本日ブログのヘッダーを冬用のものに変更致しました。ヘッダー変更時には、毎度イラストやマンガに関するくだらないよもやま話をコーヒーブレイク的に書いているんですが、今回は私のお絵描き環境とそれを取り巻く話題について思うところを少しばかり。

現在の私のイラスト製作環境は、CLIP STUDIO PAINT(以下「クリスタ」と呼称します)という定番のお絵かきソフトとワコムの型落ち液晶タブレットCintiq13HDをレッツノートQVで稼働するという、まぁコダワリもクソもないものです。そもそもレッツノートって画面の縦横のアスペクト比が3:2なんですけど、液タブのCintiqは16:9のアスペクト比なので、画面両端の15%が「真っ黒」なんですよね(笑)。

IMG_4964
(パソコンの画面のアスペクト比が液タブと違うので、液タブ画面の表示エリアが一部使われていない。これは酷い。私の雑さ、いい加減な性格が如実にあらわれちゃってて恥ずかしい。)

ガチでイラスト描いてる人にとっては「・・何やってんの?・・画面両ハジ死んでるじゃん・・プププ・・無理・・底辺(笑)」って感じでしょう。でもある時期からキーボードの使いやすさと持ち運びの頑丈さに優れるレッツノートを愛用してますんで、この環境が続いてます。2年前までは10.4インチのレッツノートRZで描いてましたから、まだマシになった方かも。ぶっちゃけ低レベル絵師に高機能なお絵描き環境なんぞいらんのですよ。

ソフトとして使用してる「クリスタ」だって、その能力の半分も使えておりません。さすがに書き始めた頃に比べれば、ある程度は絵を描くスピードも上がったし、色を塗る勘所も理解できてきた気がするけど、3D機能や、ベクターレイヤーの使い方なんて、まだ全然わかってないですから。

そんなド定番お絵かきソフトの「クリスタ」ですが、先日ちょっとした事件がありました。クリスタの販売元のセルシスが突然以下のような告知を出したんですね。それがなかなか興味深かったので、ちょっと長いですが、その全文を掲載します。

(セルシス告知内容)

CLIP STUDIO PAINTへ画像生成AI機能を搭載しないことといたしました。

11月29日にお知らせした「画像生成AIパレット」の試験的実装の予定について、皆様にご不安・ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません。

「画像生成AIパレット」は、皆様に新しい創作の体験をしていただきたい、という想いで開発を進めてきましたが、体験していただく以前に必要な配慮が欠けていました。

セルシスは、画像生成AI技術をどのように創作活動に活用できるかにとらわれ、創作の道具としてCLIP STUDIO PAINTをご利用いただいている皆様の気持ちに寄り添えなかったことを反省し、お詫びいたします。

告知以降、皆様から多くのご意見をいただきました。

1.現状の方式の画像生成AIが、著作権を侵害していなくとも、誰かの著作物を利用して画像が生成されており、その由来が不明であるアプリは使いたくない。アーティストの為のツールを名乗っているが、画像生成AI機能はむしろアーティストを苦境に追い込み、その活動を阻害する。

2.倫理的に問題がない方法で収集されたデータを利用していないのであれば、使えない。

3.CLIP STUDIO PAINTを使っただけで、画像生成AIで作ったと疑われてしまう。

4.なぜ要望が多い機能の改善に取り組まずに、問題視されている機能を追加するのか理解できない。

5.信用できない機能が搭載されている道具は、創作のパートナーとして受け入れられない。他者の権利が侵害される可能性のある画像が生成され得る機能を提供しておいて、そうならないよう自身で気をつけてほしい、というセルシスのスタンスは無責任だ。

いずれのご意見も重く受け止めており、私達は完全に認識を改めました。

セルシスは今後、このような懸念がある画像生成AIを用いた機能をCLIP STUDIO PAINTに搭載いたしません。また、これからはクリエイターの皆様の意見により真摯に耳を傾け、創作活動に携わる皆さまが安心してご利用いただける機能の提供に全力で努めてまいります。


まぁ、こんな内容です。AI機能搭載に関して、おそらく相当ヒステリックな反応が販売元のセルシスに寄せられ、「対応を誤ると、大規模な客離れを起こしかねない」ってメーカーの中の人達が青ざめたんでしょうね。完全白旗、無血開城です。でも、まぁこういう反応が起きるのはしょうがない。だって

ほとんどの絵師より画像生成AIの方が絵が上手いんだから(笑)

いやー、こりゃもう黒船でしょ。今回は背景描画だけのAI機能搭載が予定されていたようなんですが、これ許容しちゃうと、どんどんAI絵師が領域を拡大してくるのは火を見るより明らかなんですよね。自分がイラストを描くツールとしてソフトを購入したのに、そこに仕込まれた画像生成AIの方が自分より絵が上手いって切ないですよ~。ソフトに「オマエが手を動かすより、私の方が効率もデキも良い。オマエは描くな!」って言われているような気分になる。そりゃ拒絶反応も出ますよね。

冬のヘッダー下絵
(下描きです。少し前からペン入れ時に見やすいよう、下絵は赤で入れてます。)

この気持ちは、私がこれまでいろんな分野で同様の経験をしてるから良くわかるんです。例えばガレージキットなんかもそうでした。30年ほど前の美少女フィギュア黎明期(私の学生時代)は、市販フィギュアのクォリティってメチャクチャ低かったんですよ。美少女フィギュアっていう市場自体が存在せず、オタク連中を満足させる造形は、マニア向けのガレージキットだけ。その頃は

「ガレージキット製作技術のない人は、美少女フィギュア手に入れたくてもどうしようもないんでしょ?・・プププ・・可愛そう・・。」

って萌え豚相手にドヤ顔することができたんですよね。そうこうしているうちに、そんなガレキモデラーの中からガレキ製作代行業者みたいな人達が出てきて、1体10万円~30万円くらいでガレキの製作委託を受けるようになったんです。でも、これがいけなかった。「こんなオタクなお人形さんに数十万円も払うバカがいる」という事実が明らかになり、それが市場に火をつけたんですね。

それ以降、金になるアニメ系美少女フィギュアは重要な商材に変化していったんです。いったん市場が火がつくと、強烈な競争原理が働いて、市販品の造形クォリティ、塗装クォリティは年々向上していき、あれよあれよという間に私のような低レベルガレキモデラーの完成品のレベルを軽く追い越しちゃったわけです。そしていつしか「え?美少女フィギュアモデラー?市販品買った方がコスパもデキもいいじゃん?アンタ達もう不要でしょ?パンツ塗りたいだけの変態でしょ?サーフェイサーの粉とシンナーを存分に吸って、異世界でスライムつむりにでも転生して下さい。」って感じで、腐海に暮らす森の人みたいな変人扱いになっていったんですね。

フィギュアに限らず、趣味性が高く需要があるのに一部のスキル持ちだけが市場を独占してるカテゴリーっていうのは、一般に門戸を開くことができれば大きな可能性のある市場になるんです。バイクのような機械製造業では、AIが統率する産業ロボットが導入され、熟練工の組み上げ技術を再現しながら生産工程の自動化が行われてますけど、それをイラストの世界でやろうってのが、「AIによる画像生成パレット」だったわけですね。

冬のヘッダーペン入れ2(次はペン入れ。カラーにするので線の強弱表現は抑えめです。)

今回、絵描き達のギルドがそれに対して「そんなもん入れたら自分達のアドバンテージが奪われるやんけ!」って強烈なアレルギー反応を示したわけですが、これは「AIが仕事を奪う」という「AI悪玉論」の典型パターンなんですよ。そしてAIの普及にあたっては「そのような人の感情に最大限配慮しなければならない」とされてますんで、今回ベタ下りしたセルシスの対応に違和感はない。セルシスだって著作権問題についてはいろいろと考えてただろうから、その点の反論はできたと思うけど、あえてそこには触れず、ベタ下りしました。要は「突っ張るにはまだ機は熟していない」って判断したってことですよね。

でもね。いくら抵抗したって、この流れは止められませんよ。過程は紆余曲折あるかもしれないけど、長期的なスパンで見れば「AIで代替できるレベルのものは皆AIがやるようになる」と私は考えてます。休みなく思考し、改善、進化を続けるAIは与えられたものを一定のクォリティで安定的に生産する能力がズバ抜けてる。その点に限っては「人の完全上位互換」なんです。

だから、ただ絵が上手いだけでは「やがてAIに取って代わられることは目に見えている」んですね。プロの歌手がどんなに否定しようが、ボカロ好きはボカロ曲で何の問題もなく楽しめるし、有象無象の歌い手よりも初音ミクさんの方がカリスマ性があったりする。ビジネスの世界でも、既にAIの大規模侵略が開始されており、あらゆる業界でAI台頭の流れは止められないと思います。

どんなに技術レベルを上げたって、絶え間なく学習を続けるAIによって「技術はどんどんインフレし、やがてありふれたものになる」。そして貪欲な市場の担い手達は「機械にできるようなことは、人に求めなくなっていく」。なかなかに残酷ですね。

冬のヘッダーカラー入れ2
(色を入れました。どんなものでも一気にレベルは向上しない。でも少しずつ少しずつ自分なりの色付け方法を確立してる気はしてます。)

冬のヘッダーペン入れ ai
(こちらクリスタのAIの自動彩色。これもう少し認識力が上がれば私が塗る必要ないですね。)

ちなみに私は、これまであらゆる分野で敗走を続けてきた低レベル人間ですから、この手の問題に関しては完全に達観してるんですよね。白旗揚げる対象が、上位絵師からAI絵師に変わっても、私の立場に何ら変化はないからです。

しかし、そんな吹けば飛ぶような存在でも、吹けば飛ぶと理解してれば戦いようはなくはない。ステータスの職業欄が「低レベル絵師」では確かに絵師としては勝負になりません。しかし、そこに一夜にして原稿用紙20枚のテキストを叩く「狂乱テキスト廃人ブロガー」という職業を加えてみましょう。するとどうでしょう。ステータス画面の職業欄が「狂乱テキスト低レベル廃人絵師ブロガー」に変化しました。ロクでもない単語しか並んでませんが、呪文のように長くなるだけで威圧感がハンパない。まるで魔界の勇者みたいじゃないですか。「名前だけならひょっとしてドラゴンボール最強のブロリーとも互角に戦えるのではないか・・」って、淡い期待すら湧いてくる。

得意技は「テキストの黒津波+低レベルイラスト」の多重複合汚染攻撃。一応、二刀流ですよ!スターバースト・ストリームですよ!!

固有スキルには「下品」「浪費家」「陰キャ」「オタク」「ボッチ」という闇属性がズラリと並び、人物紹介欄は「浮き沈みの激しい人生経験51年」、「バイク歴32年」、「転倒事故9回」、「うち廃車5台」、「美少女フィギュア製作15年」、「最終学歴、自動車学校」という企業面接切り捨て必至のクズ実績がスシ詰めです。

属性は「善」でもなく「悪」でもなくはたまた「中立」でもない。新属性「モブ」

こんなのもう、魔王レベルに近寄りたくない存在ですけど、結局のところ、技術とセンスがない敗北者の行き着く先は裸芸なんですよ。「失うものがなにもない奴の着衣はイチジクの葉だけ」ってのは創世記からのお約束です。プライド捨ててフルチンになった男は強いですよぉ。なんせ禁止ワードを連発しながら下ネタとオタネタでひたすら押してくるわけですから、これは始末に負えません。

長年人生を流転してきて、シミジミ思うんですけど、新たに生まれた可能性や価値観に、古いものが淘汰されていくのは、もはや自然の摂理なんです。敗北したくない、築いたものを奪われたくないって思うから、AIが一部の人には敵に見える。でもそれは、市場の新陳代謝で一定の周期で必ず超えなきゃならないハードルです。過去に何度も変化に足をとられ、汚物に顔を突っ込んできた身からすれば「明日が保証された世界」なんてどこにもない。

市場は常に新しい価値観を求め、現状に満足することなく可能性の光に向かってなびいていく。多くの人がそれを止めようと抵抗するけれども、悲しいかなその試みが成功したことはありません。

結局のところ、創作っていうのは「あくなき闘争」「常在戦場」「サーチ&デストロイなんです。環境が大きく変わろうが、アドバンテージが消えようが、舞台から降りたら負けの終わりなきサバイバルゲーム。最後はイチジクの葉を投げ捨ててでも、前に進むしかありません。そもそも環境に文句を言ってる段階で、全然余裕がありますよ。

低レベル絵師は日々何かを生み出していくだけで精一杯。AIがどんな絵を描くのかより、とりあえずこのブログがこのシメでちゃんとオチてるのか?ってことの方がよっぽど心配なんですね。



冬のヘッダー・スマホ
(背景とゴールドウィングと組み合わせて、ヘッダーの完成です。ちなみにこの背景は初期バージョンです。爆乳過ぎたかな?って感じたので胸の大きさを少し修正しました。)



2021・ヘッダー冬・スマホ用4
(ちなみにこちら昨年のきんつば嬢。1年でタッチが結構変わりましたね。)