全国のロケットカウル戦闘団HAWK11部隊の皆様。こんにちは。不定期にブチ込まれるHAWK11のインプレ第3回目。このバイクが納車されて、はや2ヶ月半。まだインプレが3回しかないんですよ~。一体全部のインプレ終わるのいつになるのやら・・。

現状でエンジンの初期ナラシは終わりましたが(納車時よりエンジンが随分と軽くなってます)、以降1月末から雪が一週間ほど続き、気温が爆下がりした影響でまったくバイクに乗れず、走行距離はまだ1000㎞そこそこ。自分のホームコースであるワインディングでシゴいたわけでもなく、低い気温で無理は禁物という状態ですので、シャーシとかエンジンのインプレには、まったくもって入ることはできません。「雪国で~、なぜかバイクが冬納車~」と一句ひねりたくなるくらい切ない状況。こんなの外ヅラとか概念的なインプレで延々引っ張り続けるしかないじゃないですか。

ちなみに私はHAWK11の外装デザイン、メチャ気に入ってます。HAWK11って日本のノスタルジックなヒーローみたいな趣がある。デザイン自体は割と新しい要素が多いですけど、「仮面ライダーとかワイルド7とかを現代にリメイクするとこういう解釈になりそうだな・・」って感じるんですよ。昨今はバイクがどんどんグローバル化されてて、海外ウケを意識したデザインが多くなってますが、日本専売のバイクに求められるのはグローバルな格好良さじゃなくて、日本のオジサンに寄り添うような、土着の格好良さだと思うんですよね。

(昭和のバイクヒーローの代表格、ワイルドセブン。望月三起也の飛葉ちゃんのイラストが最高に格好いい。曲は実写TV版のオープニングなんですが、好きなんですよねぇ。メンバーの八百がノートン・コマンドのロケットカウル仕様に乗ってるんですけど、それにHAWK11が重なるんです。)
                         
海外勢の主流を占める超高額バイクって、価格が高いものは、最先端のパリコレみたいにオシャレすぎるんです。私はいつまでも若くいたいんで、最近のバイクのデザインだって受け入れますけど、「日本人としてちょっと違うんじゃないか?」って心のどこかで思うところもあるんですよ。日本の源流って、もっともっと虚飾を排した美じゃないかと。日本食の代表であるスシだって見た目はシャリの上にネタがのってるだけだし、天ぷらだって揚がったタネを和紙の上にのせてるだけ。質素で単純なんだけど、その裏には丁寧な仕事とコダワリがある。決して華美さや過激さを求めない「料理は心」のものづくり。そんな日本独特の感覚や日本という風土からくるミネラル感こそ日本の「らしさ」じゃないかと思うんですよ。

そう、このグローバルな時代に日本専売を高らかに宣言するっていうことは、それはすなわち

「攘夷です」

海外のデザインが欲しいんなら輸入バイクを買えばいい。グローバルで勝負せず、日本専売であるのなら、海外のデザイン手法ではなく、いかに日本独自のデザインを追求するか?という論法で作られていなくてはならないはず。バイクがよりどりみどり自由に買える時代だからこそ、「攘夷の精神」を貫いた日本独自のアイデンティティが必要なんです。

多くのバイク乗り達がZ900RSやW800やSR400、カブ、CB1100などのクラシカルなデザインに惹かれてるのは、レトロなバイクが欲しいからっていうより、新しいバイクがどんどんグローバルデザイン化して、「日本独自の美意識」が薄れつつあるからだと思うんですよ。

ハーレーがある時期バカ売れし、BMWやドカが販売台数を伸ばし続け、気がつけば周りの大型バイクは舶来品であふれてる。日本のバイクですら、メイン市場がヨーロッパになり、グローバル展開のためにヨーロッパ好みのアバンギャルドなデザインを採用するバイクが増えてきた。そんな眺めの中で、日本のライダーは無意識のうちに「日本独自の風景に溶け込むデザインに飢えている」んだと思うんです。近年排ガス規制対応により歴史あるモデルが軒並みディスコンしたことで、それはさらに顕著になると思います。

攘夷3
(レッツノートならともかく、「レッツ攘夷」はトンデモない危険思想。この世の中で陽気な武装蜂起ほど恐ろしいものはない。)

HAWK11は「日本でしか売らない」という選択をすることで、日本の価値観と徹底的に向き合うという選択をしたんだと思うんですよ。そんな「日本人の、日本人による、日本人のためのバイク」に海外的なおしゃれ感など一切必要ございません。

HAWK11をダサいっていう人もいますが、まず鏡に映る自分をみてみましょうよ。そこに居るのはシャアですか?フルフロンタルですか?ジョニー・ライデンですか?ハサウェイ・ノアですか?違うでしょ?そこにいるのは「ドズル・ザビ」でしょ?「レプリカ時代の栄光はやらせはせん!」でしょ?そもそも80年代からバイクに粘着してるベテランライダーなんて男性ホルモンの塊。ハゲ散らかしたマキシマム・ザ・ホルモンに決まってる。

ちなみに私のブログでは、散々ドズルやマ・クベをディスってるんで、「お前コイツら嫌いなの?」って思う方もおられるかもしれません。でも違います。私はドズルくん、マ・クベくん、キシリアちゃんの三人をジオン公国のドロンボー一味として溺愛してるんです。とにかくこの3人は幸薄く、イジリ甲斐があることこのうえない。

ドズルなんか、ああ見えて28歳ですよ?若年性老化現象が話題となっているザビ家の中でも、キシリアちゃん24歳と並び、とんでもない老けっぷり。28歳にして既に年金生活者の風格。その強烈な老け面とコッテ牛のような体格、溢れるジオン愛で、若くしてアナベル・ガトーをはじめとする武闘派のタカ派達を束ね上げたゴリゴリの武人なんです。

しかし、その実績に対して、アニメではまったくいいところがない。実戦ではモヤシのアムロに誅され、地球連邦の攻撃から身を挺して守ったミネバちゃんに遺伝子の継承を拒否される。それはまさにサンライズ作画陣が行った鬼畜極まる悪魔の所業。結果、ドズルは顔の濃さに反して精子が超薄い男という屈辱的な評価を受けることになってしまったんです。

ドズルとミネバ
(これが親子だと一体誰が認識できるだろうか?共通パーツが一つもない。「ミネバちゃんの容姿にはドズル因子を一片たりとも残さない」という作画陣の残忍さよ。ガンダムユニコーンのヒロインに必要だったのはドズルの顔ではなく、その血統と胆力だけだったんです。)

話が50メートルぐらい横道に逸れましたが、HAWK11はそんな日本のいい歳した古参ライダーにフォーカスをあわせたんだから、デザインだって私たちの世代を象徴したモノになる。見てください。HAWK11のシルバーに塗装されたロケットカウルを。

その神々しさはまるで仏具

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目指すはサーキットなんてチンケな閉鎖空間じゃありません、HAWK11が目指しているのは浄土なんですよ。このバイクからは日本古来の仏教的な歴史観、寺社仏閣にすら溶け込もうという開発陣の気概が感じられるんです。数あるバイクの中で、住職が袈裟のまま寺から乗り出してサマになる大型バイクはHAWK11くらいですよ。

ちなみにネット記事ではロケットカウルってだけで、スピードトリプル1200RRやスーパーヴェローチェが比較に出てきて、どっちがどう?なんて言われてるけど、そのたびに「違うだろ!正気か?」って私は叫んでます。あのね。そりゃアグスタや1200RRは素晴らしいですよ。でも、このバイク達は俗世での最高を目指してる。それに対してHAWK11が目指したのはもっとスピリチュアルなものなんですよ。しかも価格差見て下さいよ。1200RRとHAWK11では、価格差90万円。アグスタに至っては190万円も違う!こんなの比較しちゃダメでしょ。

言っときますけど、330万円のスーパーベローチェをHAWK11と同額にしろって言われたら、一体どんなバイクになると思います?スーパーベローチェから衣装代190万円も取り上げたら、シャツとパンツだけになるに決まってる。もうね。無塗装の中華プラモデルみたいになるから絶対。逆にHAWK11の販売価格を「330万円にしていいよ」っていったら、紅白の氷川きよしくらいド派手になると思いますよ。カウルのリベットが真珠とかになるかもしれないですけど、誰もホンダにそんなの求めてないでしょ。

ホンダはね。呼びもせんのに最前線に突撃していって、オーバーヒートして冷却水撒きながら「回収車呼んでくれ!」って叫ぶアホの子じゃないの。私はアホの子も全然嫌いじゃないけど、全員がアホの子になったら、市場が崩壊しちゃう。ホンダみたいに、地味子だけど、凄く頼れて最後まで後方で戦線維持してくれる有能ちゃんがいるから、鉄砲玉みたいなアホの子を安心して販売することができるんですよ。「壊れるのがイヤならホンダを選べば良いじゃん!」っていう海外勢の捨て台詞は、ホンダがあるからこその免罪符。これが「壊れるのが厭ならカワサキを選べばいいじゃん!」ってことになると「ええっ!?カワサキ??」って微妙な空気が流れはじめる。

そもそも高額設定の海外製品は、世界で圧倒的なシェアを握ってるホンダ、ヤマハあたりを基準にして、いかにスペックや、見た目質感でアドバンテージを稼ぐかって仕立てになってるんです。だから、趣味性の高い海外製高額バイクを基準にしてものを見ちゃうとスタンダードなメーカーが物足りなく感じたりするのは当たり前。でも長くその世界にいると、それが一種の感覚麻痺でしかないとわかってくる。

戦車模型なんかでも、初めはパーツ数が少ないタミヤを「ディティール表現力で海外製品に負けてんじゃん(笑)」なんて馬鹿にする人がいる。でもね。戦車模型の世界基準は誰がなんといおうがタミヤなんですよ。海外製はディティール細かいんじゃなくて、戦車模型のスケール考えたら明らかにオーバーディティールなんです。リアルさより模型としての見栄えを重視してるんですね。一方、タミヤは派手なことはしないけど、パーツをキッチリすりあわせ、現物の寸法を徹底的に解析し、必要なディティールは外さず、組みやすく、塗りやすいという模型としての横綱相撲をしっかりやってくる。タミヤの凄さは、海外製を渡り歩いてしばらくすると、心の底から理解できる。

ホンダのバイク造りはそれに似てます。あらゆるバランスを取りながら、ひとつひとつ賽の河原みたいにキッチリ積み上げてきます。部品は当たり前のものしか使えなくても、作り手の眼力だけはプライスレス。HAWK11はその目の厳しさを強く感じるバイクです。一回りしたベテラン勢のお小言に耐えるために、質感にしても厳しい目線で「中庸の美」を実現してる。派手ではないけど地味でもない。華美ではないけど安っぽくもない。そのさじ加減が素晴らしい。

ネットやカタログでバイクを遠目で見ると、質感が高い部分とか色のコントラストに目が行きがちだけど、近くで見たときに一番目につくのは、「質感の低いところ」なんです。質感の高いところと低いところのギャップが大きいほど、その違和感は大きくなる。質感って毎日見てると慣れちゃって麻痺するんですけど、これに対して違和感は小さなものでも慣れることがない。

長いことバイクに乗ってると、この手の違和感にスッゴク敏感になるんですよ。メチャメチャ素晴らしい必要はないんだけど、違和感は困る。特に質感を高めたハイエンドなバイクにおいては、その僅かな違和感が時としてバイク全体の印象を左右するような致命的なものになったりする。アクセルに対するトルクのツキ、ブレーキのフィーリング、サスの動き、回転上昇や回転落ち、ギアの節度、クラッチのフィール、ライディングポジション、見た目の質感、などなど、そのポイントはかなり広範囲です。

いろいろなものを購入してきて思うんですけど、質を高めるっていうのは、プラスを盛ることじゃないんです。足を引っ張る部分を潰し、目標とするレベルですべてを統一させる作業なんです。これは簡単なようで、経験ときめ細かな配慮、それを実現する熱意を要する地道でハイレベルな作業です。だから多くのバイクはそこら辺に目をつぶってプラスをドーンと盛って商品力を上げようとする。プラスの波でマイナスを押し流し、細かな部分を覆い隠そうとするんですね。初めはそういうものに惹かれても、多くを見ているうちに、そのアラに自然に気づくようになってしまう。

HAWK11は海外勢のような派手さや力業はないけれども、動的な面でも静的な面でも、違和感の除去をしっかりやってるんですよ。乗るとなんとも楽しいのは、乗った時に厭なところがなく、操作感が統一されているからです。乗れば乗るほど「これは確かにベテラン向けだ」って思いがどんどん強くなる。ビギナーはわからないかもしれないけど、「全てが当たり前に違和感なくしつけられてるバイク」って、非常に少ない。沢山バイクに乗れば乗るほど、当たり前を完璧にこなせてるバイクが実はほとんどないことに気づくんですよ。

このブログ読んで貰えばわかるんですが、ハーレーのダイナは自分が満足するだけのフィーリングを手に入れるまでに約7年、ゴールドウィングはリコールするまでエンジンフィールに微妙な違和感を感じてたし、今は交換したタイヤとサスのマッチングに違和感がある。ストリートトリプルは加速するとミラーがどっか向いちゃうし、リアサス設定があまりにもガチすぎる。それぞれのバイクでウィークポイントがあるんですね。

でも今のところHAWK11にはそれがない。これまで乗ってきたバイクの中で、まったく手を入れない新車状態で、こんなにもマイナス面を感じず乗れた大型バイクはなかったように思います。だからこそ、外装でも機能面でも、このバイクの良さを伝えるのはとっても難しい。

リッター超えのスポーツバイクは、刺激やインパクトの演出を重視してるものがとても多い。そりゃそうですよね。馬力は既に公道路面と相容れないレベルになっているし、そもそも調和を求めて設定された排気量じゃないんだから。でもHAWK11は必要以上の刺激やインパクトを捨て、当たり前をしっかり磨くことを選択したスポーツバイクです。質の高いものが違和感なく提供されているから、乗るととても気持ちいい。

何も違和感を感じないという特殊性が、私にとってのHAWK11の最大の価値かもしれない。でも、多くの人にとって、それは売り文句にはまったくならないんですね(笑)