えー今回はヘッダー変更に伴う駄文回です。非常に緩く、コーヒーブレイク的な幕間になってますんで気楽にお読み下さい。(まぁ気楽っつっても6000字超えてますけど)

2023年春のヘッダーは昨年11月に納車されたHAWK11、愛称*のじゃ子さんにご登場願いました。昨年の段階から、今年の1発目は「*のじゃ子(HAWK11)で行く」って決めてたんですよ。だって、*のじゃ子は私の「サイクロン号」ですから。シン・仮面ライダーの封切りが重なったこの春は、キリッとした表情で、ヒーロー然とした*のじゃ子一択だろうと。

*のじゃ子・下絵
(まずはラフな下描きから。ちょっと前から下絵はわかりやすいよう赤色にしてます。)

毎回ヘッダーの製作回は、私のオタク知識を披露したりイラスト界隈のこと書いたりしてるんですけど、今回は「シン・仮面ライダーの私的感想」でいこうと思います。

公開以降、予想通り、賛否両論が渦巻いておりますし、多くの識者が感想を書くなか、「お前の感想などいらん!」っておっしゃる人がほとんどだと思うんですけど、ここは私のインナーワールド変態空間。派手にやらせて頂きます。なお、ややネタバレしてますんで、「これから観るわ!」っていう人は閲覧注意です。

まず、私がこの映画に点数をつけるとしたら何点か?ってことですが、私は5点満点でぇ・・どぅるるるるるるるるるるるるー・・・・

5点!!!

「はぁぁぁぁぁああああ?!へっちまん、シン・ウルトラマンは酷評してたのに、今回は評価高すぎだろ!!ちまたじゃボロクソ言われてるじゃん!!」ってツッコまれるかもしれない。でもね。私、本日時点でこの映画既に3回転も見てるんです。今週金曜日にはオタ仲間とも観に行くんで1週間で計4回転。ひたすらレイトショーを観に行く私に、奥様も「バカジャナイノ?」って呆れてます。

ちなみにこれ作ったのが宮崎駿だったら1点つけるかもしれないんだけど、庵野なんで5点。なんで監督でこんな点差に開きが出るのかっていうと、「私がこの2人の監督に求めてるものが全然違う」からです。

カード
(3回も見に行ったんで、ライダーカードが6枚になりました。うち2枚がサイン入りレアカードという大当たり。)

そもそも庵野秀明って宮崎駿みたいに、「どんな映画作っても高得点を叩き出す」という高打率広角打法の人じゃありません。コダワリはあるけど、そのコダワリが偏ってるし、バランスがない。正直、私の印象では、そのコダワリが空振りしたり、悪い方に向かう方が多いんですよ。私は過去に何度も煮え湯を飲まされてきましたから、基本その点で庵野秀明という監督を信用していない。

ナディアでは前半で資金使い切っちゃって、作画にかける金がなくなり、今では島回と呼ばれ伝説化している作画崩壊を半年くらい見せられました。映画のための資金までTVに回したため、劇場版まで作画崩壊というオマケ付き。エヴァンゲリオンでは、期待値MAXの状態から、終盤グダグダの内面紙芝居を見せられたあげく、その期待をなんとか持ち越した最初の映画シト新生では、TVの総集編60分+新作部分僅か30分という「これもう詐欺なんじゃがぁあああ!!!」と叫びたくなる仕打ち。それでも最後くらいは・・という期待と共に観に行った「Air/まごころを君に」でも、スプラッター綾波レイを見せられ、最後に海賊アスカに観客全員が「気持ち悪い」って言われちゃうという、もうドロップキックで崖下に突き落とされるようなことを何回もされてきてるんですよ。エヴァQなんてもう推して知るべしでしょ。

近年シン・ゴジラがタマタマ多くの人に刺さったから評価がドーンと上がったけど、私の感覚ではダメ方向に転ぶことが非常に多い監督なんですね。庵野秀明をメチャクチャ叩く人っていると思うんですけど、それは庵野秀明に一般性を求めるからそうなるんです。

そんな彼の作品を、私がブツクサいいながらも観に行くのは、この監督はとんでもなく格好いい画を作り出すことができるからです。私的に「はぁぁぁあ!?」っていうシーンがずっと続いても、他の監督では絶対に見ることのできない、天井を突き抜けたシーンが突然ドーンと出てくることがあって、それが私の中での「アニメ史や特撮史に残るレベルの格好良さ」だったりするんですね。

*のじゃ子・白黒
(続きましてペン入れ。カラーにするのであまり強弱をつけずに描いてます。)

バッターに例えると、選球眼が全然なく、三振が多くて打率は2割くらいしかない。試合の流れも読まない。でも芯を食えば、他の選手には絶対にマネできない、とんでもない飛距離の特大弾を叩き込む。まさに「安全機構未搭載超大型扇風機四番打者」ってのが私にとっての庵野秀明なんです。その特大の打球の軌道に一度でも魅せられてしまったら、もうどんなに酷い空振り三振を見せられても「次は打つかもしれない、今回こそあの夢の特大弾が出るかもしれない」って、フラフラと劇場に足を運んじゃうんですね。

そんな私の庵野作品の評価は、その映画の中に私が感動できるホームラン・シーンがあるか?ってことが基準になる。多くの人が求めてる映画としての整合性なんて二の次、三の次なんです。シン・ゴジラでは東京を焼き尽くした、カタルシスの権化のような放射能熱線がそれだった。でも、シン・ウルトラマンには私が「うひゃぁ!参りましたぁあああああ!!」って、驚き、ひれ伏すようなインパクトのあるシーンが残念ながらなかったんですよね。というか、なんか少ない特撮シーンを無難にこなしにきてる感じがしたんですよ。だから、私の中での評価が低くなっちゃった。

でも、このシン・仮面ライダーは違う。まずライダーの造形と解釈がとにかく素晴らしかった。特にサイクロンで風を受けて変身するシーンが素晴らしい。余生にずっと夢に出そうなくらい素晴らしい。あと6本のマフラーからもの凄いジェット噴射をしながらぶっ飛んでいくサイクロンの後ろ姿と排気音が素晴らしい。あれ見て熱くならないバイク乗りはいないと思う。仮面ライダー1号、2号とサイクロンがあまりにも格好よく描かれていたんで、私、この映画の残り全てのネガが綺麗さっぱり許せました。結局ね。特撮モノっていうのは、この世に存在しないはずのヒーローを「いかに格好良く、説得力をもって、この世に存在させるか?」ってのが大事なんですよ。バットマンとかジョーカーとかずっとそれやってるんだから。



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(こちらメディコムトイの仮面ライダー1号&サイクロン。メディコムトイのホームページから転載です。これもう映画のまんまなんですよ。格好よすぎ。でも中身は池松壮亮なんです。)

でも公開前は凄く不安だった。だって、今回の仮面ライダーは本郷猛役の池松壮亮(いけまつそうすけ)と一文字隼人役の柄本佑(えもとたすく)ご本人が、スーツの中でそのまま演じてるらしいんですよ。「スーツアクターを使わず、ほとんど俳優本人が演技してる」って事前情報が入ってたんですよね。「いやーそれじゃ、全然格好よくならないんじゃないの?」ってなりませんか?だって、池松壮亮や柄本佑は、どっちかというと性格俳優タイプで、カッコイイ系の役者じゃない。近年仮面ライダーオーディションで選ばれてる、スポーツ万能の爽やかなイケメン俳優じゃないんですよ。どっちかというと「深夜のコンビニで暗い顔してバイトしてそうな二人組」ですよ。しかも、本郷猛は序盤で緑川ルリ子に「無職のコミュ障」呼ばわりされちゃって、コンビニ店員どころか、ニートであることが観客にバレてしまう。

そもそも頭脳明晰、スポーツ万能の陰キャ無職ってどんな設定?そんな奴いる?演じる池松壮亮も役作りに困ったと思いますよ。そんな池松が陰気な顔して黒いコートをガッツリ着込んでると、ヒーローどころかコート下全裸の痴漢に見えかねないわけですよ。(池松ファンの方申し訳ありません)

でもね。その陰気なコミュ障役に徹してる池松壮亮が、コートの前をはらりとあけ、コンバーターラングとベルトをチラ見せさせて、ライダーマスクを被った瞬間、周囲の空間を完全に支配する伝説のヒーローに変わる。そのギャップインパクトが凄い。

初代の藤岡弘は、武闘家としても名をはせる伝説のライダー俳優ですけど、そもそもメンタルと肉体が強すぎでした。変身する前から「コイツは仮面ライダーになるにふさわしい男だ」ってのが明らかだった。しかし、今回、ライダーの中身は池松壮亮演じるメンタルヨワヨワのヨワニンゲンです。でも、そんなヨワニンゲンがスーツ着てマスク被ると、「上から下までどうみても仮面ライダー」ってのは衝撃以外のなにものでもなかった。しかもスーツとマスクの細部と全体のシルエットがメチャクチャ洗練されてて、シュッとした現代の造形になってるんです。これに私はとにかく感動しました。

昔、変身ベルトのCMで「君も仮面ライダーになれるっ!」ってのがあった気がしましたけど、「いやいやいやいや、あれは強い男が変身して、鍛え抜かれたスーツアクターが演技するからサマになるんであって、うだつの上がらない一般人が仮面ライダーになるなんて、そんなのムリだろ!ムリムリ!」って、その頃は手を振りながらツッコんでたんです。でも、それは間違いだったんですよ。ムリじゃなかった。この映画では池松壮亮と柄本佑という性格俳優を中身としながらも、凝りに凝ったマスクとスーツの造形の力で、仮面ライダー1号、2号をものの見事に現世に降臨せしめた訳ですよ。ヤバくない?

とにかく主演の池松壮亮の滲み出るような陰キャのメンタルザコ感が素晴らしい。その演技は初代の藤岡弘みたいな野武士系昭和男とはまったく異なる、トラウマ抱えた令和のコミュ障です。自分を殺そうとした一文字にすら敬語使うくらい優しすぎるヨワニンゲン。

この映画は、そんな池松壮亮が仮面を脱いだり付けたりするシーンがもの凄く多いんですけど、仮面を脱ぐとヨワニンゲンが出てきて、仮面をつけた途端クソ格好いいヒーローになるという、その振り幅に、脳汁がドバッとでちゃう。


仮面ライダーポスター
(この公開前ポスターのビジュアル。映画全編を通じて、右と左を行き来する。)

道の駅で颯爽とバイク乗りが現れて、「うぉぉおお!なんか格好いい人キター!」って盛り上がってると、実は中身は宇宙猿人ゴリで「うわぁ!頼む!ずっとメットかぶっててくれ!」って言いたくなることがあると思うんですけど、あれを映画でそのまんまやるんですよね。

「弱く、脆く、格好悪い人という生物を、外皮1枚であり得ないほど格好よくしてしまうのが真の変身なのだ・・(ニヤリ)

って庵野がゲンドウみたいに笑ってる。その徹底した格好良さへのコダワリは、我々バイク乗りが革ジャンやメットに向けるコダワリとまったく同じなんです。

その結果、「ヘルメット被ってればヒーローっぽくて格好いいけど、脱いだら・・・ゴニョゴニョっていうバイク乗りあるあるを地でいく形になっている。だからこそ、バイク乗りにとっては凄くリアルなんですよ。私にとってヒーローって、存在が重ければ重いほどいいんだけど、池松壮亮にスーツとマスク着せて、仮面ライダーそのものに変身させてるんだから、実存感がハンパないんです。アクションがいかに格好良くても、そこに実存しているという重さがなくてはタダのおとぎ話。今回の仮面ライダーは映像の中での存在感が重い。

マスクを脱ぐ描写も多いから、スーツアクターを使う平成・令和ライダーと違って、池松壮亮と仮面ライダーが強烈に繋がる。変身しても動きが俳優のそれだから、そこに違和感も生まれない。CGでやる動きはあえて作り物っぽく見せて、池松が入ってるライダーとリンクさせないように切り離してる気がする。それが私の中で、とんでもない飛距離のホームランになった。だから5点。

*のじゃ子・カラー3
(続いて色塗り。良い物をお届けしようという心はあるんですが、時間と実力がついていかないので、品質がついてきませんねぇ。)

仮面ライダーの解釈も凄く良かった。ライダーはこれまで悪の組織と戦ってきましたが、それは極論すると、大衆の平和への願いを代理行使する暴力装置。藤岡弘の演じた初代本郷猛は、改造人間の悲しみを背負いつつも、強い心で暴力装置であることを受け入れて戦う存在でした。でも今回の仮面ライダーは「単なる暴力装置であることを拒絶し、それに抗おうとする存在」として定義されているんですよね。

でも、暴力装置として作られた戦闘オーグメントである仮面ライダーが、暴力を否定したら、一体何が残るのか?そこに残るのは何の役にも立たない人外ではないのか?庵野秀明の残酷な設定により、シン・仮面ライダーの本郷猛は初代本郷猛よりさらに悲惨な自己否定の苦悩を背負わされた、とてつもなく悲しい存在になりました。

終盤、唯一の理解者であり、同類でもあり、守るべき存在であり、戦う理由だった緑川ルリ子を失い、夕日を背に悲壮感を漂わせる仮面ライダーの立ち姿、なにかを振り切るようにラスボスのアジトに向かってサイクロンで爆走する後ろ姿は、私は金を払う価値が十二分にあったと思います。

ちなみにストーリーは、ぶっちゃけ真・庵野秀明ですな~。説明もまったく足りてないけど、そんなものを庵野に求めるのが間違い。「馬鹿ねぇ。そもそも庵野が本編で設定を丁寧に説明したことなんてないでしょ?おじいちゃん?」って言われちゃますよ。気にしたら負け。

ショッカーの怪人達は、「自分にとって幸せな世界を作るため」に人との関係性を自分なりに定義して、世界をその定義で染め上げるべく活動しているわけですけれども、その幸せの定義、人類救済の方法が怪人ごとに違うんです。まぁ怪人は大概イカレちゃってるんで、とても人類救済してるように見えないんですけど。やってることは、歴史的にいろんな国家がやってきた極端な支配政策とそう変わりないように見える。

ラスボスも相当キテる。思想自体もカルト宗教みたいでヤバいんだけど、見栄えもヤバい。もうね。「新宿二丁目のゲイバーにいそうなナルシスト」なんですよ。アジトには玉座の両脇にスズキのT20と、ホンダのドリームSL350の2台が置かれ、その中心に一人孤独に座ってる。お友だちはロボットだけ。こいつ頭がタリラリラン状態なんですが、過去のトラウマから抜けられず、ボッチをこじらせた結果そうなってるんですよ。それ見たとき、「これって、バックのバイク2台から4台にしたら、まんま自分じゃねーか!!」ってマジで笑っちゃった。

これ以外にも、「スタッフにバイク乗り結構いるな~」って思う描写がかなりある。一文字の「バイクは孤独を楽しむことができる。だから好きだ。」ってセリフとか、本郷猛のソロキャンが趣味なとことか、そこここにバイク乗りが「うんうん」と頷ける部分があるんです。ラストシーンで沖縄の伊良部大橋みたいなところを仮面ライダーが疾走するシーンなんて、もう「HONDA・The Power of Dreams」 ってロゴが重なるんじゃないかと思いましたよ。

この映画、私みたいに「ダメなところが山ほどあっても、突き抜けて刺さるところがあればいい」っていうタイプには、かなり評価高いと思う。でも、ストーリーに整合性や満足感を求め、映画を筋立てで見たり、理で考える映画テイスティング派の方々にはまったくウケないでしょう。

でもね。まとまってても、いいところがシングルヒット止まりだったシン・ウルトラマンより、アラは山ほどあるけど、豪快な特大ホームランをかっ飛ばしてくれた仮面ライダーの方が私は圧倒的に好きですね。

庵野秀明は今回、独善的なフルスイングで、その美学を通天閣まで打ち上げた。その点は見てきた誰しもが一致してると思うんですよ。ただそれゆえに評価は割れる。評価がどうなるかはまさに「見た人のみぞ知る」・・っていう映画になってるんですね(笑)

ただ、私が、もう何回も映画館に足を運んでいるように、ハマる人にはドクターペッパーみたいな中毒性があることは間違いない。そんな映画です(笑)





*のじゃ子・ヘッダーサイズ・最終・スマホ用
(私の撮影した写真からイラスト化したHAWK11と背景及びロゴを重ねて完成です。)

ヘッダ-2022春・最終スマホ用+1
(こちら昨年の春のヘッダー。ダイナ嬢がモチーフでした。毎年少しずつ塗り方が変わってますね。)