の仕上げだし、馬革は、ルイスレザーなど一部のブランドを除いて、商品としてハイグレードな価格に設定されるケースが多く、それにあわせた高級な仕上げをしてくるんですよね。

確かに「最高の革を使って、ボクチンだけの強まった革ジャン作りたい~」って思う気持ちも良くわかる。でも、こういう稀少な革って、風合いを生かすために顔料を吹かずにタンニン鞣しを施してあるケースが多いんです。(ルイスレザーの馬革は耐久性重視のセミアニリン仕上げなので一概には言えませんが・・)顔料って人間でいうと、日焼け止めみたいな役割をするものなんですけど、良い革ってそれを一切塗ってない、ある意味スッピン状態なんですよ。当然ながら革の風合いはたっぷり。でも、それ故に「赤ちゃん肌」のようなデリケートさがあるんです。

そう、バイク乗りのライダースにおいて一番論点にしたいところは「革質が良いかどうか」ではなく、「そんな素晴らしい革に過酷なヨゴレをやらせるの?」ってとこなんです。

ライダース着て夏に海沿いを走れば、革は一日中強烈な直射日光や紫外線を浴び続ることになる。そんな環境では自然な風合いで仕上げたタンニン鞣しの革なんて、あっという間に色褪せしちゃう。「いやいや、それをエイジングっていうんじゃないの?」って意見もあるかもしれないけど、革は使い込んだ年数にあわせ、ゆっくりと風合いを変えていくからこそ楽しいんです。でも、バイクの環境ではヘタすると半年も経たないうちに、「ホセ・メンドーサ戦終了後の矢吹ジョー」みたいに悲惨な姿になりかねない。それはもはやエイジングと呼べるものではなく、「過酷な環境に晒し続けた結果の急激な劣化」というべきです。

グローブ
(左が耐候性が高く、お安いウォッシャブルレザーのグローブ、2シーズン使用。右はお高くて繊細な鹿革のグローブ、1シーズン使用。比べると退色の差は明らか。)

丁寧な仕上げをした高級革はバイクでいうとぶっちゃけ「MVアグスタ」みたいなもんなんですよ。夏の炎天下を高級仕上げのライダースで走るってのは、「バイク初心者がMVアグスタのF4に荷物満載して、真夏に日本一周の旅に出ようとしてる」みたいなものかもしれない。もうね。見ている全員が「やめろぉぉぉおおお!!よりにもよって、なぜそのバイク選んだぁぁぁああ!?」ってツッコむと思うんです。だって、アグスタで日本一周なんて奇跡でも起きないと帰ってこれないじゃないですか。バイクを知らない人にとっては、「バイクはどれも同じに見える」かもしれないけど、バイク好きからすると、同じ海外製でもハーレーとアグスタではデリケートさが天と地ほども違うんです。同じ使い方なんか絶対にできない。革もそれと似たようなところがあると私は思ってます。

高級革っていうのは、その性質を理解して使わないと、人も革も不幸になると思う。だから革をよく知らないって人や、革にそこまで愛がない、変態じゃないって人は、高級なタンニン鞣しの革ジャンは向いてないです。馬革とか鹿革って字面だけみると「馬鹿のための革」みたいですが、全然逆。仕上げとか手入れの必要性を吟味せず、何も考えずに選ぶと痛い目にあう。

その一方でゴートや牛革は、馬革や鹿革に比べ、ぶっちゃけ「そこまで特別じゃなく、ありふれてる革」です。それゆえに「丈夫さやタフさを重視した上で、どれだけ風合いを出せるか?」って方向で革の仕上げがなされていくケースがほとんど。これらの革の仕上げは、クロム鞣しをした上で、着色に顔料を吹いてます。クロム鞣しはタンニン鞣しに比べ風合いは落ちますけど、分子結合の強度が10倍以上といわれてる極めて耐久性の高い鞣し方。ゴートや牛革の質の良いものは革に傷がほぼないから、傷を誤魔化すために顔料を厚塗りする必要もなく、染料で染めて色出ししてから、顔料を革の風合いを消さない程度に薄吹きするってパターンが主流でしょう。

このクロム鞣しと顔料の保護があるかないかで、バイク用の革ジャンとしての耐久性は天と地ほども変わってくる。顔料でガードされてれば、真夏の強烈な直射日光浴びても劣化は最小限。抜群の風合いじゃないかもしれないけど、ソコソコの風合いと発色を長期間維持してくれる。実際私のキャスケードは13年間、野外で紫外線浴び続けてますが、退色はそこまで酷くない。

最終的には購入者が革に「機能性を求める」のか、「道楽や美を求める」のかで結論は変わってくると思いますけど、私にとってバイク用の革ジャンは「長きにわたって共に戦う革の鎧であるべき」だから、徹底してタフな機能性を追求するのが本筋なんです。

ミもフタもなくいっちゃえば、ヨゴレのバイク用にするんなら、一番スタンダードで安い革選んどきゃいいんです。ことバイク用に限っては、そっちの方が選択として正解である場合が多いし、高級な革に金かけるより自分の体型に合わせるのに金かける方がよっぽどいいと私は考えてます。

結局、革でも時計でも、趣味の世界の高額品の行き着く先は大概マニア嗜好で、突き詰めるほど「オーバークォリティで繊細」になっていく。どうしても風合いの良い革が欲しいって人は、小汚い環境で使うバイク用にするんじゃなく、優しい環境で丁寧に扱える街着用にするとか、財布や小銭入れにするとか、そんな方向で楽しんだ方がいいんじゃないかと思うんですよね。



世紀末覇者3(久しぶりに漫画描いたら時間かかりすぎて引いた(笑)描いてて思いましたけど、やっぱジャギ様はいい。彼はまさに「ザコキャラの王」。姿も言動もカマセなのに凄く愛らしいし、格好いい。私の憧れです。)