今年はダイナに良く乗ってます。走行距離は1月から8月までで約6000㎞くらい。冬場は巨大カウルのゴールドウィングの独壇場で、ダイナの目覚めは4月の半ばくらいですから、8月がまだ終わったばかりの現時点で6000㎞は、かなり乗ってるんじゃないかと思います。

なぜダイナの距離が伸びているかというと、昨年10月の車検でサスのオーバーホールを行ったことと、ヘタったシートを修理して取り替えたからですね。これで快適性と走行質感がグッとあがって、乗り心地も満足できるものになりました。

私のバイク史で10年維持したバイクは存在しなかったので、ダイナでようやく「バイクを長く維持するとは?」ということに本気で向き合っている気がするんですよね。で、本気で向き合うと、「古い大型バイクをより良い状態に維持していくって経済的にヤバくね?」って改めて思う。

ダイナ2
(イラスト調のダイナ。秋のヘッダーに採用予定ですが、それだけじゃもったいないので、ブログイラストにも採用してみました。)

私が目指してるのは難しいことでも何でもなくて「ダイナを新車に近い状態で維持し続ける」ってだけのことなんですが、それだけでも出費はかなりエグい。まぁ維持するにしても10年という節目を迎えてるわけですから、なんやかんやといろいろ吹き出してきますよね。それを箇条書きにするとこうなります。

2021年10月 

初代ダイナの事故の後、新古で買って4回目の車検。いよいよ10年目に突入。
前後オーリンズサスのオーバーホール&ブレーキパッド交換。加えてタイヤ交換をする予定のところ、マラソンウルトラの在庫がフロントしかなく、やむなくフロントのみ交換する。 ・・・・21万8000円

2021年11月 

スポンジがダメになって拷問器となったK&Hシート修理 ・・・・6万5000円


2022年3月 
 
メッツラーのマラソンウルトラが待てど暮らせど来ない。引っ張るだけ引っ張ってたリアタイヤもツルツルになってもう限界なので、一番お安いAVONのコブラクロームで繋ぐことにする・・・・3万7800円


2022年3月  

4年使って冬前にはヘロヘロになっていたバッテリーを交換・・・・3万2200円


2022年4月  

ブレーキスイッチの故障、ランプがつきっぱなしになる。ブレーキスイッチ交換・・・・9300円


2022年7月 
 
9ヶ月待ってようやくマラソンウルトラが入ってくる。おせーよ(涙)。この時点でAVONは4000㎞しか走ってなかったけど前後テレンコだと旋回性が違うので交換・・・・4万8000円


合計41万300円  
ガクガクガクガク・・バタッ(痙攣して昏倒、口から泡)


これね。もう終わってますね。・・昨年10月から今までの10ヶ月で、41万円もかかっているという・・・フェラーリなの?・・。コロナのせいでマラソンウルトラが来なくって、繋ぎで買ったAVONのコブラクロームが余計な出費になってますけど、それ引いても36万円ですよ。で、これだけやってようやくバイクは適正な状態に戻るという・・。実は昨年の車検前に、私のバイクを冷やかしでレッドバロンに査定して貰ったら「買取額50万円(笑)」。かなしー(笑)。資産価値重視の観点でいうなら、私は「市場価値50万円のド中古に40万円突っ込んでるクソバカ以外のナニモノでもない。

普通は「価値が50万円のものの維持に40万円かけるんなら、それ下取りに出して100万円くらいの新車買おっか♡」ってなりますよね。これは良い悪いではなく、消費行動として当たり前の経済的合理性です。ハーレーは10万㎞走るとドライブベルト交換やクラッチ交換、ホイールベアリング交換諸々で30万円くらいぶっ飛ぶらしいので、うちのダイナは数年後に重整備の爆弾が炸裂することは確定してんですよね。そんなバイクに市場価値があるわけないんですよ。

市場に出回る中古バイクだって、私のダイナと何ら変わることはない。中古って乗り手が何らかの事情で売りに出したものだから、その中には「そろそろサスもオバホだなー、これからいろいろ金かかるようになるから、これ売って新車に乗り換えようかなー」ってバイクがかなり含まれてるんですよね。だから3万㎞オーバーのバイクってギャンブルになるんですよ。2万㎞~2万5千㎞でサスをオバホするマメな乗り手が前オーナーなら、サスの減衰は残ってるけど、ノーメンテのオーナーであれば完全に抜けてるってことになる。

バイク店の買取担当やってた頃に、買ってきたバイク試乗すると「あー、これフロントサス抜けちゃってるねぇ・・」ってのが結構ありましたが、オイルシールからオイル漏れてなければ、サスの減衰抜けててもそのまま売り物として店頭に並べます。だって、ヘタったとこを全部ケアしてたら中古価格トンデモないことになりますし、ケアしたってその手間に見合う価格で売れるかなんてわかんない。そりゃ保安部品であるタイヤやエンジンオイルやブレーキパッドは交換します。でも、レストア屋じゃないんだから、サスのオバホまではやりません。購入した客から「サス抜けてるからオバホしてね♡」って依頼されれば、追加料金でやりますが、指摘されなきゃやらない。中古はヘタってる前提で安いんだし、ヘタリ度が高いバイクは価格も安く設定するんだから、それでバランスはちゃんと取れている。それに納得できない人は「新車買って下さい」ってことですよね。

バイク業界にかかわらずどの業界でも、お客を騙すなんてのは、プロからすれば簡単なんです。料理店でいうと、人の残した料理の余りをそのまま出されても、消費期限切れの素材使われても、落ちた料理を拾って皿に載せても、食べる側はわかりません。でも、「金払ってくれる人に対して誠実に」ってのが人様から金頂いて生きてる商売人の倫理であり信用でもある。どの職種を問わず、それを前提として、プロは飯食ってるんですよね。で、顧客に対する誠実さで一番大事なのが、「顧客に情報をしっかり伝える透明性」「価格の妥当性」だと私は思ってます。売り物のサス抜けてたっていいんですよ。それを考慮した価格設定をして、その事実を顧客にちゃんと伝えてれば。そうすれば顧客がそれを理解した上で、買うか買わないか、高いか安いかを自己決定することができる。情報出さないと、そもそも正しい購入判断ができないんですね。

だから売り手の持ってる情報を全部出して、目の前の商品がどんなものなのかを説明した上で、顧客と価格の勝負をする。価格と現物のバランスを顧客との間で押し引きするのが商売の王道で、商売人の信用なんですよ。「お客さんは神様です」ってのは行きすぎだとおもうけど、一番尊重しなければならない存在であることは間違いない。そこが歪むと必ずいつかそれは自分に返ってきますからね。ちなみに、この2つを極めて曖昧にしちゃったのが「悪質商法」で、あることないこと盛り出すと「詐欺という犯罪」になると私は理解してます。

こういう目線で見ると、残念ながら今の一部の中古バイクの価格設定には顧客利益を考慮した価格の妥当性が感じられないですねぇ・・。えーーっホントにこのバイクの価格がそれでいいの?無責任じゃない??ってのが多い。現行車の新古車に「新車+90万円なんて値付けしてるのを見ると、「こんなの価格の説明できる?」って正直思う。新車価格+20万円で転売屋からアホな仕入れしたとしても、ぶっちゃけ「うちの利益70万円です♡」っていう説明しかできないでしょコレ。SRのファイナルエディションのサンバースト塗装とかバイク本体価格75万円弱なのにそれとどっこいの利益設定って、「これもうやってること転売屋より酷いじゃん」って思いますよ。

一般的には消費者に対して、業界常識の2倍を超えるような利益をむさぼると、「暴利行為」ってことになるんですけど、物販や古物はやりたい放題ですからねぇ。

「こんなことやってるから中古業界は、いつまでもうさんくさいって言われるんですよ。」

この手の根拠のない価格が横行し出すと「価格が高騰してるから価値も上がってるに違いない」って勘違いする買い手がいるかもしれないんで言っときますけど、それありえないですから。「価値があるから価格が上がる」ってのは絶対普遍の真理だけど、その逆は全然成立しない。だってバイク本来の価値は操作できないけど、価格はいくらでも操作できるんだから。

私が見る限り、最近暴騰しているバイクのほとんどは「真の価値と価格が乖離していってる」だけです。妥当な価格がどこら辺か一般人に根拠がわからなくなった時点で、それはもうバブルで、根拠のないかさ上げ部分は泡のようにいつハジけてもおかしくない。

10年目のダイナ6(貢ぐ方には愛があっても、貢がれる方に愛があるかはわからない。この前デヴィ夫人がTVで、「バカね。経済力への尊重から愛が生まれるのよ。」みたいなことをいってましたが、なかなかにエグい結論に、男として涙を禁じ得ませんでした。)

フェラーリとかランボルギーニなどの古いスーパーカーはメチャ高いけど、元々「どんなに金がかかっても、痛くも痒くもないようなお大尽達のための嗜好品」だし、昔の価格自体もトンデモないし、やっぱ造りが特別なんです。ナックルヘッド、パンヘッドの頃のハーレーなんかもそうですよね。いずれも当時の庶民には手が出ない超高級品なんです。そういうものはパーツ一つ一つのオーラが違うから、新旧にかかわらず乗れば気分は爆上げだと思う。でも70年代、80年代の中古バイクってそもそもそんな特別な商品じゃないわけですよ。作りもスペシャルメイドじゃなく、汎用工業製品だし、乗ってみたって、その走行質感に超プレミア価格に見合うような特殊性はない。

確かに古いバイクは古いバイクの良さがあります。それは間違いない。でも、それは今のバイクの価格に200万円も300万円も上乗せして味わうようなものじゃないと思う。だって、当時から大型乗ってた私にとって、今の旧車は「遙か昔の普通」でしかない。だから今旧車を買ってる人達は、30年前の当たり前にもの凄いプレミアを払ってるんです。その点で、存在自体が特別なランボルギーニやフェラーリなどとは根本的に違うんですよ。

当時の普通がプレミア価格でどんどん売れる。そんな状況って業者的には凄くありがたいんでしょうけど、長期的には確実に自分たちの首を絞めると思う。なぜなら「価値観の歪みは市場と事業者を狂わせる」からです。

人間ってバブルに浸って価値観がおかしくなると戻れないんですね。あの大銀行様だって頭がおかしくなって過剰融資で丸焦げになり、日本長期信用銀行や北海道拓殖銀行が潰れて日本経済を道連れにしたんです。吹けば飛ぶような中古バイク業界が異常相場のオイシイ商売に首までつかったら、すぐにおかしくなるに決まってる。特に新古車をプレミアつけて新車以上で売るなんてのは、その典型だと思いますね。

仕入れが高いからそうなるんだっていうけど、新車とどっこいの価格で中古のタマを仕入れる方がどうかしてる。だってその時点でプレミアつけなきゃ売れないでしょ?プレミアって英語でいうと格好いいけど、要は「本来の価値以上の値札をつける行為」に他ならない。それは顧客からより多くの血を吸おうってことですよ。そんなアホなこと続けてると、顧客目線を失って、地道な商売に戻れなくなりますから。商売における倒産は「時代に対応できない」「人材がいない」「顧客に対する誠実さを失う」のどれかか、またその複合によって起こるんです。

私はコロナと旧車人気による常識外の価格高騰は、中古業界の淘汰の始まりになる気がするんです。中古業界がなくなるとはいいません。だってバイクを下取ってくれるところがないと新車も売れないわけですから。でも全ての業者が残るとは限らない。

バイクの整備にコンピューター診断機や設備投資が必須になったり、スロットル・バイ・ワイヤや、電子制御サスなどが当たり前になってくると、中古業界も販売したバイクのメンテナンスに対応するため、一定規模の人材育成と整備のための設備投資をしないといけなくなります。

それには凄くコストがかかるから、それができない業者は、電子制御満載のバイクが扱えなくなる。環境対策によるバイクの電子制御化によって、将来に対応可能な業者と、対応できない業者の二極化が進む。それは良い悪いじゃなくて、時代の流れの必然です。ダーウィンは「生き残るのは最も強い者や最も賢い者ではなく、変化に最もうまく対応できる者だ」って言ってますけど、時代や技術革命への対応を放棄すれば、必然的に商売が細くなってくってのはビジネスでは当たり前の真理なんですね。

それはGペンで描いてた漫画家が商業誌で生き残ってないのと同じこと。手描きのGペンイラストに味があるのはわかるけど、デジ絵は絵描きの革命です。その利点を前にプロはほぼ全員Gペンを引出しにしまって、デジ絵に移行したんです。それができなかった絵描きはもうほぼ生き残っていないんですよ。

旧車やキャブに過度にこだわったり、電子制御を頑なに否定するっていうのは、私から見れば「時代に背を向けてる」ってのと同義です。個人はそれでいいけど事業者にとってはどうなのか。古き良きものを大事にするのは素晴らしいことだけど、時代の流れを受け入れ、環境に対応していくことも事業者には求められてるんです。

新車販売は正規店集約が進み、正規とそれ以外に二極化しちゃってますから、今後その流れは確実に中古業界に波及する。そうなると電子化に対応できない中古業者は、古き良き時代をアピールしながら、旧車を売るしか選択肢がない。市販バイクがオールインジェクションになって既に10年あまり。一番新しいキャブ車だって私のダイナのようにメンテサイクルの末期状態なんですよ。

古いバイクのタマ数が限られる中、仕入れや整備やなんやらで販売原価はどんどん跳ね上がる。そうなると必然的に「旧車を本来の価値以上の価格で売ろう」っていう無理めなことを考えざるを得なくなる。その結果が現在の価格相場です。それを成立させる一番手っ取り早い方法が旧車人気を煽ること。不人気なものが高値で売れることはありえないから、まずは人気を煽らなきゃならない。今のネット社会は、その点もの凄く好都合。ありとあらゆるメディア戦略を総動員し、旧車人気を煽ればいい。でも、タマ数の減少と過熱する人気で構成された相場は、本来の価値とは到底言えないと私は考えてます。

耐用年数のある汎用品は通常、古くなると新しいものに淘汰される。しかしそれがなされないのは、時の流れを止めたい業界の事情と、リターンしたライダーの昔を懐かしむ懐古趣味が一致してるからでしょう。でも、私は一貫して古すぎるバイクは「顧客利益にならない」と主張してます。だって私のダイナと同じで、そこに金を突っ込むだけの経済的な合理性がないですから。ダイナ嬢は長きにわたって私の好みを徹底して反映したカスタムをしてきたんで、「新車買っても、このバイクの替わりにはならない」って達観してるから維持に金が突っ込めてるだけ。それでも出費的に、かなりシンドイですから。思い入れの積み上げがない旧車に手を出すんなら、自分の中の価値と市場価値のツジツマを合わせないと、必ず後悔することになると思う。

経済的合理性がないものは絶対的に損をします。古い機械を高い値段で買うってのは道具として見た時の絶対損が確定してる。それが高い価格で取引されるときは、そこに真の価値が存在するか、ただの泡かの、どっちかしかないんですね。確かに旧車は面白い。でもそれも程度もんですよ。Z2が900万円って、カワサキのZX10RとZ900RSとゴールドウィングとアフリカツインが買えちゃいますから(笑)

一部の旧車のプライスはもう「フツーの人が生涯を通じてバイクに対して投下する金額と同額」ぐらいになっちゃってるんです。だから、一生それに乗る覚悟でもないと渡れる橋ではありません。でもね。一生同じバイクに乗るなんて不可能ですから。私なんて「廃車になるまで乗るゾ!」って宣言をもう10回くらいしてますけど、10年乗れたのはダイナだけ。それが現実です。幻想が崩れ、夢が終わり、現実を取り戻したとき、そこにあるのは大概同じ結末。多くの業者が退場し、手に入れた商品の本来の価値に呆然と立ちすくむ消費者だけが残る。

消費なんて値引きした新品を購入したって、中古でお安く購入したって、後悔することばかりなんです。プレミア価格ってのは、浪費散財してきたクソバカな私から見れば「後日の後悔の上乗せ分」みたいなもんなんですね。






いやー、今回も長くてトゲのあるブログになりましたが、事業者相手だと私ってもの凄くトゲトゲしくなるんですよ。だって今の私は自分の生き血を注ぎ込んで、バイクを楽しむ純粋消費者ですから。お互いが尊重しあえるような付き合いのできる事業者とは仲良くやっていきたいですけど、必要以上に血をすすろうとする吸血鬼とは、十字架と杭をもって戦うことになるし、言いたいことも言わせてもらいます。そのためにアフェリエイトを全部外してるんだから。

まぁ私のさえずりなんて、弱小消費者のささやかな威嚇射撃みたいなもんで、ないよりマシ程度のもんですけどね・・。